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/ ,' 3 ある作家とある編集のある日の話   のようです act.2

はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ





   act.2『ある作家とある花屋のある夕の話』


姓は荒巻、名はスカルチノフ。
ふさげた名前だ。勿論本名ではない。文名である。

作家として細々と飯を食う生活が続いてはや八年――長くもなく、だからと言って短くもない月日である。
然したる賞も戴かず、しかし局地的な知名度がない訳ではなく、
一般的に『中堅処』と呼ばれる立場にいる私は、花屋にいた。


スーパーにて夕餉の買出し(と言っても、出来合いの惣菜であるが)を済ませ、
どことなく寂びれた商店街を歩いていた時のことだった。

シャッター通りの中にひっそりと店を構える、普段は目もくれない花店へ視線が奪われたのだ。
色とりどりの花々と、その横に添えられる手書きの値段表。
そして、



/ ,' 3「……そこな店員。これは、なんと言う花か?」




20080323114521.jpg



しげしげと十数秒ほどその花を見つめた末に、出てきた言葉は素朴な質問だった。
私の声に呼ばれ、店の奥で作業していた店員がひょっこりと顔を出して来た。

――性別は男。年齢は三十ほど。
ネームプレートには流石とある。
浅く刈った髪の毛と、くりくりとした大きな目はなかなかに愛嬌があった。


(´<_` )「千日紅(せんにちこう)と言うのです。ええ、ドライフラワーです」

/ ,' 3「どらいふらわぁ?」

(´<_` )「主に装飾用に使われるのですが、切り花を乾燥させたものの事です。
       エキサイト翻訳すれば簡単ですよ。日本語訳で『乾燥する花』」

/ ,' 3「乾燥する花か。なるほど、いい響きだ。これは水に漬けると元に戻るのか?」

(´<_` )「それはもう力強く『はい』と言いたいのですが、もどりません」


笑窪を作りながら男は対応した。
ふむ、我ながら高度な冗談である。
そしてそれに応える技量も相手は持っているようだ。
どこぞの新人編集者とはまるで違うな、と思いつつも私は千日紅と教えられた花を見た。


千日紅と教えられたその花は、『淡いピンク色のぼんぼり』。
一言で表すのであれば、ちょうどその様な姿をしていた。
朱色や桃色をした『乾燥する花』たちを、その細い茎が懸命に支えている様は心打たれるものがある。


――客層が馴染みのそれと固定化されているからか、商店街の雰囲気はやはりどこか垢抜けぬ。
その片隅で、私たちは『客』と『店員』としては軸の合わない会話をしていた。



(´<_` )「よければひとついかがですか?」



流石はそう言って、千日紅を一本差し出して来た。
つい首を縦に振ってしまいそうになる自然な口上は、
流石、流石はプロフェッショナルであると言った処だろうか。
うむ、別にこれは洒落ではない。


/ ,' 3「む、すまないが。あいにく持ち合わせが……」

(´<_` )「お代は結構ですよ。お近づきの印、というやつです。
      あ、よければ、この林檎の木の苗なども持って帰って頂ければ嬉しいです。
      店長である兄が発注の数を一桁多くしてしまいましてね。『売るほど余っている』のですよ」

/ ,' 3「……店員、親切心で言うが、それでよく商売が成り立っているな」

(´<_` )「それもこれも、皆様のご愛好のおかげです」


微笑みながら言う店員からは、甘くまどろむような蜜の匂いがしていたのだ。



――――――――――――――――


自宅である木造モルタルのアパート、
雨風にさらされ茶色に変色した鉄の階段を上り角をまがれば、
親に閉めだされた子供の姿勢――俗に体育座りと呼ばれるもの――で、玄関前にへたり込む女がいた。

……うむ、お察しの通り、私の編集者である。


/ ,' 3「……なにをしているのかね、君は」

('、`*川「……なに? いまなにをしているって言いましたか先生」


彼女は私の姿を認めるなり、日の光を浴びたアンデットのような仕草で腰を上げた。
ゆっくりとこちらに向かってくる姿は、さながら日中のホラーショウである。


('、`*川「私は、今、どしゃ降りの雨の中を突っ切って来た気持ちです。
      締切りを守らない上に不在だったどこぞの作家をここで待ち続けたのです。
      心身共に疲れ果てましたとも」

/ ,' 3「ふむ、では次の予報をしよう。雷警報だ」

('、`*川「それはあんたに落ちるってことですか、落としていいんですか」

/ ,' 3「いや、原稿を持ってこれなかった君に編集長からの特大雷が――」


('、`*川「わかりました今落とします先生に落としますよ ええ問答無用で落とします!」

/ ,' 3「ああ、雷を電気の塊だと知る機会は、凧上げにあったらしいね」


('、`*川「なに知ったか顔で情報通気取ってるんですか。私知ってるんですからね
     『情報収集』の名目で経費落として光回線使いまくって
     自宅で動ナビのえっちぃ奴見てるの知ってるんですからね
     この最新装備の変態が! ウンチク垂れる暇があったらとっとと書いて下さいよ!!」


むきぃぃぃぃいい、と近所迷惑はなはだしいほど歯噛みする新人編集者を見ながら、
私は右手に持ったスーパーの袋のことと、その中身である惣菜と千日紅を思い起こした。

(――結局林檎の苗は断ったのだが、これは無理やりに押し付けられた)
 


妙に心奪われた、千日紅のドライフラワー。



/ ,' 3「ああ、まあ落ち着きたまえ、編集くん」



苦笑い気味に言うと、彼女は豆鉄砲を食らったような顔つきをした。
言葉の豪雨が止まる。
素直なのは良いことだ。きっと彼女は待てと言われれば待つのだろうなぁ。
と予想しながら、私はビニール袋をまさぐった。掴むべきは乾燥する花。


――女性は花をやると喜ぶと聞く。

さて、こんな時でもその通説は、通用するのかどうか。





            了





この小説は2008年3月22日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は◆YcgYBZx3So 氏

続きはこちらからどうぞ



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[ 2009/12/28 21:17 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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