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( ^ω^)ブーン達はカルテットなようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




ボロボロの旧校舎の一番上の階の端っこ。

調律のされていない古ぼけたピアノがひとつあるだけのちっぽけな音楽室。

そこが僕らの活動場所だ。



( ^ω^)「おいすー……お?」


いつものように音楽室の扉を開ける。

でも僕のあいさつは誰に届くことも無く、無駄に音の響く音楽室にこだました。


( ^ω^)「……そうか、今日からは僕が一番乗りなんだ」


まだ誰もいない朝の音楽室。

それは新鮮だったけど、やっぱりどこか寂しげで。

今日ここにいない彼女は、毎日どんな想いでいたんだろう。

僕は一人、そう思った。


持ってきたケースからヴァイオリンを取り出す。

適当にチューニングして、僕はお気に入りの曲を弾きはじめる。

それはエルガーの「愛の挨拶」。


でも僕の弾くこの曲には旋律が無い。 旋律は彼女のものだから。

今はここにいないけど、僕が伴奏を弾けば自然と耳に聴こえてくる。

彼女の外見や性格とは裏腹な、柔らかくて、やさしい音色。


( ^ω^)「……ヘタクソだお」


今まで毎朝、何十回、何百回とやってきたこの曲を一人で弾き終え、僕はちょっとだけ泣いた。


('A`)「よう。 ……来てたのか」


扉の開く音に振り向くと、そこにはドクオがいた。


( ^ω^)「……おいすー」


僕はとっさに涙をぬぐい、やっぱりいつものようにそう言った。


('A`)「習慣ってこえぇよな。 意味ねぇってわかってんのにここに来ちまった」


( ^ω^)「……まったくもって同感だお」


ドクオは自分のヴィオラを出すわけでもなく、ただ椅子に座って僕の演奏をぼーっと眺めていた。

僕もただぼーっと頭に浮かんでくる曲を弾きつづけていた。


川 ゚ -゚)「やぁ」


しばらくそうしてると、クーさんが顔を出した。

……まったく、この人は遅刻までいつもどおりだ。


川 ゚ -゚)「……私が三番目か」


ともあれ全員が揃った。

ほんとは全員じゃないけど、全員が揃ってしまった。


川 ゚ -゚)「これからのことだが」


揃ってからも皆が合わせることもなく、思い思いに過ごしていた。

だけどそんな時間もクーさんの一言で終わりを告げる。


川 ゚ -゚)「やっぱり解散……なのか?」


( ^ω^)「……」

('A`)「……」


沈黙。

たぶん皆が同じことを考えていたんだろう。

でも言葉にしてみると、一気に現実が重くのしかかってきた。



ツンが───転校する。



川 ゚ -゚)「……すまない。 まだ聞くべきではなかったかな」


( ^ω^)「…いえ」


川 ゚ -゚)「ともあれ私は君達の意向に従うよ」


それだけ言うと、クーさんはカバンとチェロのケースを持って立ち上がる。


川 ゚ -゚)「また明日。 答えを聞かせてくれ」


クーさんは現実を直視できない僕らを置いて、音楽室を出て行った。


('A`)「……俺も帰るわ」


その後を追うようにドクオも出て行く。


音楽室にはまた、僕一人。

二度目の、僕一人。




1_20091229215126.jpg




推奨BGM 愛のあいさつ




楽器は好きだけど、みんなは嫌いだ。

僕は中学時代、管弦学部に入っていた。

別にいじめられていたわけじゃないけど、僕はその文化部特有の馴れ合いが気持ち悪かった。

だから高校では楽器を辞めた。


暇ができて、友達も増えた。

ゲーセンに行ったり、街をブラブラしたりして、毎日それなりに楽しかった。

でもなぜか胸にぽっかりと穴があいていたんだ。


彼女と出逢ったのはそんな時だった。

誰もいない早朝の校舎。

たまたま早く起きて学校に行った僕は、聞き覚えのあるメロディーを耳にする。

そう、これは確か……


( ^ω^)「エルガーの「愛の挨拶」……」


僕はそのヴァイオリンの音色をたどって探し回った。

でも校舎のどこを探しても見つからない。

音が近づいたり遠ざかったりを繰り返す。


もうあきらめようかと思った時、まだ探していない場所があることに気がついた。

旧校舎だ。

僕は最後の望みに向かって走っていった。



ボロボロの旧校舎の一番上の階の端っこ。

調律のされていない古ぼけたピアノがひとつあるだけのちっぽけな音楽室。

そこに彼女はいた。


2_20091229215126.jpg



僕が扉を開けた音に気付き、彼女は演奏をやめ、こちらを向く。

人形みたいだ。

それが僕の第一印象だった。 まぁその第一印象はすぐに崩れることになったんだけど。

ξ ゚⊿゚)ξ「…何かご用?」


ブロンドの巻き髪と美しい白い肌の少女は、想像通りの澄み切った声でそう言った。


( ^ω^)「よろしくおねがいしますお!!」


ξ ゚⊿゚)ξ「…………はい?」


僕は困惑の表情を浮かべる少女を尻目に、旧校舎の音楽室を後にした。



退屈な授業を終えた放課後、僕は中学時代にお世話になっていた楽器屋に久しぶりに訪れた。

目当てのものはすぐ見つかり、猛ダッシュで家に帰る。


僕は押入れから埃まみれのヴァイオリンケースを引っ張り出し、中身を取り出す。

古くなっていた弦を新品に張りなおし、買ってきた楽譜を開いてすぐさま練習を始めた。



「愛の挨拶」の2ndヴァイオリンを。



翌日。

僕は再び旧校舎の音楽室を訪れた。

昨日と同じ位置に彼女がヴァイオリンを構えて立っている。


( ^ω^)「おいすー」


ξ ゚⊿゚)ξ「? ……昨日の?」


( ^ω^)「僕は内藤ホライゾンと言いますお。 ブーンと呼んでくださいお」


僕は自己紹介もそこそこに、ケースからヴァイオリンを取り出して彼女の隣に立つ。


( ^ω^)「それじゃ始めましょうかお」


ξ ゚⊿゚)ξ「は? な、なにをですか?」


( ^ω^)「もちろん、「愛の挨拶」ですお」


後でツンと名乗った彼女はしばらく呆然としていたけれど、僕のお願いを理解できたらしく、
ヴァイオリンを構えてくれた。


あれはどれぐらいの長さだっただろうか。

永遠とも一瞬とも思える静寂の後、彼女が僕を見た。

ワン、トゥーといった合図に呼吸を合わせ、僕らは同時に弓を引く。



だけど僕らの記念すべき最初の「愛の挨拶」は、最初の四分音符で終わった。


ξ ゚⊿゚)ξ「ヘタクソ」


それはそれは痛烈な一言と共に。


ξ#゚⊿゚)ξ「いきなり1stより2ndのほうが大きな音出すってどういうことよ!!」


何がお気に召さなかったのかまったくわからなかった僕に、容赦なくダメだしする。


(;^ω^)「す、すまんお。 ちょっとブランクがあったもんで……」


ξ#゚⊿゚)ξ「ブランク? そんなもん関係ないわよ! 常識よジョウシキ!
       音楽やってなくたってわかるわよそんなの!!」


僕より大分背の低かった彼女は、下から思いっきり睨みつけて激を飛ばす。


ξ#゚⊿゚)ξ「もっかい行くわよ!」


ついさっきまでドラマみたいだったのに、と落ち込む僕を無視して、彼女は進めようとする。


(;^ω^)「こ、今度はちゃんとやるお」


再び息を合わせ、演奏を始めたんだけど……





ξ#゚⊿゚)ξ「だあぁぁぁぁぁぁ!!!」


僕らの記念すべき2回目の「愛の挨拶」は、一小節ももたなかった。



気がつけば外は赤く染まっていた。

ツンは授業が始まっても気にする様子も無く、何度も同じところを繰り返した。

一曲全部通す頃には授業は全て終わり、生徒の大多数は下校している時間だった。


ξ ゚⊿゚)ξ「ブーン、ジュース買ってきて」


(;^ω^)「ちょwwwいきなりパシリかおwww」


ξ ゚⊿゚)ξ「あたりまえよ。 授業料よ、じゅーぎょーうーりょーう」


(;^ω^)「……」


僕らはいつの間にかすっかり打ち解けて(打ち解けたって言えるのかはわからないけど)、笑いあった。


( ^ω^)「アンサンブルなんて初めてだったけど、気持ちよかったお」


大の字に寝転びながら僕がそう言うと、彼女も隣に寝転ぶ。


ξ ゚⊿゚)ξ「私もひさしぶりに楽しかったわ」


それからしばらく、ツンとの奇妙な関係が続いた。

早朝と放課後、あの音楽室でアンサンブルをする。

いろんな曲をやったけど、最初と最後は必ず「愛の挨拶」。

それが僕らの決まりだった。





('A`)「おい、ブーン」


アンサンブルを終えてツンと帰っている途中、聞きなれた声に呼び止められる。


( ^ω^)「ドクオかお。 おいすー」


僕は右手を上げて答えたけど、ドクオは僕ではなく隣のツンを見ていた。


(;'A`)「お、お前……まさか……!」


( ^ω^)「……すまないおドクオ君。 一足先に大人の階段をぶへぁ!!」


言い切る前に僕の頬に何かがめり込む。 それがツンの拳だと気付くのには数秒を要した。


ξ#゚⊿゚)ξ「ふん」


(;'A`)「その様子じゃ違うみたいだな……」


痛みに悶える僕を横目にドクオがそう言う。

すると今度は僕らの持つヴァイオリンケースに目を向けた。


('A`)「……何お前。 管弦楽部にでも入ったんか」


ドクオは不機嫌な顔で聞いてきた。


ドクオは僕の中学の頃からの友達だ。

同じクラスで同じ部活、趣味も同じ。

高校も同じになれば、楽器を辞めたのも同じ。 理由も同じ。

出会ってからたかだか三年とちょっとしか経ってないけど、十分に腐れ縁だった。


だからドクオが不機嫌な顔してる理由もすぐわかった。

( ^ω^)「アンサンブルだお」


その言葉を聞いて、ドクオは不機嫌な顔を呆けた顔に変えた。

僕が事情を説明すると、その顔はさらにもう一転、新しいおもちゃを見つけたような顔になる。


('A`)「俺もまぜろ」


( ^ω^)「おk」

ξ ゚⊿゚)ξ「ちょwww」


ツンは僕に抗議の視線を向ける。


( ^ω^)「大丈夫だお。 ドクオは元ヴィオラ奏者だお」


('A`)「元じゃねぇ、現役だ。 お前と違って練習は欠かしてないさ」


ヴァイオリン、チェロといったソロ楽器と比べ、ヴィオラ人口は極端に少ない。

そのヴィオラ奏者が見つかるなら、次の目標はおのずと見えてくる。


( ^ω^)「あとはチェロだお!」


('A`)「まぁヴァイオリンとヴィオラじゃたいしたことできないからな」


ヴァイオリン二梃、ヴィオラ、チェロ各一梃で構成される、弦楽アンサンブルで最も一般的な形、カルテット。

気の知れた仲間だけで作り上げる調和。

それはどれほど素晴らしいことだろうか。


ξ ゚⊿゚)ξ「……まったく、勝手なんだから」


ツンも言葉とは裏腹に声が弾んでいる。


( ^ω^)「それじゃあ作るお!」


僕は右手を天に突き出し、高々とこう言った。




( ^ω^)「僕らのカルテットを!」




それから2週間が経った。

朝と放課後のアンサンブルにドクオも加わり、少し活気が出てきた。

でも肝心のチェロ奏者は見つからない。

ドクオはああいったが、そもそも僕らの学校に管弦学部なんて無いわけで。


( ^ω^)「……」


そんなことで頭をいっぱいにしながら、授業も聞かず外を眺める。

外は快晴。 梅雨も終わり、これから夏を迎えようとしていた。

校庭を周回する上級生(主に女子)を見つめていると、視界の端に奇妙な影が映る。


校門をくぐる、黒くて大きな瓢箪。


(;^ω^) (…ドクオ! 起きるお!)


僕は前の席で突っ伏して寝てるドクオを起こす。


('A`) (………んー? なんだよ)


ドクオは目を擦りながら僕の指差す所に目をやる。


('A`)「……………………」


( ^ω^)「……………………」


(  ^ω^) ('A` )




( ゚ω゚ ) ( ゚A゚ )




(`・ω・´)「おいお前達。 授業中だぞ……っておい! どこへいくんだ!」


僕とドクオは先生の制止を無視して、教室を後にする。

僕らが廊下に出ると同時に、隣のクラスからツンが出てくる。


( ^ω^)「ツン!」


ξ ゚⊿゚)ξ「わかってる! 行くわよ!!」





( ^ω^) 「
ξ ゚∀゚)ξ      チェロだああぁぁあぁ~~~───っ!!!
('∀`)                                     」


僕らは階段を一気に飛び降りる。

踊り場で派手にころんだドクオを見て、僕とツンは笑いころげる。

ドクオは恥ずかしそうに「早くいこーぜ」って言ったけど、やっぱり笑っていた。


今が授業中だということも忘れて、僕らはとにかくはしゃぎ回る。

靴も履き替えずに昇降口を駆け抜け、全速力で外へ飛び出した。


( ^ω^)「いたお!」


('A`)「び…美人だ……」


大きなチェロケースを背負った女の人。

僕らはその人に駆け寄る。


川 ゚ -゚) 「……ん?」


(*^ω^) 「
ξ*゚⊿゚)ξ    僕(わたし)達とカルテットを組んでください!
(*'A`)           そして俺と結婚してください!          」


3_20091229215126.jpg



チェロを背負った女の人は目を真ん丸くした。

それはそうだろう。 初対面の3人からカルテットに誘われ、あげくの果てに求婚されたのだから。


長い沈黙が訪れる。

ダメかな…と思った直後、その女の人はクスッと笑って「いいよ」と言ってくれた。


川 ゚ー゚) 「面白そうだね君達。 私も仲間に入れてもらおうかな」


僕らは顔を見合わせる。





(*^ω^) 「
ξ*゚∀゚)ξ        ぃやったああぁぁあぁ~~───!!!
(*'∀`)                                       」


僕らは騒いだ。

ハイタッチしたり、握手したり、ツンに抱きついたり、ツンに殴られたり。

何もかもが可笑しくて、ただ嬉しくて。


川 ゚ー゚) 「……やれやれ。 どうやら詳しいことは明日になりそうだな」


彼女は子供のようにはしゃぐ僕らにそう言った。

同時に校舎のほうから先生の声が聞こえてくる。


ξ ゚⊿゚)ξ「……あ”」


( ^ω^)「……そういえば」


('A`)「……授業中だな」


(#`・ω・´)「おぉ まぁ えぇ らぁ~~!!!」


ものすごい形相で走ってくる先生に焦る僕達。

そんな僕達を可笑しそうに笑いながら彼女は名前を教えてくれた。


川 ゚ー゚) 「私は2年F組のクーだ。 明日の放課後、呼びに来てくれるのを待ってるよ。」


先生に連行されていく僕らに「それじゃあ」と手を振って、クーさんも去っていく。

その後僕らは授業に戻り、放課後、職員室で再会した。

先生のありがたいお話は3時間も続いたけど、誰一人そんなの聞いちゃいなかった。

だってそうだろう? 明日からとうとう始まるんだ。




───僕らのカルテットが!



翌日の放課後、僕らはクーさんを迎えに2年生の教室まで向かった。


川 ゚ -゚) 「やぁ君達。 待たせたね」


F組の前で待っていると、しばらくしてクーさんが出てきた。


ξ ゚⊿゚)ξ「…あれ? 今日はチェロは持ってきてないんですか?」


川 ゚ -゚) 「流石の私も教室にチェロは持ってこないさ。 私のチェロは音楽室に置いてある。 心配は無用だ」


('A`)「音楽室って……こっちのですか?」


こっちとは新校舎のことだろう。

大して設備が充実しているわけではないが、旧校舎のよりは造りがしっかりしている。


川 ゚ -゚) 「いや旧校舎だよ。 君達はそこで活動しているんだろう?」


それをあっさりとクーさんが否定する。

でも何で知っているんだろう?


川 ゚ -゚) 「実は以前から気になっていたんだよ。 旧校舎から聴こえてくる音色がね。
      それで昨日、見に行ってみようと思っていたんだ。
      ……まさか君達から誘ってくれるとは思っていなかったけどね」


ξ ゚⊿゚)ξ「そ、そうだったんですか……」


なんだかちょっと恥ずかしかったけど、僕らの演奏を気に留めてくれる人が居たことが純粋にうれしかった。


川 ゚ -゚) 「最初に君達の演奏が聴きたいな。 もちろん私の演奏も聴いてほしい。 大した腕ではないけどね。」


( ^ω^)「はいですお!」


僕ら4人は旧校舎の音楽室に向かって歩き出した。




( ^ω^)「…………」

ξ ゚⊿゚)ξ「…………」

('A`)「…………」




川 ゚ -゚) 「……どうかな?」


クーさんが演奏を終え、止まっていた時間が動き出す。


('A`)「……ぶ、ぶらぼー」

ξ ゚⊿゚)ξ「……鳥肌たっちゃった」


クーさんが演奏してくれたのは、J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」だった。

チェリストなら殆どの人がレパートリーに加えているだろうこの曲。

僕もドクオも、おそらくツンもこの曲を演奏するチェリストを何人も見たことがある。

だけどクーさんはその誰より高いところにいた。

精確で美しい指使い。 大胆さと繊細さを併せ持つ表現力。

そして何より音楽に対する情熱。

クーさんが最初の一音を奏でたその瞬間から、僕らはクーさんの世界に惹きこめられていった。


川 ゚ -゚) 「そういわれると少し照れるな」


( ^ω^)「でも本当にうまいですお」


僕らの心からの賞賛に、クーさんも少し赤くなっていた。


ξ ゚⊿゚)ξ「でもこれほどの腕を持っているのにどうしてわたし達のカルテットに?
       演奏する場所ならいくらでもあったんじゃないですか?」


ツンのその問いに、クーさんは少し考えるようなしぐさを見せる。


川 ゚ -゚) 「楽しそうだったから……かな」


ξ゚⊿゚)ξ「え?」


川 ゚ -゚) 「私はきっと、君達の演奏に惹かれたんだと思う。 放課後に聴こえてくるあの楽しげな演奏にね」


クーさんは続けた。


川 ゚ -゚) 「君達はもちろん音楽が好きなんだろうが、
      それ以上に仲間と一緒に音楽を作ることが好きなんじゃないかな?
      君達の演奏からはそういったものを感じるんだ。 だからそれに惹かれた、そういうことだと思う」


「自分でもよくわからないけどね」と言ってクーさんは笑った。


川 ゚ -゚) 「あらためてお願いしたい。 私を君達のカルテットに入れて欲しい」


( ^ω^)「……もちろんですお!」




ボロボロの旧校舎の一番上の階の端っこ。

調律のされていない古ぼけたピアノがひとつあるだけのちっぽけな音楽室。

この日、そこで僕らはカルテットになった。

それからは毎日が一瞬で過ぎていった。

朝、音楽室に行けばツンがいて、いつものように二人で合わせる。

放課後になれば4人で集まって、曲を合わせたり、音楽の話に華を咲かせたりした。




いろいろなことがあった。

クーさんの家が音楽一家で、夏休みにみんなで演奏しにいったこと。

いつのまにかドクオとクーさんが付き合い始めていたこと。

朝、ツンより早く音楽室に行こうとしても絶対勝てなかったこと。

クーさんが実は遅刻常習犯で、進級のために朝も全員集まるようになったこと。

みんなで文化祭をサボって音楽室で合わせていたら、人が集まってきて演奏会になっていたこと。

大晦日に第九のコンサートを見に行ったこと。

その帰り道、4人で合唱したこと。

気付いたらドクオとクーさんがいなくなっていたこと。

残された僕とツンで、手をつないで帰ったこと。


4_20091229215125.jpg



僕らは間違いなく青春を謳歌していて、これからもこんな毎日が続くのだろうと本気で思っていた。




だけどそんな日々は唐突に終わりを告げた。




( ^ω^)「おいすー」


いつものように音楽室の扉を開ける。

外まで聴こえてくる「愛の挨拶」が止み、ツンが僕のほうを向いた。


ξ ゚∀゚)ξ「おはよう、ブーン」


ツンは弾んだ声で僕にあいさつする。


( ^ω^)「なんかいいことでもあったのかお?」


ξ ゚∀゚)ξ「そ、そんなことどうでもいいでしょ? さぁ早く準備しなさい! 合わせるわよ!」


僕は急かされるままに楽器を取り出す。

ツンが妙にハイテンションな理由が気になったけど、ともかくツンの隣に並んだ。

呼吸を合わせ、気持ちを合わせる。

ツンと僕で、何十回、何百回と合わせてきた「愛の挨拶」。

だけど今日の演奏は今までと違っていた。

うまく言葉にできないけど、「気持ちが篭められていた」って言うのだろうか。

演奏の間、僕らは外界から切り離され、二人だけの世界に居たんだ。

ファンタジーだって笑われるかもしれないけど、それだけの演奏ができた。



( ^ω^)「……ふぅ」


演奏が終わり、肺に留めていた空気を吐き出す。

隣のツンは目を閉じていて、演奏の余韻に浸っているようだった。



ξ  ⊿ )ξ「……素敵だったわ」


( ^ω^)「……僕もそう思うお」


ξ  ⊿ )ξ「ブーン、上手くなったわね」


( ^ω^)「マジかお!? いやぁ今のは我ながら神が降りてたとしか思えないおwww」


ξ  ⊿ )ξ「これなら、私がいなくなっても大丈夫かな?」





( ^ω^)「…………え?」


今……なんて?


( ^ω^)「泣いて……いるのかお?」


ふいに香る、甘いコロンの匂い。

唇に触れる、やわらかい感触。

目の前で零れ落ちる、好きな女の子の、涙。


ξ ー )ξ「さよなら」


止められた、僕の時間。



ツンは逃げ出すように、音楽室を出る。


('A`)「おいツン! お前転校するってほんとか!」


ξ  ⊿ )ξ「──っ!」


ツンと同時に音楽室の扉を開けたドクオの言葉を無視し、走り出す。


('A`)「おい! 待てって! ツン!」


川 ゚ -゚) 「……」



小鳥の鳴き声が聞こえる。

カーテン越しの朝の日差しと、肌を刺す冷たい空気に、僕は目を覚ました。


( ´ω`)「……夢かお」


いっそ夢ならよかったのに。

いっそ覚めなければよかったのに。


悲しみが僕の心を支配する。

一昨日の出来事が何度も頭に浮かんでくる。

ツンのヴァイオリン、ツンの感触、ツンの言葉、ツンの泣き顔。

全てが僕を縛り付けた。


僕は学校に向かった。

音楽室には行かなかった。

きっと行っても誰もいない。

今、あそこでやれることはもう無いだろうから。


放課後、隣のクラスを覗いてみたけど、ツンの姿は無い。

引越しの準備があるから、次に学校に来るのは1週間後だそうだ。


僕は気付けば音楽室の扉の前に立っていた。

いやはや、習慣というものは本当に恐ろしい。


( ^ω^)「……おいすー」


誰もいない音楽室で、僕の声がこだました。



('A`)「……よう」

川 ゚ -゚) 「……」


ピアノの前でぼーっとしていると、ドクオとクーさんがやってきた。


川 ゚ -゚) 「話を……しようか」


3人で向き合ったまま、誰も言葉を発しない。

誰も答えなんか持っていない。

ただ時間だけが過ぎていく。


('A`)「……なぁ」


ドクオが口を開く。


('A`)「これからのこと、ずっと考えてたけど、やっぱわかんねぇよ。
    だけどさ、今一番辛いのって、俺らじゃねぇよな。 1人になるのはあいつなんだよな」


再びツンの泣き顔が浮かんでくる。


('A`)「だから今は、あいつを笑顔にしてやることだけ考えようぜ。 俺らのことはその後でいい」

( ^ω^)「ドクオ……」


普段は不真面目で何に対してもやる気が無いドクオ。

そんな僕の親友が見せる真剣な顔は、どんなイケメンよりもかっこよかった。


川 ゚ -゚) 「笑顔にする、か……確かに最後に見るあの子の顔が泣き顔なんて嫌だしな。
      だがどうする?」


そのとき僕に名案が浮かんだ。




( ^ω^)「曲を、贈ろう」


ツンの為に、4人の為に。





( ^ω^)「僕らが僕らであり続けるための、誓いの曲を」





それから僕達は一生懸命曲を作った。

ツンの笑った顔を浮かべながら、時に合わせ、時に話し合う。

作曲の知識なんてまったく無かったけど、ツンへの想いは自然と形になっていった。





そして訪れた別れの日。

クラスで最後のあいさつを終えたツンを呼び出し、音楽室へ連れて行く。


久しぶりの、4人揃った音楽室。


ξ  ⊿ )ξ「これで、最後なんだね……」


ここに来るまでの間、ずっと下を向いていたツンが、震えた声でそう呟く。


ξ  ⊿ )ξ「ごめんね、みんなにこんな思いさせて」

ξ  ⊿ )ξ「わたしは遠くに行っちゃうけど、みんなはこれからも仲良しでいてね」



うつむき、ただ悲しむツン。

そんな彼女の前に楽器を持って並び、僕達は呼吸を合わせ、意識を合わせる。



ツンの口から吐き出される悲しい想いをかき消すように、音楽室は和音に包まれた。



僕の想い、ドクオの想い、クーさんの想い。

それぞれの想いがハーモニーとして溶け合い、ツンをやさしく包み込む。


僕らがツンを想って作り上げた、主旋律のないこの曲。

その曲をツンを想って奏でる。


ツンの笑顔が見たい。

ただそれだけを願って。

そんな時間が永遠に続けばいいと思ったけれど、この曲も最後の和音を唄いきった。

全ての音が止む。

人生の中で最も濃い2分17秒が終わった。


僕らは、未だ顔を上げようとしないツンに語りかける。


( ^ω^)「……この曲のタイトルは、絆。 「絆のためのカルテット」、だお」


('A`)「まぁ聴いての通り、この曲は未完成だ。 なんてったって旋律がねぇんだからな」


川 ゚ -゚) 「…そしてこの曲を完成させるのは、君だ。 ツン。
      君は私達のカルテットの1stヴァイオリンなのだからな」


ツンの肩が震えている。


('A`)「ヴァイオリンがこいつ一人じゃ華がねぇからな。 ……早く帰ってこいよ」


( ^ω^)「非常に失礼な話だけどまったくもってその通りだお。 1stはツンじゃなきゃだめだお」


川 ゚ -゚) 「この曲がある限り、私達はカルテットだ。 いつまでもな」


ξ^⊿^)ξ「……うん!」


僕らの記憶に残る最後のツンの顔。


それは涙でぐちゃぐちゃだったけど、これ以上は無いってぐらいの、そんな笑顔。


僕らもきっと、そんな顔をしていた。





離れていても、想いは繋がる。






僕らのカルテットは、終わらない。






─── end...















数年後……








「お、おい! これって不法侵入じゃねぇか!?」


「知るかお! この場所じゃなきゃ意味ねーお!」


「懐かしいな、ここも」


「そうですね……ほんと、変わってない……」



僕らは呼吸を合わせ、意識を合わせる。


ボロボロの旧校舎の一番上の階の端っこ。

調律のされていない古ぼけたピアノがひとつあるだけのちっぽけな音楽室。

僕らの誓いは、その場所で果たされる。



柔らかくてやさしい、素敵な旋律を乗せて。




5_20091229215125.jpg





( ^ω^)ブーン達はカルテットなようです    ~fin~







この小説は2007年5月12日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は◆q5YwUlmw7k 氏
BGMの愛のあいさつは ラインムジークさん さんよりお借りしています


ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/29 21:57 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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