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皆、どこかしら歪んでいるようです 第三話


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ

作者注※ すこうし猟奇表現有り
       閲覧注意





誰かから強い感情を向けられるのは、幸せなことだと思いませんか?
自分より優れたものに、想われたのならばなおさらに



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               第三話『 どちらが 』




-------('A`)-------


おれがこの部屋の担当となってから、すでに二週間が過ぎた。

新しい仕事自体はごく単純、毎日部屋中の掃除をすることと、
彼の世話をし話し相手になること。おれに課せられた仕事はその二つだけ。

彼はずっとカプセルの中だし、体調管理は完全に機械に委ねられている。
さらに彼は一日の大半を眠って過ごしているので、
実質おれは並べられた収集品を傷つけないようにさえ、気を配っていればよかった。


もともとヒッキーで人と接するのが大の苦手だったおれにとって、
部屋での閉鎖された暮らしはむしろ歓迎すべきものだった。

さらにすばらしい事には、収集品の中にはプレミアもののエロゲや漫画などがわんさかあり
屋敷の主に許可さえ取れば、品質チェックと称してそれらを観賞することもできた。

おれが部屋を離れるのは、食事以外では屋敷の主が部屋を訪れたときだけだった。


実質、生活のほとんどを彼と同じ空間で過ごしていたわけだが、
対人スキル皆無なおれにしては珍しく、彼とは比較的良好な関係を築けていたと思う。

恒例の主の訪問の後、主と入れ替わりに部屋に戻ったおれは、
普段よりも随分機嫌の良さそうな彼を見て、以前からずっと
気になっていたことを、彼に聞いてみることにした。


('A`)「弟者さん、一つ質問いいですか?」
   

(´<_` )「何でしょうか」


('A`)「その、おれなんかが聞いて良いのかわからないんですけど……
    ぶっちゃけあなたは、兄者様のことどう思ってるんです? 」




(´<_` )「どう、とは? 」


('A`)「えーと、なんでそんな酷い事されたのに、
    兄者様と親しく出来るのかなって、前々から少し不思議だったんです。
    恋人さんを人質にされてるから仕方なくかな、とも考えてたんですけど
    お二人、本当に仲よさそうだし」


(´<_` )「……恋人? ああ、なるほどなるほど。
      ワカッテマスか誰かに聞いていたんですね」


(´<_` )「あなたはとても酷い勘違いをしている。
      私は兄に強制されたからではなく、自ら望んでここにいるのです
      あなたが酷いと言うこの体も、まあ確かに多少不便ではありますが
      私は満足しています」


('A`)「?」


(´<_` )「不思議ですか?」


('A`)「そりゃまあ」


(´<_` )「良い機会です、これ以上の誤解を防ぐためにも話しておきましょうか
      私たちがここまでに歪んだ訳を」




-------(´<_` )-------


同じ日、同じ時間に、同じ遺伝子を持って生まれた私たち。
同じ顔、同じ背丈、同じ血液型、同じ性別、同じような喋り方
私たちは外見は何から何までそっくりでしたが、性格は随分違いました。


かたや好奇心旺盛で恥を知らない冒険者
かたや暴走しやすい兄の尻拭いに奔走する苦労者

しかし腐っても双子、黙って並んでいればまず、見分けることは不可能でした
それを利用して、私たちはよく入れ替わって遊んだものです

たとえば、私が兄のふりをして、大好きな幼稚園の先生の背中へ飛びついて
兄は私のふりをして、そんな私を諌め、駄々をこねる私を先生の背中から引き剥がし。

私はしぶしぶといった様子で彼女の背から降りると
置き土産にちょいと彼女のスカートをめくって逃げ出します。


この「つもりごっこ」は私たちの一番のお気に入りの遊びでした。


双子ですからお互いの性格や癖も熟知しています
この遊びはどの先生にも決して、見破られたことはありませんでした。


けれど、いつの頃からだったでしょう

私は、例え外見がどれほど似通っていたとしても、
自分が決して兄になれず、兄は決して私になりえないことを知りました。


私と兄のもっとも大きな違いは、世界への興味の強さでした。

兄の隣に居ることで、私は様々なものを見ましたが
兄の興味が他へ移れば、それらは途端に色を無くしました。
そのころの私は、兄が興味を示さぬものに価値などないとすら、考えていたように思います。

兄があまりにも私の世界の多くを占めていたために
他の要素が入り込む隙間が無かったのかもしれません。

『兄』というフィルターを通して、『兄ならば』こうするだろう、こう思うだろう
つまり世界を分化し整理する基準は、私にとって自分ではなく
どこまでも『兄』だったのです。


学びたい、知りたい、より高みを目指したいと望むこころは
周囲の全てを貪欲に捕縛し飲み込み自分の一部へと昇華します

逆もまた、然り。


兄が自分の方向性を決め、ゆっくりと、しかし確実に変化し始めるのを
すぐ傍で見つめながらも、私自身のやりたいことは未だ見つからないままでした。

まあ当然です、兄は持ち前の好奇心を遺憾なく発揮し、
興味の対象について自ら調べ考えることができましたが
私はただ彼に流されていただけで、
積極的に他者に働きかけることをしなかったのですから。


兄のように、全てを投げうって打ち込めるものは持っていない、
けれどこのまま、惰性で一生を終えるのもつまらない。

きっと何か、自分にしか出来ないことがあるはずだ。
私は一生懸命自らに言い聞かせ、必死にそのなにかを探しました。
けれど、私はすぐに探すことを諦めてしまいました。なぜか。


私に出来ることはみんな、兄ならもっと巧くやれたからです


私が一生懸命英語の単語を何回も書いて覚えている隣で兄は
某魔法学校ファンタジーの原作に夢中になって読みふけり、

私が微分積分に手こずって、問題集に取り組んでいる後ろでは
兄は興味深そうに赤チャートをめくっていました。


私とて努力は怠っていないはずなのに、同じ遺伝子を持つ兄弟なのに
兄は私のはるか上をすたすたと歩いていきます

私は、確かに隣に居たはずの兄の、その背を後ろから見つめるようになり
その背はいつしか遠く遥かなものとなり。
高校を卒業する頃には、私は兄の背を追うことを完全に諦めていました。


かたや家族の期待に見事応えた才人の兄。
かたや努力は認められるが結果に繋がらぬ凡庸な私。


家族は私に、兄と同じ大学へ行けと強制することはありませんでした

けれど、良く頑張ったね、流石はあたしの息子だよ、と
認めてくれることもまた、ありませんでした


諦めることを覚えた私は、生きていくのに支障がないだけの生活を受け入れました。
弾けんばかりのティーンズスピリッツはどこへやら、
私はごく普通のサラリーマンとして、日々頭を下げパソコンと見つめあい
居酒屋に繰り出してはくだを巻く、そんな毎日を送っていました。


けれどもある日、私の勤めていた会社に、二人の新入社員がやってきます。
一人は八の字まゆげの気の弱そうな青年。
そして、もう一人


川 ゚ -゚)「よろしくお願いします」


私の無感動なモノクロームの視界に流れた、ほうと光るみどりの黒髪
すらりとのびる二本の脚、しなやかな腕、スーツを押し上げる二つのふくらみ
そして澄み切った漆黒のひとみ


天使のようだと、思いました


彼女は私のいる営業部門に配属されました。奇しくも彼女は私と同じ大学の出身、
その繋がりで、私は彼女が仕事に慣れるまでの世話係に抜擢されました。
これまでの退屈な代わり映えのしない生活が嘘のよう、
私は天にものぼるような気持ちで、日々を過ごしました。


美しい彼女には、たくさんの男が声をかけました
私よりもよほど仕事ができ、何時も快活に笑っている職場一の優男さえ。

しかし彼女は差し出されるいくつもの手をことごとくはねのけて、
ずっと私の隣にいてくれました。


川 ゚ -゚)「あの優男は私の胸以外見ていない」

川 ゚ -゚)「部長は何時もニヤニヤと笑みをうかべて古参ぶっているのが気に入らない」


彼女の素直な言動は、時に周囲を傷つけはしましたが、
私にとってそれは酷く心地よいものでした。

見目もよく頭も切れる。天は二物を与えないとは言いますが、
彼女は二物どころか何物持っているのかすらわからないほどでした。

えてして、あまりに優れすぎた人間というのは疎まれやすいものです。
彼女は会社でも孤立しがちでした。

人は無意識に群れを作る生き物です。

単体では弱くとも、気の会う仲間を見つけ
群れの一固体となることで、自らを守ろうとするのです。
強がってはいましたが彼女もまた、自分を認めてくれる群れの仲間を必要としていました。


その役目、私では無理だろうか。

ああきっと無理だろう、しかし。


膨らむばかりの思いを抱えきれなくなった私は、
まるで彼女の孤独につけこむように、彼女に愛を伝えました


彼女はその瞳をいっぱいに見開き、ふうわりと笑いました
それはまさに、大輪の牡丹があでやかに花開くよう。
私は、微笑む彼女を中心に、オフィスが極彩色に染まったかのような錯覚を覚えたほどでした。

2_20091229102627.jpg



その笑顔は、周囲の彼女への感情にも大きな変化をもたらしたようです。
氷の女、鉄仮面、そんな風に彼女を罵っていた輩でさえ
いつの間にか、彼女を認めるようになりました。

彼女が受け入れられたことを喜ばしく思う反面、
その頃の私は、誰か自分よりも優れた人間に、
いつ彼女を奪われるかしれないと、内心恐々としていました。

特に前述の優男の同僚は、私が彼女に告白し受け入れられた一部始終を
すぐ傍で眺めていながらも、彼女を諦めるそぶりは皆無でした。
百戦錬磨の乳好き男、の通り名は伊達ではありません。


とにかく、彼女が誰のものであるかをどうにかはっきりさせなければ。
そのためには、結婚という鎖がちょうど良いように思えました。


私は可及的速やかに、ことを進めていきました
彼女に婚約指輪を送り、互いの両親と顔を合わせ、
結婚情報誌も買い、二人でウエディングドレスを探しに行きました。

幸せにあふれた暮らしの中、たった一つの気がかりは、
兄に結婚の知らせを送っていないことでした。

しかし私は、私の片割れにだけは、この喜びを直接に伝えたいと思っていました。
機械ごしではない本物の兄に、うまくやったな、と褒めてもらいたかったのです。

けれど、それまでは呼ばずとも勝手に家に押しかけてきていた兄が、
そのころからぱったりと姿を見せなくなっていました。


価値の基準を未だ『兄』に求めていた私は、兄が自分に頻繁に会いに来てくれることを
自分には、優れた存在たる『兄』から求められるだけの価値がある、と
自分の存在を肯定する理由にしていました。


故に私は、自分から兄の元を訪れ、結婚のことを伝えようとはしませんでした。


兄に伝えられぬまま数日が過ぎたある夜、私がリビングで書類の整理をしているところへ
扉の蝶番を軋ませ、足音荒く兄が現れました。兄は思いつめた表情で私につかつかと歩み寄り
痛いほど強く私の腕を握りしめ、容赦なく私を外へと引きずり出しました。

突然現れた兄の不可解な行動に、私は当然戸惑い抵抗しました。

暴れる私の口に、兄は有無を言わさず白いハンカチを押し当て
途端遠のく意識の中、私はどこか遠くで扉の閉まる音を聞きました。


そこからの記憶はあいまいで、順序もよくわかりません
なにせ私は眠ってばかりいたし、閉じ込められていた部屋はいつも薄暗く
時間の感覚なぞ殆ど無かったものですから


微かに残る記憶はと言えば、どこか遠くで女の人の悲鳴が聞こえたこと
あとはただひたすら兄のことばかり。

私が目を覚ましたときには、いつも兄が隣にいたように思います。

私の手を握って、何事か小さな声で呟き続けてばかりいて
何を問いかけても答えはなし、私と目をあわせる事すらありませんでした。



どれほどの時が過ぎたのでしょうか、一週間、一ヶ月。
とにかくその日はやってきました。



私がかちゃかちゃという耳障りな音で目を覚ますと、淀んだ暗闇の目をした男が、
眩しいほどに白く、皺一つ無い白衣を身につけ、私の傍に立っていました。
男は作業の途中らしく、金属音は男の手元から聞こえてきます。

一体何をしているのかといぶかしみ、私が身を起こそうとしたところで、
やっと自分の体が台の上に縛りつけられていることに気づきました。
かろうじて動かせるのは首ぐらいなもの、がっちりと固定された体は、
少々もがいたぐらいではびくともしませんでした。

首を回し、絶え間なく聞こえる金属音の正体が
手術台の周りに並べられた、様々な器具の触れ合う音だと気づき
私の右腕に鋭利な弓鋸が押し当てられたそのとき

私は男が何をしていたのかを、そして自分が何をされるのかを知りました



本当ならば私はここで、嫌だ、助けてくれと、叫ぶべきだったのでしょう。
何のつもりなのか、と兄を糾弾すべきでした。
けれど私がそうしなかったのは、私自身も兄のお気に入りとなることを
望んでいたからに他なりません。



兄と恋人のほかは何も要らない、ただ自分がその二人の特別であれるのならば。
私の大事な片割れが、社会のくびきが邪魔なものでしかないと言うのなら。

私は、喜んで彼のためにこの身を犠牲にしよう、と決めました。




(さあどうぞお好きなように、兄者。
 あんたをそこまで歪ませるだけの価値が、俺にあったって事の証明だろう?

 このつまらない世の中から、俺を救い出してくれ
 そして実の弟を手にかけること、存分に悩み、苦しんでくれ
 あんたが悩めば悩むほど、俺は自分の存在価値を実感できるのだから! )




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(´<_` )「そうして私はここにいるのです。」






そう、あなたにはまだ会わせていませんでしたね

わたしのあいしたじょせいを、ひとめみてやってほしいのです


そしてできるなら、うごけないわたしのかわりに、
かのじょに伝えていただけませんか

わたしはいまでも、あなたのことをあいしていますと
まきこんでしまってごめんなさい、と、
でも、うれしかったですよ、と

あの美しいひとみをみつめて


引き受けてくれますか?

ありがとうございます
それでは、どうかよろしくおねがいします











ああ、忘れるところだった。

かのじょは、右手いちばんおくの棚の、うえから5だんめにならべてあるはずですから!











第三話『 どちらが 』  終





この小説は2008年6月7日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:86ZX4sMn0 氏

第四話もごりごり待ちましょう



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/29 10:27 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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