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('A`)は死ねない身体のようです


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('A`)「‥‥‥‥‥」

ドン

やべ、怖そうな人にぶつかっちまった。‥‥とりあえず謝るか

(,, ゚Д゚)「いってえな!前見て歩けや!」

('A`)「‥‥‥ああ‥‥すみません」

(,, ゚Д゚)「ああん?聞こえねえよ!」

こいつ、俺の話を聞かない。‥‥いや、聞く気もないのだろう。

どうみても強そうなこの男は、どうみても挙動不審な俺に
見事なみぞおちへのボディブローを喰らわせた。

('A`)「‥‥‥う‥‥っ」

俺は避けることなく吹っ飛ばされ、頭から地面に突っ込んでしまった。
突っ込んだ先には看板があり、そこには『バーボンハウス』と書いてあった。

(,, ゚Д゚)「いいお勉強になったか?ボーヤwww」

そう吐き捨てると、高そうなスーツを着た男は去っていった。

‥‥俺が人生最後に喋った相手はこいつになんのか。むなくそ悪ぃ。
周囲の人間の視線を感じながらも、俺はまた歩き始めた。

('A`)「ふぅー、着いた」

ここは俺の学校、VIP高校の屋上。
日曜日という事もあってか、ここに来るまで誰とも会わなかった。

('A`)「フヒヒ、俺はここで死ぬのか‥‥」

階段を急いで登ってきたからか、息はあがっていた。
だけど早く死にたいんだ。俺は休む間もなく柵を乗り越える。

大丈夫、靴も揃えたし遺書も右足の方の靴に入れておいた。


後は、死ぬだけだ



(;'A`)「‥‥高ぇな」

足下から風が吹いてやがる。
やっぱり恐いもんは恐いんだな。

ほら、よくあるだろう?ジェットコースターが降下を始める前の、
おしりがヒュン!ってなるやつさ。

( 'A`)「あるあるwwww」

俺が生涯最後に放った言葉は『あるあるwwww』か。悪くない。

一人ツッコミも虚しく、夏の日差しに溶けていった。

今日は、暑いな。‥‥もう7月だし当たり前か。


気付くと、無意識に俺は飛び下りていた。


――あーマジつまんね、みんな死ねばいいのに


俺の意識はそこで途切れた。


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―――
――


( 'A`)「あ」

あれ?ここは‥‥

( 'A`)「高そうなスーツ着たあんちゃんに絡まれた場所じゃねーか」

( 'A`)「‥‥‥‥」

(#'A`)「俺なんで死んでねぇんだよ!!!」

ありえないありえない

だって、飛び下りたんだぜ?俺。

あれは夢?いや、歩いていた感触っつーかなんつーか‥‥
そういうのがまだ残ってる。

もし夢だとしたらそれなんて夢遊病?って感じだよ

('A`)「なんで!」

俺は、駆け出していた。

あの忌々しい学校の屋上に。

周囲の人々の視線も忘れて。


――何も考えずにがむしゃらに走ってた俺には聞こえてなかったんだよ。
商店街のテレビの音なんてな。


#「‥‥えー今入ってきた速報です。
  暴力団組員のギコさん23歳が
  VIP高校屋上から飛び下り、自殺しました‥‥
  警察の聞き込みによるとVIP町の商店街前で高校生とみられる少年と
  何かトラブルがあったらしく、何らかの関係があるとみて‥‥」



('A`)は死ねない身体のようです

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学校に着くと、マスコミやら保護者やら、何故か集まっていた。


('A`)「一体なんなんだよ‥‥うぜーったらありゃしねぇ
    ‥‥どーせあのハゲ校長が幼女でも誘拐したんだろ」

俺はもう一回飛び下りんだぜ?

そしたら、もっとマスコミ集まるかな。

‥‥‥ふと芽生えた復讐心。

('A`)「屋上からあいつらの名前でも叫んでから死ぬかw」

――あいつら。

そもそも中学までは人生をエンジョイしていた俺が、
ここまで死にたくなった唯一にして無二の理由だった。



――ここから回想入るよ!――


( ><)「なぁドクオ、ちょっとこっち来いなんです」


俺は、中学ん時は自分で言うのもなんだけど、クール系なキャラを気取ってた。
よくいるじゃん、『はいクラストップは〇〇』とか言われた時に
ごく当たり前のように『はい』とか言う奴。
あの冷静な感じが回りと違ってカコイイと思ってたんだよ。

――今よく考えたらただの中二病、至って普通のキモオタだったんだが。

‥‥そんな勘違いしてた俺がバカ話ばっかりしてるやつらに馴染める訳なかった。
まさに下等生物だと思って見下してたくらいだ。

('A`)「え‥‥なんだよ‥」

( ><)「は?こいつ今タメ語きいたべ?みんな聞いてた?」

(  ^.^)「超聞いてたしwww生意気じゃね?」

( ><)「はい、処刑決定ー」

('A`)「ちょ‥‥‥‥ごめんって」

( ><)「ニードルキィィック!!!!1111」

('A`)「‥‥!いてぇ!!」

( ><)「デュクシ!デュクシ!」

殴る時に『デュクシ!』とか『ジキシ!』とかつけるやつは
みんなDQNだから、気をつけないと駄目だよ。

( ><)「まじでこいつ歯ごたえねぇんですwww
     シラケるから帰ろうなんですwwww」

('A`)「‥‥‥うっ」

(  ^.^)「おkwwwカラオケ行こうぜwww」

('A`)「‥‥‥‥痛ぇ‥‥」


最初はからかわれてただけだったけど、徐々にいじめに変わっていった。
グループを作る時なんか掃除箱に閉じ込められて忘れられるし、
上履きが無いなんて日常茶飯事だし。本当にありがとうございました。


‥‥けど、自殺を考えたのは先週の話なんだ。


あれは、クラスで体育大会の役割決めをしてた時だったかな。

(* ゚ー゚)「‥‥‥‥でさぁ」

川 ゚ -゚)「‥‥‥そうだな」

('A`)「‥‥二人とも、何の話してんの?」

(* ゚ー゚)「あっ、ドクオ君」

川 ゚ -゚)「いやな、この子を見てくれ」

クラスで可愛さNo.1のしぃちゃんがその小さい手の平に乗せていたのは、

小さな小鳥だった。


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川 ゚ -゚)「親鳥が死んでしまってて、上の木を見たら巣があってな」

(* ゚ー゚)「だから育てられないかなーって思ったんだけど‥‥」

このフラグ、エロゲをやり尽くした俺にはわかる。
ペットが飼えない状況だったりするから、代わりに‥‥ってやつだろ?'A`)「‥‥あのさ、俺が代わりに育てても、いいよ」

言われるより早く、俺は言った。

川*゚ -゚)「本当か!ありがとう、ドクオ君!」

容姿淡麗、成績優秀のクーさんがこんなにも喜ぶなんて。

……それから俺は必死に育てた。
最初はオニャノコとのフラグを立たせるためという不純な動機だったのだが。

‥‥でも、ペットってあれだな、愛着が沸いてくるもんなんだな。

俺は、今まで飼ってたカブトムシより大事に育てた。


('A`)「ほ~れほれほれ、ピヨピヨ」

俺は自分のロッカーの中で飼っていた。小鳥は死にやすいらしいから。
名前はピヨすけ。学校に一緒に行くのがすげえ楽しみだった。

('A`)「さ、しっかり寝るんだぜ?」

('A`)「‥‥明日はしぃちゃん達に任せて学校休も。頭痛ぇ‥‥」


この日に休まなければよかったのだろう。
そうすればあんな目にあわないですんだのに。

いや、そもそもしぃちゃん達に預けなければ……

……俺って最低なやつだよ。自分自身が悪いのに、責任転嫁なんかして。

――あぁ、だっせぇな、俺。


「ドクオ、今日はいないんです!」

「しぃとクーたちも今どっか行ってる」

「じゃ、やるんです!」

「しぃとかにこの鳥の居場所聞かれたらどうする?」

「あいつの友達が持ってったとか言えば平気じゃん?」


―――
――



('A`)「さー今日は久しぶりにピヨすけと面会だーパパ嬉しいなー」

( ><)「おwwドクオwww早く教室行けwwww」

('A`)「‥‥‥‥!」

俺のクラスを見てみると、ひとだかりができていた。
キモーイとかグロイねとかの声が聞こえてた。

俺、こんときから薄々気づいてたんだよな


(* ;ー;)「ドクオ君!何でこんなこと‥‥」

川  - )「‥‥う、‥‥‥‥うっ」

最初は、何で二人とも泣いているのかわからなかった。
‥‥何で俺が責められていたのかも。


――教卓の上には、冷たいピヨすけがいた。


(  ^.^)「ドクオ‥‥俺達がいじめてたのは悪かった。
     でも生き物にやつあたりなんてするなよ‥‥」

(;'A`)「‥‥‥え?」

( ><)「そんなに辛かったら俺達に言えなんです!」

(;'A`)「ちょ‥‥違うって」

俺の言い分なんざこいつら聞く訳がない。
何か反論しようとしても途中で遮られる。

それで黙りこんだ俺の態度は、しぃちゃん達にとって
『はい僕がやりました』って肯定に見えたんだろうな。

川 ゚ -゚)「‥‥」

(* ゚ー゚)「‥‥‥‥」

二人とも俺をひと睨みしてから、走って教室を出ていってしまった。
ここでDQN達に反論できねぇ俺って弱ぇーな。マジで。


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――そんなことがあってから今まで。
俺は一度も学校へは行っていない。



――ここで回想終わるよ!――



('A`)「あれ‥‥屋上にも警察がいやがる
   事件は校長室で起きたんじゃない、屋上で起きたのか‥‥‥?」

俺ははっとした。

('A`)「まさか、もうひとりの俺が自殺したとかじゃ‥‥」

入り込めるギリギリまで侵入すると、近くの警官に尋ねた。

('A`)「すいません、刑事さんですか?」

( ´_>`)「? 私は確かに刑事だが……」

('A`)「あの!ここで何があったんですか!」

( ´_>`)「とりあえず名乗れ」

('A`)「名前はドクオ!早く教えろって!」

( ´_>`)「ドクオ君か。私は兄者刑事だ、よろしくな
     それより知らなかったのかい?飛び下り自殺があったんだよ」

('A`)「誰が!俺か!?」

つい胸ぐらをつかんでしまったが、
刑事は強い握力で俺を静止させた。

(;´_>`)(こいつ訳わかんねぇ‥‥‥)

( ´,_>`)「ま、これ渡せば済むか
     ホラヨ。ギコさんだよ」

刑事らしき人物は、俺に写真を一枚渡した。
そこに写っていたのは‥‥俺じゃなかった。

('A`)「こいつが‥‥!」

俺が驚くのも無理は無い。
俺が死んだと思っていたら死んだのはむかつくあんちゃんだったのだから。

(;'A`)「嘘だろ!?」

(;´_>`)「あ、おい、写真返せ!」

(;´_>`)「いっちまった‥‥‥‥」

( @=@)「警部!」

( ´_>`)「‥‥なんだ」

( @=@)「こちらが報告書であります!」

( ´_>`)「ん。‥‥‥‥
     『本人は死亡したと思われる時間に、2km離れた居酒屋にいた
     情報とアリバイが合わないので、他殺の線あり』‥‥か」

( ´_>`)「‥‥これがもし他殺でないなら、何なのだろうかね」


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俺は駆け出していた。

頭がぐるぐるしてて、お世辞にも正常とは言えない判断力だった。

そう。俺は現実から逃げ出すために、死のうとしてた。


バン!

('A`)「ハァー‥‥ハァー‥‥‥‥」


勢いよく蹴飛ばしたドアは、高校の三階、被服室だった。

('A`)「誰もいねぇ‥‥よな」

一度死んだ経験がある俺にすれば、飛び下りるのなんて簡単だった。
手早く遺書を取り出し、靴も揃える。

‥‥また死ななかったらギャグにもなんねーぞ


心臓の鼓動が耳まで届く。

('A`)「恐えーもんは恐えーんだよ!ハゲ!」

窓から身を乗り出し、後ろ向きに落下しようとする。

('A`)「アバヨ‥‥‥あっちの世界は楽しいといいぜ」


その時、隣の準備室から被服の先生が顔を出した。

(*゚∀゚)「ちょ、ちょっと君!」

('A`)「‥‥‥‥‥!」


時既に遅し、俺の身体は重力によって落下を始めていた。


ゴシャ!


(*;゚∀゚)「いや、いやぁぁあ!
誰か!生徒が飛び下り自殺を!誰かぁぁぁあ!!」


今度は目が覚めた時、学校の一階にいた。

――丁度、あのへんてこな刑事と喋っていた所だ。

俺はまた死ねなかったらしい。これなんてループ?
……しかし死ぬ前より騒がしいな。なんでだろ


('A`)「あの、どうしたんですか」

( ;@=@)「刑事が飛び下り自殺したんだよ!」


え?


( ;@=@)「あーマスコミの対応から事件の捜査まで色々あんの!
      悪いけど忙しいからどいてくれるか!」

したっぱらしき刑事は急いで走っていった。


('A`)「ふっ、訳がわからんちん」

とりあえず家に帰って、状況把握をすることにした。


――ドクオ宅


('A`)「……ただいま」

( ^ω^)「おっ、おかえりドクオ。」

このほのぼのした顔の人間はブーン。俺の兄貴のキモオタだ。

( ^ω^)「お前今なんか失礼な事考えなかったかお?」

('A`)「い、いや。そういや兄貴、なにやってたの」

( ^ω^)「あ、そうだ!よくぞ聞いてくれたお!
     これを見てくれお、ドクオ!」

肩をとんとんと叩き、自慢気に持って来たゲームを見せる。

ジャジャーン♪

('A`)「そ、……それはテイルズオブデス〇ィニーのリメイク版じゃないか!」

( ^ω^)「おっお、予約してたんだお」


やりたい。すげーやりたい。
テイルズ厨の俺にはかなりきつい誘惑だ。

だが死ねない謎を残した俺は誘いを断り、部屋にこもった。

ガチャ

部屋の鍵を閉めた俺は、ほっと一息つく。

早くこんなうぜー世界から死んで離れたいのに。

( ^ω^)『やりたくなったら俺の部屋来いお』

( 'A`)「あのクソ兄貴……死にたい時にそんな事言うんじゃねぇよ……
    もし本当に死ねたら未練残っちまうじゃねーか」

死ねないからって諦める気はない。出来ることなら今にでも死にたい。
俺は早速状況把握を始めた。

('A`)「……とりあえず今わかってる事は……」

まずは、死ねないこと。
俺が死ぬ代わりに、誰かが死ぬこと。
時間は死んだ時間から経っていない。

うーん、なんで死ねないんだろ。
よくわかんねぇし、考えてると頭が痛くなってきた。

('A`)「何かの法則さえ掴めればいいんだが……」

ちなみに普通はここまで現実離れしちまってたら取り乱すのかもしれないが、
人生つまらなくなった俺には丁度いい現実逃避。

……俺はまず、代わりに死ぬやつの法則性を考えることにした。

死んだのはギコってヤンキーと兄者の二人。

共通点はないはず。あるとすれば……


('A`)「二回自殺したけど、どっちも学校での飛び下りだった。
    もしかしたら別の方法なら死ねるかもわからんね」

とりあえず痛くなさそうな死に方を探す。

('A`)「刃物は避けたいな……」

近くに死ねそうな道具があるかどうか探すが、見つからない。
……やはり最終手段を使うしかないようだ。


(;'A`)「……よっこいせ」

俺はプレステのコードを結ぶと、首に回す。
部屋のクローゼットにきつく結んで、準備は万端。


(;'A`)「すぅー……はぁ、すぅ、は」

二回飛び下りた俺だが、やっぱり直前になると怖い。

ひとおもいに土台の椅子を蹴り飛ばすと、頭が圧迫された。


苦しい、苦しい、

喉痛い、喉痛い、

……っうぇ…………


なんとか首の負担を軽くしようと、コードと首の間に指を入れようとする。
しかし、そんなとっさの判断は死にかけの俺には出来なかった。

意識は無くなり、やっと死ねた。
あー長かったわ。これでもう大丈夫かな。

やべ、兄貴にお別れ言うの忘れてたわ
そういや遺書も置いてなかったな。ま、警察が探してくれんだろ

――――――


結局、俺はまた生き返った。
そして、記憶が蘇ったのは、兄貴と喋っていた廊下。

兄貴は俺のクローゼットで首を吊って死んでいた。



――つまんねー前座だなおい


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俺は家を飛び出した。
兄貴の埋葬とか親が帰って来たらなんて言うかとか、
そういう事は全部忘れて。

近くの公園に向かう途中、俺は考えていた。
この訳わかんねぇ世界のルールってやつを。

('A`)「…………」

もう大体わかった。この俺がいる世界の決まりが。


('A`)「多分……多分だけど」

死に方なんて関係なかった。

VIPの小説スレでは予想厨と呼ばれた俺だ。やっと理解した。
ちなみにVIPではもちろんコテハンを持っている。

('A`)「…ギコってやつに…兄貴…兄者刑事…」

みんな、俺が自殺する前に俺と最後に喋りあったやつらだ。

みんな、俺が自殺する前に俺自体に最後に触れたやつらだ。


もう、どっちかしか考えられなかった。


あ。因みに、俺が最後に見たやつ、ってのも考えた。
最後に聞いた声のやつってのもな。

でもどっちも俺が死ぬ前に被服の先生が条件を満たしてる。

だから、さっき考えたどちらかに絞られたわけだ。



――後は、誰かに試すだけ。


('A`)「ハァー……ハァー……」

ヒキオタキモオタアニソンオタの俺は、
たかが公園までの500m走っただけで息があがってた。

運動はしとくもんだ、特に体育の球技はな。
できなかったらクラスのイケメソに馬鹿にされるぜ。


やっと着いた公園。ふとベンチを見ると、同級生ぐらいの男がいた。

――丁度よさそうだな。


('A`)「……やあ」

(´・ω・`)「!!」

(;'A`)「そ、そんなに驚くなよ……な?」

(´・ω・`)「………君も僕を殴りに来たの?」

え?何言ってんだコイツ

(´・ω・`)「……頼むよ、殴らないでくれよ……」

――わかった。

コイツも俺と同じ、いじめられっ子ちゃんて訳ね。

……だけど、馴れ合いはできない。
俺の目的は誰かと喋る、と誰かに触れられる、
のどちらかだけを達成した状況で死ぬことだ。

この場合、俺はこいつと喋った。だから俺がこのまま死んで、
こいつが代わりに死ねば実験成功、って訳だ。

……俺、やっぱ最悪な人間だよ


―――
――



(´・ω・`)「へぇ……ドクオ君もいじめられてたんだ」

('A`)「いや、現在進行形だよ。君と同じでね」

(´・ω・`)「そっか。やっぱり、いじめはやだよね」


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結局俺はこいつと話続けてた。
触れられてしまったら作戦は失敗なので、あくまで距離をとりながら。

気付いたら、俺はぶっちゃけてた。

('A`)「俺、自殺しようと思うんだよな」

(´・ω・`)「え!?」

どうせこいつも死にたかったんだろ。
俺は死にたいだけじゃなくて死ぬ努力をしてんだぜ!フヒヒ!

(´・ω・`)「死んじゃ駄目だよ!」

('A`)「!」

(´・ω・`)「確かにいじめは苦しいよね。
      でも、このまま死んだら悔しいじゃないか。
      僕はいじめっ子になんか屈しない。勉強して、大学に入って、
      会社の重役になるんだ。そうして、学校で粋がってるDQNを足で使うんだよ。

      ね?生きる希望なんか、いくらでも見つかるじゃないか。」

('A`)「…………」

(´・ω・`)「その希望の内容がどんなに醜くても仕方ないよ。
      でも、死んだらおしまいじゃないか。
      仮に死んだからって、DQNの心が少しでも痛むかい?
      痛んだとしても、僕は死んだら無念しか残らないと思u」

(;'A`)「うあああああ!!!」

(´・ω・`)「あ!」


俺は、公園を背に向けて走った。
ただがむしゃらに、死に場所を探した。

(;'A`)「あー、あー、……」

高いところなんていくらでもあるもんだな。

近くのマンションを駆け上がって、間髪いれず柵から飛び出した。
「俺は死ぬんだ」



……予想通り、目を開けるとさっきの公園にいた。


('A`)………………


('A`)「はは……代わりに死ぬやつの条件、特定できたな」

死ぬ前に、最後に話した人間。

それが、身代わりの条件だった。

遠くから、救急車の音が聞こえる。
その音は、この公園を通り過ぎてあのマンションへと向かっていった。

――そろそろ兄貴が発見されるころかな。



('A`)「問題は……どうすれば本当に死ねるか……だよな」


いつもゲームを貸してくれて、暇な時はスマブラさせてくれた兄貴。

俺に人生ってもんを教えてくれて、希望ってもんを説いてくれた公園の男。

兄者刑事とか、ギコとかいう不良も死んじまった。

みんな、関係ないのに。


('A`)「俺が巻き込んだ……いや違う、殺したようなもんだよな」

小声で呟く俺。


みんな……生き返ってくれよ。

生き返ってくれるんなら、俺頑張ってみるよ。

人生、生きてみるよ。


('A`)「生きてぇよぉ……」



( ´∀`)「よくぞ言ったモナー」


('A`)「な!だ……誰……だ…………」

また意識が途切れた。

もしかして、死んだのかな。


死んじまったのかな。



『オラ!さっさと起きろ!……ちっ……これだからゆとりは……
あーもうさっさと起きろやうぜぇなぁー……だから……』


('A`)「はっ!」

( ´∀`)「キモいんだよ!!」

( ´∀`)あ

(;'A`)「……え?」

( ´∀`)「フォッフォ、ようやく起きたモナー」

(;'A`)「今なn ( ´∀`)「お前は今、死んだ状態モナー」


こいつ、あからさまにさっきの事を隠してやがる。
……なんかキモいとかなんとか聞こえたような気がしたが、まぁいい。


( 'A`)「俺は死んだのか!?」

( ´∀`)「今は死んでるモナ」


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ふわりとした雲の上のような場所でコイツは話す。
まるで異世界のように神秘的なこの場所に俺はみとれていた。


('A`)「や、やっと……死ねた、のか…………」

プチッ

あれ?なんかキレた音がしたけど……

( ´∀`)「お前、死にたかったのかモナ?」

('A`)「あ、あぁ。だからあんなに死のうと……」

( ´∀`)「地獄に落とすぞ」

な、なんでこいつは怒ってるんだ?よくわからん……

( ´∀`)「……もうお前には必要ないだろうからネタばらしモナー
     お前はな、死んでいったやつらの事を忘れたのかモナ?

     お前は死んでよかったかもしれんがモナ、
     お前の身代わりになった奴らは死にたくなかったはずモナ」

('A`)「……そ、そうだよ。
   でもな?アンタが仕組んだんだろ?この身代わりになる世界をよ!」

( ´∀`)「それはお前のためモナ」

は?コイツ訳わかんねぇ

( ´∀`)「今から言うこと、全部本当だから聞いとけモナ」

一息ついて、こいつは話し出す。


( ´∀`)「実は、全国のある条件の自殺者達は
     お前と全く同じ体験をしてるモナー。
     ある条件とは……自殺志願者の事を一人でも想っている人がいることモナー
     ちなみに肉親以外で、っていうことモナ」

俺は黙って話を聞く。
話が飛躍しすぎて、ついていけないからだ。

( ´∀`)「そして、お前は条件に当てはまったんだモナ。
     誰か他の生物がお前の事を想ってたんだモナ。
     そして、さらにその体験で条件を出したモナ。」

( ´∀`)「この体験の中で生きる希望を見付ければクリア。
     クリアした者には願い事を一つ叶えさせてあげたはずだったモナー」

(#'A`)「っな……聞いてねえよ!
    そもそも、そんな自殺者ばかりだったら原因不明の死亡者ばかりだろうが!」

( ´∀`)「そこでパラレルワールドですよモナ」

( ´∀`)「その体験をしている被験者達は、一旦別の歴史に進むモナ
     今回で言うと本当の歴史は君が死んで終わりだったモナ。
     でも兄者やギコ、公園の不審者にお前の兄貴が死んだ未来もあるモナ。
     それがお前が進んで行った未来。

     言い変えればお前の行動次第でいくらでも未来は変えられたモナ」

('A`)「な……」

( ´∀`)「お前はどうみても愚か者モナ、本当にありがとうござ……」

('A`)「願い事を叶える事ができる力を、お前は持ってんのか?」

( ´∀`)「お前に使う気はないモナー」

('A`)「わかってる!ただ……お願いだ、
    俺が殺してしまった人達を元に戻してくれ!頼む!」

( ´∀`)「パラレルワールドといえど、そう簡単にいじる事は出来ないモナ
     ……ただ、私も鬼じゃない。また条件を出すから
     それを達成出来たら叶えてやってもいいモナー」

('A`)「なんだ!なんでもするから!頼む!」

( ´∀`)「…………簡単モナ。
     お前、もう一度お前のパラレルワールドに帰るモナ。」

俺は、はっとした。
たかが、それだけでいいのかと。

( ´∀`)「ただし、今度は死んでも誰かが身代わりになる事はないモナ。
     死ねばちゃんと死ねるから安心するモナ。」

('A`)「……わかった」

( ´∀`)「……別に死ねと言っている訳じゃないモナ。
     お兄ちゃんや公園の変質者が死んでいる世界で生き続けても別にいいモナ。
     とどのつまり、さっきの場所に戻されるモナ」

('A`)「わかった。早くしてくれ」

俺は迷わずにそう言い放った。
偽善でもなんでもない、ただ償いたかっただけだった。

( ´∀`)「……ではやるモナ」

俺は光に包まれて、意識を飛ばされた。
なんだか不思議な気分だった。まるでピヨすけがそばにいるような……

( ´∀`)「…………無事、着いたモナ」

( ´∀`)「今回は長い仕事だったモナ」


そこに聞こえる、懐かしい鳴き声。



チュン!



神様が振り返り、そこにはピヨすけがいた。


( ´∀`)「ん?」

( ´∀`)「なんだモナ?ピヨすけ」



( ´∀`)「……そんなに心配するなモナ。
     彼の心の奥底にある気持ちはしっかりわかってるモナ。

     ちゃんと皆が生きている、本当の歴史に返すモナ。

     だが……彼の決意は固いらしいモナ。
     多分、周りの人間が生き返った事を知っても自殺は止めないモナ」


( ´∀`)「助けてあげてって?……それは無理モナ。
     彼を返した本当の歴史が流れるその世界をいじることはできない、
     ましてや彼の意思で死にたいのに止められる訳がないモナ」

( ´∀`)「……しかし、彼の『死にたい』って気持ちは
     その意味がしっかり変わってるモナ。
     単純に嫌だから死にたい、って訳でもないみたいモナ。

     ……ただ、償いとして死ぬのは最も愚かなことなのにモナ……」


( ´∀`)「……そうか。もう彼の所へ行きたいかモナ。
     ふ、気にするなモナ。君は元々彼のペットモナ。
     ……私の事など気にせず、隣に行ってやりなさいモナ」

( ´∀`)「…………っ」


( ´∀`)「神様だって、泣いてしまうこともあるモナ」


( ´∀`)「……運命は私が決めてる訳じゃないんだモナ」


( ´∀`)「ですからどうか……どうか彼等に死後での祝福を。」


(∀` )「……少し涙腺緩んだモナ…………」




神様は、そう呟いてうっすらと雫を残していった。



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俺は公園のベンチに戻されたのを確認すると、
がらんとした高校に歩いて行く。

そして、自殺を遂げた。




――それからのVIP町は俺が死ぬ前と何も変わらない。

死んだ人間が存在主張など、出来るわけがないのだから。



(,, ゚Д゚)「ギコハハハ!そりゃあいい!
     ……そういえばな、ここに来る途中、変なガキがぶつかってきてな。
     鉄拳制裁を喰らわせてやったぜwwwwゴルァ!」



俺は死ねなかったけど、死ねた。



( @=@)「警部!自殺した少年の遺書です!」

( ´_>`)「……見せてみろ……何?

     『ピヨすけがいなくなってから生きててもつまらなくなってきた
     自分の優柔不断な性格が原因です。お母さんごめんなさい
     みんなが生きる分、俺は自分のやるべき事をやりました

     最後に、俺が死んだから死んでしまった人たち、迷惑かけてごめん』

     ……か……訳がわからんな」


俺が生きた時間はみんなも生きた時間。
でも、その先を生きたみんなの時間は、俺は知らない。




( ^ω^)「なぁ……ドクオ。何で死んじゃったんだお?
     俺が支えてやれる事はなかったのかお?」

( ^ω^)「……なぁ……返事……してくれお…………」


( ^ω^)「デス〇ィニー……クリアしてないお」


( ^ω^)「ドクオと……一緒に……」


俺一人死んだところで、誰の記憶にも気持ちにも残らない。


( ;ω;)「ドク……オ……」


そう、思ってた。




(´・ω・`)「あいつ……何で話しかけてきたんだろ……」

(´・ω・`)「友達に、なりたかったな……
      今度会った時は、僕から話しかけてみよう…………」


俺が死のうとしてから、やっと死ねるまで、長かった。


その間気持ちに変化が無かった訳じゃない。

死にたくなかった。

だけど、死ぬしか方法はなかった。


……不思議と、俺は天国でも地獄でも暮らしていける気がした。



できるなら、またピヨすけの隣で。



昇って行く俺の魂は、VIP町を見下ろす。

また、ここに来れる気がした。


――――
―――
――



七月の暑い日、昼から墓地に歩いてくる少女二人の足音が聞こえてくる。

それは、去年できたばかりのこじんまりとした墓の前で音を止めた。


(* ゚ー゚)「ドクオ君…………」

川 ゚ -゚)「…………」


俺が自殺してから、警察は学校で聞き込みをしていた。

やはりいじめの噂はたっていたらしく、あの二人に捜査が移ったようだ。

そこでピヨすけのことを自白したらしく、
俺の墓まで謝りにきた。しぃちゃんやクーさんにも謝ったらしい。


(* ゚ー゚)「ドクオ君……私達が勘違いして責めたから…………」

川 ゚ -゚)「本当に…………ごめん」

(* ゚ー゚)「これ、見たよ……」

しぃちゃんはそう言うと、一冊のノートをまだ綺麗な墓に立掛けた。

表紙には、「ピヨすけノート」の文字。


(* ゚ー゚)「これ……すごいね…………小鳥の育て方とか、餌のあげかた、
     寝床の作り方とか全部書いてあるんだもんね」


ハムスターならともかく、小鳥の育て方なんて知らなかった俺は、
育てるにあたって必要な情報を全てこのノートに書き出した。

どうやら、遺品整理の際に見つかってしまったらしい。

(* - )「こんなに……一生、懸命……ふぇ、ふぇぇ……」

川 - )「なん、っで……早く言って……くれな、かった、っんだ……」

ヒック、ヒックと声を出して泣いているしぃちゃん達。

おいおい、遺書にも書いたがそれは俺が優柔不断だったせいだよ。
この声は、届かないんだね。

……死人に口なしとはよく言ったものだ。


――――


……しばらく俺の墓をきれいにしてから、思い出話などをしていた二人。
街は暗くなり、この集合墓地も雰囲気が出てくる時間だ。


(* ゚ー゚)「…………帰ろっか」

川 ゚ -゚)「……そうだな」


もう一度、墓に手を合わせる二人。

(* ゚ー゚)「あっ、こっちもだよ、クー」

川 ゚ -゚)「わかってるって」


俺の隣の墓にも手を合わせる二人。
…………ありがとう。本当に、

10_20091229190120.jpg



(* ゚ー゚)「!」

川 ゚ -゚)「どうした、しぃ」

(*;゚ー゚)「今、ドクオ君が……」

川;゚ -゚)「!……私も聞こえた」


(* ゚ー゚)「……ドクオ君が見守ってくれてるのかもね」

川 ゚ -゚)「ああ……」



俺の横にはピヨすけがいる。

しぃちゃんやクーさん達だってたまに来てくれてるし、
兄貴も友達も来てくれた。
公園の……あいつも通りすがった気がする。

よくわかんねーけど、いじめっ子のやつらも定期的にくる。



……俺、今すげー幸せだよ



パラレルワールド。

俺が死ぬ未来と、死なない未来。

ピヨすけが与えてくれた、最後のチャンスだったのかもしれない。



ぽつんとたたずむ俺の墓とピヨすけの墓。

夏の暑い日にはいつも賑わっていた。


11_20091229190120.jpg







('A`)は死ねない身体のようです
       ――Fin――






この小説は2007年1月9日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は◆7LSQOr2ojE 氏
記事元は面白蛇屋さんになります

この作品のサイドストーリーはこちら



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[ 2009/12/29 19:08 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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