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三丁目の('A`)ドクオ達のようです 第十九話


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




( ・∀・)「なあ」

('A`)「はい」

( ・∀・)「やる事があるってのは有り難い事なんだな」

ビル群の隙間に夕日が吸い込まれていく様な、そんな光景が見られる時間帯。
ガラクタの上から遠くに見える表通りを眺めて、そんな事をモララーが呟いた。

('A`)「そうですかね?」

( ・∀・)「ああ。僕は知っての通り……こんな境遇には心底うんざりしているんだが、
      それでもこうして愚痴りながらもやってこれたのは、つまりそういう事なんだろうな」

この頃のモララーは、情緒不安定な傾向は相変わらず出ていたものの、出会った当時よりも幾分丸くなっていたような気がする。

いや、どうなのだろう。
ひょっとしたらそれは彼の演技だったのかもしれない。
いつも愚痴に付き合ってくれた俺に対する、ひとかけらの温情だったのかもしれない。
膨大な知識と、彼の悲観的な思想を叩き込まれた俺だが、今でも彼の性格はよく分からなかった。



1_20091229114044.jpg

 
第十九話 六月十八日・昼下がり


('A`)「どうしたんすか、燃え尽き症候群みたいな事言って。まだ縄張りが安定するには時間が……」

( ・∀・)「いや、駄目だ。遅かった。間に合わなかったんだよ、私らは」

モララーは天を仰ぎ、淡々と言葉を続ける。

( ・∀・)「役所の人間が動いているそうだ。近いうち、保健所による私達野良の一斉駆除が始まるだろう。
      西区の猫は……増えすぎたんだ」

('A`)「役所の人間を見かけたからと言って、そうなるとは限らんでしょう」

( ・∀・)「気休めは止せ。……僕はね、こういう事を防ぐ為に、西区を統一しようと思ったんだよ」

('A`)「……」

( ・∀・)「だが──実際には、縄張り争いを激化させるだけでしかなかった。
      虚しいね、結局の所、僕も間抜けなただの野良猫でしかなかった訳だ」
( ・∀・)「私達が暴れれば、それだけ人間の目に付く機会も増える。
      すなわち連中の御機嫌を損ねる機会も増える訳だからね」

そう言って、モララーはけらけらと笑う。
彼の皮肉以外の笑顔というのは、まず見なかったような気がする。

('A`)「ですが、人間共の思い通りにしてやる義理も無いはずです」

( ・∀・)「ああ、その通りだよ。だがそうするには、僕達のグループは膨れ上がり過ぎた。
      モナーが余所で敬遠されがちな子供や弱い雌を多数引き入れた現状では、小回りが悪すぎる」

( ・∀・)「ただでさえギコのような奴らが離脱を画策しているんだ。
      下手なその場しのぎでは、グループの内部分裂を助長させるだけだな」

('A`)「そこまで分かっていながら、何故何もしないんです」

モララーは問い掛けに反応して、ガラクタの山の麓に佇む俺へと視線を移してくる。
その瞳には、何の光も灯っていない様に思えた。

( ・∀・)「それが一番良いからだ」
( ・∀・)「グループを解体させて、各々勝手に野垂れ死にすれば、
      駆除と合わせて多数の野良を減らす事が出来る。
      いずれ生まれた新しいグループが、一から西区を立て直してくれるさ」

('A`)「……。本気で言ってるんですか?」

( ・∀・)「ああ、もちろんだが。実に僕達野良らしい結末だとは思わないか?」

('A`)「…………」

( ・∀・)「──本音を言うとね、疲れたんだよ。
      僕がどれだけの言葉を投げかけたところで、その何割が皆に伝わる?
      私達野良の存続の為に不用意な繁殖は控えろと口酸っぱく指摘したところで、
      一体どれだけの猫達が理解してくれる?」

('A`)「…………」

( ・∀・)「そして例え理解できても、信じようとはしないんだ。
      知識を得れば得るほど、理解すればするほど、その先に待つのは絶望と恐怖だから」

('A`)「知らない方が良い事もある、って事ですか」

( ・∀・)「そうだな。僕達ははみ出し者、すなわち現実から目を背けたい連中の集まりだ。
      僕も……どこまでそれに抵抗出来たか疑わしいな」

('A`)「……」

( ・∀・)「知る事が怖いと、思った事は無いか? 私は最近そう思うよ。
      怖くて怖くてたまらない」

('A`)「あんたでもあるんですか、そういうの」

( ・∀・)「ああ。こうして実際に自分のやっていた行為が無駄だと悟ると、尚更そう思う」
( ・∀・)「ドクオ。君にも分かるはずだ。君なら……」

('A`)「ええ、そうっすね。少しは分かるつもりです」

今になって思えば、彼は彼なりに自身の考えに抗っていたのかもしれない。
自ら説いていた絶望とやらに誰より喧嘩を売っていたのは、他ならぬ彼自身だったとも思えてくる。

だがしかし、当時の俺は相変わらず話半分に聞いていた。
今日の夕食どうするかなとか多分考えていた。

( ・∀・)「……私は少し、散歩に出るよ」

モララーはひらりとガラクタの山から飛び降り、路地の向こうへと足を進める。
既に日は落ち、向かう先は暗くなりかけていた。

('A`)「もうすぐ夜ですよ、今からですか?」

( ・∀・)「ああ。少し、風に当たりたい」

('A`)「はあ。じゃあ早めに帰ってきて下さいよ」

( ・∀・)「ああ」

俺は顎を掻き、踵を返して近くの陣地へと戻ろうとする。
一歩踏み出そうとしたところで、背後から声を掛けられた。

( ・∀・)「ドクオ。僕は色んな事に後悔しているがね、君らを拾った事に関しては後悔してないつもりだよ。
      君には迷惑だったかもしれないが。
      だから……いや。何でもない」

('A`)「え? あ……はい」

( ・∀・)「……。すまないな」

独り言のような呟きを残して、モララーは路地の向こうへと消えていった。




翌朝、モララーは車道の脇で轢死していた。

この後、彼の言っていた通り保健所による野良猫の駆除が実施され、
東西地区の野良集団は共に大打撃を受ける。
ギリギリの状態で保たれていたグループの統率は完全に瓦解し、
モナーとモララー率いる屑鉄広場のメンバーは自然消滅的に離散した。

彼が何を言いかけて、何に謝っていたのか。
想像の範疇を出ないが、今は何となく解るような気がする。






('A`)「あー、だる」

蝉の鳴き声がやたらと耳に心地悪い、
そんな猫には厳しい季節。

塀の影からはみ出ないように進みながら、俺はその日もアテもなく東区をさまよい歩いていた。

('A`)「あぢー……クソ、冷えた水が飲みてー」

舌が届かない顎の下を、わしゃわしゃと右手で掻きむしる。
こんな時、頭から足の先まで真っ黒な自分の体毛が恨めしい。

('A`)「う゛」

暫くして。
じりじりと領域を狭めていた塀の影が、とうとう体を庇いきれない程になってしまった。
それもそのはず、頭の真上にはテンション最高潮なお天道さま。
これから地獄の時間帯に差し掛かると思うと、何とも憂鬱な気分だ。

('A`)「んあ?」

そんなギンギラギンにさりげない視界に、ふと影が差し込む。
顔を上げてみると──

(*゚∀゚)「危なァーい! どいてどいて!!」

俺の頭はアスファルトに叩きつけられ、ごしゃりと鈍い音を立てた。


(*゚∀゚)「おわーもう、あっぶないなー。お大事にね! そんじゃ失礼s」
(#)A`)「おいコラ待て」

どうやらちょうど塀から飛び降りた所だったらしい。
出会い頭に俺の頭を踏みつけて逃げようとした雌を、がっしと爪を立ててひっ捕まえる。


2_20091229114044.jpg


(*#゚∀゚)「あいたたた!! んだよ、やんのかァ!?」

(#)A`)「上から降ってきといてお大事にはねぇだろ。ごめんの一言も無いのか」

(*゚∀゚)「いいじゃんかよそん位! ロードローラーとかタンクローリーじゃないんだからさ!!」

(#)A`)「そんなモンが上から降ってきてたまるか。まず謝れ何よりも先んじて俺に謝れ」

(*゚∀゚)「ごめんなさいねごめんなさいね歪んだ顔を更に潰してごめんなさいねハイハイハイこれでおk?」

(#)A`)「よーし構えろ。泣かす」


三分後。

(*゚∀゚)、「あっれー、デカいのは態度だけかなぁ? だっさ。マジだっさ。ペッ」
(#)A(#)「…………」


(#)A(#)「そ、その内泣かしてやる……」

出会いは、こんな感じだった。
何ともみっともない話である。


彼女……つーに復讐する為、それから俺は事あるごとに彼女につっかかり始める。

それまであちこちに滞在していた俺だったが彼女が飼い猫であるという事を知り、
少し離れた所にあった、砂緒神社に住み着くようになる。

最初はぶっ飛ばす為に追い掛け回していたはずなのだが、いつの間にやらというか何というか、
俺は彼女と仲良くなっていた。
何でだろうね。今でもよく分からん。


('A`)「この蛇口っつうやつを回すとだな……ほれ、水が出る訳よ。で、戻すと止まる」

(*゚∀゚)「すげぇええ! 本当ドクオは頭だけは良いな! 頭だけは!!」

('A`)「一言余計だカス」

(*゚∀゚)「夏場は家に置いてある水すーぐヌルくなっちゃうからさぁ、
     いつでもイイ感じのが飲めるとこ探してたんだよねー」

俺が蛇口をひねり、つーが頭から水流に突っ込む。
夏場はこういう真似を誰でもしたくなるものだ。

(*゚∀゚)「うまうま! 水うまうま!」

('A`)「…………」

(*゚∀゚)「……なーによ。そのエロい視線は」

('A`)「アホか。いや、ちょっと前から気になってたんだが」

('A`)「何でお前飼い猫やってんの?」

(*゚∀゚)「……はぁ?」

('A`)「だってお前、普通にあの家抜け出せるだろ。
    飯だっていつも煮干しだし、あそこに居る意味ほとんどねーよ真面目に」

(*゚∀゚)「あのねぇ……そうか、あんた生粋の野良だもんね。分かんなくても仕方ないか」

('A`)「あ? 何をだよ」

つーはぶるぶると身体を震わせて水気を飛ばし、蛇口にしがみついている俺を見上げる。

(*゚∀゚)「あれで結構、良いとこあるんだよ。そりゃあ、気に入らないとこは沢山あるけどさ」

('A`)「馬鹿抜かせ、明らかにアレ俺を全力で殺しにかかってきてんじゃねーかふざけんな」

(*゚∀゚)「そりゃあんたが家の敷地でうろちょろするからでしょ……調子乗ってるとマジで痛い目みるよ?」

('A`)「ふん」

俺は鼻で笑い飛ばし、蛇口から飛び降りる。

(*゚∀゚)「とりあえず、私はそんなに嫌いじゃないんだよ。今の生活」

そう言って、にんまりと、彼女は笑うのだった。


(´・ω・`)「──そろそろ、動かないと危ないよ。ドクオ」

季節を幾つか越えた、とある繁殖期。
ばったり出会した古い知り合い──ショボンに、いきなりそんな事を言われた。

('A`)「何の話っすか」

(´・ω・`)「モナーが西区を完全に掌握した事は知っているだろう?
       これからは東区の縄張り争いが激しくなる、早めに居場所を決めておかないと」

('A`)「……ああ、そう。頑張って」

俺はあくびを噛み殺して、尻尾で追っ払うようにぶんぶん振る。

(´・ω・`)「……。言っておくけど」
(´・ω・`)「君は特異なんだから、動かなきゃ手に入る物も手に入らないよ。
       今の関係が楽だ、なんて思ってたら後悔するぞ」

('A`)「だからさっきから何を言ってんだお前は。何だ? 一緒に来いってか?
    ごめんだね、ギコみたいな事言ってんなよ。
    帰ってくれ。俺はもうそういうのヤなの。あとそのアドバイスみたいなん止めろ」

(´・ω・`)「…………」

ショボンの言っている事は、笑えるほど、当然の話だった。
一月も経過しない内に、俺はそれを実感する羽目になる。



(*゚∀゚)「うふふ」

('A`)「……」

(*゚∀゚)「えへへ」

('A`)「…………」

('A`)「マジキメェ。何だよどうしたよ」

(*゚∀゚)「あ、分かる? えへへ……あのさ。子供が出来たみたいなんだー」

('A`)「…………ほほう。……誰の?」

(*゚∀゚)「誰のって私のに決まってんじゃん。それより、どうしよう子育てとかやった事無いよー、大丈夫かなぁ」

('A`)「いや、あの……父親は?」

(*゚∀゚)「へ? いや、分かんないけど?
     ねぇドクオ、あんた頭良いし、子育てのコツとかそういうの分かったりしないの?」

('A`)「…………」

(*゚∀゚)「ドクオ?」

('A`)「っ、ああ、すまんボケッとしてた。子育て……まあ、一般的な知識、くらいなら……」

(*゚∀゚)「マジ!? んじゃさ、ちょっと手ぇ貸してよ! 頼りにしてんぜ!」

('A`)「…………ああ」



※    ※    ※

('A`)「…………」

(*゚∀゚)「おいっすぅ、何コレ?」

('A`)「ん。えーと……携帯電話」

俺の足元に転がっていた赤い物体を、つーが無遠慮につつき回す。
ストラップが蛸足配線のようにジャラジャラ引っ付いているのだが、これは果たして何か意味があるんだろうか。

(*゚∀゚)「おおー携帯ね、知ってる知ってる。誰の?」

('A`)「さあな。……シュー、頼む」

lw´‐ _‐ノv『全く、仕方のない子ね』

少し離れた場所で片手逆立ち腕立てをしていたシューは軽く体を跳ね上げつつ地面に着地し、
ストラップに携帯がひっついたその物体をひょいと拾い上げる。

lw´‐ _‐ノv『これは先生が預かっとくから、返して欲しかったら放課後職員室に来なさい。ね?』

('A`)「ごめんなさい、僕お腹痛いんで早退します」

左手をぞんざいに振り、シューを追い払う。
傍らにいるつーに向き直って、軽く頭を下げた。

('A`)「寝てる間に来てたんだってな。ハインの事、有難うよ」

(*゚∀゚)「手を離れたって言っても、ありゃ私の娘だよ? お礼なんかいらないさ」

('A`)「そうか。でも、余計な事は言わなくていい」

(*゚∀゚)「んー? 余計な事ってなーにっかなー?」

('A`)「……」

(*゚∀゚)「良いじゃないの。命の恩人くらい教えてやっても」

髭を揺らして、笑う。
以前よりもまばらになった感のある毛並みを眺めて、堅い吐息を漏らす。

('A`)「……あいつが、自分を責める結果になるだけかもしれんぞ」

(*゚∀゚)「んん。そうかな?」

彼女はこちらを横目でちらりと見て、遠くに見える東区の街並みに視線を移す。
数分ほど、経った頃だろうか。


(*゚∀゚)「あんたはきっと、知ってると思うけど」

('A`)「?」

(*゚∀゚)「わらしべ長者ってお話あるだろ?」

('A`)「ああ」

わらしべ長者つったら、ゴミ同然の藁一本を交換し続けて最終的に豪邸を手にしたという、
物々交換の猛者じゃないか。現代に生きていれば証券取引とかで相当儲けた事だろう。

('A`)「それがどうかしたのか」

(*゚∀゚)「あれって、どんどん良いもの貰っていくけどさ。
     手に入れようと思ったら、必ず今持ってる物を手放さないといけないんだよ。
     どんなに後から惜しいと思った所で、一度手放した物は二度と戻ってこないんだ」

('A`)「そりゃそうだな。物々交換なんだし」

(*゚∀゚)「……だからさあ。つまり、分かるだろ? あいつもその内、立ち直ってくれるさ」

つーは俺の方に向き直って、満面の笑みを浮かべる。
かつてその笑顔に、ほんの少しだけ──思いを寄せたような気がしないでもない。

('A`)「ああ。分かるよ。言わんとしている事はよく分かる」

ぶっつり途切れた右腕を舐める。


('A`)「──素人が株に手を出したら駄目だな」

(*゚∀゚)「……。まさか、ボケたの?」

('A`)「二つの意味で言ったんなら、だれうまと返してやろう」


('A`)「……はい、いい感じにオチがついたとこで。そろそろ行くわ」

(*゚∀゚)「え? もう? 飯でも食っていきなよ。シューがくれるよ」

('A`)「いや、そんなにまったりしてられんから。もうそろそろ戻って──」

( ^ω^)「ドクオ」

('A`)「お、ちょうど良いとこに来たな。ビロード呼んでくれ、そろそろ帰るぞ」

( ^ω^)「その前に。少し良いかお?」

('A`)「あん?」



※    ※    ※

('A`)「……何じゃこら」

つーの家の周囲、塀を登る時に入る茂みの中に、妙な土の塊がボコボコと出来ていた。
わざとらしく草とか被せてある。

('A`)「トラバサミかよこれ。アホくさ……俺がそんな鬱陶しいか」

鼻で笑って、ひょいと罠を避けつつ塀を登る。
口に手土産の子鼠をくわえ、颯爽と庭に飛び降りた。

(*゚∀゚)「んだよ、また来たの?」

縁側で丸くなっていたつーが、冗談ぽく微笑みかけてくる。

('A`)「ま、暇だから。ほい土産」

(*゚∀゚)「あーごめん、私もうご飯食べちゃったよ」

('A`)「あ、そう?」

子鼠をその辺に転がしつつ、辺りを見回す。

('A`)「チビは?」

(*゚∀゚)「その辺に居るんじゃないかな。最近は元気が良すぎてついていけないよ」

('A`)「現役で俺をボコボコに出来るくせによく言うぜ……さて、可愛い幼女を探しに行ってくるかね」

(*゚∀゚)「うわ……」

若干引き気味のつーの声を背に受け、俺はチビを探索し始めた。


('A`)「おーい、ここにいんだろ? 出てこいやー」

薄暗い床下をうろちょろしてみたが、小さな白い猫の姿は見えない。
はて、最近はいつもこの辺りで虫とかと戯れているんだが。

('A`)「…………」

床下から顔を出した俺は、正面の庭を眺めた。
視線を横にスライドさせると、ちょうど垣根が視界に入る。

('A`)「……──」
('A`)「待て待て待て待て待て」

縁側からは死角に位置する塀に、チビがよじ登り始めていた。
いつの間にかこんな力つけてたのかとか感心してる場合じゃない。
向こう側には──

(#'A`)「くそッ!!」

一も二も無く、床下から抜け出して一直線に庭を駆け抜ける。
チビは塀を登り終え、その高さにたじろいでいた。
しかし、目線は既に外を向いている。

(#'A`)「駄目だ!! 降りるな!!」

チビは俺の声にびっくりしたようだが、まだその制止が理解出来る年ではなかった。
緩慢な動きながら、チビは今まさに飛び降りようとしている。

(#'A`)「ッだらああああああああああああああああああああ!!」

俺は今後一生出せない程のスピードで地を疾走し、速度を殺さぬまま塀を駆け上がる。
塀から足を離した、チビの背後目掛けて、腕を全力で伸ばす。
チビを抱えて宙をきりもみしている最中、やけに周囲がスローになっていた。




ばきん。



3_20091229114044.jpg




案外軽い音だったような気がする。
せき止められた水が流れ出すように、時間の感覚が一気に引き戻される。
気づいた時には、俺の右腕は見事、明後日の方向に折れ曲がっていた。

('A`)「──……………ッ、………ッッ!!!!!!」

遅れてやって来た凄まじい痛みに、歯を軋ませながら絶句する。
左手に抱えていたチビが、込められた力に苦しそうな声を上げた。

(*;゚∀゚)「ど、ドクオ!?」

(#'A`)「降りるなッ!!!!」

塀に登ったらしいつーに、すかさず叫ぶ。
チビも離す訳にはいかない、離せば近くの罠に引っかかってしまう。
痛みに半分以上吹き飛びかけている意識を必死にかき集めながら、言葉を続ける。

(#'A`)「し…………茂みの中は、駄目だ……、ッ、罠が…………飛び越え……!」

まともなセリフを吐く余裕は無かった。
つーは察してくれたのか、素早く茂みを越えて飛び降り、離れた所から声を掛けてくる。

(*;゚∀゚)「ドクオ、腕が!」

(#'A`)「……、っ…………チビ、を…………!」

左手でチビを強引につーへと突き飛ばし、空いた手をトラバサミの隙間に引っ掛ける。
当然ながら、猫の非力な力ではビクともしない。


遠くから、人間の声が聞こえてくる。
つーの飼い主だ。
このまま見つかればどうなるかは、火を見るより明らかだった。

(*;゚∀゚)「ウチの人が来るよ!」

(#'A`)「知っとるわ……!」

外すのは諦め、右手に食い込んだトラバサミごと、震える身体を強引に持ち上げる。
繋がれた鎖がじゃらりと耳障りな音を立てた。

(#'A`)「んぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ…………!!」

右手を持ち上げ、トラバサミに噛み付く。
身体を捻って、両足に力を込める。
繋がれた鎖がビンと張り、腕に振動を伝えてきた。

(*;゚∀゚)「ど、ドクオ……!」

骨が軋む音が聞こえる。
挟まれた筋肉が、悲鳴をあげている。
構わず、俺は両足をひたすら突っ張り続けた。


(#'A`)「──ッッらぁ!!」

右手を振り抜く。
土くれと一緒にトラバサミの設置部分を地面からひっぺがし、そのまま茂みから抜け出す。

(*;゚∀゚)「ドク──」


既に痛覚は麻痺していた。
そして何も聞こえなかった。
何かを考える余裕も無く、
一心不乱に、
小汚い鉄の塊を引きずって、
アスファルトの上を走る。


視界が滲む。
生まれて初めて、涙を流していた。
痛みに因る物だとは分かってはいたのだが、自分でも意外だった。



私たちの未来に待つのは──



あいつの声だけが、頭の中を延々巡り続けていた。



※    ※    ※

('A`)「どうした?」

( ^ω^)「……」

青々とした草原の真ん中で、ブーンは立ち止まる。
一瞬躊躇したような素振りを見せたが、続く言葉にはその気配は感じられなかった。

( ^ω^)「病気、あとどの位持ちこたえられそうなんだお?」

('A`)「……、気づいてたのか」

( ^ω^)「……ショボンがギコさんと話しているのを偶然聞いちゃったんだお」

特に驚きはなかった。
実際誰も言わないだけで、本当は皆分かっているのかもしれない。
野営組には、きちんと話をしておかねばとは思っていたのだが。

('A`)「そうか。病状は、まぁ、ロスタイムだよ。負けてる方のサポーターが本格的に焦りだしとる」

( ^ω^)「…………ショボンから、伝言があるお」

('A`)「俺に?」

( ^ω^)「だおだお。……」

( ^ω^)「幸せだったと伝えてくれ。絶望なんかこれっぽっちも、感じた事はなかったって。
       先にあの世でモララーを、笑い飛ばしてくるよ。って」

ブーンの言葉越しに、ショボンの声が脳内再生される気がした。


('A`)「……。何とまぁ、クサいリップサービスだこと」

嘘こけ。
お前がどんだけ苦労したのか、俺には想像も出来んぞ。
最後の最後までお節介な野郎だ。

( ^ω^)「……でも。ショボン、何だか、本当に嬉しそうだったお」

('A`)「……」

('A`)「なあ。俺がネコ白血病にかかってるってのは知ってるんだよな」

( ^ω^)「ん、一応は」

生温い風が、草花と俺たちの毛並みを撫でていく。

('A`)「この病気はな、野良猫の間で急速に流行りつつある。
    発症する力は大した事ないらしいんだが、結構簡単に感染しちまうんだ」

俺はこの病気について知ってから、他の猫と毛繕いした事もなければ、された事もない。
喧嘩の時に爪や牙をたてるなどもってのほかだ。

('A`)「んで、一度発症しちまうと、治療する術が無いらしい。
    進行を遅れさせたりとか自己治癒を促したりとかそんな感じのは出来ても、
    根本的な治療法は確立されてないそうだ」

( ^ω^)「…………」

('A`)「知っての通り、野良は争ってナンボの世界だ。
    こんな感じの病気は更にはびこるだろうし、人間も、更に俺たちの処遇を厳しくしてくるだろう。
    どうよ、先行きは暗いぞ」

( ^ω^)「……。どんなに病気が流行ろうと、人間が何かしようと。僕みたいな猫はこれからも増え続ける。
       それ位は僕でも何となく分かるお」

('A`)「……」

( ^ω^)「ヘタレな僕がこうして野垂れ死んでいないって事は、やるべき事は一つだと……そう思ってるお」

いつものように、笑う。
この雄は本当に、平然とド真ん中に直球を放ってきやがるな。


('A`)「……。はは」

( ^ω^)「む、何だお。感じ悪いお」

('A`)「あ、いや、すまん。……そうか、そうだよな……」

( ^ω^)「?」

そうだな、きっと俺の番なのだ。
言ってやらねばならないだろう。
まさか俺が、この台詞を吐く時が来るとは。


('A`)「俺はさ。色んな事に後悔して、何とかかんとかここまで生きてきたんだけど──」

('A`)「お前らに会えて、良かったよ。お前らにゃ迷惑だったかもしれないが」

('A`)「──……だから。死ぬなよ」

( ^ω^)

('A`)

( ^ω^)「……いきなり何言ってんだおw誰だって死にたかねーおwwwwwwww」

('∀`)「でwwwwすwwwwwよwwwwwwねwwwwwwwwwwww」

( ^ω^)「つかその前にクセェwwwwwwwwこの部屋臭うよwwwwwwww」

('∀`)「フヒヒwwwwwwwwwwwwサーセンwwwwwwwwwwww」




( ><)「あのー、そろそろ行きませんか?」


('A`)「あ、ごめんなさい」
( ^ω^)「すまんこ」



第十九話 終





この小説は2009年1月12日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:ehWa5FcVO 氏

続きはこちら



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[ 2009/12/29 11:44 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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