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ξ ゚⊿゚)ξツンは邪悪の魔女のようです 第一話

 
はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




ξ ゚⊿゚)ξ「……契約に従い我に従え」

ある所に、一人の魔女がいた。
名は、ツンと言う。

ξ ゚⊿゚)ξ「大海の王、天上の女王、煉獄の皇帝」

彼女は千を超える魔法を操り、
また魔力は過去に類を見ない程に膨大だった。

ξ ゚⊿゚)ξ「水は雷と交わりエーテルへ。大気へ溶けよ」

だが彼女には、唯一にして最大の、欠点があった。

ξ ゚⊿゚)ξ「炎よ、際限無き熱を以って大気を喰らえ」

それは――

ξ ゚⊿゚)ξ「至高の輝きよ、全てを散せ。究極魔法――核ねちゅッ!」



彼女は致命的なまでに、早口言葉に弱い。
滑舌が、異様に悪いのだ。





1_20091229095930.jpg



 
ξ#゚-゚)ξ「――ッ!! いったぁい! あぁもう何なのよ!」

口元を押さえて、ツンは叫ぶ。
地団駄まで踏んで、大層ご立腹の様子だ。

しかし直後、彼女目掛け一本の閃きが走る。
大気を裂き、唸りを上げて迫るその正体は、破魔の力を帯びた矢だった。

ξ#゚-゚)ξ「っ!?」

避ける暇も無く、ツンは矢の直撃を受ける。
常時展開されている障壁のお陰で突き刺さりはしなかったが、
秘められた破魔の力は障壁を抜け、彼女を強かに殴りつけた。

「おぉ、やったぞ!」

矢を放った者と、その仲間達が歓声を上げる。
彼らはどこかの王国から雇われた、戦闘に長けた集団。
所謂、勇者様ご一行だ。

彼らが喜ぶのは、これまでの戦闘の経緯を顧みれば、当然の事だった。
呪文詠唱が苦手だとしても、短いスペルや無詠唱呪文であれば、何ら問題は無い。
更に彼女が自作した強力な魔具、予め召喚されていた魔法獣。

早口言葉が出来なくて、滑舌の悪かろうが、
尚もツンは驚異的な力を有する魔女なのだ。


「……ッ!? 待て、何か雰囲気がヤバいぞ!?」

右手に剣を、左手に盾を携えた――恐らくは勇者と思しき男が、喜ぶ他の仲間を制した。
被弾した箇所から立ち上る白煙。
その向こう側に、憤怒の形相を浮かべたツンを、彼は見たのだ。

一瞬遅れて、喜びに酔っていた他の仲間達も、
彼女から湧き立つ尋常でない雰囲気に当てられたのだろう。

それまでの嬉々とした表情を掻き消して、
全員がツンに向き直り、各々の武器を構えた。

「怯むなよ皆! 奴が魔法を失敗したのは僥倖だ! 畳み掛けるぞ!」

勇者らしき男の掛け声を合図に、一行はそれぞれ最高の一撃を放たんとする。

勇者と武道家は石畳の床を強く踏み締め、ツンヘと飛び掛かる。
魔法使いは高位呪文の詠唱を始め、僧侶は全員に加護と強化を。

完璧な角度、速度、呪文選択、祈祷。

ξ#゚-゚)ξ「……って……うな」

その全てが、


ξ#゚-゚)ξ「失敗したって言うなぁああああああああああああ!」

魔女ツンの癇癪一つによって、見るも無惨に払い除けられた。


彼女が放ったのは、魔法でも何でもない。
ただ激昂に任せて、持てる魔力をそのまま放出しただけの物だ。
言わば、武術の素人が腕を我武者羅に振り回す事と同じ。

そんな一撃で、勇者一行は全員が弾き飛ばされた。
そして部屋に張られた結界や床に叩きつけられて、意識を失ったのだ。

ξ#゚-゚)ξ「はぁ……ったく面倒くさいわね! とっとと送り返してやるわ!」

床に転がった勇者一行を風の魔法で一箇所に集める。
次に、転送魔法だ。
これは失敗するととんでもない事になりかねないので、舌を噛まないように。
一語一句をとても慎重にゆっくりと、彼女は詠唱した。

勇者一行を取り囲む、淡い青の魔方陣が、石畳に浮かび上がる。

「待……て……」

不意に、ツンの耳に呻くような、辛うじて搾り出された声が届く。

声の主は、勇者と思しき男。
ツンの癇癪を受けて、ただ一人気を失わずにいたらしい。
これは十分、賛嘆に値する事だ。

「何で俺達を生かして帰す……。
 邪悪の化身とさえ言われた魔女が、温情にでも目覚めたつもりか……?」

激痛を訴える体を何とか起こし、勇者は問う。

勇者としてのプライドもある。
しかしそれ以上に、自分が生まれた国では、
ツンは恐ろしい魔女で世界を滅ぼす魔法を作り上げようとしている。
そう聞かされていたし、だからこそ彼はツンに挑みにきたのだ。

その彼女が自分達を生かして帰そうとするのは、何故なのか。
考えずには、そして問わずにはいられなかった。

ξ ゚⊿゚)ξ「……自分の見える世界だけが、真実と思わない事ね」

たった一言、そう言うとツンは再び詠唱を再開する。

「待っ……! どう言う意味だ!」

勇者が立ち上がり、ツンへと駆け寄ろうとする。
だが彼が走り出すよりも早く、彼女は転移魔法の詠唱を終えた。

淡い青の光が氾濫して、勇者一行はツンの目の前から姿を消した。


2_20091229095930.jpg


ξ ゚⊿゚)ξ「ふう……」

勇者一行を送り返してから、ツンは小さく一つ溜息を吐いた。

これで暫くは、あの勇者達も来ないだろう。
あれだけの力量差を見せ付けたのだから。
部屋の最奥に備えられた椅子に腰掛けて、ツンは考えた。

自分の所に、勇者を名乗る集団が来るようになったのは、いつからだっただろうか。
記憶を辿ってみると、一番初めは彼女が魔法の研究の為に大規模な施設、
丁度今いる建物を作った時だった。

突如として現れた巨大な建物を見て、近隣の国が、

「アレは魔王の城に違いない。この国が侵略される前に、勇者を募り魔王を撃退しなくては」

当然、ツンは勇者を撃退した。

当時出来たばかりの研究所の中で、ツンから見れば何の理由も無く暴れ回る勇者達。
彼らが彼女の怒りの琴線に触れた事は、言うまでも無い。。

彼女が事の真相を知ったのは、その勇者達を追い返してから暫く経ってから。
近隣の国民達が国を捨てて逃げ出したとの噂を聞いた時だった。

それからも、様々な理由で勇者を名乗る集団は攻め込んできた。

先の国の報復として。
また、今度は自国が狙われるに違いないと勘違いして。

最近では、彼女が世界を滅ぼす大魔法の研究をしているとまで、噂に尾びれが付いているのだ。

そうなると今度は別の集団までもが、彼女を倒さんとやってくる。
つまりその大魔法を奪い取ろうとする、有体に言うならば悪の集団だ。

思わず、ツンは嘲るような笑いを零した。

それは自分の現状に対する自嘲でもあり、
同時に人間の浅はかさに対する嘲笑でもあった。


ξ ゚⊿゚)ξ「……っ」

だが不意に、彼女の表情が一変する。
嘲笑いの中に諦観と疲れを含ませた表情から、
氷の彫刻を彷彿とさせる魔女の表情へと。

研究所周辺に張り巡らせた結界を、誰かが超えたのだ。
結界と言っても、全てを拒絶する防壁と言う訳ではない。
ただ単に、何者かが侵入したとだけツンに報せが送られるだけの結界だ。

完全なる結界も不可能ではない。
しかしどうせならば、自分が直々に相手をしてやった方が、相手の心を折れると言うものだ。

何より、一度やってみた所、結界を破ろうと躍起になった勇者一行が
五月蝿くて堪らなかったと言う過去があるのだ。

ξ ゚⊿゚)ξ「……今日は客人が多いわね」

今度は一体、どこの誰だろうか。
また勘違いしたどこかの国からやってきた勇者か。
それともありもしない大魔法を求めてきた魔族辺りか。

考えてはみたが、すぐにどうでもいいなと彼女は思考を停止する。
代わりに来たる戦闘に備えて、壁際の本棚や天井に結界を張った。
召喚獣も数匹、念の為に呼び寄せておく。

彼女の真向かいにあるドアが、微かな軋みを立てて、開かれる。



('A`)「……あ、どうも。私、商人のドクオと申します」

貧相な面をした商人を名乗る男が、腰を低くしてドアの隙間から覗き出てきた。

ξ ゚⊿゚)ξ「……アンタ、誰?」

思わず、呆けた声がツンの口から漏れ出た。
見たところ、勇者では無さそうだ。
かと言って、悪人面と言う訳でもない。

早い話が凡人、良くも悪くも俗な人間に見えた。

('A`)「私ですか? 申し遅れました。私、商人のドクオと申し……」

ξ;゚⊿゚)ξ「あー、いや。それは聞いた。申し遅れてないから。……何でここに来たの?」

悪の魔女が住まう居城。
どんな世間知らずでも、知らない訳はないだろう。
商人だと言うならば、尚更世の中の噂には敏感の筈だ。

雰囲気からは考えられないが、商人に扮した敵なのか。
ツンは一抹の疑念を抱いたが、

('A`)「簡単な話ですよ。顧客が欲しいのです。それも、誰も持っていない、ね」

単純明快な答えを、ドクオと名乗る男は返した。

ξ;゚⊿゚)ξ「……は?」

再び、呆けた声が零れる。

('A`)「いやぁ、誰も寄り付かない魔女の城があると聞きましてね。
    閃いた訳ですよ。ここを商業ルートとして開拓すれば、と」

理路整然とした説明。
しかし、それでツンが納得するかは、また別の話だ。
彼女は相変わらず、信じられないと言った表情を浮かべている。

ξ;゚⊿゚)ξ「……そんだけで、ここに来たの? 殺されるとか考えなかったの?」

('A`)「勿論懸念しました。ですが城の主は魔女、論理的な話が出来るだろうと、私は踏みました。
    お互いに利益が出る話を持ちかければ、きっと魔女も取り合ってくれると」

全ての説明が終わり、それでもツンは俄かには信じがたいと、首を横に数回小さく振った。

('A`)「……と言う訳で、いかがでしょう。私、品揃えならかなりの物だと自負しておりますが。
    大抵の物ならば、都合を付けられると思います」

彼女の様子など露知らず、ドクオがビジネスの話題を持ちかける。
その間の可笑しさが、ツンの心に温かみや、余裕と言った類の何かを一滴落とした。

ξ ゚ー゚)ξ「……もしも私が、命が惜しければ商品も有り金も全部置いていきなさい、って言ったら?」

冗談めかして、ツンが尋ねる。

('A`)「おぉ、それは怖い。でしたら私は、私自身を売り込むとしましょう。
    私を殺さず生かしておいた方が、どれだけあなたに利があるか。
    これこそ商人の命乞いと言うものです」

ドクオはおどけながらも、理に適った答えを返す。
ツンが、くすくすと笑った。

ξ ゚ー゚)ξ「いいわ。それじゃ今、研究に使っている薬草があるんだけどね、栽培が面倒なのよ。
       ちょっと珍しい薬草だけど、手に入るかしら?」

('A`)「名前を教えていただければ、必ずや」

ξ ゚ー゚)ξ「確か、パパヴァーって言うんだけど……」

('A`)「おぉ、それは僥倖。それなら今丁度持っていますよ」

言いながら、ドクオは肩に掛けた鞄を漁り始める。
そうして取り出されたのは、一巻の巻物だ。
商人ならば誰しもが持っている、擬似空間魔法の掛かった巻物だ。

('A`)「……こちらの薬草で間違いありませんか?」

取り出されたのは、淡い紫の花弁を持つ花の束。
見るや否や、ツンの表情がぱぁと明るくなった。

ξ ゚ー゚)ξ「そうそう! それよ! 流石商人ね! それ、ありったけ買うわ!」

('A`)「おぉ、ありがたい。それでは、お値段の方……1000000ゴールドとなりますが」

言い終えて、しかしふとドクオが右手を顎の辺りへ運び、考え込んだ。



('A`)「失礼ですが、人間の通貨はお持ちですか?」

よくよく考えてみれば、魔女が俗世の通貨を持っているのだろうか。
そんな疑問が、ふとドクオの頭を掠めた。

ξ ゚ー゚)ξ「通貨? ……勿論無いわよ?」

さも当然、と言わんばかりの口調で、ツンは答えを返す。
まるで、聞かれる事を読んでいたかのように、流暢に。

でも、と、ツンは言葉を繋ぐ。

ξ ゚ー゚)ξ「これならどうかしら?」

声と同時に、彼女は右手を一振りする。
どこからともなく、煉瓦が一山、現れた。

そして二振り。
瞬く間に、赤土色だった煉瓦は、見る者の心を眩ませる黄金へと姿を変えた。

('A`)「それは……」

微かに目を見開いて、ドクオの口から言葉が漏れる。
微笑みながら、ツンは頷いた。

ξ ゚ー゚)ξ「そう、れんきんじゅちゅって奴ね」



ξ ゚ー゚)ξ「……」

('A`)「……」

ξ;゚ー゚)(だぁぁ! 何で肝心な所で噛むのよ私! せっかく今まで威厳ある魔女っぽく進めてたのに!)

途轍もない勢いで後悔するが、取り返しは付かない。

ξ;゚ー゚)ξ「そ、そうだわ。いっそ時戻しの呪文で……
       痛っ! んもうっ! 何でこんなに詠唱が面倒なのよ!」

完全に動転した様子で、ツンは口を押さえ、頭を振る。
それを見て、ドクオは思わず、

('A`)「……ぷっ」

思わず、笑いを零した。

ξ#゚⊿゚)ξ「あっ、笑ったわねアンタ! 何よ! 魔女だからって皆が皆かちゅぜ……
       あぁもう! か、つ、ぜ、つ、が良いと思わないでよね!」

ムキになって、ツンが怒る。
そこには既に、魔女の威厳など欠片ほども存在しなかった。

('A`)「失礼しました。いや、どうにも邪悪の化身だとか、良くない噂ばかりが耳に入りますからね
    柄にも無く緊張していたのですが……今のでその糸が切れてしまいまして」

ξ#゚⊿゚)ξ「そりゃ呪文の詠唱で舌を噛む魔女なんてそうはいないわよね!」

暫し、沈黙が場を包む。

('A`)「……はははっ」

ξ ゚ー゚)ξ「……ふふっ」

不意に、どちらが先とも言わず、二人は笑い出した。
小さな笑いは、次第に大きな笑いへと。

一頻り笑ってから、ツンが呟いた。

ξ ゚⊿゚)ξ「……思えば、こうして笑ってみるのも久しぶりだわ」

何気なく零れ落ちた言葉に、ドクオが反応を示す。
彼女を見てみると、どこか愁いを帯びた表情で、虚空へと視線を向けていた。

('A`)「……何やら、噂に聞く魔女の姿とは、大分相違があるようですが」

ξ ゚⊿゚)ξ「……そうね。面倒臭いから、今更弁明しようとも思わないけど」

('A`)「そうですか……。まぁ、お喋りはこの辺にしておきましょうか」

あまり触れられたくない話だと判断したらしい。
ドクオは商談へと話を戻した。

ξ ゚⊿゚)ξ「そうね。さっきの薬草は全部貰うわ。他に何か、売れそうな物はあるかしら?」

ツンも、それにあっさりと応じた。

('A`)「……そうですね、世界樹の種や一角獣の角。
    ここには御座いませんが、フェニックスの尾羽でさえも、ご注文とあらば」

ξ ゚⊿゚)ξ「あら、やけに品揃えがいいのね。いいわ、それもありったけ頂くわ」

('A`)「これはありがとうございます。……ですが、それ程の巨額となりますと、
    錬金された黄金だけでのお支払いは、お断りしなければなりません」

ξ ゚⊿゚)ξ「あら? 何故かしら?」

('A`)「小量ならともかく、それ程の金となりますと、持ち運びに難が出ます。
    それに、市場に金が溢れすぎると、金そのものの価値が下がってしまうからです」

ξ ゚-゚)ξ「むー、じゃぁどうすれば良いのよー」

ドクオの説明に、ツンは不満げに唇を尖らせた。

('A`)「そうですね……。いらない魔法具でもあれば、それと物々交換とかでもいいですよ」

ξ ゚⊿゚)ξ「あら、そんなのでもいいの? じゃぁハイ、これでいいかしら」

そう言って、ツンは右手を軽く振るう。
すると彼女が腰掛ける椅子の傍らに転がっていた小瓶が、
ドクオの胸元辺りへ緩やかな放物線を描き飛んでいった。

瓶の中には、小さな黒い粒が幾つも入っていた。

('A`)「何ですか? これ」

瓶の上部を親指と人差し指だけで摘み、目の前でぶらぶらと揺らしながら、ドクオは尋ねた。

ξ ゚⊿゚)ξ「一種の霊薬よ。一粒飲めばどんな病気でも治してくれるわ。
       元々はここに押し掛けてくる奴の対策だったけど、障壁と治癒魔法で事足りるし、
      もういらないわ、それ」

ツンの答えに、ドクオが思わず目を剥いた。
同時に驚愕の余り、ドクオの指から瓶が滑り落ちる。

(;'A`)「ほわぁッ!?」

奇声と共に、ドクオは膝をかくりと落とす。
膝頭を石畳で強打する事も厭わずに、彼は滑り落ちた小瓶を掬い上げた。

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ、何やってんの? そんな薬くらいで……。膝痛かったでしょうに」

(;'A`)「いえ、いえいえいえ! さっきの説明が本当なら、この薬、とんでもない価値がありますよ!?」

ξ ゚⊿゚)ξ「そうなの? 全然使わないからそこらに転がしてたのに?」

(;'A`)「当たり前ですよ! 万病に効く霊薬だなんて、
    想像上の産物でしかないとさえ言われているのに!」

薬の瓶をしかと握り締めて、ドクオは半狂乱でまくし立てた。

万病の治療薬。
彼女の言う事に偽りがなければ、この薬は、
ドクオが今持っている商品全てと交換しても、余りある程に貴重な物だった。

ξ ゚⊿゚)ξ「まぁいいわ。だったら、さっきの商品の代金くらいにはなるわよね?」

何でもないと言った表情でさらりと言ってのけるツンに、ドクオの表情が引き攣る。

(;'A`)「とんでもない! さっきの商品くらいじゃ到底釣り合わない位ですよ!? この薬は!」

こんなものは受け取れませんと、
ドクオは慎重な手つきで薬瓶を石畳の上に置いた。

ξ;゚⊿゚)ξ「え、ちょ……困るわよ! 本当にいらないんだし!
       他に代金代わりになりそうなものもないんだから!」

(;'A`)「こちらだって、こんなもの受け取れませんよ!」

二人の主張は、完全に平行線だ。
どうしたものかと、ツンは唇を噛んだ。
深く深く、思索を巡らせ――

ξ ゚⊿゚)ξ「……そうだわ」

ふと、彼女は妙案を思い付いた。
それが名案か迷案かは、別として。

ξ ゚⊿゚)ξ「だったら、その薬と見合うだけの商品を、私が買えばいいのよ。そうでしょ?」

('A`)「は……? はぁ、それはそうですが、私の取り扱う商品に、そんなものは……」

ξ ゚⊿゚)ξ「あるわよ。いい、私はね……」



ξ ゚⊿゚)ξ「あなたの時間を、買うわ」

('A`)「……は?」

ドクオが、呆然とした様子で声を発する。

ξ ゚⊿゚)ξ「だから! あなたの時間よ、時間!」

('A`)「すいません、少々意味が分からないのですが……何かの魔法の実験台か、従者になれと?」

大仰に首を横に振って、ツンはドクオの問いを否定する。

ξ ゚⊿゚)ξ「そんな大袈裟な話じゃないわよ。ただ、商売の途中でこの近くを通るなら、
       そん時はここに立ち寄って、お茶でも飲んで、道中の話でも聞かせなさい」

舌を噛まないようにゆっくり、ゆっくりとツンは言葉を紡ぐ。

ξ ゚⊿゚)ξ「そんな穏やかな時間を、あなたから買いたいの」

言い終えて、ツンはドクオを注視する。

ξ ゚⊿゚)ξ「……駄目かしら?」

ドクオは唖然として、それでも何かを考えているようだった。

('A`)「……その時間に、この薬と見合うだけの価値があるでしょうか」

ξ ゚⊿゚)ξ「ないわ」

即答だった。

ξ ゚⊿゚)ξ「そんな薬よりもずっと、その時間の方が価値あるものよ。少なくとも、私にとっては」

緊張も無く、淀みも無い。
小川のせせらぎの如く緩やかな口調で、ツンは言った。

答えを受けて、ドクオは暫し沈黙していた。
だが、不意に首を横に振ると、自分を見つめるツンを見返して口を開く。



('A`)「……分かりました。それでは、これで商談成立、ですね」

その答えを聞いた瞬間、ツンの表情が太陽よりも尚、明るく輝いた。

ξ*゚⊿゚)ξ「ホ、ホントね!? それなら……」

言うが早いか、ツンの両腕が慌しく動かされる。
瞬間、殺風景だった部屋に魔法の光が満ちた。

味気なく冷たい石畳は真っ赤な絨毯に覆われ、
埃が被り色褪せた本棚も一瞬の内に、その色鮮やかさを取り戻した。
様々な色合いの背表紙は、それがそのまま色彩のアクセントとなっている。

そして敷き詰められた絨毯の上。
空気が弾けるような音と共に、大きなテーブルが姿を現した。
続いて、二人分の椅子が。

テーブルの上には、ティーセットが置かれている。
ティーポットにカップ、砂糖入れにミルク入れ、スプーン等が、
魔法の力によって踊るようにして、二人が席に着くのを待っていた。

ξ*゚⊿゚)ξ「えっと……時間があればでいいんだけど……」

尻すぼみな声で、ツンは言った。

('A`)「……時間があれば、ではありませんよ。あなたはその時間をお買いになったのですから」

失礼しますと言って、ドクオは椅子に腰掛けた。
カップが彼の前へと移動して、ティーポットがそれにお茶を注ぐ。
砂糖入れが、カップにスプーン三杯ほど砂糖を入れた。

ξ*゚⊿゚)ξ「あ……ありがとう!」

急いで、ツンも椅子へと小走りで近寄り、腰掛ける。
先と同じようにカップにお茶が注がれ、砂糖が三杯入れられた。

ドクオのカップにも、更に三杯砂糖が注がれた。


3_20091229095930.jpg


ξ*゚⊿゚)ξ「それで、どんな話を聞かせてくれるの?」

('A`)「そうですねぇ……。それでは、ここよりもずっと北の大地。
    そこに商売をしにいった時出会った、巨大な男の話をしましょうか」

ドクオのカップに、更に三杯砂糖が注がれた。

ξ*゚⊿゚)ξ「巨大な……? 雪男とか?」

('A`)「えぇ、現地の人からもそう聞かされました。しかし実際話をしてみると、そうではありませんでした」

ドクオのカップに、更に三杯砂糖が注がれた。
液面が淵まで上昇して、表面張力によってふるふると震えていた。

('A`)「彼は元々、小さな村に生まれた普通の子供として過ごしていたそうです。
    ですが、彼は他の子供とは違いました。体の成長が著しく、
    幼年ながらも、大人顔負けの巨体だったそうです」

ドクオのカップに、更に三杯砂糖が注がれた。
表面張力の限界が達し、音も無く、熱湯と称しても差し支えの無い紅茶が漏れ始める。

('A`)「そうして不気味がられた彼は、雪男として村を追われたらしいです」

紅茶はそのまま、無音のままテーブルを伝っていく。
そして、

('A`)「どうです? まるで……」

テーブルの端から、紅茶が垂れた。
重力に従って、椅子に掛けたドクオの足目掛けて。

(゚A゚)「ほわっちゃぁ!?」

思わず、ドクオが奇声、もとい悲鳴を上げる。

ξ;゚⊿゚)ξ「え? あ、ちょ……駄目じゃない、そんなに砂糖入れちゃ!」

そこでようやくツンが制止を掛け、砂糖入れはカップに砂糖を注ぐ仕事を終えた。

('A`)「あつつ……あぁ、勿体無い。何ですかこれは……カップの半分が砂糖で埋まってるじゃないですか」

ξ;゚⊿゚)ξ「ごめんなさい。この子、久しぶりの仕事で張り切っちゃったみたいで」

思えば、このティーセットを呼び出したのも、相当久しぶりの事だ。
俗世から離れるように研究に没頭し、勇者や魔族を撃退し、
そこに紅茶などと言うものが入り込む余裕は、いつしか無くなっていた。

それから更に暫く、ドクオはツンに話を聞かせた。
話はとても盛り上がったが、ドクオはふと気付いたように、
腰に吊るした懐中時計へと目を遣る。

('A`)「おや……すいません。そろそろここを出ませんと、お届け物のお時間がありまして……」

ξ ゚⊿゚)ξ「そう……。うん、ありがとう。面白い話が聞けたわ」

残念そうにしながらも、ツンはドクオに礼を言う。
軽く頭を下げて、ドクオは身を翻し出口へと向かった。

('A`)「あぁ、そうそう。忘れていましたが」

ドアを潜る直前、足を止めてドクオが振り返る。


('∀`)「次回の配送は、恐らく来週になるかと思われますので。どうぞ、楽しみにお待ち下さい」

にやりと笑いながら、ドクオはそう告げた。

ξ ゚⊿゚)ξ「あ……」



ξ*゚⊿゚)ξ「当たり前じゃない! もし来なかったらカエルにするわよ!」

うれしそうに、ツンが言葉を返した。



一話おーしまい





この小説は2009年5月10日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は◆P7LJ8EbA6M 氏

第二話は、こちらからどうぞ



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/29 10:01 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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