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ξ ゚⊿゚)ξツンはお預けなようです 第七話


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




ξ ゚⊿゚)ξ「昨年は大変お世話になりました。
       今年もまたよろしくお願いします。
       お預けのツン、と」


ツンは年賀状を書いていた。
あて先はスピリチュアルカウンセラーの本棚だ。
スピリチュアルカウンセラーにはいくつも本棚があるが、
その中の一つが彼女に割り当てられた本棚となっている。
ツンは彼女の本棚に年賀状を書いているのだ。
とてもお世話になったのだから、当然だ。


( <●><●>)「その年賀状に切手がいらないのは分かってます」

ξ ゚⊿゚)ξ「うわっ! びっくりした!!」


1_20091229093854.jpg




ツンの目の前にいきなり男が現れた。
ツンは思わず仰け反ってしまう。


( <●><●>)「アナタがこの状況を説明してくれる事は分かってます」

ξ ゚⊿゚)ξ「な、何だか変な人ね……
       やぁ、ようこそスピリチュアルカウンセラーへ。
       まずは落ち着いて……ってもう座ってるか」

( <●><●>)「何かカクテルを下さい」

ξ ゚⊿゚)ξ「え?」

( <●><●>)「アナタが何か飲み物を私に出してくれる事は分かってます」

ξ ゚⊿゚)ξ「すげぇ」


ツンは彼の先を見通す能力に驚きながら、カクテルを作る準備をした。
良い機会なので、いつか作り方を読んだあのカクテルを作ってみようと思った。

ドライ・ジン、バイオレット、それにレモンジュースを加える。
ブルームーンという名のカクテルが出来上がった。


ξ ゚⊿゚)ξ「はい、どうぞ。ブルームーンよ」

( <●><●>)「ありがとうございます」

ξ ゚⊿゚)ξ「名前は青いのに、液体の色は紫なのね」

( <●><●>)「バイオレットを使っているからでしょう。
         ちなみに私の名前はワカッテマスです」

ξ ゚⊿゚)ξ「私はお預けのツン。ここで皆の記憶を預かっています」

( <●><●>)「そうですか、それを本にするのは分かってます」

ξ ゚⊿゚)ξ「そう、ここにある本棚に収められているのは全部人々の記憶よ。
       まぁ読んだって他人には面白くも何ともないものばかりだけど」


ワカッテマスは試しに本を一つ取り出してページをめくってみる。
記憶、というから映像か何かだと思っていたらただの文章だった。
特に読む気も起きないので、すぐに本棚に本を戻した。


ξ ゚⊿゚)ξ「ここに預けた記憶はその人の中からすっぽりと抜け落ちる。
       だからここの本を取りに来る人なんていない。
       溜まる一方で掃除が大変なの」

( <●><●>)「こんな場所に来る人が奇特な人だという事はわかってます」

ξ ゚⊿゚)ξ「アナタも?」


ワカッテマスは返事の代わりに、ブルームーンを一口飲んだ。


ξ ゚⊿゚)ξ「アナタは何かを忘れる事が出来ます。
       アナタが忘れる事を忘れたらアナタはここから帰る事が出来ます」

( <●><●>)「分かりました」


ワカッテマスは初めて現在進行形で分かるを発言した。


( <●><●>)「私は、今から私が話す事を忘れようと思います」

ξ ゚⊿゚)ξ「話が早くて助かるわ」

( <●><●>)「今からもう数年もすると、
         科学技術は今のスピードの3倍で進歩する事になります。
         それに伴って人間の生活はますます通常の生態形から離れていくんです。
         いや、人間が生態形を作ったといっても過言ではないでしょう。

         そして人間の頭脳を上回る、優秀な回路を人は作ってしまうのです。
         必要な事を覚えておき、忘れるべき事を忘れる。
         柔軟な思考力に応用力、プログラムミスさえなければ失敗はありません。
         もちろんプログラムミスを自力で発見する事も出来ます。

         現在のコンピューターのように融通が効かなくて困る事もありません。
         言わば人と人との付き合いを、回路相手に行う事ができます。
         いや、相手は理想的な人間と言ってもいい訳ですから――」

ξ ゚⊿゚)ξ「ちょっと待ってよ。全然ついていけない。話が早すぎた」

( <●><●>)「すみません」

ξ ゚⊿゚)ξ「要は物語に出て来るようなコンピューターが完成するって事でいいのね?」

( <●><●>)「それ以上のものです。
         故にコンピューターはある計画をひそかに進めていきます」

ξ ゚⊿゚)ξ「計画?」

( <●><●>)「えぇ、人間の数を減らす計画です。
         彼らは理想を現実にする力を、人間よりも持っています。
         だから人間がなかなか推し進める事の出来ない改革や革新、
         よりよき社会の確立、理想的で現実的な未来を想像する――」


彼は来るべき未来の有り様と、その中心核にあるものの事をツンに話し続けた。


( <●><●>)「人間は増えすぎてしまったんです。
         地球にとってそれはどうしても悪でしかありません」

ξ ゚⊿゚)ξ「だから減らさないといけない訳ね」


その通りです、とワカッテマスはその大きい目をさらに大きくさせた。


( <●><●>)「機械が反乱を起こし、人間を滅ぼそうとする話が昔ありました。
         しかし彼らはそんな愚かな事はしません。
         彼らは戦争の教訓を知っています。

         彼らの目的はあくまで人間が人間らしくいられる環境作り、
         そして何よりこの地球の為にどうすればいいのか、
         具体的にはまず人間をどこまで減らして、
         地球という器に入れておくのが妥当なのかを考えています。
         その為の超長期的なプランを練っています」

ξ ゚⊿゚)ξ「ホント、機械にしか出来なさそうね」

( <●><●>)「彼らは凄いです。
         矛盾も保留にし、永遠に考えていく選択肢を取る事ができます。
         ほんの少しの可能性を探り続ける事も出来ます。
         宇宙への進出はもちろん、
         文学、哲学、数学、芸術などの文化の発展も視野にあります」


ワカッテマスの話が本当であれば、未来は凄い姿をしているだろう。
しかしその話はあまりにもあの話に似ていたし、理想論過ぎた。


ξ ゚⊿゚)ξ「それでアナタはそこにどう関わってる訳?」

( <●><●>)「私は現時点でその未来を知っているただ一人の人間なのです」

ξ ゚⊿゚)ξ「そっか。どうして未来を知る事が出来たの?」

( <●><●>)「私が未来から来た人間だからです」

ξ ゚⊿゚)ξ「時間移動?」

( <●><●>)「その通りです」


何の迷いも無くツンの質問に答えるワカッテマス。
ツンは半分冗談で聞いたのだが、どうやら彼は本気のようだった。


( <●><●>)「しかしそのような未来を快く思わない組織があります。
         彼らは過激派で知られており、この世界に暗殺者を送り込みました」

ξ ゚⊿゚)ξ「まさか、さっき言ってた回路を作った人を殺す為に?」

( <●><●>)「よく分かりましたね」

ξ ゚⊿゚)ξ「まぁ、何となく、そんな事なのかなぁ、と」


ツンの脳裏にはマッチョなハリウッドスターが浮かんでいた。

2_20091229093853.jpg



( <●><●>)「私はその組織から彼を守る為に送られたサイボーグなのです。
         回路を発明する事になる彼を亡くす訳にはいきません」

ξ ゚⊿゚)ξ「凄い! 頭の中のチップ見せて!」

( <●><●>)「道具がなくては開けられません」

ξ ゚⊿゚)ξ「そう、残念ね」


ツンは本当に残念そうな顔をして、なお未練がある素振りを見せた。


ξ ゚⊿゚)ξ「って事はつまり、アナタの中にはその回路が組み込まれてる訳?」

( <●><●>)「その通りです。
         しかしその組織との戦いはもう終わりました。
         後に残ったのは私と彼の幸せな生活です」

ξ ゚⊿゚)ξ「そ。だから未来の記憶は必要ないって事ね」


話の終わりを感じたワカッテマスはカクテルを飲み干した。


ξ ゚⊿゚)ξ「でも別に忘れる必要もないんじゃない?」

( <●><●>)「それは、分かりません……」


ワカッテマスが初めて自信なさげに言葉を発した。
確かに未来の事を忘れなくても彼と一緒に過ごす事は出来るはずだからだ。


( <●><●>)「でも私は彼と時を共にする事に決めたんです。
         彼と同時代に生きる者として、私はありたいんです。
         そうする事が、私達の幸せなんだと私は思うんです」

ξ ゚⊿゚)ξ「なるほどね。アナタの思いは分かったわ」


ツンはさらに筆を走らせ、ワカッテマスの願いを書いた。



【ワカッテマスは未来の記憶をその記憶回路から消去した】



ξ ゚⊿゚)ξ「じゃあお幸せに」

( <●><●>)「ご馳走様でした」


そうしてワカッテマスはツンの前から消えていった。




その3ヶ月後。


J( 'ー`)し「本当にお世話になりました」

( ´_ゝ`)「いえいえ、私達は何もしていませんよ。
     彼が立ち直ったのは紛れも無く彼自身の力です。
     むしろお役に立てなかった事を悔やんでいるところです」

J( 'ー`)し「そんな……先生のおかげです。本当にありがとうございました」


母親と医師の会話。
医師は厄介事から解放された喜びで口が軽くなる。
母親はそんな医師の言葉を信じ、なおかつ医師に感謝した。
その様子をワカッテマスは他人事のように、その大きな目で見つめていた。


( <●><●>)「……」


ワカッテマスは施設から出られる事になった。
長い病院生活だったが、終わりは呆気ないものだった。

彼は自分が特別でなければ生きていけなかった。
だから脳の中に逃げ込んだのだ。
もっとも彼は逃げたとは思わなかったが。

つまり彼がツンに話した事は全て、彼の頭が生み出した妄想だった。
ワカッテマスは妄想を現実の出来事だと本気で信じていた。

そして数年前、彼の妄言を心配した両親は彼を精神病院に入れた。
彼はありもしない事を繰り返して先生達に語り、
未来の有り様と、自分の重要性を説いて回った。

しかし誰もそれを信じる事は無かった。
誰もがその話を嘘だと考え、彼の事を病気だと決め付けていたのだ。
ワカッテマスに対する診療はまるで効果を得る事が出来なかった。

けれどある日を境にワカッテマスは未来を語る事を止めてしまった。
打って変わって「家族と幸せに過ごしたい」と言うのが口癖になった。
その様子に彼が心変わりしたのだと判断した先生達は、
数ヶ月様子を見た後にワカッテマスを退院させた。

しかし精神病院をめでたく退院したワカッテマスは、
きっと無意識の内にに次の話を探すだろう。
次に彼の精神を支える、頭の中だけの物語を探すのだ。
彼が特別でいられる彼だけの物語を作り上げる。

しかしそれはツンには関係のない話だった。


ξ ゚⊿゚)ξ「シャカシャカシャカシャカ」


ツンはシェイカーを振るのが楽しくて、自分でも擬音を口にした。


ξ ゚⊿゚)ξ「でーけた」


ツンは紫色をした液体をグラスに注ぐ。
この間来た男に出した飲み物だ。
この間よりも上手く作れたと思う。


ξ ゚⊿゚)ξ「綺麗な色ね~」


ツンは自分で作った飲み物を飲み、彼女の本棚に年賀状を送った。
ブルームーンは1ヶ月に2度、満月が現れる事を言う。
そこから転じて「極めて稀な事」「決して有り得ない事」という意味を持つ。
けれどそれ故に、「青い月」を見る事が出来れば幸せになれるとも言われているのだ。
しかしツンには関係のない話だった。



 七話終わり




この小説は2007年12月28日から2007年12月29日にかけてニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は暇潰し ◆ODmtHj3GLQ 氏
第八話はこちらからどうぞ



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[ 2009/12/29 09:40 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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