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皆、どこかしら歪んでいるようです 第一話


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ

作者注※ すこうし猟奇表現有り
       閲覧注意





もし自分のまわり全てを、愛しいものだけで創ることができたなら。

嗚呼、それはなんて甘美な世界!



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                  第一話『 お気に入り 』





昔から彼は、好きな物は絶対に手に入れないと気が済まないたちでした


気に入ったマンガは必ず全巻集めて手元に置くし
DVDでもエロゲでも「これだ」と思うものを得るためならば
毎日のおやつを削る事だって厭いません

何かしら欲しいものを手に入れたときは、暫く恍惚とした眼差しで
其れを見つめ、頬擦りし、そして愛しさに溢れたしぐさで
其れの為に用意した其れだけの“居場所”へとそっとしまい込むのです


しかしながら、彼が成長するにつれて欲しいものは増え
当たり前ですがお小遣いだけでは賄えなくなりました。
彼の家はごく普通の家庭でしたし
厳格な母親のおかげでお小遣い値上げはおろか前借りすらもほとんど許されませんでした
もちろん財布から金をこっそり抜き取るなど論外です。
死にますから。氏ぬじゃなくてね。


どうにもならないときは、流石に彼も我慢していましたが、
それでも、一度感じたむず痒さは決して消えることはないらしく。
物欲しげな目線を広告にやっては、溜息をついていたのをよく覚えています。

そのころ彼は何度も私にこぼしていました。


“自分の心に何らかの痕を残したものたち、永久に俺の元に留まり
 鮮やかさを留めるべきものたちが、俺に訴えかけてくる。
 それらを手元に置いておけないことは、パズルのピースを
 萌えキャラの顔と大事なところだけ無くしてしまったのと同じく
 有るべきものが有るべき場所に無い、とてつもなく酷い違和感なのだ”

と。


欲しいものを手にいれるため、彼がアルバイトを始めたのは
ごく自然なことだったのでしょう。
彼は社会の歯車のひとつとして働くなかで、より強くなる
自分の欲求と、それに先立つものの大切さを理解しました。
金銭はもちろん、安定した高い収入を得るために必要な地位、
また地位を得るための学力、学歴。


なりふり構わず目先の欲望ばかり追うことは
彼の目的のためには、致命傷になりうるのだということも。


彼はアルバイトをしながらも、ちゃんと勉強を続けました。

友達に付き合いが悪いと拗ねられたり、窓の外を駆けてゆく同年代の子供たちを見て、
勉強も何もかもほうりだして遊びに行きたいと、願ったこともあったでしょう。
しかし彼は一時の感情に流されること無く勉学に励み続けました。

もちろん、たまにはエロゲやら聖地巡礼やらに出かけたりもしていましたが。
まあ、息抜きは誰しも必要です。


地道に頑張り続けたお陰か、彼は難関と呼ばれる大学に上位一発合格。
普段はしかめっつらで青筋の消えない彼の母親も、そのときばかりは頬を緩め、
腕によりをかけたご馳走を作っていました。


彼は、俗に言う勝ち組人生のど真ん中を歩き始めていたのです。

在学中のテストでは常に10位以内をキープ、現代のサブカルチャーとして見た
漫画の存在意義について、商業主義的価値も含め客観的かつ独創的に
切り込んだ卒業論文は、玄人はだしの出来映えで、周囲の度肝を抜きました。


しかし彼はこれほど恵まれた人生を歩んでいてなお、第一の目的を忘れてはいませんでした。
暇をみてはせっせと本を読みゲームをして、新たな知識と感動と出会うこと、
ひいては彼の世界を充実したものにすること。
それは世界的に有名な巨大企業の幹部となってからも続けられました。


彼は大人になりました。
幼い頃に彼が必要としたものはもう、全て手に入れていました。

富。
栄誉。
地位。
権力。


それはしかし、彼の力が可能にする範囲が危険なほどに増大した、ということでもあったのです。


彼はその明晰な頭脳と強大な権力を用い、自らの飽くなき興味を満たすため
裏社会へも手を伸ばしました。
表ならば隠匿されてしまう暗い淀み、
人間の剥き出しのエゴや本能がせめぎあい噛みつき喰らいあうそこは、
彼にとっては天国のような場所でした。

彼が今まで虚構の世界で想像し、憧れ続けてきたものの
殆どまるごとが、そこに在ったからです。


奇形で生まれ、芸を仕込まれ、優しさという言葉さえ知りえない子供。

暗い檻に閉じ込められ、いかに敵を惨たらしく引き裂くかでその日の餌が決まる獣。

ぐずぐずに腐って原型をとどめない少女だったものに、
自らの欲望の象徴を突き立てる倒錯的な行為に没頭する異端者。


彼は透明なカプセルに入れられた美しい少年少女をとくに熱心に眺めました。

生まれたままの姿でほうりこまれ、
何本もの毒々しい色のチューブで繋がれて、
ひとつの自由もなくただ生き続けるだけのしかばね

愛しいものの姿を半永久的に留めておけるこの装置は
いたく彼のお気に召したようで。


彼は表では人格者として振る舞いながらも、確実に裏のいろに染められてゆきました。


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彼のコレクションはいつのまにやら膨大な数となり、
彼の屋敷はもはやちょっとした美術館の様相を呈しています。
そこでは200人以上の訓練を受けたプロフェッショナルが雇われ、収蔵品の管理にあたりました。

ところでこの屋敷の離れには、彼のたった一人の弟が暮らしていました。


双子で生まれた弟と彼はいつも一緒でした。
強い好奇心ゆえ暴走しがちだった彼の手綱を取って、
まともな道に引き戻せる唯一の人間がこの弟でした。
そして、彼を真に理解してくれたのも、やはりこの弟だけでした。

彼が成功できたのにも、弟の存在はずいぶん大きかったようです。
将来を見据えての一大決心とはいえ、彼とて時には挫けそうになることもあったでしょう。
しかし兄をどんなときも支え、励まし、勇気付けた弟を
彼は大切にしてくれていました。

両親すら近づけない、自身の屋敷の隣に弟を住まわせ
衣食住の世話を焼き(もちろん彼自身がではなく執事さんが、ですが)
忙しいスケジュールの合間をぬって、三日に一度は必ず顔を出すほどに。

彼が裏社会に傾倒し始めたころ、弟は一人の美しい女性と知り合いました。

普通の大学を出て、普通の会社に就職した弟は、同じ職場で働く女性と恋に落ち
結婚の約束をしていました。弟たちがお互いの親には顔合わせをすませてしまい、
式の日取りを決めようという段になってやっと、彼はその事実を聞きました。


それは彼のせいでもあり、弟のせいでもありました。
彼は裏社会にのめりこむあまり、三日に一度の弟宅の訪問をすっかり忘れていたのです。
さらに弟も、仕事が忙しいのだろうと遠慮をして、連絡を取るタイミングを逃したまま
ばたばたと事を進めてしまいました。


弟はちゃんと知っていました。知っていたはずでした
彼が、無視されるのを、なかまはずれにされることを、極端に嫌うということを。
嗚呼、何と云う事か。弟は伴侶を得たよろこびで舞い上がっていました。
そして彼は弟の口からでなく、彼の会社の同僚から


結婚の事実を聞いたのです。




彼は怒り狂いました。
なぜ。
なぜ。
いつも一緒だった弟が、自分の知らないうちに知らない女と結婚すると。
自分が用意したあの、弟のための“居場所”を出て行くと。



  何も言わずに。


    じぶんに なにも いわずに か



おれのいとしいひと、いとしいひとが、おとうとが。

おれの、そばから







そうして、わたしはここで、このカプセルのなかにいれられて

あなたとおはなしをしていると、そういうわけです

ああ、兄がかえってきたようですね、はやくおにげなさい、そこのまどから

兄は、わたしがじぶんいがいとかかわることをゆるしませんから

ひさびさでしたよ、兄いがいのひととはなすのは。

どうか、げんきで










……おや、おかえりなさい







第一話『お気に入り』  終





この小説は2008年5月24日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:Mi3Cnelt0 氏

第二話はこちらからどうぞ



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/29 10:23 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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