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皆、どこかしら歪んでいるようです 第二話


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ

作者注※ すこうし猟奇表現有り
       閲覧注意




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( <●><●>) 「どうしたのです、新入り。随分青い顔をしてますよ」




1_20091229102414.jpg



                 第二話『どこから、どこまで』



(;'A`)「主任!

    すみません、入るなと言われたあの部屋に、入ってしまったんです!
    そしたら中に、ご主人様とそっくりの男の人がいて
    それでまたご主人様が部屋に入ってきて、ふたりめのご主人様がすごい目で俺を見て
    嗚呼もう何がなんだか」


( <●><●>) 「おかしいですね、鍵は? かかっていたはずでしょう」


(;'A`)「え、あの、かかってなかったです。
    おれまだこの屋敷のことよくわからなくて、
    鍵のかかってない部屋は入ってもいいって言われてたから」


( <●><●>) 「きっと私が鍵をかけ忘れたのですね……
         わかってます、私も悪い。入ってしまったものは仕方ありません
         しかしあの方に他者が接することは本来即刻処分されてしかるべきな重い罪なわけで
         彼は何と言うことやら」

(;'A`)「そんな。おれ、じゃあクビになるんですか?
     いやです。ま、まだここに来て四日しか経ってないのに。

     おれ、家族に働かないんなら出て行けって言われて、ここに来たんです。
     もう戻れる場所なんて、俺を迎えてくれる場所なんてないんです。
     お願いします、主任。どうか、助けて。
     ここにおいてください、なんでもします、クビにしないで」


( <●><●>) 「大丈夫、首にはなりませんよ。彼は美しいものが好きですから
         いや、でもいっそ……」


('A`)「え? 」


( <●><●>) 「ああ、すみませんね、考え事をしていたんです。今の言葉は忘れなさい
         大丈夫クビにはなりません。むしろ
         あの部屋のことを知ってしまったのなら、なおさら」


(;'A`)「あ、の主任? なんだか目が怖いんですが」


( <●><●>) 「知りたいですか? あの部屋のことを
         聞きたいでしょう? 三人の気狂いの物語を
         どちらにせよ、もう逃げられないでしょうが」




あの部屋のことを知ってしまったのですから、ね。




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あなたには特別な仕事についてもらいます
決してこの屋敷からは出られなくなりますが、この屋敷だけはお前を受け入れますよ
ちゃんと働けば、ですがね。


そうして目の前の男はふふ、と笑い
今まさにおれが逃げ出してきた扉を軽く叩いた

おそるおそる覗いた部屋の中には、やはりうす青く光るカプセルが鎮座し
今しがた、自分と入れ違いに部屋に入ってきたはずのこの屋敷の主人は
いずこかへと姿を消していた

非常灯の弱弱しい光だけが、無機質なコンクリート打ちっぱなしの壁を照らし出す
上等そうな黒のスーツが埃にまみれるのも構わず
男は部屋の隅に重ねてあったパイプ椅子を二つ並べると
おれに片方を示し、座るよう促した

そして、男はカプセルの中で目を閉じ たゆたう男を背に
ゆっくりと話し始めた



-------( <●><●>) -------

時は十八年前に遡ります

私は当時、ご主人様、つまり兄者様の通われていた大学の医学部で教鞭をとっておりました
彼は法学部でしたから、本来ならば私と関わることは無かったのですが
好奇心の強いお人でしたから、しょっちゅう余所の講義にも顔を出していました
そこで私たちは出会いました

私たちは馬が合い、すぐに打ち解けて色々な話をしました
彼は頭の回転が早く、畑違いの医学の話題であっても抜群の理解力を示しました

お互いの立場を忘れて家を訪れ、酒を酌み交わし

二人の関係が教授と学生から親友に変わるのにそう時間はかかりませんでした

彼が大学を卒業する頃には、私は、彼と語りあう中で
直接会ったことのない彼の弟についても随分多くを知りました


彼はそれはそれは楽しそうに
弟について事あるごとに語るのでした

弟はゴキブリが苦手で、一度腕を這われて卒倒したこと
勉強では英語と数学が苦手なこと
初恋の相手が兄弟一緒で、どちらが彼女をものにできるか競い合い
結局は二人とも振られたこと

彼の話を聞くのは私にとって幸福な事でしたが
同時に不安でもありました
彼が弟をあまりに知りすぎているように感じたのです



それは彼の弟への執着と依存から来るもののようでした

弟が喋ったとはとても思えないような内容も、彼は時折口にしました
それは例えば弟の体の黒子の数であるとか、最近よく夜に思う女性とか
それだけ親しいのだろう、と私はそれほど気にしませんでした

思い込みというのは恐ろしいものです、なんせ
都合の悪いこと、思い込みを覆すようなことは、見えなくなってしまうのですから

これは後から知ったことですが、彼が大学生になったときには既に
弟の部屋には監視カメラと盗聴器が仕掛けられていたそうです

もちろん彼の手で


常ならば必ず気づくだろう強烈な違和感を、私は知覚することができませんでした
知覚した感覚は無意識にしかし確実に消えてゆきます
膨れ上がった狂気が形を成すのを止めることはできませんでした


彼は大学卒業後、以前から打診のあった大手外資企業に就職します

利発で要領の良かった彼の事、とんとん拍子に出世し
あっという間に彼は会社の幹部にまで上りつめました。上司の覚えもめでたく
気さくな性格で部下にも慕われ、順風満帆な生活を送っていたようです


さて、ここらで私自身のことについても語っておかねばなりますまい


当時の私は大学で不祥事を起こし、職を追われていたのです
後悔と将来への不安を抱え、私は、立ちつくしました
必死で職を探してはみたものの、四十代半ばの前科持ち元大学教授なんて胡散臭い男に
この不況の時代、おいそれと職が見つかる筈も無く。元々少なかった貯金はすぐに底をつき
ガスも水道も止められて、ついにはアパートも追い出され

家族は皆すでに故人、出世した彼に助けを乞うことは
なけなしのプライドが邪魔をします
追い詰められた私は遂に、暗い夜の町へと踏み出しました
大学教授だったころの知識と経験を活かし、私は闇医者として新たな人生を歩み始めました


あの時は生きることがすべてでしたから、何でもやりました

優しすぎる獣がちゃんとショーで敵を引き裂けるよう、あるじに牙を向けないよう
大切なものを忘れた真の獣へと変える、薬品を開発しました

一部の特異な趣味を持つ顧客のために、
その中に入れたものは永久に若さと美しさを保ち続ける特殊なカプセルも開発しました

獣と人との合いの子を作り出したこともありましたっけ

失敗作は確か、うまく繋がらなくてぐずぐずに腐れてしまったので
ネクロフィリアのお客様に安価にお譲りしたはずです



そうして、私の日常が薄暗い研究室での暮らしとなって五年
彼が二十七になったとき


私たちは再会を果たします


知り合いの仕事請負人からある日、私は一本の電話を受け取ります
随分急いだ様子で、電話主は私に
いますぐカプセルとありったけの医療・拷問用機材を持ってくるように、と告げました

この世界では依頼は絶対です。私はすぐさま準備を整え、指定された場所へと向かいました
そこで待っていたのは、昔にとても見慣れた姿

細い目、薄い唇、すらりと伸びたシルエット
私は驚愕し、またどこか納得しました
自分が感じていた違和感は、正しかったのだと
彼はやはり歪んでいたのだと


あまりに遅すぎましたが



彼は私のことを知っていた様子でした
久々の再会を喜びながらも彼の
私を薄暗い森の中の彼の住みかへと連れてゆく足取りに
決して迷いはありませんでした

屋敷に入った瞬間、それまで饒舌に喋り続けていた彼はぴたりと
まるで貝のように口を閉ざしました
地下へと続く仄明るい石段をひとつひとつおりてゆく間一度も
彼は私の問いかけに答えることはありませんでした

ぐるぐると続く螺旋階段を下り
いくつもの隠し扉を開き

ある地下牢の檻の前で、彼は立ち止まりました
場所に似つかわしくない、豪奢なベッドに繋がれ眠る
彼と瓜二つな彼の弟



あの方が、そこにいました


ゆらゆらと揺れるろうそくの炎が、彼の姿をおぼろに照らし出すなか
彼は振り向いて私に告げました



(  _ゝ )『考えていたんだ
      弟を自分だけのものにするには、どうすればいいだろうか
 
      ずっとずっと考えて、つい先日やっと答えが出たんだ
      誰にも会わせなければいい
      
      俺が弟の世界のすべてになればいい』
      

(  _ゝ )『ずっと、閉じ込めて
      ほかのお気に入りたちと同じように、
      ガラスのショウケースにそっと収めておこう

      だけどただ閉じ込めるだけじゃ駄目だ
      ほんの少しでも自由なんて与えたら、弟はまた逃げ出すに違いない』



裏の世界に身を浸し続け、感覚も麻痺していたのでしょう
私は言われるがまま、手術器具を取り出しました

とっておきの薬や使い込んだ手術器具を並べ、丈夫なバンドで弟の体を手術台へと縛りつけ
すべての手はずを整えて私は、彼を振り向きました
昔、私が彼によく投げかけた言葉をくちびるに乗せて






『さあ、あなたの答えを教えてください』






彼は厳かに、暗がりから進み出ました
そして、並べられた手術器具から私が普段死体の切り分けに使う大きな弓鋸を躊躇いなく掴んで
そっと、緩慢に瞬きを繰り返すもう一人の自分の右腕に当て


いとおしむような笑みを浮かべた彼と
どこか安心したように微かに笑ったあの方の姿は


まさに




    鏡         |         鏡
      合       |       合
         わ    |    わ
             せ|せ
               |  



2_20091229102414.jpg




永遠とも感じられた透明な時間は
彼が腕に力を込めたことで呆気なく崩れ去りました


麻酔も何もないままに腕を落とされる激痛と
新しいお人形を自分の思うよう美しく飾りつける喜悦とで
二つの顔がゆがみます 私はそれを眺めています

鮮血が白い手術台を鮮やかに染め抜きました
切れ味鋭い刃は筋繊維をあっさりと切断しましたが
硬い骨は柔らかな肉と同じに、容易に切り裂けはしません
しかし彼が得物を前後へ揺らすたび、確実に白は削れてゆきます
ごりごり ごりごり

あの方の左手の指は強く握りしめられ、関節は真っ白、爪は肉に食い込んでいたけれど
神経系が既に切断された右手の指は力が入らず、ゆるく開かれたままでした
鋸から伝わる振動で小さく震えています

あの方が堪えきれず上げる叫びは、この狂った場所にあまりにも似合いの音楽で
私はすばらしいオペラでも眺めているかのような錯覚を覚えました


容赦なく刃は進みます

事前にベルトで圧迫することである程度血の流れを止めたのですが
傷口からはそれでも赤い血がどくどくと流れ落ち、二人の着衣を汚しました

私がこの上ない快楽に身を浸しているうちに、彼はどうやら骨を切り終えたようです
勢いあまって腕の下半分を一気に断ち割られ、ほんの少し手術台を削って
鋸の刃は止まりました

しかしこれだけでは終われません
私は力任せに分けられた傷の処置を始め
彼はもう一方の腕の切除にとりかかりました


間断なく続く細胞の叫びに気を失うことさえ許されないまま
想像を絶する痛みに、あの方は耐え抜きました

あの方が両のかいなを無くし、私がその処置を終えたとき
ぐったりと血の気を失い横たわる血塗れの弟を愛しげに眺めて、彼は呟きました



(  _ゝ )『これで弟が世界と繋がるための手段は四割方削ることができた
      でも まだ足りない

      俺から逃げ出す足はもう必要ない
      あの女を愛し繋がっただろう象徴なぞ見たくもない
 
      いっそのこと切り離してしまおうと思うのだ
      すべてを』



さすがに下半身を切り落とすともなれば、それ相応の準備が必要です
流れ出た血液を輸血で補い、麻酔をかけ、忙しく立ち働く私をぼんやりと目で追いながら
彼はぽつりぽつりと、事の次第を語りました


自分の知らない間に、自分の知らない女と、弟が婚約していたこと
結婚したならば今住んでいる彼が用意した家を出て、二人で暮らそうとしていたこと
両親にはすでに話を通してあったこと



そして
自分には
自分にだけ弟は

それらを何も話さなかったということ



会社の同僚から結婚の話を聞いて、彼がどれほど愕然としたかは想像に難くありません

怒りで我を忘れた彼は、すぐさま屋敷へとってかえし
弟を無理矢理この地下牢へと閉じ込め薬で眠らせて
弟の婚約者も屋敷へと呼び寄せました



先刻とはうってかわった静かな時間
響くのは彼の声と、肉を裂いてひらめく手術器具同士がわずかにふれあう音
無機質にデータを記録する機械音

すべてを語り終えた彼は冷たい石壁に背中を預け
緋色に染まった衣服を替えようとすることすらせずに
口を硬く引き結んで、私と弟を見つめていました




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('A`)「狂ってる」


( <●><●>) 「ええ」


('A`)「それじゃあんまりにも、弟さんがかわいそうです
    普通に結婚したかっただけなのに、いきなりこんなとこ押し込められるなんて
    弟さん、完全に被害者じゃないですか」


( <●><●>) 「でもあの方は抵抗しませんでしたよ?」


('A`)「させなかったの間違いじゃないですか。第一、抵抗しようにも
    恋人を人質に取られてちゃどうしようもないです」


( <●><●>) 「そうですね」


( <●><●>) 「でも、あの方は、カプセルの中で目を覚ましたとき











    『 あ り が と う 』 、 と 言 い   ま し た   よ  ?







第二話『どこから、どこまで』   終





この小説は2008年5月24日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:Mi3Cnelt0 氏

第三話はこちらからどうぞ



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/29 10:25 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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