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ブーン達は万物を成すようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




一定のリズムで揺れ動きながら走る、一台の列車があった。
行き先は、日本東部最大の都市ニュー速、VIP駅。
そして列車同様に、一定のリズムに揺られる、2人の青年がいた。
1人は気だるそうに車窓から外を見ている。もう1人は、口を半開きに船を漕いでいた。

('A`)「――おいブーン、あと2駅で終点だ。そろそろ起きろ」

( ^ω^)「……んぁ、ドクオ? もうそんな所まで? まだ眠たいお」

('A`)「おまっ……、今日が受験だってのに、昨日は一体何やってたんだ?」

どうやら2人は受験生。それも、試験は今日のようだ。
ドクオと呼ばれた男が、呆れ顔をして尋ねた。

( ^ω^)「ずっと参考書を読んでたお」

ブーンがその問いに答え、

('A`)「……」

奇妙な沈黙が場を包んだ。
その重さに耐え切れず、再びブーンが口を開く。

( ^ω^)「ど、どうかしたのかお?」

('A`)「ブーン……、VIP校に筆記試験はないぞ? 実技だけだ」

再度沈黙。そして、

(;^ω^)「mjsk?」

('A`)「mjsy」

(;^ω^)「……これは酷い。ドクオ、悪いけどギリギリまで寝かせて欲しいお」

('A`)「いいけど、起きなかったら放置するからな」

一連のやり取りを終え、2人は再び、先ほどと同じ体形を取る。
時が流れ、終点まで残すところ1駅になっても、それは変わらなかった。
車両間のドアが開き、第三者、杖を突いた老婆が闖入するまでは。

('A`)「……」

( ^ω^)「……zzz」

ドアが開こうと、2人は一向に反応を示さない。
つまり、彼等、特にブーンは、完全な無防備と言う訳だ。
例えば電車が一際大きく揺れ、

「あっ……」

老婆が倒れこんできた事に、反応出来ないほどに。

――ボキッ

( ゜ω゜)「モルスァ!?」

老婆の全体重が掛けられた肘が、ブーンの腹部にクリーンヒットする。
いくら老婆のそれと言えど、完全に弛緩していたブーンの腹にダメージを与えるには、
十分すぎる威力を持っていた。

「あ……、ゴ、ゴメンよ。大丈夫かい?」

(;^ω^)「そ……それなりに大丈夫ですお」

('A`)「ホントに大丈夫か? 何か折れた音してたぞ?」

(;^ω^)「折れた? ……あっ」

ブーンの目線は、老婆の足元に向いていた。
そこには杖があった。先ほどまでは一本だった、そして今は、二本になってしまった杖が。
おそらくは、梃子の原理で折られてしまったのだろう。

(;^ω^)「あちゃー……」

「困ったねぇ……。あたしゃコレが無いとまともに歩けないんだよ……」

心底困った様子の老婆。
そしてブーンは、そのような、所謂弱者を放っておけるような性格をしていなかった。

( ^ω^)「じゃ、作り直せばいいんだお」

そう言って、ブーンは座席に置いておいた鞄に、手を突っ込む。
弄り、鈍黒い輝きを持つ球を取り出した。
それを握り締め、呟く。

( ^ω^)「『鉄』の生成」

刹那、ブーンの眼前の空気が凝縮する。
そして、それが一気に弾け――そこには一本の杖があった。



20070721230603.jpg




( ^ω^)「ホイだお」

球と同様に、鈍黒く輝く杖。ブーンがそれを掴み、あんぐりとしている老婆へと差し出す。
派手な造形の杖が、車窓からの日光を浴び、その輝きを大きくした。

( ^ω^)「鉄製だけど、中は空洞にしといたし、重くは無いはずだお」

「坊や達……、魔法使いなのかい?」

震える手で杖を掴み、素っ頓狂な声で老婆が尋ねる。

('A`)「オイオイばーさん。今時『原玉』も知らないのか? ……どこの田舎から来たんだ?」

(;^ω^)「ちょ……それは。えっと、原玉って言うのは……」

『次は終点、VIP駅ー。お荷物等お忘れないよう~』

ブーンが説明を始めた矢先、アナウンスが流れる。
どうやら電車は、終点へとたどり着いたようだ。

('A`)「おっと、残念だなブーン。参考書読んだ意味、結局無かったな」

( ^ω^)「参考書? ……あ、そうだ、お婆さん。これ、あげるお。読んでみるといいお」

ブーンが鞄から何冊かの本を取り出す。
話の流れから推するに、おそらくは参考書だろう。

「え……、いいのかい?」

( ^ω^)「僕が持ってるより、お婆さんが読んだ方がいいお。ドクオじゃないけど、知ってないと色々困るお」

それだけ言うと、ブーンは電車を降りた。
ドクオはと言うと、とっくにプラットホームに降り立ち、呑気に欠伸をしている。
薄情と言えばそれまでだが、今するべき事を的確に理解する。
それが彼の長所であり短所だと、ブーンは思っていた。

('A`)「遅い」

( ^ω^)「申し訳ないお」
2人が歩き出す。老婆がその姿を目で追い、

「……おや?」

おもわず疑問の声を漏らす。
2人が向かう先には、デカデカと看板が掲げられていたからだ。

『架橋の為立ち入り禁止』と。
事実、向こう岸への橋など存在せず、そこには3本の支柱が建てられているだけだ。
落ちてしまっては事だと思い、追いかけ、老婆は言葉を掛ける。

「坊や達、そっちは……」

( ^ω^)「あ、心配いりませんお」

「え? でも……」

('A`)「ばーさん、この看板、いつから掲げられてると思う?」

老婆の言葉を遮り、ドクオが問うた。
当然、この駅を始めて訪れる老婆が、そんな事を知る由も無い。

「え? し、知らないねぇ……」

('A`)「答えは3年前から。おかしいだろ? まだ支柱しか立ってないってのに」

「……どういう事だい?」

('A`)「こう言う事だよ」

ドクオがズボンのポケットを漁り、ブーンのそれと同じ色と輝きの球を取り出した。
先ほどよりハッキリとした声で2人は言う。


( ^ω^)「「『鉄』の生成」」('A`)


ブーンとドクオの足元が歪み――そこから弧を描く2本の橋が生えた。
その橋は、第一の支柱まで伸びて行き、続いて、第二、第三の支柱を経て、
向こう岸とプラットホームの架け橋となった。

('A`)「さて、行きますか」

ブーンが頷き、2人は橋を渡り始めた。


残された老婆はと言うと、

「……」

無言でベンチに座り込み、ブーンが渡した参考書を開いた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今から十年前、これまでの常識を覆す物質が発見された。
それは原玉と名づけられ、今も世界中で活用されている。
原玉の存在は、あらゆる資源の枯渇、その心配を排除した。

今となっては常識だが、原玉には、元素を生み出す力がある。

原玉の出所については、諸説あるが、どれが真実かは定かではない。
オーパーツ(太古の技術)だという者もいれば、ギフト(天からの贈物)と言う者もいる。
ともかく、現代の社会において、原玉は無くてはならない存在である。

ニュー速都書店発行、社会科参考書『原玉と現代社会』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


眼前には、聳え立つ白い壁。

(;^ω^)「えっと……、あれだおね? ニュー速校って」

底が見えない程深い堀。

('A`)「だよなぁ」

風にはためく『VIP』の旗。

(;^ω^)「どうみてもお城です。本当にありがとうございました」

進めば進むほど、その建物、つまり校舎は常軌を逸していた。もちろんいい意味でだ。

('A`)「噂によると、ここの校長が1人で建てたらしい。もちろん原玉で」

(;^ω^)「mjsk? 化け物だお」

('A`)「つっても、1人でやったってだけで、時間の方は一ヶ月近く掛かったようだがな」

それにしても凄いお、とブーンが返す。
それから暫く歩くと、さほど大きくない集団が見えた。

('A`)「思ったより、少ないな」

見たところ、100を多少超える程度の人数だろう。
だが、ブーン達の受験番号は901と902だ。
何故かと言うと、先ほどの架橋。あれが出来ずに、泣く泣く故郷へ帰る者が殆どらしい。

大事にしまっておいた受験票を受付に見せ、2人は集団に混じる。
十数分後、試験官らしき人物が姿を現した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
原玉は持ち主の言葉と心に呼応し、力を発揮する。
メカニズムは、例により解明されてはいないが、この際それは重要な事ではない。

つまり、原玉の力を最大限引き出したければ、
心を込めて叫ぶ事が、最も手っ取り早い方法と言えるだろう。

ラウンジ都書店発行、国語科参考書『言葉と心と原玉操作』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


( ФωФ)「私が、第一試験の監督をするロマネスクだ。よろしくは言わない。
        言うのは、君達が私の授業を受ける時だ」

そのロマネスクと名乗った試験官は、良くも悪くも、独特の空気を放っていた。
猫科の生き物のような目口、それとは裏腹に、覇気に満ちた言葉。
自らが重くした空気などお構い無しに、ロマネスクは背を向け、歩き出す。

( ФωФ)「試験会場へ向かう。ついて来い」

集団が慌てて、動き出す。
中には慌ててない者もいたかも知れないが、それを判別する事は不可能と言うものだ。
そして、ロマネスクと集団が行き着いた所は、ただ広いだけと言っても差し支えのない広場だった。

( ^ω^)「……こんなだだっぴろい広場で、一体何を?」

それが聞えたらしく、ロマネスクは小さく笑った。
そして、腕を広場の中央に向けて突き出す。
その手には、3つの球が握られていた。

( ФωФ)「空き地じゃないさ。『水酸化カルシウム』の生成」

ロマネスクが呟くと同時に、空き地全てが埋まるほどの、建築物が生成された。集団からは歓声が沸く。
その建築物は、見た限り、円形をして、観客席のような物が設けられていた。
人はそのような建物をこう呼ぶ。

コロッセオ、と。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
原玉は、ただ元素を生み出すだけではない。
幾つかの原玉を併用する事で、化合物を生み出す事も可能だ。

例を挙げるならば、『水酸化カルシウム』の化学式はCaCO3。
三つの原玉を併用する事で生成でき、代表的な物としては、『大理石』が挙げられる。

ニューソク都書店発行、理数科参考書『原玉の応用操作』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


( ФωФ)「第一試験は、ここで、とある動物と戦ってもらうその動物は、歴史に則り……」

ほぼ全員が、同一の動物を想像し、

( ФωФ)「虎、だ」

その予想は、見事に的中した。

とは言え、ここに集まっているのは、原玉の扱いに長けた者ばかりだ。
虎と言えど、勝てない相手ではないだろう。そんな驕りが、ほぼ全員にあった。
事実、驚きこそすれ、絶望する受験者は見られなかった。

だが、ロマネスクの言葉には、まだ続きがあった。

( ФωФ)「戦うと言っても、殺してはいけない。捕まえるんだ。檻を生成してな。
        あと、原玉の希望があれば言ってくれて構わない。用意しよう。
        ただし、一種類と言う限定付きだ」

集団がざわついた。とは言っても、やはりそれはマイナス方向の物ではない。
それどころか、集団からは「余裕」だの「簡単」と言った言葉さえ聞えてきた。

( ^ω^)「簡単……なのかお?」

ブーンが呟き、それにドクオが返す。

('A`)「……見てりゃ分かる。幸い俺達は900番台。こういうのは大抵……」

そこまで言って、ドクオは言葉を切った。
ロマネスクが口を開いたからだ。

( ФωФ)「……じゃぁ、受験番号の小さい者から始める。
        呼ばれた者は中央に立て。他の者は、上段から見ていろ。
        まず……、21番、ニダー」

<ヽ`∀´>「「ハイニダー♪」

いやに頬のこけた男が、軽やかなステップで中央に立つ。
まさに余裕、と言った風貌だ。
目の前で、巨躯を誇る虎が唸っていると言うのに。

( ФωФ)「では……始め」

その言葉と共に、虎の四肢を封じる枷が外れた。唯一はずされなかったのは、口輪だけだ。
それと同時に、虎はニダーへと、凄まじい跳躍で襲い掛かる。

<ヽ`∀´>「 「おうおう、怖いニダねー。『鉄』の生成ニダ」

ニダーの前に、簡易的な檻が現れる。
よくあるタイプの罠。中に入った瞬間に、出口が閉ざされる仕組みだ。
そして、勢いよく飛び掛った虎に、それを回避する術は無かった。
虎は、檻に飛び込む形になり激突し、その柵を少し歪ませた。

( ^ω^)「おっおっ、なかなか速かったお」

('A`)「……」

<ヽ`∀´> 「さて、一丁あがりニダ。これで合格ニダね?」

ポケットに原玉をしまい込み、ニダーがロマネスクを見る。
しかし、ロマネスクは「合格」を言い渡さなかった。

( ФωФ)「何勘違いしているんだ……。まだ虎の攻撃は終了してないぞ?」

<ヽ`∀´>「 「ニダ?」

直後、轟音が響き渡る。
虎が檻に体当たりをかまし、鉄製の柵は大きく歪んでいた。

<;ヽ`∀´>「 「ちょ……ちょっと待つニダ! そんなの聞いてな……!」

2度目の体当たり。
柵が更に歪み、小さく悲鳴を上げた。

<;ヽ`∀´>「 「ひっ!?」

ニダーがポケットに手を突っ込むのと、虎が3度目の体当たりを仕掛けたのは、ほぼ同時だった。
柵は無惨に折れ、

<;ヽ`∀´>「 「鉄のせいせ……」

(;゜ω゜)「あっ!」

鋭く尖った虎爪が、ニダーの胸を裂いた。真っ赤な花が咲いた。

<;ヽ`∀´>「 「ニダ……」

倒れこむニダー。
再度、虎が前脚を振り上げ――突然出現した拘束具により、トドメをさす事は叶わなかった。

( ФωФ)「21番、ニダー……失格。救命室へ至急連れて行くよう」

ロマネスクが、あくまで冷静に言い渡した。
受験者全員の顔から、余裕と驕りが消え去った。

( ^ω^)「ドクオ……」

('A`)「良かったな。俺達は最後の方で」

2人の男が担架を持ってコロッセオへ入ってきて、ニダーを乗せて帰っていった。
真っ白の担架は、一瞬にして赤く染まっていた。

( ФωФ)「次、36番、ジョーンズ」

ニダーが救命室とやらに運ばれた事を確認すると、ロマネスクはさっきと変わらない口調で言った。
緊張に満ちた表情で、呼ばれた男が中央に降り立つ。

( ФωФ)「では始……」

(’e’)「あ、あの! ……原玉の要求がしたいんですが……」

( ФωФ)「……何の?」

(’e’)「き、金です」

種類を聞くと、ロマネスクは観客席へと足を向けた。
見ると、アタッシュケースらしき物が置いてあった。
ロマネスクがそれを開ける。中には、数え切れないほどの原玉が、等間隔に敷き詰めてあった。

( ФωФ)「ホレ」

その中の1つを取り出し、投げ渡す。
ジョーンズが慌てて受け取った。

( ФωФ)「それでは……、始め」

先ほどと同じく、枷が外れると同時に虎は飛び掛る。

(’e’;)「き、『金』の生成!」

今度は、虎の頭上に檻が生成された。
いや、されようとしている。
その間も虎は止まってくれない。

( ФωФ)(余裕、か。甘いな、虎の膂力を甘く見て、適当な檻を作れば、さっきのニダーのように)

生成が終わり、檻が虎を捕らえるべく落下するも、

( ФωФ)(そして、それを恐れ、コイツのように、あまりに大きな檻を作れば……)

(’e’;)「が……」

虎爪は、ジョーンズの胸に、十字を刻んでいた。
金の檻は、虚しく空を捕らえるのみだった。

( ФωФ)(捕らえる事さえ叶わない、と。そもそも、質量の大きい物を生成しようとすればする程、
        生成には時間が掛かると言うのにな。
        ……いかんいかん、さっさと止めねば、本当に殺されてしまう)

( ФωФ)「36番、ジョーンズ、失格。救命室へ」

ロマネスクが、やはり冷静に呟き、虎も、トドメをさす事は許されなかった。

その後も試験は続いたが、0~100番までに、とうとう合格者は出なかった。
不合格者は皆、ニダーとジョーンズと同じ轍を踏むばかりだった。
中には、檻で虎の首を挟んでしまい、捕らえるも、殺してしまう、なんて言う事もあった。

( ФωФ)「……次、101番、ギコ・ハニャーン、前へ」

( ,,゚Д゚)「お、ようやく出番か。待ちくたびれたぜゴルァ」

ギコと呼ばれたその男は、これまでの受験者とは違う雰囲気を纏っていた。
闇雲に畏れず、かと言って、無闇に驕らず。
ただ、今持てるだけの実力を、そのまま全て発揮できる心構えだ。

( ФωФ)「原玉の希望は?」

( ,,゚Д゚)「結構」

( ФωФ)「では、始め」

もう何度同じパターンで受験生を沈めてきただろうか、一直線に、虎は襲い掛かる。
それをギコは、

( ,,゚Д゚)「だーれが馬鹿正直に相手なんかしてやるかよ! 『鉄』の生成!」

横っ飛びに避けた。
そして、一瞬前、ギコがいた地面には、黒い影が写っていた。
そう、檻の影が。

( ^ω^)「おぉ! やったお!」

('A`)「へぇ、見た目によらず賢いな」

2人が感心したように呟く。
その言葉がギコに聞える筈は無いのだが、彼はガッツポーズを取って叫んだ。

( ,,゚Д゚)「ハッ……一丁あがりってのは、こういう事を言うんだよ!」

虎は檻に閉じ込められ、幾度も体当たりをするも、檻が壊れる事はなかった。
それを見て、ロマネスクは言い渡す。これまでと全く変わらない口調で。

( ФωФ)「101番、ギコ・ハニャーン……合格。上段へと戻れ」

( ,,゚Д゚)「ざまぁみやがれ! 猫公が!」

( ^ω^)「……」

('A`)「……」

中指を立てて挑発するギコの頭で、ピコピコとどこか可愛らしく、とんがった耳が揺れ動いていた。
さっさと戻るよう、ロマネスクが注意し、試験は再開される。

( ФωФ)「次は……102番、しぃ、前へ」

(*゚ー゚) 「……」

しぃと呼ばれた女の子が立ち上がり、階段を下っていく。
そして、ギコと擦れ違い、

( ,,゚Д゚)「……さっきの回避。ありゃお前にゃ無理だぞ」

(*゚ー゚) 「分かってる。……大丈夫。作戦ならあるよ」

一瞬立ち止まり言葉を交わし、また歩き出した。

( ФωФ)「原玉の希望は?」

(*゚ー゚) 「じゃぁ……、金を下さい」

ロマネスクが投げ、しぃが受け取る。やり取りは淡白そのものだった。

( ФωФ)「では、始め」

虎が飛び掛る。

(*゚ー゚) 「『金』の生成」

生成の速さにも、もちろん個人差はある。
とは言え、虎を囲んでしまうほどの金の檻を、一瞬で生成できるような者はまずいない。
だが、彼女は生成を成功させていた。虎も、動きを止めている。

何故か、彼女が類稀なる速さの持ち主だったから? 違う。

(*゚ー゚) 「このサイズの檻なら、アタシにだって作れるわ」

彼女の檻が囲っていたのは、虎ではなく、彼女自身だったからだ。
虎爪は、彼女の数センチ手前で止まっている。
虎がもがくも、その距離は変わらない。

(*゚ー゚) 「無駄だよ虎さん。諦めて、離れてくれない?」

しぃの言葉が通じる筈も無いが、ともかく虎は、しぃを保護する檻を離れた。
それをしぃは見逃さない。

(*゚ー゚)「さてもう一回、『金』の生成」

今度は時間を掛けて檻が生成され、それは悠々と虎を捕らえた。

( ФωФ)「102番、しぃ、合格。上段へ」

(*゚ー゚) 「やったぁ! ゴメンね、虎さん」

虎に話しかけ、やはりしぃもロマネスクの注意を受けた。

('A`)「度胸あるな、アイツ」

( ^ω^)「だお。でもそんな事より、いつの間にか僕達が解説役になってる件について。
       一応主人公格じゃないのかお?」

('A`)「……それが、俺達のやるべき事なんだろ」

それからは、合格者がちらほら出るようになった。
殆どはギコやしぃの猿真似で、たまにそれすら失敗して不合格、及び救命室行きとなったが。

――呼ばれる受験番号は、とうとう300台へと到達した。


( ФωФ)「次……、306番、ハイン・リッヒ、前へ」

从 ゚∀从「おぉ~っと、ようやくアタシの番かい。遅すぎて眠っちまうかと思ったぜ」

立ち上がるハインリッヒ。その口調は、どこか挑発的で、少なくとも一人称以外は、女の使う言葉遣いではない。

( ФωФ)「……下らない私語は控えるように」

从 ゚∀从「おや、こりゃ失礼しました。試験官殿」

その口調は、ロマネスクを前にしても、変わる事はなかった。
また、ロマネスクも、口調を荒げるような事はなかった。
だからこそ少し、恐ろしい。

( ФωФ)「……原玉の希望は?」

从 ゚∀从「必要ないねぇ」

( ФωФ)「そうか、ならば始めだ」

今まで取っていた一瞬の間が、今回ばかりはなかった。
猛獣は解き放たれ、その白い肌を細切れにし、朱に染めんと襲い掛かる。

从;゚∀从「オイオイ、イキナリかよ!?」

その鋭爪は既に、ハインの目前まで迫っていた。
どう考えても、檻の生成が間に合う距離ではない。

从 ゚∀从「『鉄』の生成……ってね」

直後、虎の巨躯は、宙を舞っていた。
確かに、檻の生成が間に合う距離ではなかった。

逆に言えば、檻以外の生成ならば、成功する可能性は十分にあった。そういう事だ。

从 ゚∀从「ほ~れ、どうした子猫ちゃん。かかってこいよ」

ハインの足元からは、巨大な四角柱が、斜めに生え出ていた。
虎が唸る。そして、全脚力を懸け、飛び掛ろうとし、

从 ゚∀从「『鉄』の生成」

( ゜ω゜)「えっ……!?」

それは叶わなかった。許されたのは、ただ痛々しい悲鳴を上げる事だけ。
後ろ足二本を、黒い針が貫き、釣り針の様に湾曲し、地面に縛り付けていた。
足の肉が大きく裂け、血が噴水の様に噴き出す。

从 ゚∀从「さて、もう一丁っと」

後ろ足同様に、前脚が貫かれた。
悲鳴がより一層大きなものとなる。

从 ゚∀从「殺さなきゃOKなんだろ? だったらまだまだ楽しめるってモンだ」

地面から無数の鎌が生えた。
尻尾が細切れにされ、悲鳴と共に、虎が八倒する。
釣り針が余計に食い込み、更に鮮血が噴き出た。

(;゜ω゜)「な、なんて事を……」

从 ゚∀从「つーぎーはー……、その爪、いっただきぃ!」

計二十本の爪の根元に、鉄製の糸が括りつけられる。糸の端は、ハインの足元に生成された杭へと繋がっている。
そして、それを解くほどに力は、もう虎の体には残されていなかった。
ハインが糸を強く踏みつけ、虎の爪が1つ残らず抜け、指の一本一本から血が泉のように湧き出た。

从 ゚∀从「さて、そろそろ死なれても困るし……、『鉄』の生成」

虫の息の虎を、ハインが檻で囲い、

( ФωФ)「……306番、ハイン・リッヒ、合格。……上段へ」

从 ゚∀从「いや、あ~ぶなかったわ。殺される所だったねぇ」

高らかに笑うハインに、ロマネスクが合格を言い渡す。
これまでで最長の試験が、いや、虐待が終わった。

(  ω )「な、なんであんな事……」

俯きながらブーンが零し、ドクオがそれに言葉を返す。

('A`)「……まぁ、この学校を目指す理由なんて、人それぞれだからな」

(  ω )「……しばらく、何も考えたくないお」

('A`)「あぁ……」

あれだけ凄まじい虐殺があっても、試験は当然続けられる。


いろんな者がいた。
相変わらず不合格になる者。
ギリギリで合格する者。
虎を気迫で圧倒する者。
虎を相手に肉弾戦を挑み、更に勝利する者さえいた。
ともかく、試験は止まる事無く進み――ついに時が来た。


( ФωФ)「次、901番、ドクオ。前へ」

('A`)「はい。……硫黄をもらえますか?」

( ФωФ)「硫黄? ……それでいいのか?」

('A`)「はい」

ロマネスクが投げ、ドクオ、受験生が受け取る。
もう幾度となく繰り返されたこのやり取り。
それも、終わりが近づいてきている。

( ФωФ)「では、始めろ」

呆れるほどワンパターンな虎の襲撃。
だが、これを捌けずに、落ちて行った者がいるのもまた事実。
ドクオは、どちらへ転ぶのだろうか。

('A`)「『硫黄』の生成」

ドクオの前に黄色い半透明の壁が生える。
しかし、硫黄ごときの壁で虎の体当たりを凌げる筈もなく、壁は無惨に砕け散った。
虎爪が振るわれ、それは虚空を斬った。

('A`)「一瞬、一瞬稼げりゃそれでいい。俺は大量生成は苦手なんでね」

虎が着地し、素早くドクオに向き直る。
そして、再び飛び掛ろうとし――その場に倒れこんだ。
見るとその四肢には、ネバついた液体が絡んで、糸を引いていた。

('A`)「ゴム状『硫黄』だ。硫黄にゃ3つの形状があるんでね」

虎は、絡みつくゴムを剥がすべく暴れ狂い、その分だけゴムは絡みついていった。
数分後、虎の全身は完全にゴムに絡められ、身動きを封じられていた。

('A`)「さて、『硫黄』の生成と」

虎がギリギリ囲える程度の、小さな小さな檻が作られる。
今の虎の状態を見れば、それで十分だった。

( ФωФ)「901番、ドクオ、合格だ」

特に何の感慨も無さそうに、ドクオはブーンの隣へと帰っていった。

( ^ω^)「おっおっ、やっぱりドクオは凄いお」

('A`)「べっつに。入学が目的なんだ。第一試験なんざ、通過して当然だろ」

( ^ω^)「それはそうだけど、第一試験を落ちたら第二試験は無いお?」

('A`)「……まぁな」

言葉を交わす2人。流石にブーンも、ドクオとの接し方は心得ている様子だ。
ちなみに、すぐにブーンが呼ばれていないのは、
広範囲に広がった硫黄の始末に、ロマネスクが四苦八苦しているからだ。

('A`)「あ、分解すんの忘れてたわ」

( ^ω^)「まぁ、こうして話が出来てるし、あの監督には悪いけどGJだお」

(;ФωФ)「……やっと終わった……。次、902番、ブーン、前に出ろ」

( ^ω^)「……じゃ、逝ってくるお」

('A`)「死亡フラグか、余裕だな」

( ^ω^)「緊張しても仕方ないだけだお」

ブーンが立ち上がり、一言残して中央へと降り立った。
眼前で、ブーンを餌と見なしたのか、虎は涎を滴らせ唸っている。

( ,,゚Д゚)「大丈夫か? あのピザ。まさに餌って感じだけど」

(*゚ー゚) 「ギコ君、それは酷いよ……。でも、確かに大丈夫かな……」

从 ゚∀从「……ま、死にゃしないだろ」

観客席からは、あまり良い言葉を聞えてこない。
それが聞えないのか、あるいは気にしていないのか、ブーンはあくまでマイペースを貫いていた。

( ^ω^)「原玉の希望は、ありませんお」

( ФωФ)「そうか。では、始め」

虎の枷が外れ、飛び掛る。
それは、これまで一度たりとも揺るぐ事の無かった、唯一磐石の展開。

( ^ω^)「『鉄』の生成」

900番台と言う最終段階に来て、今、その磐石が、崩された。
虎の前脚が地面から離れるより速く、空間が揺らぎ、戻り、檻が虎を囲っていた。

( ^ω^)「ふぅ」

空気が凍った。
皆が、予想し得なかった展開に、言葉を失った。

( ^ω^)「……合格、ですおね?」

ブーンが静寂を破る。
ロマネスクがハッとした様に口を開いた。

( ФωФ)「……あ、あぁ、合格だ」

( ^ω^)「ありがとうございましたお」

礼儀正しく礼をして、ブーンは観客席、ドクオの隣へと帰って行く。
それから数人が第一試験を受け、全員が合格した。
流石にこの番号まで来ると、それなりの対策を全員が練っていた。

( ФωФ)「さて、第一試験通過おめでとう。君達に「よろしく」が言える事を願っている。以上。
        ちなみに第二試験会場もここだから、落ち着いて待っていて欲しい」

それだけ言うと、ロマネスクは去っていった。

( ФωФ)「今年は……出来るかもな」

彼は何かを呟いたが、その声は風に掻き消され、ブーン達受験生には届かなかった。








この小説は2007年5月6日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:PF1oy11R0 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです


お題
・元素
・球


ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/29 22:24 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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