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三丁目の ('A`) ドクオ達のようです 第一話


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




……。
…………。

あれ?死んでない。

流石の俺もここまでかと思って、
たっぷり走馬灯を見る準備をしてたんだけどな。

('A`)「…………」

目を覚ましてまず最初に見えたのは、鉄格子だった。その向こう側から、見知らぬ人間がこちらを見つめている。
どうやら俺は今、狭苦しい檻の中らしい。

腹が痒いのだが、首の回りに妙な物が巻かれて舐めることが出来ない。
何だこれ、エリマキトカゲか俺。

('A`)「ちっ、何だよここ」

鉄格子に近づくため重たい腰を上げ……ようとして、失敗した。
右手に力が入らない──いや。

('A`)「……?」


俺の右手は、無くなっていた。


川 ゚ -゚)『すまない。右前足はほとんど壊死していて、切除するしかなかったそうだ』

目の前に居た女が、淡々と告げる。

('A`)「……あ、そ」

片手じゃ餌も満足にとれないが、今更どうでも良かった。
死ぬのが少し早いか、遅いかの違いだけだ。
どうでもいい。思い残すことも無い。俺はもう、いっそこの場で──

川 ゚ -゚)『お前は今日から、うちの猫だ。名前はクロ助。良い名だろう?』

('A`)「……。は?」

助ってなんだよ。




1_20091229104054.jpg



第一話 五月十八日


('A`)「やっぱ起き抜けはグッモーニン日本だわ……
    めざもしは何か疲れる」

俺の一日は、朝のニュースを見ることから始まる。
仲間に話したら笑われたが、これはかなり重要なことだと思う。
個人的に。

『昨今、ニートという言葉が一般的になってしまうほどに、
働かない若者たちが増加の一途をたどっていますが──』

ニュースキャスターが何か社会問題らしきニュースを淡々と語っている。確かによく聞く言葉だ。
ニートというのは、何でも自分ではまるで働かず、
勉強もせず、親のスネをかじりにかじって日々をだらだら過ごしている人間のことを言うらしい。
聞いた限りでは実に楽そうな身分だ。

('A`)「でも、ホントなのかね」

毎日のん気に気ままに寝て過ごしてると思われてる俺たちと同じく、
偏見や思い込みがあるんじゃなかろうか。
いや、俺は確かにのん気に気ままに生きちゃあいるけど……
それだけじゃあ無いのよ、と。


川 ゚ -゚)『クロ助ー、ご飯だぞー』


川 ゚ -゚)『すまんなクロ助、ちょうどエサを切らしてしまった。今日仕事帰りに買ってくるから』

('A`)「何ですと!?」

クーがいつものポーカーフェイスで差し出してきたのは、
ご飯に味噌汁をぶっかけた代物──いわゆる「猫まんま」だ。
俺は正直、このむやみやたらと塩分過多な物体が好きじゃない。

('A`)「だいたい今時猫まんまなんて、近所のババア達でも出さねえぞ……」

とりあえず、鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。
鼻の中に味噌の香りが満ちて、何かもう食う前からしょっぱい。

川 ゚ -゚)『……駄目か?』

一向に食い始めない俺を、クーは黙って見つめてくる。駄目に決まってんだろ、膝抱えてこっちみんな。


('A`)「……」
('A`)「マジしょっぺえ」

川 ゚ ー゚)『ふふ。よしよし』



('A`)「うっぷ、もう食えね……」

結局、完食してしまった。
水をガブ飲みして水分補給すると、床にごろんと寝転がる。
右手の傷跡をぺろぺろ舐めながら仰向けにテレビを眺める。
いつの間にか画面はめざもしに変わっていた。
クーが家を出るのは今日のわんころが終わってからだから、まだ少し余裕がある。

それにしても息が味噌汁臭い。

('A`)「俺もう一生猫まんま食わなくていいわ……」
川 ゚ -゚)『猫まんまも好きなんだな、クロ助は』

クーが椅子に座ったまま、俺の腹を足で撫でてくる。
気持ちいいけど猫まんまは止めろ。

('A`)「嫌だ止めろ二度と出すな」

川 ゚ -゚)『まあ私が腕によりをかけて作ったインスタント味噌汁と無洗米だからな、
     気に入るのも無理はないか』

('A`)「黙ってろ行かず後家」



俺は必死こいてこいつの言葉や、感情の機微を感じとれるように頑張っているというのに、
人間たちは俺達の言葉がまるで分からないようだ。
というか、分かろうともしてない。

川 ゚ -゚)『ん、時間だな。行こうかクロ助』

クーがテレビを消して立ち上がり、玄関の方へと向かう。俺も大人しくそれについていく。
彼女が扉を開けたと同時、俺はわずかな隙間から外へと抜け出す。

川 ゚ -゚)『それじゃあな』

('A`)「ああ」

ドアに鍵をかけて仕事とかいうのに向かう彼女を、尻尾をぴこぴこ振って見送る。

('A`)「さーて、パトロールにでも行くか」

塀に飛び乗り、伸びをする。
ひょこひょこ頼りない足取りで、俺は自らのテリトリーへと向かった。


※   ※   ※

(#^ω^)「マーーオ」
(#´・ω・`)「マーオ」
(#^ω^)「マーーーオ!」
(#´・ω・`)「マーーオ!」

2_20091229104054.jpg



('A`)「…………」

俺がいつもの場所に行くと、馴染みの顔二匹が毛を逆立てて睨み合っていた。
朝っぱらから何やってんだ……

('A`)「おいお前らー、近所迷惑だろうがよ。殺されるぞ」
(#^ω^)「マーーーオ!」
(#´・ω・`)「マーーオ!」

二匹は俺の言葉をシカトして、鼻先が触れ合うような距離でメンチを切りあっている。

('A`)「お前らいい加減に……」

(#^ω^)「マーーーーーーーーオ!!!!!!」
(#´・ω・`)「マーーーーーーーオ!!!!!」
('A`)「ギャフベロハギャベバブジョハバ」

数分後、そこには力無く地面に横たわる小汚い黒猫の(ry

('A`)「もう喧嘩の仲裁なんてしないよ」

( ^ω^)「いやーすまんこすまんこ」
(´・ω・`)「若気のItalyってやつだね」
('A`)「このクソったれ共め。俺の味噌臭い息を喰らえ」
( ゚ω゚)´゚ω゚`)「ぬわーーーーーー!!!!!!」



この馬鹿猫二匹は、ブーンとショボン。
体格の割といいシャムがブーンで、小柄な黒ぶちがショボン。
俺が飼い猫になってからも付き合いのある、古い知り合いだ。

( ^ω^)「ドクオマジで息くせぇおwwww」

(´・ω・`)「身体に悪い臭いだね」

('A`)「だろ?我が飼い主様から猫まんまを馳走してもらってな」

ドクオというのは、元々の俺の名前だ。

(´・ω・`)「猫まんまだって?そんなゲテモノ育ち盛りの子猫たちでもヌルーするよ」

( ^ω^)「どう見てもゲロです」

('A`)「本当にありがとうございました」

やはり今時猫まんまは流行らないようだ。二度と食わないように気をつけよう。

('A`)「そういやお前ら、何で喧嘩してたんだ?」


(#^ω^)「よくぞ聞いてくれたお!
       ショボンの奴、ブーンのフィアンセに手を出すとか抜かしよったんだお!!」

(´・ω・`)「恋をする権利は誰にだってあるさ。
       僕だっていつでもksmsな訳じゃない」

何だ、色恋沙汰か。
俺はその場に座り込むと後ろ足で顎を掻き、聞き流しモードに移行する。

('A`)「へえ。しかしブーン、お前にフィアンセなんていたか?」

(*^ω^)「おっおっお、ふさふさ毛並みがテラカワユスなあの娘だお!」

そう言えば、春先にそんなことを言っていた気がしないでもない。
が、あの娘と言われても全く知らない。

( ^ω^)「そろそろ頃合いだし、めでたく結ばれようかと思ってるんだお♪」

音符うぜえ死ね、と思ったが口には出さないでおこう。

('A`)「音符うぜえ死ねよカス。
    ……ああ、そうか。そろそろ女たちが発情期だもんな」

(´・ω・`)「ブーンの後でも良いから仕込ませてくれ、って言ったらキレられたんだ。
      酷い話だろう?」

('A`)「酷い話だな。色々と」


(´・ω・`)「だいたい、僕たちはどんどん子孫を増やさなきゃいけないのに、
      相手を限定したり独占したりするのは実におかしいことじゃないかい?」

('A`)「まーそう思うのが常識だわな。人間倫理的にゃアウトらしいが」

飼い猫として過ごしていると、連中の価値観とかそういうのもだいたい分かってくる。
ブーンは元は飼い猫だったから、人間たちの影響を色濃く受けているのだろう。

(#`ω´)「野良界じゃまだそんな横暴がまかり通ってるのかお!? 実にけしからんお!!」

('A`)「そう言ってやるな、お前がマイノリティなんだよ。
    ……だが、まぁ一理あるかもな。もう産めや増やせの時代はオワタ」

(´・ω・`)「おや、ドクオ。ブーンの肩を持つの?」

('A`)「別にお前を非難するつもりはねえよ。やりたきゃやればいい」

(#`ω´)「こらドクオ! めっ!!」

('A`)「お袋かお前は。少しはそのフィアンセとやらを信用してやれよ」

( ^ω^)「……お?そうだおね。
       ツンのガードはブーンにすら破れないんだから、そう簡単にはいかないんだったお!」

破れてないのか。
と呟きそうになったが、無理やり飲み込んだ。

('A`)「お前もちゃんと相手の話聞いてからにしろよ」

そんなに綺麗な猫なら十中八九飼い猫だろう。高級な血統種、とかいうのかもしれない。
そういう猫の飼い主は、その類にデリケートなことが多いからな。

(´・ω・`)「なんだか随分慎重になったね。飼い猫になって考え方が変わったのかい?」

('A`)「まぁな、つうか去勢されたから他人事になったせいかも分からんね。
    右手も性欲も無くなりゃ、そりゃ価値観だって変わるぜ」

ショボンは半ばまでになった俺の右腕を見て、髭を上下に揺らす。

(´・ω・`)「そうか……すまない。確かに変わらない方がおかしいね」

ショボンは一呼吸おいて、続けた。

(´・ω・`)「でも僕も、この身体の奥から溢れ出る性欲を抑えることはできない。
      あの気取った雌猫共に僕の子を孕ませたくて仕方ないんだよ」

('A`)「はあ。さいですか」

( ^ω^)「そうはいかんざきだお! どーせ返り討ちにあうおwww」

('A`)「最近のメスは強いからな……」

(´・ω・`)「……やりたいのにゃー、オスでもいいからやりたいのにゃー」

('A`)「転がりながら鳴くなキモい。
    てかksmsじゃないとか子孫云々はどこ行ったんだよ」

(´・ω・`)「君もチンコは無くてもアナルはあるんだろ?やらないか」

('A`)「だが断る。チンコあるし」


こんな他愛もない雑談を交わしながら、こいつらと昼まで過ごすのが恒例となっている。

俺たち三匹がいる場所──通称「ひだまり広場」は、今でも俺が持ってる唯一の縄張りだ。
四方をマンションや住宅に囲まれた空き地で、人間たちには中途半端な広さなのか、
随分前から放置されたままの土地のようだ。

地面もあり、草木もあり、夏には虫だっているし隣の庭に忍び込めば池の水だって飲める。
まさにちょっとした楽園だ。



('A`)「そろそろ昼だな」

( ^ω^)「もうそんな時間かお。どっか食べに行くお?」

('A`)「わり、今日俺食欲無いわ。パス」

(´・ω・`)「じゃあ僕たちは適当に食べてくるよ。また後でね」


( ^ω^)「ツンは絶対渡さんお」
(´・ω・`)「別に欲しい訳じゃないよ、一回させてくれれば良いだけで」
( `ω´)「そんなこつしたらブーンさん怒っど!」
(´・ω・`)「チッ、融通がきかないなあ……」

非生産的なやりとりを交わしながら広場を退場していく二匹。
まずはそのツンて娘に意見を求めるべきじゃないのか?どうでもいいけど。

('A`)「……あったけえ」

ひだまり広場の真価は、お昼時にある。
四方を囲まれているにも関わらず、日当たりが何気に絶妙なのだ。

草むらの中で丸まって、日の光を浴びながらまどろむ。一度味わうとやみつきになる気持ちよさだ。




今日は具合のいい風も吹いている。これなら気持ちよく昼寝することもできるだろう。
と、思っていた矢先。

('A`)「ん?」

耳をぴこんと立てる。塀の上から誰かがこちらを見下ろしていた。
誰かが、とは言ったが、何者かは一目見てすぐに分かった。

(,,゚Д゚)「よう。元気かゴルァ」

('A`)「ギコか、久しぶりだな。昼寝しにでも来たのか」
(,,゚Д゚)「お前の顔でも見に来ようかと思ってな」

ブーンよりも更に体格のいい灰色の猫が、塀を降りて向かい合うようにどっかり寝転がる。
相変わらず異様な威圧感だな。

('A`)「お前、ここ来たの初めてだっけ」
(,,゚Д゚)「いや、前にも来たぞ」
('A`)「そうか」
(,,゚Д゚)「ああ」
('A`)「…………」
(,,゚Д゚)「…………」

(,,゚Д゚)「右手の調子はどうだ?」
('A`)「慣れれば平気だな。塀に登るのにちょっとコツがいるけど」
(,,゚Д゚)「そうか」
('A`)「ああ」
(,,゚Д゚)「…………」
('A`)「…………」


いかん、眠い。
もう昼寝モード入ってるから会話に身が入らねえ。
寝ていいかとか聞いたら怒るかね、でも勝手に寝たら更に怒るよな。


('A`)(,,゚Д゚)「なあ」

('A`)「あ」

(,,゚Д゚)「何だ、先に言っていいぞ」

('A`)「いや、何でもない」

(,,゚Д゚)「いいから先に言え、ゴルァ」

('A`)「えー……っと、ウチの飼い主が最近お茶に凝っててよーって話」

(,,゚Д゚)「ああ、良い匂いだよなあれは」

('A`)「お、おう。だよな。
    で、お前は」

(,,゚Д゚)「…………」

何だよ、そこで黙るなよ。
眠いだろ。

(,,゚Д゚)「ここは良いとこだな」

ギコが辺りを見回しながら、ぽつりと呟いた。

('A`)「……まあな」

(,,゚Д゚)「こんな良い場所、遊ばせとくにはもったいない。そう思わねえか」

('A`)「地上げ屋みたいなこと言うんだな」

(,,゚Д゚)「地上げ?ともかく、俺は本気だぜ。この縄張り、俺に譲ってくれないか」

('A`)「…………」

ギコの眼は本気だった。
奴の全身から放たれる迫力を受け、背中の毛が粟立つのを感じる。
しんどくなって、俺は目をそらした。

('A`)「そうしたいのはやまやまだけど、ここは共有地みたいなモンだしな。
    近所のガキ共にも使わせてやってるし」

仰向けに寝転がり、抜けるような青空を見上げる。天候は実に良好だ。
そろそろ梅雨にさしかかってくるはずだが、
地面の温かさも、風の穏やかさも、全くそれを感じさせない。

不意に、視界の端ににょっきりギコが入り込んできた。

(,,゚Д゚)「注意しろよ。周りのボス猫だって、こんな良い場所ほっとかないだろうぜ」

('A`)「そんときゃ、尻尾巻いて逃げ出すだけさ」

ギコは喉の奥で笑うと、踵を返して塀の上へと飛び乗る。
見てはいないが気配で分かった。

(,,゚Д゚)「俺は帰る。縄張りを見回らにゃならんからな」
('A`)「忙しいんだな」
(,,゚Д゚)「ああ。いずれここら一帯を取り仕切ってやるさ」

こいつ──ギコはこの界隈では有名な猫だ。力も、人望もある。
こいつもまた、数少ない知り合いの一人だった。

('A`)「……ギコ」
(,,゚Д゚)「あ?」

('A`)「警告ありがとよ」
(,,゚Д゚)「……。ケッ」

塀の上にいるであろうギコが、音も無く去っていく。

普通の奴なら「危ないからここを譲れ」とか、
そういう切り口で話を持ちかけるのが定石だろうに。奴は相変わらずのようだ。

('A`)「まあ、待っとけ。そのうちやるから、な?」

俺は空に向かって話しかけ、いつの間にか、そのままの体勢で寝こけていた。




('A`)「……ッあ゛~、よく寝た」

背筋を思い切り伸ばし、頭を振る。

既に日は傾きかけていた。
近所をぶらぶらして家に帰れば、ちょうどあいつが帰ってくる時間帯になるだろう。
広場の所々でだらだらしている野営組を見回して、軽く尻尾を振る。

('A`)「んじゃあ俺、そろそろ帰るわ」

連中から了解の合図(尻尾を振るだけ)を受け、俺は塀へと飛び乗る。
と、見慣れた一匹が側に走り寄ってきた。

( ^ω^)「ドクオー! 今から空いてるかお?」

('A`)「ブーン?ああ、そりゃまあ空いてるが」

( ^ω^)「それじゃ、ちょっと付き合わないかお?」



('A`)「……公園じゃないなら」



※   ※   ※


( ^ω^)「ここだお」

ブーンに案内された場所は、住宅街の中心地……
一番古い家屋が建ち並ぶ区画だった。

('A`)「お前、こんなとこほっつき歩くなよなぁ」

( ^ω^)「おっおっお、雄は冒険してなんぼなんだお」

ブーンが指し示した家は、ぱっと見ただの一軒家に見えたが、
小綺麗で作りがしっかりしていた。
こういう場所には、それなりの金持ちが住んでいる。

('A`)「んで?この中にお前のフィアンセがいる訳か」

周囲は垣根にぐるりと覆われ、侵入するのは骨が折れそうだ。
七面倒臭いとこにフィアンセなんぞ作りやがって。

( ^ω^)「そうだお。こっちだお」

連れられて屋敷の裏に回り込むと、ブーンは垣根の隅におもむろに頭を突っ込む。

(#`ω´)「ふんぐっ! ぬ、ぬ、ぬうううん!!」

窮屈そうに足をバタバタさせて、中へと潜り込んでいく。


('A`)「よく見つけんなー、こんな穴」

ブーンよりも小柄な俺は、体を丸めれば割と楽に垣根をくぐることができた。


('∀`)「……ほお……大したもんだ」

垣根の向こうに広がっていた景色に、俺は素直に感嘆した。
いわゆる日本庭園というやつか。
左右非対称に敷かれた飛び石、澄んだ水がたたえられた池、宙空をつかむようにくねった枝を伸ばす松。
俺たちのようなただの猫が、そうそう見られる代物ではなかった。

( ^ω^)「ツン! ツーン!! ドクオ呼んできたおー!!」

ξ ゚⊿゚)ξ「うるさいわね、そんなに大声出さなくても分かるわよ!」

ブーンの無遠慮な呼び声に負けないくらいの大声で、縁側から毛の長い猫が返事をしてきた。
一目で血統種と分かる、綺麗な毛並みを持つ雌猫だった。

3_20091229104054.jpg



ξ ゚⊿゚)ξ「ふーん、あんたがドクオ?何か聞いてたより弱っちそうね」

('A`)(何というテンプレートなタカビーお嬢様……
    これは間違いなく純粋培養……ッ!)


何でまたこういうのを捕まえるかな、よりによって。

('A`)「……悲しいかな、これって現実なのよね」

ξ ゚⊿゚)ξ「ま、良いイメージなんて大抵裏切られるわよね。
      私はツン、ここの飼い猫よ。よろしく」

('A`)「はあ」

ξ ゚⊿゚)ξ「立ち話も何だから、縁側に行きましょう。
      うちの人はまだ帰ってこないし」

(*^ω^)「遠慮無くお邪魔しますおー」
ξ ゚⊿゚)ξ「あんたはもう少し慎みを覚えなさい」
('A`)(お前モナー……)


そんな訳で俺は何故かこの凸凹カップルと共に、
縁側で世間話をするハメになった。

庭の景色は絶景だったが、ツンの食べている餌が俺のそれより数倍高級なこと、
飼い主が買ってくる妙ちくりんな猫用オモチャで毎日遊び呆けていること、
普段はこの日本庭園を見ながらまったりとひなたぼっこしていること等々、
聞いてて鬱になるような話ばかりだった。

(*^ω^)「おっおっおー」

こんなのを聞いて何で嬉々としてんだこの白ピザは。



※    ※    ※


( ^ω^)「おっおっお、今日はツンも上機嫌だったおwwww」
(;'A`)「あれ上機嫌なのか……」

( ^ω^)「口は悪いけど根は良い娘なんだお。
       お腹空かしてフラフラだった僕に、餌を分けてくれたんだお」

('A`)「ほう。それで惚れたと」

(*^ω^)「おっおっ」

尻尾をくねくねさせて照れた素振りを見せるブーン。
ガタイの良い雄猫がやることではない。

('A`)「……あー、そうだ。何で俺呼んだんだ?」

( ^ω^)「ツンにドクオ達のことを話したら、会ってみたいって言ったからだお」

「達」ならばショボンも入ってるはずだが、流石に恋敵を連れてくほど馬鹿じゃないか。

('A`)「ふーん……しかしまー、なかなかいいとこのお嬢様じゃねえか。
    ありゃあ、難しいぜ」

( ^ω^)「大丈夫だお、きっとツンなら僕を受け入れてくれるお」

('A`)「それは何とでもなるかもしれんが……」

( ^ω^)「お?」

('A`)「いや、何でもね」

( ^ω^)「そうかお。お、僕はこの辺で広場に戻るお」

('A`)「おう、またな」

( ^ω^)ノシ「バイブー」

分かれ道に差し掛かり、ブーンは悠々と広場の方へと歩を進める。
ブーンの姿が見えなくなった頃、俺はぽつりと呟いた。


('A`)「もう良いぜ。出てこいよ」


(´・ω・`)「ありゃ、見つかってたか。どこから知ってた?」

('A`)「なめんなよ、最初からだ」

(´・ω・`)「やれやれ……僕もまだまだだね」

ショボンは頭を軽くうなだれさせ、俺の側に歩み寄ってきた。

('A`)「ブーンのフィアンセ、どう思う?お前本当に狙ってんのか?」

(´・ω・`)「まさか。僕ほどの良い男なら、雄雌問わずモテるんだよ?
       あれはただのヨタ話さ」

('A`)(だろうとは思ってたけど、お前昔から何考えてんのか分からん節があるからな……)

(´・ω・`)「彼女、想像以上に高嶺の花だね。しかも困ったことに、ブーンはそれに手が届く」

('A`)「だろうな」

(´・ω・`)「どうする?彼女達のためを思うなら、止めるべきだと思うけど」

失ったはずの右手が、ずきりと痛んだ。

('A`)「……どうしたもんかね」


('A`)「あいつ、本当に嬉しそうだったから。正直まだ分からん」

(´・ω・`)「……そう。
       ま、野良の経験が浅い彼には、良い薬になるかもしれないね」

('A`)「……」

(´・ω・`)「僕も戻るよ。広場に待たせてる人もいるしね」

('A`)「ああ」

ショボンも早々に立ち去り、俺だけが取り残される。
とうに日は沈み、辺りは闇に覆われていた。


ブーンは飼い主に捨てられた過去を持つ猫だ。
自身では隠しているが、飼い猫と飼い主──つまり人間に対して、屈折した感情を抱いている。

('A`)「あいつ、これからどうするつもりなんだ?」

先のことを考えると、何だか憂鬱になった。



※   ※   ※


川 ゚ -゚)『お帰り。今日は遅かったな』
('A`)「ん、ちょっと野暮用」

マットで肉球の汚れを拭って、ベランダの窓からクーの部屋へと上がり、居間のソファに寝転がる。

既にパジャマ姿のクーが、隣に腰掛けてきた。俺をひょいと抱え、膝に乗せる。


川 ゚ -゚)『もうお風呂に入ってしまった。今日は良いか?』
('A`)「あーはいはい、いらんいらん」

頭を撫でられ、ゴロゴロ鳴きながら答える。
そもそも猫は毛繕いで十分なんだ、風呂なんかイラネ。

川 ゚ -゚)『クロ助。今日な、同僚に言われたんだ。
     いい加減彼氏の一人も作れとな』
('A`)「そりゃもっともな意見だ」

川 ゚ -゚)『私だってそれは、いないよりはいた方が良いとは思うさ。
     しかし良いなぁと思うような相手がいないんだ』
('A`)「出会いが無ーい、っていうあれか」

川 ゚ -゚)『いたとしても、なかなか上手く行かない。
     会社では冷徹な女だと思われてるようだし……』
('A`)「時々鏡で笑う練習してんのにな」

川 ゚ -゚)『あまりマシな恋愛経験も無くてな。どうにも奥手になってしまって』
('A`)「そーいうのが好きって人だって沢山いるぜ」

川 ゚ -゚)『お前たち猫なら、こんなことに悩まされることも無いんだろうが……』
('A`)「俺の今日の愚痴、聞いてくれる?」

川 ゚ -゚)『まあ、今の私にはお前がいるから良いんだけどな』
('A`)「今日お前よく喋ると思ったら、ビール飲んでんのな……」

つけっぱなしのテレビは、他愛の無いバラエティ番組を垂れ流していた。
また、一日が終わる。
俺たちの日々に、少しずつ変化を残して。



五月十八日 終





この小説は2007年6月03日にニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:SfkbrnSxO 氏

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[ 2009/12/29 10:43 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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