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( ^ω^)ブーンは怪盗のようです 第3話


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ








   6の月25の日

   "ジュエルミュージアム"に展示されている
   『山羊の鱗』を戴きに参上いたします。
 

           怪盗ナイト・ホライゾン§







1_20091228100203.jpg



25の日の空は晴れ。風のない穏やかな天気が一日中続くでしょう。

( §ω^)「……天気予報で言っていた通りだな」

眼下に市街の明かりを臨みながら、怪盗ナイト・ホライゾンは息を吐いた。
懐中時計を取り出し、時間を確認。
24の日が過ぎてから三時間ほどが経過していると分かった。
そろそろ動き出すべき時間である。

二本のビルが並んだVIPツインタワー。
その片方である"タワーアルファ"の屋上に、ホライゾンはたたずんでいた。

地上350メートルの高さを持つタワーアルファ。
少し高さが落ちるもう一方の"タワーベータ"以外には、周囲に高層建築物が存在しない。
遮る物が全く存在しない景観は、まるで王になったかのような錯覚を覚えさせた。

ホライゾンは屋上の縁に立ち、絶壁を見下ろした。
間違いない、この位置だ。この位置の真下に、『山羊の鱗』がある。
彼はマントの下からフックショットを取り出し、近くに立っていたポールにフックを取り付けた。

フックショットとは、ワイヤーロープの先端につけたフックを射出し、
またそれを自由に伸縮させることができる小型の装置のことだ。
小型とはいえ中々の力を有し、人間一人くらいの重さならば軽く移動させることができる。

ビル風に気をつけないといけない。
いくら今日は無風であるとはいえ、この高さでは強烈な風の流れがある。
ホライゾンは十分に注意すると、少しずつワイヤを伸ばし、
それを命綱にしてビルの外壁を下り始めた。





ジュエルミュージアム会場が置かれたタワーアルファ62階。
そのひとつ上の階層のある一室に、ジョルジュたち警察が詰めていた。

彼らは一様に、ある画面を覗き込んでいる。

( ゚∀゚)「……暇だな」

(=゚ω゚)ノ「……暇ですね」

その画面とは、タワーアルファ内の各所に設置された監視カメラの映像だ。
膨大な数に及ぶ監視カメラが撮影する映像を、画面は数秒ごとに切り替えて映している。

だがタワー内の人間は全て避難させたため、そこに映っているは無人の室内ばかり。
警備を集中させたタワーアルファの映像にほんのたびたび人の姿が映るくらいである。

(=゚ω゚)ノ「……暇ですね」

( ゚∀゚)「……暇だな」

二人は一瞬顔を見合わせると、モニターに向かって盛大な溜息を吐き出した。



目当ての階層の高さまで下り、ホライゾンはフックショットのワイヤを固定した。
タワーアルファの61階。ジュエルミュージアムが行なわれているフロアである。

目の前にあるガラス窓の向こうは暗く、人の気配は感じられない。

( §ω^)「ふむ」

ホライゾンは右手に持ったフックショットにぶら下がったまま、
左手で腰に提げた道具を手に取った。

その道具の形状は長方形のスタンプに似ている。
大きさは太鼓判ほど、平たい長方形の箱の片面に取っ手がついていた。
ただそれが普通のスタンプと違うのは、押し当てる面に刃がついている所だ。

彼はそれを窓の表面に押し当て、親指で取っ手にあるスイッチを押した。
そうしてそのスタンプを上から下へ、まっすぐ引き下ろす。

( §ω^)「……」

道具をスライドした跡を見て、ホライゾンは目を見張った。
窓には一直線に、綺麗な切れ目が走っていたのだ。

( §ω^)「素晴らしいな、このガラスカッターは。
      流石は博士だ」

ホライゾンはガラスカッターの向きを変え、再び別の切れ目を入れた。

四つ目の切れ目を入れた所で、ホライゾンはガラスカッターをしまった。
窓には正方形の線がくっきりと入っている。

それを確認したホラインゾンは、更なる道具を取り出した。
取っ手についた小さな吸盤。それを正方形の中心に当てる。
そして吸盤を持つ左手を、思いっきり押し込んだ。

( §ω^)「ふう」

正方形が内側にはずれ、窓にはぽっかりと四角い穴が出来ていた。
ホライゾンはその穴に足をかけ、慎重に屋内へと侵入する。
外した正方形のガラスは窓のすぐ横に立てかけ、吸盤を回収した。

暗い室内を見渡し、目当ての物を探すホライゾン。


( §ω^)「あった」

部屋の中心。台の上のガラスケースに覆われ宝石がある。
間違いない、『山羊の鱗』だ。

ホライゾンはモノクルに触れ、レンズの縁を回転させた。
そうすることによってモノクルに備わっている機能、赤外線視覚モードを呼び出す。

彼が予測したとおり、『山羊の鱗』の周囲には赤外線レーザーによるセンサーが、
まるで網目のように縦横無尽に張り巡らされていた。
これではいかなる怪盗でも、腕を伸ばすことすら敵わないだろう。

だが、まったく問題はない。

( §ω^)「そろそろか……」

そう呟いた直後、全ての警備センサーが消失した。



(;゚∀゚)「な、なんだ!?」

ジョルジュが見ていたモニターが突然黒く染まった。
周囲を見渡してみると、どのモニターもその活動を停止している。

ナイト・ホライゾンの仕業か。
そう思い立ち上がったジョルジュに、一人の男が声をかけた。
このビルのオーナー、デミタスである。

(´・_ゝ・`)「ご安心ください。これは怪盗の仕業ではありません」

( ゚∀゚)「何? どういうこった」

(´・_ゝ・`)「システムの欠陥による一時的なセキュリティのシャットダウンです。
       あと数秒もあれば復旧します」

そうデミタスが言い終えるのと同時に、全てのモニターに電源が戻った。
モニターの電源が落ちてから、たった10秒ほどのことである。

(#゚∀゚)「おいデミタスさん、なんでこのことを俺たちに説明しなかった?」

(´・_ゝ・`)「完全に言い忘れていました。
       しかしお考えください。いくら怪盗とはいえ、この短時間に侵入し、
       宝石を盗み出すことができますか?」

( ゚∀゚)「まあ、そりゃあ……無理だな」

(´・_ゝ・`)「それに、このことはごく一部の人間しか知りません。ご安心を」

言い含められたジョルジュは釈然としないながらも、自分の持ち場に戻ることにした。
確かに『山羊の鱗』のみを映しているモニターは、さっきとなんら変化はないようだ。
それに今日はという日は、まだ20時間以上も猶予を残している。
気を抜くわけには行かない。





フックショットのワイヤロープを巻き取り、
ナイト・ホライゾンは再び屋上に足をつけた。
その手には紛れもなく本物の『山羊の鱗』が握られている。

警備センサーが消失したあと、ホライゾンはすぐさまガラスケースに近づき、
『山羊の鱗』を懐に収めていた。
そして盗んだ『山羊の鱗』の代わりに、そっくりな贋作を台の上に置き、
素早くその場を後にしたのだった。

のちに警察は、穴が開いた窓を見て、あの部屋で起こった事態を悟るだろう。

( §ω^)「『山羊の鱗』、確かにもらい受けた」

ポールに引っ掛けていたフックを外し、ホライゾンは誰もいない夜空へとひとりごちた。
だがまだ全てが終わったわけではない。
『山羊の鱗』を盗んだことが知られる前に、このビルから去らなくてはならない。

そう思い、タワーベータへと視線を向けた、その時だった。


「……待て!」


短い叫びが、ビルの屋上に響いた。

( §ω^)「む?」

ホライゾンは振り返り、声の発信源を探した。
そしてすぐにそれを発見する。

( §ω^)「何だね……君は」

その男はホライゾンから大分離れた位置に立っていた。


(`○A○)「……」


男の外見はまさに「奇抜」の一言に尽きた。
全身をタイツのような赤いスーツで包み、腰には無骨なベルトを巻いている。
極めつけはその頭部。男は頭全体を覆うヘルメットを被っていた。

(`○A○)「俺は……いわゆるヒーローというヤツだ」

そして男の発言もまた、奇抜そのものであった。

( §ω^)「ヒーロー? 正義のヒーローかい?」

(`○A○)「そうだ」

男の声には決意が溢れていた。恥じらいや迷いはない。
間違いなく、この男は大真面目だ。大真面目で、ヒーローを自称している。

(`○A○)「怪盗ナイト・ホライゾン。貴様がやっているのは許されざる行為だ。
     俺が貴様に正義の鉄槌を下してやろう」


2_20091228100203.jpg



( §ω^)「面白い。君の名前を聞いておこうか、ヒーロー君」

ホライゾンは視線の先にいる男に気取られないよう、こっそりと背中に手を回した。
男がそれに気づいているような節はない。

(`○A○)「俺の名は」

( §ω^)「いや、やはり名乗らなくていい。
       もう会うこともないだろうからな」

男の発言を遮ってホライゾンが言った。
言い切ると同時に紐を引き、背中に背負っていた小型ハングライダーを展開させる。
そして身を翻すと、屋上の縁へと走り出した。

( §ω^)「さらばだ」

力強く踏み切り、ホライゾンは宙へ身体を放り出した。
一瞬の落下感。だがそれもすぐに消え、風を切る慣れ親しんだ感覚をその身に受ける。

風は多少強いが、問題ない。
ホライゾンは巧みにハングライダーを操ると、
順調にタワーベータの屋上へ向けて滑空した。


( §ω^)「はッ」

腕をつきながらもなんとか着地し、ホライゾンは立ち上がった。
振り返り、すぐ後ろに屋内への扉があることを確認する。

急がなければならない。あのヒーロー男はすぐにも警察に通報するはずだ。
警官たちがやってくる前にこのビルを脱出しなければ……。


そう思った途端、足場が振動した。
それと同時に、後方からの凄まじい爆音が鼓膜を揺るがす。

――爆発か!?
驚いたホライゾンが振り返ると、そこには目を疑う光景があった。

ひしゃげ返る屋上の床、そしてその中心にいる一人の男。
その異様な服装は、決して見間違えることはない。

(`○A○)「……また会ったな、怪盗」

先ほどのヒーロー男はゆっくりと立ち上がり、ホライゾンに視線を向けた。


(;§ω^)「バ……カな」

何が起こったのか、ホライゾンにはさっぱり見当がつかなかった。
いや、実際にはなんとなく察していた。ただそれを信じたくなかったのだ。

この男が、タワーアルファからタワーベータへ飛び移ったなどと。

(;§ω^)「ありえん……いったいどうやってここに?」

タワーアルファ・タワーベータ間は50メートルほどの距離がある。
いくらベータの方が低いとはいえ、例え走り幅跳びの世界チャンピオンだって
飛び越えることは不可能だ。
そしてその高低差、実に15階分。明らかに人間が飛び降りて平気な高さではない。

唯一、二つのタワーを繋ぐ連絡橋は35階にある。
だがそこまで降りて橋を渡り、タワーベータの屋上まで駆け上がったとも思えない。

それなのに、この男はここにいる。確かにいるのだ。

(`○A○)「言ったはずだ、怪盗。
     俺は、ヒーローだと」

(;§ω^)「くッ!」

ホライゾンの背筋に激しい悪寒が走った。
間違いない。この男は、強敵だ。


ホライゾンは咄嗟に閃光弾を取り出し、ピンを引き抜いた。
それを男に向かって転がし、自分はすかさず背を向けて走り出す。

(`○A○)「待て! 怪盗!」

背後で閃光弾が炸裂し、男がうめき声を上げるのを、ホライゾンは耳にした。
だが確認などしていられない。この閃光弾だってただの時間稼ぎなのだから。

(;§ω^)「くそッ、なんということだ!」

走りながらホライゾンは呻いた。
直感と経験が、彼の頭の中でけたたましく警鐘を鳴り響かせている。
このままではまずい。奴の目から姿をくらまさなければ。

奴は危険だ。





(=゚ω゚)ノ「あれ……?」

最初に異変に気がついたのはイヨウ刑事だった。
彼は異常を示す赤いランプを見て、目を丸くした。

(=゚ω゚)ノ「ジョルジュ警部! これなんですか?」

ジョルジュは半分意識を失いかけていたが、
声をかけられたことで鼻ちょうちんを割られ、イヨウに向き直った。
イヨウが指差すものを見て、ああと声を上げる。

( ゚∀゚)「どうやらタワーベータで何かあったらしいな。
     ベータのセンサーに何かが引っかかった証拠だ」

そう言ってショルジュは立ち上がり、イスの背もたれにかけていた上着を羽織る。
彼は周囲を見回すと、刑事を何人か指名した。

( ゚∀゚)「よーし、今名前を挙げた奴は俺と一緒に来い。
     ちょっくらタワーベータの異常を確認しに行くぞ!」

その一声と共に、指名された刑事たちも起立した。
彼らは一様に銃を取り出し、マガジンを確認する。

(=゚ω゚)ノ「頑張ってください、ジョルジュ警部」

( ゚∀゚)「はあ? お前も行くんだよ」

(;=゚ω゚)ノ「ええ!? 嫌ですよう!
      この時間、エレベーターは動いてないんでしょう?」

( ゚∀゚)「うっせーな! つべこべ言わずについて来い!」

ジョルジュはイヨウの裾を掴むと、ずるずると室外へと引きずっていった。





(;§ω^)「ぐぅッ!」


ホライゾンの身体は宙を飛び、デスクとチェアーを吹き飛ばして
背中から壁面へと叩きつけられた。
肺の中の空気が搾り出され、一瞬息が詰まる。
ずるりと滑り落ち、ホライゾンは壁に背をもたれる形になった。

(;§ω^)(なんとか、折りたたんだハングライダーがクッションになったか)

だが今の衝撃によって破損してしまったことは間違いない。
これでもう、空を飛んで逃げることは適わないだろう。

階段を10階分ほど降りたフロアにあったオフィス。
ホライゾンはそこでついに、ヒーロー男に追いつかれていた。
なんとか格闘戦を演じようとしたのだが全く歯が立たず、
背負い投げによって吹き飛ばされてしまったのだ。

視線の先からは、彼を投げ飛ばした張本人であるヒーロー男が
少しずつ歩を進めてきている。

(`○A○)「大人しくお縄につくというのなら、危害を加えない。
     無駄な抵抗はやめるんだ、怪盗」

(;§ω^)「……ふぅ、そうはいかんな。
       まだ私には、手に入れなければならないものが、たくさんあるのでね」

(`○A○)「そうか、残念だ」

男の歩調が少し速くなった。
いい傾向だ、とホライゾンは思った。これなら上手くいく。

(;§ω^)「君から逃げている間、私が何を考えていたか、君はわかるかね?」

(`○A○)「悪いが、人の心を読む能力は持ち合わせていない」

男はホライゾンの言葉に全く気にせず、ただその双脚をひたすら前へと動かした。
まだ狙いの位置とは少し離れている。

( §ω^)「私はどうやって君から逃げ切るか、その方法を模索していたよ」

(`○A○)「……」

無言のまま、男は着実に近づいてくる。
あと少し。握った手の平に汗が吹き出た。

( §ω^)「そして閃いた。何もウサギのように怯えて逃げる必要はない。
      要は、君を無力化すれば良いのだと」

(`○A○)「何が言いたい?」

――今だ!

( §ω^)「つまりは、こういうことだ」

男との距離が5メートルほどに縮まった瞬間、
ホライゾンは裾に隠し持ったナイフを投射した。

(`○A○)「むっ」

男は多少驚いた様子を見せながらも、その場を動くことはしなかった。
なぜならナイフは男へ向かって投げられたのではなく、
彼からかなり右へずれた位置を通過していったからだ。

(`○A○)「なんのつもりだ?」

( §ω^)「今に分かる」

空気を掠めるような、かすかな音が室内に響いた。
それは段々と大きく、素早く響くようになる。

( §ω^)「君の負けだ、ヒーロー君」

一際大きい音を皮切りに、ワイヤーロープが次々と男に襲い掛かった。
ワイヤーロープはあっという間に男を何重にも束縛し、その両腕を胴体に縛り付ける。

(`○A○)「こっ、これは!?」

( §ω^)「フックショットとストリングを用いて作った即席の罠だ」

ホライゾンは口元に不敵な笑みを見せた。

( §ω^)「君がここに来る前に、私が仕掛けていたものだよ。
      さっきのナイフでストリングを切断し、罠を作動させた」

よろりと起き上がり、勝ち誇った笑みを見せるホライゾン。
対する男は苦悶の表情で、必死にワイヤーから抜け出そうと苦闘している。

( §ω^)「その束縛は生半可な抵抗ではほどけない。
      "無駄な抵抗はやめるんだ"、ヒーロー君」

(`○A○)「くっ、ぐああっ!」

男の様子を見て、ようやくホライゾンは一息ついた。
恐ろしい男だった。人智を超えた能力を持ち、自分に危機を招いた男。
二度と忘れられないだろうなと思い、その場を後にしようとした、
その時だった。

(`○A○)「うううおおおおおおおおおおおぉぉぉ――っ!!」

万物を震撼させるような雄叫びが轟いた。
男は諦めていない。
全身全霊の力で束縛を断ち切ろうとしているのだ。

そしてその思いに応負けたかのように、ワイヤーロープの一箇所がちぎれ飛ぶ。

(;§ω^)「そん……な」

(`○A○)「怪盗、まだ勝負は、ついていないっ!」

男が再び大声を発する。
そしてそれと同時に、ワイヤーロープの束縛が吹き飛んだ。

(;§ω^)「ちッ!」

男の様子を確認すらせず、またもや背を向けホライゾンは走り出した。
本当に逃げ切れるのか、言いようのない不安を感じながらも。





(;=゚ω゚)ノ「ちょ、ちょっと待ってくださいよう、ジョルジュ警部。
      ちょっと休憩しましょうよう!」

ジョルジュ一行は40階と39階を繋ぐ階段の踊り場にいた。
イヨウ刑事は息も切れ切れで、手すりにもたれてなんとか立っているような有様である。

(#゚∀゚)「バカ野郎! ただでさえお前のせいでなかなか進んでないっていうのに、
     なんで休憩などしなきゃならんのだ! しゃきっと歩け!」

(;=゚ω゚)ノ「そ、そんなぁ」

(#゚∀゚)「大体テメーは警官のくせに、どうしてそう体力がないんだ!」

(;=゚ω゚)ノ「運動苦手なんですよう」

(#゚∀゚)「あーもういい。分かったからさっさとついて来い」

ジョルジュは完全に呆れ果てた調子でイヨウに声をかけた。





(;§ω^)「ハァ、ハァ」

腰を曲げて右手を壁につき、ホライゾンは肩で息をして立っていた。
タワーベータ35階、タワーアルファとの連絡橋が架かっているフロアである。
彼は周囲を見渡したが、暗闇の中に動くものは何も見当たらなかった。

(;§ω^)「つ、ついにまいたか?」

――ついにまいたか、とは。
久しぶりに仕事で弱音を吐いたじゃないか、ナイト・ホライゾン。

自嘲の言葉が脳裏に浮かび、ホライゾンは苦笑した。
こんな所でじっとしているわけにはいかない。敵はヒーロー男だけではないのだ。
いつ警察がやってくるか分からない。


ホライゾンが動き出そうとしたその時、天井の一部が轟音を立てて崩落した。
瓦礫と巻き上がる噴煙の中、天井と共に落ちてきた男が立ち上がる。


3_20091228100202.jpg



(;§ω^)「……君がもし空を飛んだとしても、もう私は驚かないだろうな」

(`○A○)「安心しろ。流石に空は飛べないさ」

その男――ヒーロー男は再三に渡り、ホライゾンの前に立ちはだかった。





逃げるホライゾンと追うヒーロー男。
ヒーロー男の出現によって退路を制限されたのか、
ホライゾンはタワーアルファへと続く連絡橋の方へと向かっていた。

二つのタワーを35階で繋ぐ連絡橋は、ちょうど真っ直ぐに伸びた
四角いチューブのような形をしていた。長さは約50メートル。
側面はガラス張りで、市内の夜景が一望できるようになっている。

タワーから連絡橋への入り口には、防犯のために改札が置かれていた。
しかしホライゾンはそれを軽々と飛び越え、追うヒーロー男もまた、遅れて彼に習う。

(`○A○)「くっ」

早くホライゾンを捕まえなければ。
ヒーロー男は焦っていた。

思えば、これまでにかなりの体力を消耗している。
ビル間の跳躍という大技に加え、巻きつくワイヤーロープからの脱出、
そして先ほど床を叩き崩した時にも、多くの力を使っていた。

体力には自信があったが、ここまで浪費させられたのは今回が始めてだった。
――早くケリをつけなければ。ヒーロー男の心中に焦慮が募る。

突如ホライゾンが立ち止まった。それを見て、ヒーロー男も追うのをやめる。
何故と思い先を見ると、その答えが分かった。

(;゚∀゚)「な、ななな、ナイト・ホライゾン!」

(;§ω^)「ジョルジュ警部……!」

ホライゾンの向かう先では、素っ頓狂な声を上げるジョルジュと、
その部下が数人、改札を抜けてこちらに進んでいるところだった。

(;゚∀゚)「う、動くな! 動くと撃つぞ!」

そう叫び、ジョルジュは拳銃を抜いてホライゾンに向けた。
他の警官たちも、彼に従って銃を構える。

ホライゾンが足を後ろに一歩引いた。
だがヒーロー男の存在を思い出したのか、首だけを回して彼を睨みつけた。

まさかここで警察と遭遇するとは、ヒーロー男にとって完全に予想外だった。
しかしこの予想外の出来事は、嬉しい誤算という奴だろう。
図らずも挟撃の形になっている。ホライゾンに逃げ場はない。

怪盗ナイト・ホライゾンは、連絡橋の途中に縫い付けられたのだ。



(`○A○)「そこまでだ、怪盗!」

そう言ってヒーロー男は一歩にじり寄った。
ホライゾンは不適な笑みこそ崩していないが、明らかにこの状況に困窮している。
いつも漂わせている余裕は、今やほとんど感じ取ることができない。

(;§ω^)「絶体絶命、というやつかな」

ホライゾンが呟いた。
独り言か、それとも誰かに向けて言ったのかは分からなかった。

ふとホライゾンがヒーロー男に向き直り、ゆっくりと口を開いた。

( §ω^)「君の名前を聞いておこう。ヒーロー君」

ヒーロー男にはほんの一瞬、ホライゾンのモノクルに隠れた目が見えた、気がした。

(`○A○)「……俺の名はベノムス。
     ベノムスだ」


毅然とした眼差しで見つめ返し、ヒーロー男――ベノムスは、自らの名を口にした。
それを聞いたホライゾンは満足したように頷く。

( §ω^)「ベノムス。確かに記憶した。
      さらばだ、我が宿敵よ」

それからのホライゾンの行動は、まさに電光石火という言葉を体現したものだった。

ホライゾンが何かをガラス張りの通路側面に投げつける。
それはブラスチックでできた灰色のミカンのような外見をしていた。
ぴったりとガラス面に張り付き、表面のランプがちかちかと点滅している。

ベノムスにはそれが何か、すぐに見当がついた。

(`○A○)「爆弾か!」

ほぼ同時にそれを認識し、銃の引き金を引こうとするジョルジュ。
だがホライゾンは既に次の動作へと移っていた。
彼は煙幕弾を連絡橋の両端へ、つまりベノムスと警察に向かって転がしたのだ。
瞬く間に煙幕が巻き上がり、ホライゾンの姿を黒煙が隠す。

(;゚∀゚)「待ちやがっ」

ジョルジュの怒声を豪快な爆発音がかき消した。
それと同時に風の流れが生まれ、煙幕が連絡橋の外へとあふれ出す。

外からその光景を眺めた者がいたとすれば、
連絡橋が紫煙を吐き出したかのように見えただろう。

爆音に身をすくめたが、ベノムスは体中どこも被害を受けていない。
どうやら壁を破壊する程度の威力しか持っていなかったのだろう。

煙幕が完全に流れ出し、最後にホライゾンがいた位置を視認できるようになった。
そしてベノムスが見たのは予想通りの、しかし認めたくない光景だった。

(`○A○)「なっ!?」

(;゚∀゚)「何ィッ!?」

爆弾が張り付いていたガラス窓に人間一人が通れるような大穴が空き、
床には微量のガラス片が散らばっていた。
それだけだ。他には何もない。

怪盗ナイト・ホライゾンが消え去ってしまったのだ。

(;゚∀゚)「バカなっ!」

驚愕の表情を見せ、ジョルジュは窓に空いた穴へと駆け寄った。
ベノムスも窓に近寄り、連絡橋の下を見る。

(;゚∀゚)「あああ……!」

(`○A○)「……!」

人が落ちていた。
全身黒ずくめ。手足の先は白く、頭部にはシルクハット。マントをなびかせて落ちていく。
どう見てもその格好は、ナイト・ホライゾンしかありえない。

人影は見る間に小さくなり、1階の茂みへと墜落した。

出し抜けに沈黙を破ったのはジョルジュだった。

(;゚∀゚)「イヨウ、下の奴らに連絡だ! 落ちたホライゾンを探せってな!
     それとここに来るよう応援を要請しろ! 俺たちも下に行くぞ!」

(;=゚ω゚)ノ「は、はい!」

まずい、とベノムスは思った。
ホライゾンを追っているとはいえ、警察から見たら自分も侵入者に相違ない。
大勢の警官と鉢合わせになれば面倒なことになる。

ジョルジュたちは落ちた人影に気をとられ、自分を眼中に捕えていない。
早急に逃げるべきだった。

ベノムスはタワーベータの方に向き、元来た道を駆け出した。


(`○A○)(だが……)

どうしても疑問が残る。
本当に落下したのは、本物の怪盗ナイト・ホライゾンだったのか。
ホライゾンがそう簡単に死を選ぶとは、ベノムスにはどうしても思えなった。

しかし落ちた人影を実際に確認することはあたわないだろう。
ならば、あとでニュースを見るなり、新聞を読むなりして確かめればいい。
今ベノムスにとって大事になのは、人目につかないよう逃げ出すことだ。

だが奴が生きていて、もしまた会うことがあれば――

(`○A○)「その時こそ決着をつけよう」

誰にともなく呟き、ベノムスはタワーベータの中へと姿を消した。






先ほど爆発があったとは思えないほど、連絡橋は夜の静けさを取り戻していた。
しかしそれは束の間のことである。ジョルジュの命令により、あと数分もすれば
多くの警官が駆けつけてくるはずだ。

「よっと……」

壁にあいた穴、その下の部分に外から手がかけられた。
その手の持ち主は上体を起こすと、連絡橋内へと転がり込む。

転がり込んできたのは男。
黒いマントにスーツ、シルクハットを着用し、目にはモノクルをかけている。

(;§ω^)「ふぅ」

まさしくこの男こそ、怪盗ナイト・ホライゾンであった。


( §ω^)「なんとか……なったか」


煙幕を張った時、ホライゾンはある道具を取り出していた。
その道具というのは、ガラスカッターを用いた時に使った、取っ手のついた吸盤である。

爆弾によって窓に穴を開けた後、ホライゾンは煙幕と共に穴から飛び出していた。
もちろん身を投げたという意味ではない。
彼は穴のふちに手をかけると、連絡橋の裏側へと身を操った。

ここでホライゾンは吸盤を連絡橋の底部に貼り付け、ぶら下がった。
その後、自分の容姿を真似たダミーバルーンを膨らませ、
壊れたハングライダーを重りにして下へと投げ捨てた。

そうしてホライゾンはぶら下がったまま、騒ぎが収まるまで身を隠していたのだ。


( §ω^)「ツン君がいなくて助かったな……」

――彼女がここにいたら間違いなく見つかっていただろう。
この場にいない敵を思い、ホライゾンは苦笑を浮かべる。


ふと、あのヒーローの姿が思い起こされた。
どこまでも自分を追いかけ、食らいつき、決して諦めない不屈の男。

( §ω^)「ベノムス……」

今思い出しても身震いするほど、ベノムスの追撃は凄まじかった。
ほとんど全ての道具を使いきり、ほうほうの体でなんとか逃げ延びることができた。
これほどまでに追い詰められたのは、初めてだった。

耐え難いほどの屈辱が身に染み渡る。
不意に絶叫を上げたくなったが、なんとかそれを押さえ込んだ。

( §ω^)「この借りは、必ず、返させてもらうぞ」

ホライゾンは拳を握り締め、虚空へと誓いの言葉を放った。







第3話『戦士ベノムス』 了









この小説は2007年6月01日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は◆SQlMtQaNrw 氏
次は第4話!!!たぶん



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/28 10:03 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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