スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

ξ ゚⊿゚)ξツンはお預けなようです 第十一話


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




ξ ゚⊿゚)ξ「もうすぐ終わりか~」


大晦日、そして待ち受ける正月。
新しい年が来れば、古い年は終わりを告げる。
しかしツンの言う終わりは年の終わりの事ではなかった。


ξ ゚⊿゚)ξ「あと少しだ」


ツンは自分の椅子に座り、目の前にある本棚を見ている。
ツンの担当する本棚だ。
その本棚は本でいっぱいになっていた。

あと一冊。
この一冊の本が完成すれば本棚は全て埋まる事になる。
本棚を本で埋め尽くす事はお預けにとってとても意味のある事なのだ。


( ^ω^)「おっおっおっ?! ここはどこだお?」


その時ツンの前に男が現れた。
何とも間抜けそうな顔をした男である。


ξ ゚⊿゚)ξ「やぁ、ようこそスピリチュアルカウンセラーへ。
      まずは落ち着いて椅子に腰掛けて欲しい」


ツンは決まり文句を男にかけてやる。
しかし男はいつまで経っても椅子に座らなかった。


( ^ω^)「……」

ξ ゚⊿゚)ξ「どうしたの?」

( ^ω^)「……ツン」

ξ ゚⊿゚)ξ「え?」


1_20091229094826.jpg




( ^ω^)「ツンだお! ツンだお! ホントにツンかお!? ツン! ツン!!」


男はいきなりツンの名前を呼び、ツンに抱きついてきた。
しかしツンは男の事を知らなかった。
だから男を思いっきり殴った。


( ^ω^)「な、何するんだお……!」

ξ ゚⊿゚)ξ「いきなり抱きつかれたら誰だってそうするでしょ!」

( ^ω^)「何でだお!
      だってツンなんだお!
      ツンがここにいるんだお!
      そうして当たり前だお!!」

ξ ゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっと……とりあえず落ち着いてよ……」


酷く取り乱している男を落ち着かせて、ツンは飲み物を出した。
こんな客は初めてだった。
ツンは少しだけ、戸惑いを覚えた。


ξ ゚⊿゚)ξ「体冷えてるようだから、コーンポタージュ」

( ^ω^)「コーン……ポタージュ……」

ξ ゚⊿゚)ξ「暖まるよ」

( ^ω^)「……どうしてツンはそんなに冷静なんだお。
      こうしてコーンポタージュをブーンに出してくれるのに……」

ξ ゚⊿゚)ξ「何の事?」

( ^ω^)「忘れ……ちゃったのかお……?
      ブーンは……ブーンはツンの事が好きなんだお。
      ツンもブーンの事が好きなんだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「それは私じゃない」


ツンははっきりとした口調で断定してしまう。
男の気持ちなどちっとも関係がないといった感じだ。


( ^ω^)「……」

ξ ゚⊿゚)ξ「もし私がアナタの知ってる人であったとしても、
      私はアナタの知ってる人じゃない。
      いい? 私はアナタの知り合いじゃないわ」


男にはとても信じられなかった。
彼とってツンはとても大切な人で。
そのツンが目の前にいて。
だから大切な人が目の前にいる。
なのにその大切な人は自分の事を知らないと言う。
そんな事はとても信じられなかった。


( ^ω^)「ツンは……アナタはここで何をしてるんですかお?」

ξ ゚⊿゚)ξ「私? 私はお預けのツン。
      ここに来る人は何かを忘れないと帰れないの。
      お預けはその忘れた何かを本に書きとめて、そこの本棚に納めるって訳」


( ^ω^)「ずっと、かお? ずっとここにいるのかお?」

ξ ゚⊿゚)ξ「そうね、ずっとね。もう三年くらいかな」

( ^ω^)「……」


彼の目から見て、彼女はツンで間違いがなかった。
見間違えるはずはなかった。
あんなにも愛した人なのだから、間違えるはずなかった。
男のところから彼女が消えたのが三年前という事も、ツンの証言と一致する。
しかしツンはどうして自分の事を覚えていないのか、彼はそこが気になった。


ξ ゚⊿゚)ξ「ブーンって名前なんだよね。
      ブーン、アナタは何かを忘れないとここから帰れない。
      アナタは何か忘れたいと思う事、ある? そのツンって女の子の事?」

( ^ω^)「ブーンが話してるのはツンの事だお。
      今はお預けなのかもしれないけど、ツンの事を話してるんだお。
      思い出してくれないのかお?」

ξ ゚⊿゚)ξ「私の事?」

( ^ω^)「そうだお! ツンはツンだお! 忘れちゃったのかお?」


ツンがコーンポタージュを出してくれた事が、ツンがツンである理由に思えるのだ。
少なくともブーンにはそう思えるのだ。
二人にとってコーンポタージュには大切な思い出が詰まっているのだから、
ブーンは彼女がツンだと考える。


ξ ゚⊿゚)ξ「お預けは全ての記憶を忘れているの。
      お預けになる前の記憶を全て忘れる。
      全ての記憶を忘れようと思わないとお預けにはなれない。
      ここにあるどこかの本棚のどこかに私の記憶があるはず。
      私の記憶もお預けに預かってもらったから。

      一応ここにある本は一通り目を通したけど、
      自分の記憶はどれだか分からなかった。
      アナタと話していても全然ピンと来ないし。
      まぁ忘れてるから当然だけどね。
      だから私はアナタのツンじゃないわ。
      記憶を思い出す事もないし、二度とアナタに会う事はない」

( ^ω^)「全てを……忘れた……」


全ての記憶を忘れようとツンが思うくらいにツンは苦しんでいたのだろうか。

その仮定にたどり着くとブーンは自分の無力を感じた。
自分はツンの事をどれだけ分かっていてやれていたのだろうか。
自分の分からないところで彼女が苦しんでいたかもしれないのだ。
無力さを感じて当然だった。


ξ ゚⊿゚)ξ「だから今の私には、アナタのツンは関係のない話よ。
      そんな事どうでもいいから、何か忘れたい事を一つでいいから私に教えて」

( ^ω^)「……ブーンとツンは……」


ブーンはツンとの思い出をツンに聞かせてやろうと思った。


( ^ω^)「ブーンとツンは、中学の時に知り合ったんだお。
      高校に入って、少し経った後に付き合い始めたお。
      互いに大学生になってから一回別れて、よりを戻したお。
      けどまた離れ離れになっちゃったお。
      突然ツンがいなくなっちゃったからだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「へぇ、神隠しか何か?」


ブーンのツンは目の前にいるツンなのに、ツンはツンの事を他人のように話す。
その事にブーンはどうしようもない虚しさを感じる。
それでも話していればツンは思い出してくれるかもしれないと、
彼は一縷の望みにかけていた。


( ^ω^)「……ブーンはツンの事を探したお。
      ツンは行方不明扱いになって、ご両親もお墓を立ててしまったお。
      けれどブーンはツンを探し続けたお。
      あれからもう3年になるかお……」


ブーンは辛かった日々を思い出していた。


( ^ω^)「ブーンはツンを見つけ出す事が出来なかったお。
      もう無理だと思ったお。
      もう諦めようと思ったお。
      もう忘れようと思ったお。
      そしたらツンに会えたんだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「なるほどね、彼女の事を忘れようと思ったんだ」

( ^ω^)「そうだお、ツンの事を忘れようと思ったんだお。
      ツンを探し続けた三年間、
      もし他の事に費やしていたらどうなってたかと考えたお。
      僕は会社を辞めてしまったし、もうお金は尽きてしまったお……」


そう考えるとブーンはツンの事が憎く思えてしまった。
そう思った事もあった。
しかし本人を目の前にしてそれを口に出す事は出来なかった。


( ^ω^)「だからツンの事を忘れようと思ったお。
      それで新しい人生を始めようと思ったお。
      そう、思ったんだお……」


ここに来る為には何かを忘れたいと心から思わなくてはいけない。
ブーンはツンの事を忘れたいと願ったが故にツンに会う事が出来たのだ。
何と言う皮肉だろう。


ξ ゚⊿゚)ξ「なら忘れなさい。いつまでも過去に縛られるのは良くないだろうしね」

( ^ω^)「確かに、そうかもしれないお……
      でもその前に、もう少し質問してもいいかお」

ξ ゚⊿゚)ξ「えぇどうぞ。別に私に時間は関係ないから」

( ^ω^)「お預けの……お預けの仕事はいつ終わるんだお?」

ξ ゚⊿゚)ξ「ん~そのお預けが担当してる本棚を本で埋め尽くす事が最低ラインね」


ブーンは彼女の側にある本棚を見る。
そこにはちょうど一冊分収めるスペースしか残されていなかった。
そして先ほどからツンが筆を走らせている本も残りのページは少なかった。
そのページを埋めてしまえばツンは仕事を終えられるはずだ。


( ^ω^)「仕事が終わったら、お預けはどうなるんだお?」

ξ ゚⊿゚)ξ「次のお預けと交代するの。
      でも交代してもお預けになる前の記憶は戻らない。
      私の前にお預けをしていた人も、記憶を忘れたまま帰っていったわ」


その人は、その人の場所に帰ったに違いない。
記憶を取り戻せないとしても、その人はその人の場所に帰れたのだ。
きっとそうだとブーンは考えた。
ここで忘れた事は本に書かれる、とツンは言った。
忘れる量が多ければ、その分本も埋まっていくはずだ。

ならばブーンがたくさん忘れればいい。
そうすればツンの仕事は一気に終わるはずだ。
そうすればツンはツンの居場所に帰る事が出来るのだ。
そうすればツンとまた会えるはずだ。
何かを忘れたら自分は帰れるのだから。


( ^ω^)「分かったお! ブーンはツンの事を忘れるお!
      覚えてるかお、ツン?
      初めて出合った時、ツンはブーンの事が嫌いだったんだお。
      さっきみたいに思いっ切り殴られたんだお。
      誤解を解くのはとっても大変だったお」


ξ ゚⊿゚)ξ「嫌われてた人に好かれるようになるなんてドラマチックじゃない」


( ^ω^)「そうだお、すっごくドラマチックだったお!
      ドラマよりドラマチックだったお!
      今でもあの時の事は忘れないお。
      初めて手を繋いた時、ツンの顔は真っ赤になってたお。
      気の強いツンがその時だけは女の子らしくて可愛かったお」


ξ ゚⊿゚)ξ「そ」


( ^ω^)「ツンはブーンが熱で倒れた時、一生懸命看病してくれたお。
      おかゆを作ってくれたのが嬉しかったんだお。
      でも忘れるお。

      ツンは大学の時、飲みすぎて倒れちゃったんだお。
      あの時は介抱するのが大変だったお。
      でも忘れるお。

      ツンはブーンの単位が足りなかった時に助けてくれたんだお。
      一緒に徹夜してくれたんだお。
      でも忘れるお。

      ツンは大学3年の時ジョルジュの事を好きになったんだお。
      ツンは不安だったと言ってたけど、ブーンのところに戻って来てくれたお。
      でも忘れるお。

      ツンはブーンに初めてをくれたんだお。
      あの時のツンは凄く綺麗だったお。
      でも忘れるお」


ブーンの声は次第に熱を帯びていく。


( ^ω^)「ブーンとツンはコーンポタージュが大好きだったんだお。
      冬はいつも自販機でコーンポタージュを買ってたお。
      一本の缶で二人の手を温めあったんだお。
      とっても、とっても温かかったんだお。
      でもその温もりも忘れるお」


ツンはブーンが話した事を全て本に書いていく。
その側からブーンは記憶を忘れていった。
大好きな人との思い出を忘れていった。
目の前にいる人の事を忘れていった。


( ^ω^)「どうだお? 本は埋まったかお?」

ξ ゚⊿゚)ξ「まだよ。まだページは残ってる」

( ^ω^)「ならそのページが埋まるまでブーンは記憶を忘れていくお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「そんな事してどうするの?」

( ^ω^)「ツンをお預けの仕事から解放するんだお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「でもまだ次のお預け候補は見つかっていないし……」

( ^ω^)「次の……?」

ξ ゚⊿゚)ξ「本棚を埋めて、次の候補を見つけて初めてお預けは交代出来る。
      まぁ記憶の全てを忘れようと思う人なんてそうそういないけどね」


( ^ω^)「なら……
      なら……ブーンがお預けになるお!
      それでツンがお預けじゃなくなるならブーンがお預けになるお!
      お預けになる為にブーンは記憶を全部忘れるお!

      ブーンの記憶をいっぱい忘れたらその本は書き終わるんだお!
      そしたら本棚は全部埋まるお!
      そしたらツンはお預けじゃなくなるお!」


ξ ゚⊿゚)ξ「お預けになるの? 記憶を全部忘れないといけないのよ」


( ^ω^)「いいお! それでツンが助かるなら、それでいいお!
      ブーンはツンの思い出で今まで生きてきたんだお。
      ツンとの思い出があったから生きてこれたんだお。
      ブーンの全てはツンとの全てだったんだお。

      でも忘れるんだお!
      ブーンが何かを忘れると言ったらツンの事しかないんだお!
      ツンには色々と良くしてもらったお!
      だから今度はブーンがツンに恩返しするんだお!

      だから全部、全部忘れるんだお!
      全部忘れて、ブーンはお預けになるんだお!」



ブーンは愛した人の為に、自分を形作った全てを忘れる事に決めた。
ツンは何故そこまで出来るのだろう、と不思議に思いながらブーンを見ていた。



( ;ω;)「ブーンはツンの事を忘れたいんだお!
      ツンの事を忘れて新しい人生を始めるんだお!
      ツンの事忘れてお預けになるんだお!
      全てを忘れてお預けになりたいんだお!

      もうツンとは会いたくないお!
      もうツンの顔なんか一生見たくないお!
      だから……だから……うぅ……
      早く忘れさせてくれおぉ……!!」



ツンはブーンの涙を見ながら、本の最後にこう書き加える。





【ブーンはツンの事を全て忘れた】





これでその本は書き終えた。
ツンには達成感はあったが、ブーンに同情する事はなかった。
これはツンには関係のない話なのだから。

ツンは本を閉じ、彼女の本棚にその本を納めた。
これでツンの本棚は全て埋まった。
ツンの仕事は終わったのだ。

そして次のお預けになる者もここにいる。
だからツンはお預けから開放されるのだ。




( ^ω^)「……」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」



見つめ合う二人。
沈黙が二人を包み込む。
しかしその時間は永遠には続かない。
ツンの体が消え始めたからだ。



ξ ゚⊿゚)ξ「……」

( ^ω^)「サヨナラだお、前のお預けさん」



ツンの事を忘れたブーンが、最後の台詞と共にツンに笑いかけた。
ツンにとってその笑顔はとても懐かしいものだった。



ξ ゚⊿゚)ξ「……ぶ、ブーン!!」

新規キャンバスo18



そしてツンはお預けではなくなった。
これからはブーンがお預けとなる。

それはツンに関係のある話だった。
とてもとても関係のある話だったのだ。



 十一話終わり




この小説は2007年12月28日から2007年12月29日にかけてニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は暇潰し ◆ODmtHj3GLQ 氏
エピローグはこちらからどうぞ



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/29 09:49 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/2904-7c82f28c


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。