はじめてブーン系小説を読む方は
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--ドスン ガスン
うす暗い部屋の中、木製のドアを硬質な何かが叩く音が響く。
ミルナ君の心臓の鼓動が速くなっていくのが、抱きついている私にまで伝わってくる。
バリッ!バリバリ!
ドアの真ん中が裂け、大きなナタの先端が飛び出した。
从'ー'从「……もう最後の最後になっちゃったけどね」
( ゚д゚ ) 「ホントに嬉しいぜ。最後まで付き合ってくれるなんてなぁ・・・ククク」
从'ー'从「あは、嬉しいね、あははは……でもね…できたらこっち、みないで」
( ゚д゚) 「……ちぇっ…わかったよ」
私がそんな風に言ったのは、ミルナ君にボロボロの泣き顔を見られたくなかったから。
--バスン!…バキバキバキ!ドーン!
とうとう、ドアが破られた。ミルナ君の体に緊張が走る。
川д川「……」
血染めのナタが月明かりを受け、ギラリと光る。私たちに待つのは……
~~~~~~~~~~~~~
从'ー'从「わあっ、綺麗な川!」
私たちは、ショボン先輩の運転する4WDに乗って山道を進んでいた。
(´・ω・`)「埴帆川だね」
( ゚д゚) 「おおっ、これが日本屈指の清流」
从'ー'从「ねぇねぇ!釣り人がいるよー?お魚いるのかなー」
川 ゚ -゚)「そういえば貞子が昔、『この時期は鮎の旬』だと言っていた」
私たち4人は、中学校のときからのお友達。
向かう先は、これまた中学時代からのお友達、内藤君の経営する旅館だ。
川 ゚ -゚)「なあショボン…結局、『貞子の初恋の相手』って、誰だったんだ?」
(´・ω・`)「さあ…でもあのときのメンバーのうち、男三人のどれかなんだろうな」
貞子というのは、中学を卒業してすぐに川で溺れ、亡くなってしまった同級生のこと。
「初恋の相手にプレゼントをあげる」って言い残したまま、それっきり。
( ゚д゚) 「ショボンかオレか、内藤か…今度こそ、はっきりすればいいな」
川 ゚ -゚)「渡辺は相談を受けていたようだが、本当に心当たりないのか?」
クー先輩が、話を私にふってきた けれど、
从'ー'从「えっ……私、知らない……」
私は本当に知らない。私も……結局、教えてもらえなかったんだ。
- - -
旅館についた私たちを、内藤君の笑顔が出迎えた。
( ^ω^)「おいすー!おこしやすだお」
内藤君が腕を振るった地元の料理は、本当においしかった。
貞子の出身地、和路巣地方名物、埴帆の鮎料理。
おなかもいっぱいになったところで、内藤君も交えて、メインイベントが始まる。
(´・ω・`)「さて、この地図の話なんだけど」
中学時代に6人で埋め、10年後に4人で掘り出したタイムカプセル。
中には、あきらかに生前の貞子が入れたのであろう紙が2枚入っていた。
川 ゚ -゚)「ほかの地図と照らし合わせて調べてみたのだが…
ここには、『山村家』という今は使われていない家があるようだ」
( ゚д゚) 「貞子の実家だった家、という訳か」
川 ゚ -゚)「そしてもう一枚は、建物の見取り図……トレジャーの場所だな」
そう、明日、『貞子の残したプレゼント』を探しにいくこと。
私たち5人が久しぶりに集まった理由は、他でもない。
( ^ω^)「今日は旅館全部貸し切りだお!明日までゆっくり休むお!」
内藤君のその言葉に、一同から歓声があがる。
- - -
川*゚ -゚)(´・ω・`)
酒もすすみ話も盛り上がり、宴もたけなわといったところ。
クー先輩とショボン先輩の距離が、妙に近いなー…なんて思っていたら。
( ゚д゚) 「渡辺、内藤…風呂入ってこようじゃないか」
从'ー'从「はわわ…?」
( ^ω^)「おっおっ、わかったお。渡辺さん行くお」
从'ー'从「あはは、お風呂ー?わかったー」
正直私は酔っ払っていたので、よく解らなかったけれど。
ミルナ君が突然『風呂に行く』と言い出した。ショボン先輩が言うには
川*゚ -゚)(´・ω・`)「2時間くらいはブラブラしてきていいよ」
とのことで、ぴったり寄り添った二人を残し、私たちは風呂へと向かった。
- - -
( ^ω^)「うちの温泉は108式まであるお!」
( ゚д゚) 「すげぇ!来たかいがあったな」
从'ー'从「あはは、すごいー」
温泉もすっごく気持ちよかった。
内風呂を出てから、露天風呂があるらしいので、行ってみると
(;゚д゚) 「!わ、渡辺!?なんで」
从'ー'从「あれれー?なんかミルナ君がいるよー」
( ^ω^)「おっおっ、露天風呂は混浴だお」
そこに、割烹着を着た内藤君があらわれて、
( ^ω^)「ちょうど今、地酒を持ってきたお!貸しきりだから、二人で楽しめお!」
などと言って、お盆にのせた徳利(とっくり)と猪口(ちょこ)を置いて去って行った。
从'ー'从「わーい!やったねほらミルナ君、一杯どうぞー」
(;゚д゚) 「お、おうξ///)ξ」
あわてて猪口をとるミルナ君。なんだろう、照れているみたいだ。
クー先輩が言うには、ミルナ君は『Sのように見えるけどM』だとか何とか。エヘヘ。
私は酔っ払っているから、その辺は良くわからない…ウン、わからないけれど。
( ゚д゚) 「渡辺は、ショボンの奴が好きだったのか」
从'ー'从「もう昔の話だよー……ミルナ君こそ、クー先輩に恋して」
( ゚д゚) 「おいおい、どれだけ昔の話を持ち出すんだ」
露天風呂につかりながら、幼い頃の恋談義に花を咲かせる私たち。
酒と湯に酔い火照った顔に、夜の風がとても気持ちいい。
从'ー'从「はぁ…余った人たちをくっつけて、幸せになれればいいのに」
なんという酔った勢いだろうか。これはまさに失言
( ゚д゚) 「どうだろな…クーはいつもお前と俺とをくっつけたがっていたけど」
やっぱり、はぐらかされてしまった。まぁ失言だし、仕方ないよねーなんて思ってたら
( ゚д゚) 「でもショボンの奴はお前……」
从'ー'从「えっ?」
(;゚д゚) 「あ、いや…なんでもない」
ミルナ君が何か変なことを言いかけ、止めて、またお酒を飲み始めた。
このとき悲鳴みたいな変な声が聞こえたような気がする。でも、よく覚えていない。
- - -
しばらくして部屋に戻ろうとした私たちを待っていたのは
(;゚д゚) 「うおっ」
从;'ー'从「きゃっ!」
川д川「……」
予想だにしない光景だった。
白いワンピースを着た黒髪の女性が、私たちに向かって立っていた。
手に、刃渡り7~8寸ほどはありそうな、大きなナタを持って。
(;゚д゚) 「……」
从;'ー'从「だ…誰?」
服に染み渡る斑点は…血?刃から赤い液体をしたたらせ、女性は一言
川д川「コロス」
ゆっくりと歩をすすめ、女性が近づいてくる。
なんで?どうして?私たちが?…そんな疑問が頭の中を駆け巡る
(;゚д゚) 「渡辺!」
とたん、ミルナ君は私の手を引いて、駆け出した。
- - -
(´・ω・`)「ううっ、君たち!クーを見なかったか!」
从;'ー'从「ショボン先輩!」
逃げる途中、自分達の部屋の前で、血まみれのショボン先輩に出会った。
ショボン先輩は肩に傷を負っていて、息を苦しそうにしていた。
(;゚д゚) 「クーが居ないのか?それと、ショボン、大丈夫なのか?」
(´・ω・`)「これはかすり傷だ…大丈夫、問題ない。それよりクーだ!
『風呂に行く』と言って出て行って、そのまま会ってない。
だから君たちすれ違わなかったか、と聞いているんだッ!!」
(;゚д゚) 「いや、会っていない……ショボン、黒髪の女にやられたのか?」
(´・ω・`)「ああ…クーの様子を見に行こうと思って部屋を出たら、いきなり切りかかられた。
幸い怪我は浅い…」
从;'ー'从「たいへん、警察!救急車!」
(´・ω・`)「…ここは『圏外』さ…公衆電話がロビーにあるけど、無事につけるかな」
でも、私たちに手段を選んでいる時間はない。
( ゚д゚) 「一か八か、行ってみよう」
(´・ω・`)「いや、僕が一人で行く……君たちは、逃げるんだ」
ショボン先輩はそう言い残して、ロビーの方に行ってしまった。
( ゚д゚)「渡辺、避難経路図を見つけた!こっちだ、ついてこい!」
ミルナ君に手を引かれ、逃げる途中、私はさっきから気になっていたことを口に出す。
从'ー'从「ねぇミルナ君、さっきの白いワンピースだけど……」
( ゚д゚)「ああ」
从'ー'从「あれって、貞子ちゃんがいつも着てて、私がうらやましがってた……」
( ゚д゚)「……今はそれどころじゃない」
廊下の角を曲がると 私にはちらっとだけ 見えたんだけれど 床が真っ赤で
( ^ω^)
从;'ー'从「あ……う…」
(;゚д゚)「うおおおお!」
この旅館の主、私たちの同級生、すてきな笑顔の内藤君の からだと
从;'ー'从「いやぁ…もういやあ」
(;゚д゚)「渡辺ッ!見るな、見るなよ!畜生!!」
首が
- - -
私たちは迷路みたいな道をたどり、ようやく出口にたどり着き
( ゚д゚)「出口だ、外へ出て、道路沿いにどこかの民家まで歩こう」
从'ー'从「う、うん」
ミルナ君が、出口の引き戸を開けると そこに
川д川
あの女の人が、居た。なんで、先回りしてるんだろう
( ゚д゚)「……ちっ」
从;'ー'从「うっ」
ごめんなさい ごめんなさいミルナ君、私とうとう、腰がぬけてしまったよ
( ゚д゚)「ええい!」
引き戸を閉め、カギをかける。即時、乾いた音がして、ナタが振り下ろされる。二度、三度
( ゚д゚)「今のうちに!」
ミルナ君は私の体を持ち上げ、一番近くの部屋に運び入れる
ごめんなさいミルナ君 私が情けないばかりに… 私は心の中で、何度も謝る
部屋のドアにカギをかけ、肩で息をする私たち。
从'ー'从「……本当にごめんね、追い詰められちゃった」
( ゚д゚) 「何も言うなよ」
从'ー'从「さっき、内藤君」
( ゚д゚) 「言うなって」
部屋のいちばん奥の壁に、二人でならんでもたれかかる。
从'ー'从「……ミルナ君は、死にたくないよね」
( ゚д゚) 「渡辺…大丈夫だ、俺たちを追いかけてきたのならば
あの女はロビーの方には行っていない。
ということは、ショボンが警察に電話してくれているはずだ」
あは、こんなときにも格好いいんだね、ミルナ君
「ちょっと、肩貸してね」と、私は汗でじっとり濡れたミルナ君の肩にもたれる。そして耳元で
「ねぇ、私と付き合ってよ」
「……おい、今そんな話をしている場合か?」
「うーん、今しかないかもしれないよ」
「……そうか、ククク…願ってもない、けどな」
わかってる。もうこれで最後(最期)かもしれない、ってことは
--ドスン ガスン
バリッ バリバリッ
从'ー'从「……もう最後の最後になっちゃったけどね」
( ゚д゚ ) 「ホントに嬉しいぜ。『最後』まで『付き合って』くれるなんてなぁ・・・ククク」
从'ー'从「あは、嬉しいね、あははは……でもね…できたらこっち、みないで」
( ゚д゚) 「……ちぇっ…わかったよ」
--バスン …バキバキバキ ドーン
そして
川д川
血染めのナタが月明かりを受け、キラリと光る。私たちに待つのは……
(´・ω・`)「うおおおおおっ!」
川д川「!?」
見ると、ショボン先輩が、女からナタを奪おうとしていた。
「ああぁぁああっ!」
悲鳴が上がる
( ゚д゚) 「……あっ!ショボン!そいつは…」
床に血だまりができていく
(;´・ω・`)「せ……正当防衛だ、正当防衛だからな!」
倒れた女の人の長い髪の毛がずれ、隠れていた顔が露出する
私たちの、よく知っている人
川 д)
( ゚д゚) 「……なんで……どうして、この人が……」
从'ー'从「……クー、先輩」
ミルナ君の握りしめた手が、ブルブルと震えている。
( ゚д゚) 「どうして、クーはこんな事を……」
从'ー'从「……ミルナ君」
私もそうだけれど、彼の心中はもっと複雑だろう。そして
(;´・ω・`)「オレは無罪だ……ハハハ、せ、正当防衛だ……ハハ」
そんなことを繰り返しつぶやき続けているショボン先輩のかたわら
私たちは警察の到着を待っていた。
でも私の心には、また別の不安が出てきていた。確証はない、けれど……
~~~~~~~~~~~~~
犯人含め、死亡者二人。軽傷者一人。
ショボン先輩は正当防衛が認められるようで、事件は幕を閉じたかに見えた。
でも 私は釈然としない
クー先輩の動機が不明なこととか
ショボン先輩の言動の違和感とか
私たちがまったく無傷なこととか
いつのまにか先回りされていたこととか
犠牲者は本当に一人だったのか、それとも二人だったのか
私の推測では、本当の殺人者は、たぶん……
~ 解決編 从'ー'从渡辺は血染めのプレゼントを受け取ったようです~ 
事件から一ヶ月たって、私とミルナ君は『貞子のプレゼント』を探しに来ていた。
バイクのリアシートから下り、ヘルメットを外す。
从'ー'从「……私、思うんだけど」
( ゚д゚) 「ん?」
从'ー'从「クー先輩は本当に、私とミルナ君とをくっつけたがってただけなのかも、って」
( ゚д゚) 「おいおい、じゃあなんでクーはショボンを傷つけ、内藤を殺したんだ」
細い林道を、しばらく並んで歩く。
从'ー'从「クー先輩は二人を傷つけたり殺したり、してないかもしれないよ」
( ゚д゚) 「……なぜ、そう思うんだ」
从'ー'从「ねぇミルナ君、あのときお風呂で、私に何て言おうとしてたの?」
( ゚д゚) 「関係あるのか?……『ショボンはお前より、貞子を好きだった』だ」
从'ー'从「貞子ちゃんが川で溺れたとき、一緒に遊んでたのは……」
( ゚д゚) 「…………ショボンと、内藤と、クー……」
状況からしか判断できないけれど、そうとしか思えない。
もしあの人が、愛する貞子の死んだ原因を、その場に居た他の二人のなかに認めていたのなら。
地図に示された場所、建物の見取り図に記された場所。
庭の一本杉の根元はすでに掘り返されていて、『プレゼント』の中身は消えていた。
从'ー'从「やっぱり、アレはここに入ってたんだね……ホラ」
箱の中に残っていたのは、白い洋服のボタンが一個と
( ゚д゚) 「クーは俺たちと一緒に電車で和路巣まで来ていた。
誰よりも先にこれを掘り返すことができたのは、内藤か…ショボン」
一枚の、古ぼけた写真 中学の制服を着た、二人の少女が写っている。
从'ー'从「あれれー?何で私が写っている写真が入ってるのかな?」
( ゚д゚) 「……」
凶器のナタは、内藤君の旅館のものだった。
きっと内藤君は、すてきな笑顔であの人に貸したんだろうな。それで殺されるとも知らずに。
たぶん、『あの二人にとって、このナタは聖剣になるんだお』
『あの二人をラブラブにするためなら、この旅館のドアなんていくら壊してもいいお』って
私は、写真の中で私と仲良く肩を組んでいる女の子に、問いかける もしあの時代(とき)、
あなたがレズじゃなくてショボン先輩を好きで、
私がショボン先輩じゃなくてミルナ君を好きで、
ミルナ君がクー先輩じゃなくて私を好きだったのなら……
「あはは、おかしいなー……涙が、とまらないよー」
- 終わり -
この小説は2007年4月15日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:mGJVE15E0 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです
お題 从'ー'从
聖剣
貞子の初恋
SっぽいMをいじりましょーξ///)ξ
( ゚д゚ ) 「ホントに嬉しいぜ。最後まで付き合ってくれるなんてなぁ・・・ククク」
ご意見等あれば米欄にお願いします