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('A`)ドクオが傭兵のようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




 初めて人を殺したのは、十五歳の誕生日だった。

 俺は男を埠頭まで呼び出した。
 なんとも裕福そうな身なりをした男だった。
 恰幅の良さそうな体型。良質そうなスーツ。

 俺はゆっくりと、歩を進め、男と二人、誰もいない闇夜の埠頭へと進んだ。


 そして躊躇することなく、男の後頭部を、一撃。


 鈍い音がして、男はコンクリートの地面に顔面を叩きつけた。
 うぼ、と醜い悲鳴があがる。だが俺は容赦しなかった。

 容赦したら、自分がやられる。
 誰に? この男が俺に対して抵抗することがありえるだろうか。
 否、そういう問題ではない。

 俺がこの男を殴殺する手を緩めたら、どうなるか。
 よくわかっているさ。だから俺は、ひたすら殴り続けた。

 五分後、俺は人殺しになった。



20070901212731.jpg



('A`)「――ぷはぅ」

 情けない声と共に、タバコを吹かす。
 誰がなんと言おうと、このかけ声だけは止められない。

 初春だ。
 風は心地よいし、鳥達も楽しそうにさえずっている。
 町行く子供達は笑いながら走り抜けていく。

 小学生ぐらいだろう。俺の身長の半分ぐらいしかないように感じる。
 実際俺の身長は百八十だから、半分というのはいささか誇張が感じられるが。


 ぐりぐり、とタバコをスタンド式の灰皿に押しつける。
 俺はそこで火を消してから、中の水に吸い殻を落とした。
 ジュッ、という音。

('A`)「命の蝋燭も、こんな音がするのかな」

 俺は苦笑した。
 タバコは一日一本。そう決めている。



 町行く人を眺める。

 誰もが、自分の生を謳歌している。
 死のことなんて、誰も考えてやいない。

 俺は、手首をくいっと捻る。
 ナイフを持った気持ちで手刀を構え、架空の首筋にそっと刀身を当て、くいっと捻る。

('A`)「ジュッ、っとな」

 俺の手刀は空を切る。
 子供の一人が俺の行動に気づき、首を傾げた。

('∀`)「ほら、兄ちゃん達がいっちまうぜ?」

 あせあせと、子供は前方を走る兄たちを追いかけた。
 その姿は、実に可愛らしいものだった。

 まるで、退廃した大都会に健気に咲く、タンポポだ。

('A`)「タンポポ以外に花の名は知らない」

 虚しさが去来し、俺は埠頭をあとにした。
 本日の任務を、拝命するために。



 傭兵。
 古くは古代ギリシャや、古代中国にも遡れる。

 英仏間百年戦争などでは、大いに活躍し勇名を馳せたらしい。

 そんなことは俺はよく知らない。
 歴史なんて、中学で習って以来だ。
 詳しいことは知らない。
 大昔の中東や、中国、ヨーロッパがどうだったのか。

 正直あまり興味を持てない。
 歴史に興味がある、という奴がいたら是非話してみたいものだ。

 俺が完膚無きまでに論破してやる。
 この、"傭兵"ドクオがな。


('A`)「さて、第八○一倉庫」

 俺は目の前の大きな倉庫を見上げた。
 埠頭から少し離れた地域に建設された倉庫群。
 その一棟だ。

 錆びた鉄扉が、哀愁を漂わせている。
 だが俺は、そんな廃墟じみたこの倉庫が好きだった。


「やあ、ドクオ君。遠路の殺害報告ご苦労さま」


 俺が鉄扉の脇の通用門を潜るや否や、低い声が廠内部に木霊した。
 暗さにまだ目が慣れない。
 ただ、だだっ広い空間の中に男が一人直立している。

 すらりとした長身痩躯。濃紺のワイシャツ。
 そろそろ瞳が慣れてきたらしい。男の顔が視認できる。

('A`)「モララーさん。その言い方は好みません」

( ・∀・)「ほう、我々"傭兵"一の猛者であり戦闘狂、ドクオ君らしからぬ物言いだね」

('A`)「戦闘狂ではありませんし、私ではあなたに敵いません」

 事実、俺の力では目の前の男には敵わない。
 今の俺の力では、絶対に。

( ・∀・)「――やってみるかい、ドクオ君」

 モララーはズボンのポケットから両手を抜いた。
 わざとらしいファイティングポーズを取る。

 一見隙だらけの構えだった。
 でも、俺には手が出せない。力の差は、歴然としている。

('A`)「任務は、つつがなく完了しました」

( ・∀・)「了解した。では、次の任務を命じる」

 モララーは静かに事務机の上に座った。
 胸ポケットから、カサリと一枚の三つ折りの書類を取り出す。
 するすると用紙を広げていく。指は驚くほど細い。

 モララーがちらりと、俺の方を見た。

('A`)「何か」

 いや、なんでも。とモララーは嘆息した。
 訳のわからない男だ、と俺は悩んだ。
 最初に出会ったときから、いつもこの人は謎に満ちている。

 出自も、生い立ちも、何もかもが謎。
 ただ俺の目的に協力をしてくれる、そんな人物。

 モララーという男が善人なのか悪人なのか。
 それは解らない。
 おそらくこれからも解らないだろう。
 ただ一つだけハッキリしているのは、油断できない相手だと言うこと、だけ。
 俺は唐突に、最近胸中に去来し続ける疑問をぶつけた。


 ――正しいことなのでしょうか。

( ・∀・)「……何?」

('A`)「いくら相手が悪人だからといって、隠密裡に人を殺める。 
   殺し屋家業。これは正しいことなんでしょうか」

 俺は解らない。
 初めて人を殺したときから、何かがずれてしまった。

 もちろん、人を殺すことは、悪だ。
 法律にも違反しているし、人間として許されることではない。

 だが、相手が悪人の場合、どうなるのだろう。
 弱者から金を搾取し、虐げる。人の風上にも置けない愚者。

( ・∀・)「君はただ、殺していればいい。考えるのは僕達の役目だよ」

('A`)「ただ、殺していれば?」

( ・∀・)「そうだ。何も考えるな。君はかつて、私にこういったことがあるよな」

 止めてくれ、言わないでくれ。
 俺はあのときどうかしていたんだ。頼むから、言わないでくれ。

 だが、モララーはその言葉を紡いだ。


( ・∀・)「俺は血が見たいだけなんだ」

('A`)「――、うう」

 俺は呻きを上げ、一歩二歩、その場をじりじりと退いた。
 モララーの身からは、何か異様な力が発せられている。
 そう感じた。恐ろしい、目の前の男が俺を睨む。

 じっと、獲物を目の前にした猛禽類のように。

( ・∀・)「大丈夫だ。君の仇討ちの手伝いはしてやるよ。
      そして仇討ちの敵うとき、君もまた自由だ」

('A`)「仇――討ち」

 俺の両親は、何者かに殺された。
 絶対に俺は、そいつらを。

('A`)「ぶち殺す。絶対に」

( ・∀・)「そう、その意気だ。やはり君はこうでなくてはね」

('A`)「俺はただ、血が見たい――?」

 それは、たとえば、さきほどの兄を追いかける無垢な子供であってもか。
 違うだろう。

('A`)「で、任務とは何です」

 今は人を殺す気にはなれない。
 だが同時に、一刻も早くこの場を離れたい。
 俺は矢継ぎ早に、モララーの命令をせがむ。

( ・∀・)「この少女だ。この写真の少女を確保しろ」

('A`)「確保、ですか」

( ・∀・)「そうだ。殺すな。確保しろ。しばらく身元はドクオ、おまえが引き受けろ」

 命令の意味がわからない。
 モララーは徹底した合理主義者だ。
 意味のないことはやらないはずだ。
 ということは、この一見無意味な行動にも何か意味があるのだろうか。

('A`)「了解しました」

 だが今の俺には真意を尋ねる気力もなく、ただ一枚のレポート用紙を受け取った。
 写真が載っている。黒髪の可愛らしい少女だ。ただ、少し幸薄げである。
 たぶん十七八、高校生ぐらいだろう。

( ・∀・)「では、よろしく。私はこう見えても多忙でね」

 俺はもう何も言わず、第八○一倉庫を後にした。



 俺は再び、市街地へと進んだ。
 それでもまだ潮の風が強い。

 典型的な港町の風景。
 巨大な陸橋が、離島へと続いている。
 見上げれば何十台もの車。

('A`)「だあ、疲れるなあ」

 俺は首をごきごき鳴らした。
 町行くサラリーマンが、俺の姿を見る。
 睨み返すと、すぐに男はそそくさと去っていった。

 俺はそれほど恐ろしい表情をしていたのだろうか。
 少し睨んだだけなのだが。

 煙草を口に銜え、火を付ける。
 しかし、どうやってあの少女を捜すか。

('A`)「……しまった」

 煙草を吐き捨て、革靴の裏でつぶす。
 最悪だ。
 二本目の煙草、吸っちまった。



 本当に突然のことだった。
 俺はその後何気なく自販機でコーヒーを買い求め、ベンチに座っていた。
 プルトップをぷしゅっと開け、ブラックのコーヒーをぐいと喉に流し込んだ。
 その次の瞬間。



('、`*川「――、あの、すみません」



 少女だった。
 黒髪を棚引かせた、幸薄げな少女が、俺の前に突っ立っている。

('A`)「なんで?」

 思わずそう呟いていた。
 都合の良い展開だ。
 いや、都合良すぎる。
 誰かが裏で操っているとしか思えない。

 俺の求める少女が、目の前に直立しているなんて


 彼女、ペニサスは俺の隣に腰掛けた。
 なんだこの女は。思わず俺は訝る。

('A`)「で、どうしたの」

 ペニサスにジュースを買ってやったが、飲む気配はない。
 両手で弄び、何か言い足そうに俯くだけだ。
 言いたいことがあるのなら、早々に言ってほしいものだ。

 傭兵として、速やかな情報把握は重要技能なのだ。

('∀`)「話して、ごらん」

 自分で言うのは何だが、俺はあまり女としゃべるのは得意じゃない。
 このことは、年齢に関係が――、ああ老婆としゃべるのは得意だな。

 若い女との会話は、どうも得意になれずにいる。
 俺は慣れない口調で、ペニサスの独白を促した。

('、`*川「お願いが、あります」

 ようやく少女は語り始めてくれた。
 彼女の身の確保、同時に安全の確保となれば彼女の現在の状況を確認するのが急務。
 だが、しかし。彼女の願いは、俺の想像を著しく超えたものだった。
 誰がこんな願いが少女の口から発せられるなどと、想像できようか。



 聴覚は言葉を捕らえたが、脳が言葉を処理しない。

('A`)「――、何?」

('、`*川「ですから」

 ペニサスは今度はすっと立ち上がり、一歩、俺の眼前に直立した。
 茶色の双眸が俺の目を捕らえて放そうとしない。
 しばらく、俺とペニサスは見つめ合った。



('、`*川「私を、殺して下さい」



 常識的に考えろ。
 だれが殺し屋に殺してくれと頼む。
 もっともペニサスは俺が殺し屋だとは知らないはずだ。
 以前に俺がペニサスを探しているということも、知らないはず。

 つまりペニサスは、見ず知らずの他人に、何というか自殺幇助を願い出ているのか。


('、`*川「ダメ……ですか」

 いや、ダメというよりね。と俺は眉間に皺を寄せた。
 むむむ、と呻る。

('A`)「詳しい話を、聞かせてくれないか。
   何か君の力に、なれるかもしれないから」

 おかしかった。
 あってはならないことだった。
 目標の情報の過度の入手。目標への思い入れ、感情移入。
 どれも最終的な任務の遂行、つまり目標の殺害を阻害するものだ。

('A`)「ま、気にしないさ」

 ペニサスは俺のつぶやきに首を傾げた。
 座って、と隣の席に手を添える。ペニサスは静かに従った。
 楚々とした動作が可愛らしい。育ちも良いようだ。
 さぞかし両親に愛されて育ったのだろう。

('∀`)「ご両親は? 心配してるんじゃない?」

('、`*川「両親ならいません」


 ――昨日、死にました。

 俺は、なんて空気が読めない奴なのだろう。


('A`)「ごめん、悪いことを聞いたかな」

('、`*川「いえ、いいんです。気になさらないで下さい」

 どうにも、バツが悪い。
 俺だったら軽く相手を睨み付けているだろう。
 その点、ペニサスは落ち着いていた。

 だが、ペニサスの瞳を見たとき、俺は全身から冷や汗が吹き出すのを感じた。
 なんだ、この眼は。




('、`*川「ぶち殺す。絶対に」




('A`)「え?」

('、`*川「いえ、何でもありません。お騒がせしました。
     また、何処かでお会いできると良いですね」
 
 ペニサスはものすごい勢いで捲し立てる。

('A`)「え――、あ、ちょ」

 ペニサスは立ち上がり、ぺこりとその場で一礼した。
 俺が呼び止めるのを振り切るかのように、この場を後にした。

 立ち上がり、ペニサスの方へ手を伸ばした。
 だが、それだけだ。
 追いかける事なんて、出来るわけがなかった。

 あんな、瞳を見せつけられては。

 恐ろしい、呪いを込めた瞳だ。
 久々に見た。
 以前何処かで見たことのある瞳だった。
 だが、どこでだろう。思い出せない。
 妙に引っかかる。
 俺は何か心に、大切なものを感じたはずなのに。

 潮風が、強まっている。
 天候が変わるのだろうか。俺に気象のことは解らない。
 だがもっと解らないのは、ペニサスの心だ。

 最も忌避すべき気持ちが、心の中に充ち満ちていくのを感じた。


('A`)「知りたい」

 好奇心が、野次馬心が、疼く。
 彼女のことをもっと知りたい。彼女がおかれている現状を見てみたい。


('A`)「追いかける、か?」

 心の中で冷静に相談する。
 だが、その感情はどうも抑えきれない。
 幸薄げな少女の後ろ姿が、いつまでも俺の心に残っている。
 不意に、俺の手が、何かに触れた。

 ペニサスの残した、まだその温もりの残るジュースだった。
 まだ、封も切られていない。
 俺は缶を手に握ると、やおら立ち上がった。

('A`)「追いかけるか。たまには、命令違反も――」

 いいかもしれないな。

 俺の中に目覚めた忌避すべき感情、ペニサスへの"興味"。

 それを押さえ込むには、あのモララーからの命令状はあまりにも薄っぺらなものだ。
 俺はゆっくりと、ペニサスが逃げた方向へと歩き始める。
 強まる潮風を、その背中に感じながら。



(終)






この小説は2007年4月22日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:S7foQEOz0 氏



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[ 2009/12/29 22:14 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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