スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

十年目の花見酒


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ






20070422220355.jpg



 僕は今日ある友人のお見舞いに来ていた。
古くからの友人で、見舞いに来るのも もう何回目かわからないほどだ。

(´・ω・`)「やぁ、遅れてすまない」

(//ω^)「来てくれるだけで、僕は嬉しいお」

 頭から顔の右半分まで包帯を巻かれた友人が上半身だけを起こし、こちらをみて微笑む。
僕はそれを見ては、いつも胸が痛む思いでいた。
 頭だけではない。今はストライプの病人服に隠されているが、その下の体中至る所を
まるでミイラ男のように包帯で巻かれている。一度冗談半分で見せてもらって、後悔したものだ。

(//ω^)「今年ももうすぐ桜が咲くお」

(´・ω・`)「そうだね。ここは随分と景色がいいから、また一緒に花見でもしようか」

(//ω^)「ショボンは今年でいつ……幾つになったんだお?」

(´・ω・`)「僕かい? 僕は今年で三十一。もうおじさんと呼ばれる歳になってしまったよ」

(//ω^)「……もうすぐ十年も経つのかお」

(´・ω・`)「……」


 友人、ブーンがこんなことになってしまったのは今から十年前の事だった。

 まさに青天の霹靂だった。突如原因不明の激痛にブーンが倒れたのだ。
救急車で運ばれたとの連絡を受けて僕が駆けつけた時には、今ほどではないにしろ
全身を包帯で巻かれ眠る彼の寝顔と、病室に残っていたこれでもかと言うほどのアルコール臭に
目眩がしたのを覚えている。

 未だに彼が何故倒れたのか、そして入院しているのかは僕も知らない。
聞くに聞けず、もう十年も経ってしまったのか。
しかしそう思えども僕は月日の流れの速さにただ溜息をつくしか出来なかった。

(´・ω・`)「あのさ――」

(//ω^)「ショボン」

(´・ω・`)「……何?」

(//ω^)「今年の花見は盛大にやるお。十年目のお祝い位、派手にやってもバチは当たらんお」

(´・ω・`)「……そうだね」

 皮肉か本音か。判断の付かない僕は、ただ曖昧に返事をした。
しかし楽しくすることは悪いことでは無いだろう。そう思い、次の瞬間には花見の料理のことを考えていた。

(´・ω・`)「新しくアレルギーは出てない?」

(//ω^)「全然出てに……ないお」

(´・ω・`)「よかった。それなら料理も作りやすい。それじゃあ来週の金曜とかはどうかな?」

(//ω^)「明日、明日の夜やるお」

(´・ω・`;)「は? そんな急に言われても」

(//ω^)「ほら、窓の外の桜ももうすぐ咲きそうだお。早くしないとぜ……時期を逃すお」

(´・ω・`)「まったく……咲かなくても僕に当たらないでよ?」

 僕は帰り際に医者に許可を貰いに行ったが、急な願いにもかかわらずすんなりと了解してくれた。
そして僕はそれから暫く医者と彼について話をした。
初めて彼について色々と詳しいことを聞けたような気がする。
それを聞いた僕は少なからず、いや、大いに驚き、そして絶望した。

 物事には必ず原因があるものだと僕は思っている。
だから終始原因不明なんて馬鹿げたまま物事が終わるなんてことは、絶対に許されないことなのに。

(´・ω・`)「……止めだ。こんなことを考えてる暇は無い」



(´・ω・`)「こりゃあ……見事だ」

(//ω^)「だから言ったお」

 翌日の晩。窓の外に咲き乱れる桜を見て、僕は思わず言葉を漏らした。

(//ω^)「夜桜なんてへ……ふず、風情があって良いお」

(´・ω・`)「……君――」

(//ω^)「早く弁当出せお。腹減ったお」

(´・ω・`)「……うん」

 僕は言われるままに紙袋から弁当を取り出し、テーブルの上に並べ始めた。
時間はなかったがそれでも僕のありったけの知識と腕を駆使した品の数々だ。
それに彼の好物ばかりを詰めたのだからこれ以上のご馳走は無いだろう。

(//ω^)「こ、この料理たちは……ショボン!」

(´・ω・`)「何?」

(//ω^)「結婚しよう」

(´・ω・`)「お断りだね」

(//ω^)「今年も振られたお」

 あはは、と笑い合って僕達は料理をつまみ始めた。

 あれやこれやと思い出話に花を咲かせては、時折窓の外に視線を向けて桜を眺める。
そんなことを飽きもせず繰り返し、僕達はかけがえの無い時間を過ごしていた。

(´・ω・`)「さて、実は今日はこれも用意してきたんだ」

(//ω^)「なんだお? ……こ、この黄金のき……缶は!」

(´・ω・`)「命の水、酒。ここに降臨」

(//ω^)「うおー! なんてこった! 今日は一体何記念日だお!」

(´・ω・`)「結婚記念日?」

(//ω^)「あれで婚約成立した、る、してたのかお」

(´・ω・`)「僕はツンデレなのさ」

 楽しそうにはしゃぐ彼の手に缶を渡し、僕達は酒をこぼすほどの勢いで乾杯した。
夜の病室だと言うのに、そんなことはお構い無しの笑い声は部屋にこだまし、更に僕達の宴は続いた。

 そう、宴は終わらない。尽きることの無い話は会話を止めることは無いのだ。
しかし僕達の会話は途切れ途切れになっていた。そしてお互いに流れ始める空気は宴の終わる予感。

(´・ω・`)「……ブーン」

(//ω^)「……言わないで欲しいお。きっとショボンもず……ぜる、ぜ、全部知ってるとは思うお」

(´・ω・`)「……」

 昨日から酷く舌を噛んでいたことには気付いていた。

 そして医者から告げられた事実。それは彼がかかっているのは
全身が腐敗していく謎の病だということだった。

(//ω^)「多分、僕はもう大分頭のな……く、なか、なに、中身までやられてるんだと思うお」

 本人の口から聞いた途端、僕は唐突に涙が溢れそうになった。尋常じゃないその様子が、
本人の言葉の裏づけになっていると言うのは、否定し難く受け入れ難いことだった。

(´・ω・`)「それで……あれは本当なのかい?」

(//ω^)「こいつかお?」

 ブーンの視線の先にはぶら下げられた点滴に、散らばる錠剤、未使用の注射器などがあった。
どれもがこれまでずっとブーンを生かしてきたものだ。

(´・ω・`)「……考え直さないか? だって君はまだ――」

(//ω^)「――楽しかったお」

(´・ω・`)「え?」

(//ω^)「ここに来て……い、一年経ったあの日、初めての花見はほと……本当に楽しかったお」

(´・ω・`)「……」

(//ω^)「ショボンにはいくらお礼を言ってもて……る、足りないお。本当にワガママばかり言ったお」

(´・ω・`)「じゃあ今日くらい……」

(//ω^)「僕は知ってるんだお。ショボンはきっと今日も、僕のワガママを受け、れ、入れてくれるお」

(´・ω・`)「いや、だけど……」

(//ω^)「頼むお、ショボン」

 その瞬間、それまでとは打って変わって明瞭な口調に切り替わったかと思うと、
彼はかつて無いほどに真剣な顔つきをして僕に言ったのだ。

(//ω^)「思い出まで腐ってしまう前に、僕は終りにしたいんだお」

 その言葉は、到底僕には反論のできないものだった。

(´・ω・`)「……悔しいよ」

(//ω^)「ぐ……ごむ、ご、ごめん、お」

(´・ω・`)「はぁ……僕は冷徹な人間だったんだな。言葉がまるで浮かばない」

 独りごちて一気に酒を呷ると、僕は新しい缶をテーブルに並べ始めた。

(´・ω・`)「人生最後の酒だ、たんと飲め」

(//ω^)「言われ……なくとも」

 そうして僕達の宴は続いた。夜と言うことも忘れ、馬鹿みたくはしゃぐだけの宴。

 ふと視線を移した病室の窓の外では、ぱくりと割れた半月の光を浴びて
十年目の桜がゆらゆらと滲んで揺れていた。









この小説は2007年4月22日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:0HqhkFjS0 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです
ちなみにタイトルがなかったので、それっぽいタイトルを付けました


お題
・腐敗
・寝顔
・(´・ω・`)「人生最後の酒だ、たんと飲め」


ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/29 19:39 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/2978-97fa7a55


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。