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ξ ゚⊿゚)ξツンはお預けなようです 第一話


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(,,゚Д゚)「ご、ごるぁ……」


彼の目が覚めると、そこは真っ白な部屋だった。
いや、天井も床も壁も白過ぎて部屋なのかどうかさえも分からない。
真っ白過ぎてそれらが区別できない。
しかし白い空間に居るというのは間違いないだろう。



ξ ゚⊿゚)ξ「やぁ、ようこそスピリチュアル・カウンセラーへ。
      まずは落ち着いて椅子に腰掛けて欲しい」


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振り返ると人がいた。
女の子、と呼ぶのが一番適当であろう。
成長する余地を残したあどけない顔立ちに、金色の巻き髪が良く似合っていた。
何故か体形が丸分かりな程にフィットした服を着ているようで、
その小さめな胸に思わず目がいってしまった。


ξ ゚⊿゚)ξ「久し振りのお客さんね。
      サービスするけど、飲み物は何が良い?
      紅茶? お酒? 牛乳? 青汁? 天然水?」

(,,゚Д゚)「……ミルクセーキ」

ξ ゚⊿゚)ξ「ミルクセーキとか……マンドクセ」

(,,゚Д゚)「甘党なんだ」


めんどくさいとは言いながらも、彼女はミルクセーキを作り始める。
手持ち無沙汰になった彼は勧められた椅子に座り、辺りをもう一度見渡す。
真っ白な空間に規則性なく本棚がいくつも並べてある。
何の為か考えてみたが、彼には分からなかった。


ξ ゚⊿゚)ξ「さて、あなたはどうしてここに来たの?」


彼がミルクセーキを一口飲むのを待って彼女は口を開いた。
心地よい甘さが彼の舌を満足させる。


(,,゚Д゚)「そう言われてもな、ここはどこだよ」


何をしに来たのか分からない彼には、彼女の質問に答える事が出来ない。
そんな彼の疑問をもっともだと感じたのか、彼女はそうね、と前置きして語り始めた。


ξ ゚⊿゚)ξ「アナタには何か忘れたい事があるでしょ。
     それを私に話してくれればそれでいいわ。
     それ以外は別に関係ないから喋らなくてもオーケー」

(,,゚Д゚)「忘れたい事……?」

ξ ゚⊿゚)ξ「私はアナタの中の何かを忘れさせてあげる。
     それでアナタは開放されるって訳。
     とにかくお話しましょう。
     まずはあなたがどんな人か、私に教えてくれればいい。
     そしたら自然と忘れたい事が分かるはずだから」


忘れたい事を彼女に話したところで何になるのか、結局彼には分からない。
けれど彼は話し始めた。
何故かそういう気になったのだ。


(,,゚Д゚)「俺はギコ。職業は……ヒモだな」

ξ ゚⊿゚)ξ「紐?」

(,,゚Д゚)「女に食わせてもらってる男の事さ」


そう言ってギコは自嘲気味に笑った。
しかし彼女はギコの事を見下したりせずに、話の続きを促した。


(,,゚Д゚)「俺はしぃって子に養ってもらってる。
     年下で見た目も可愛い。
     それでいつも笑ってるような女だ。
     俺は半年前から彼女の家に上がりこんでる」

ξ ゚⊿゚)ξ「ふぅん。どうしてそんな風になったの?」

(,,゚Д゚)「きっかけは、しぃの方から振ってきたんだ」


ギコは天井らしき方向を見て、その白の中にある過去を思い出そうとした。



(*゚ー゚)「ねぇ」

(,,゚Д゚)「あん?」

(*゚ー゚)「私のペットにならない? あなたを飼いたいな」


それが彼女との始めての会話。
街中で突然腕を掴まれ、そんな事を言われた。
即答で返事をしたのは彼女に一目惚れをしたからかもしれない。
もっとも後で聞いたところ、しぃもギコに一目惚れだったらしい。


(*゚ー゚)「何だかね、可愛いなぁって」

(,,゚Д゚)「俺が可愛い?」

(*゚ー゚)「そ。だからこうやって抱きしめたくなるの」


しぃの柔らかい暖かさがギコの心を包んだ。
ギコの仕事は、家にいるしぃを満足させる事、ただそれだけだった。
側にいたり、腕枕をしたり、マッサージをしたり、体を洗ってやったり、
性欲を満足させてやったりもした。
それだけをしていれば、ギコは生活に困る事はなかった。


(*゚ー゚)「ギコ君、好きだよ」

(,,゚Д゚)「あぁ、俺もお前が好きだ」



しぃを満足させる、と言ってもしぃはワガママではなく、
しぃの方からギコに対して不満を言う事は一切なかった。
ギコもしぃに不満は一切なかった。


ξ ゚⊿゚)ξ「へぇ、何と言うか、羨ましいわね」

(,,゚Д゚)「食事や洗濯もしぃがやってたからな。
     俺は本当にペットになった気分だよ」

ξ ゚⊿゚)ξ「でもアナタはそれを良くは思っていない、ってところかな?」

(,,゚Д゚)「……そうかもしれない」


ギコは忘れていたミルクセーキで喉を潤す。
半分程飲み干して、ようやく忘れたい事が何なのかに気付き始めた自分を理解する。


(,,゚Д゚)「俺はこのままじゃいけないと思うんだ。
     確かにこの生活は楽だ。
     しぃの事は好きだし、こうして一緒に暮らせているのは幸せだと思う。
     でも人として自立しなくちゃいけない気もする。
     働いて、生きる。
     それが人としての使命なんじゃないかって。
     だから俺は、しぃの事を忘れたいのかもしれない」

ξ ゚⊿゚)ξ「なるほどね」


目の前に座る彼女が、いつの間にか用意した白紙の本に何かを書きとめていた。
何となくその筆が止まるまでギコは話すのを止めた。


(,,゚Д゚)「えっと……アンタ名前は?」

ξ ゚⊿゚)ξ「あぁ、ごめんなさい。私はツン」

(,,゚Д゚)「ツン。俺は忘れたい事を話したぞ」


ツンはそうね、と言って間を取った。
そしてギコに提案をする。


ξ ゚⊿゚)ξ「ギコはしぃの事を忘れたいって言ったけど」

(,,゚Д゚)「あぁ」

ξ ゚⊿゚)ξ「ペットでいる事に抵抗を覚えるあなたの心を忘れるっていうのはどう?」

(,,゚Д゚)「は?」

ξ ゚⊿゚)ξ「そうすればアナタはただしぃの事だけを考えるだけでいいわ。
      無理に好きな人の事を忘れなくてもいいじゃない。
      それでしぃはこれまで通りアナタをペットとして飼う事で心の平安を得る。
      お互いに依存し合って生きていけるのよ。
      悪い話じゃないと思うけど」

(,,゚Д゚)「ちょっと待てよ。
     俺が忘れたいと思う事を忘れさせてくれるって話じゃないのか?」

ξ ゚⊿゚)ξ「基本的にはそうだけど、別に客が忘れたいものだけを忘れさせなくてもいいの」

(,,゚Д゚)「客?」

ξ ゚⊿゚)ξ「ここ、スピリチュアルカウンセラーに来た者は何かを忘れて帰って行く。
      その忘れ物を私たちお預けが本に書きとめて、本棚にしまう。
      何を忘れるかなんて、その内容はどうだっていいのよ」


ギコはツンの話の全てを理解出来なかった。
だから分かる部分をどうにかしようと思う。
つまり、彼女の提案を呑むかどうか、だ。
しぃの事を忘れるか、しぃのペットでいるのに抵抗を感じないようにするか。
どちらかを選ばなくてはいけない。
ギコはミルクセーキの残りを全て飲み干してそれを決めた。


(,,゚Д゚)「とにかく俺はしぃの事を忘れる。
     それで俺はやり直す。
     そう決めたんだ」

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ξ ゚⊿゚)ξ「……そ。まぁ私にはどっちでも関係ないからいいか」


ツンが本に一文を書き加える。


【そしてギコはしぃの事を忘れた】



(,,゚Д゚)「……ありがとう」

ξ ゚⊿゚)ξ「別にお礼なんかいい。私の仕事をしただけだから」

(,,゚Д゚)「あぁ」



しぃの事を忘れたギコは、ツンの目の前から姿を消した。
それから1ヶ月が過ぎた。


(`・ω・´)「ギコ、行くぞ!」

(,,゚Д゚)「は、はい!」


しぃの事を忘れたギコはしぃの元を離れ、仕事に就いた。
しぃには「行かないで」と泣きつかれたが、ギコには何の事か分からなかった。
この女が自分にとってどういう存在なのかは忘れてしまった。
だから新しい仕事に就いたのだ。


从'ー'从「……」


ギコは街で誰かとすれ違った。
髪の長い、少しおっとりしてそうな女性だった。
あの女とは違うタイプの女性だった。


(,,゚Д゚)「あの……」

从'ー'从「はい?」

(,,゚Д゚)「俺を飼ってくれませんか?」

从'ー'从「え……?」


ギコの言葉をようやく理解したその女性は、変な人を見る目でギコを見た後、
返事も言わずに立ち去った。



(,,゚Д゚)「……ちぇ」


あれからギコは自分を飼ってくれる女性を探していた。
しぃの事を忘れても、ギコの心の中から誰かに依存する感覚は消えていなかった。
しかしそれはツンには関係の無い話だった。




ξ ゚⊿゚)ξ「……」


ツンはミルクセーキを作る。
この前訪れた男が好きだった飲み物だ。
卵と牛乳と砂糖と。
それらが上手く混ざり合っているなら、その形はどうでも良かったのだ。
でもツンには関係の無い話だった。



一話終わり




この小説は2007年12月24日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は暇潰し ◆ODmtHj3GLQ 氏
第二話はこちらからどうぞ



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[ 2009/12/29 09:23 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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