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彼女は夢遊病患者のようです


414 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 17:48:26.40 ID:gEaKp7a+O

lw´‐ _‐ノv「はて、私は何か悪い事をしたのだろうか」

手錠をかけられ椅子に座るのは、まだあどけなさの残るたった九つの少女であった。
口の中で呟いた独り言は、机を挟んで向こう側にいる検察官には届かなかったようだ。

(,,゚Д゚)「…こんな小さな子供が殺人鬼とはな…」

彼もまた独り言だろう。
しかし少女のものとは相反して、それは部屋にいる全員にしっかりと聞こえた。

(*゚ー゚)「彼女の犯行は全て夜に行われています。真夜中に開いている扉や窓から侵入し、
最初に見つけた一人をその家にある刃物で惨殺すると本人は帰るという手口です」

(,,゚Д゚)「悲鳴などを聞いた者はいないのか」

(*゚ー゚)「はい。いつも一番初めに喉を潰しているようですので」

(,,゚Д゚)「深夜だから多少の物音なら気付かれなくともおかしくはないな」

検察官二人が何やら物騒な話をしている。
彼女とは誰のことなのだろう。

もう一人隣に男がいるが、こちらはまだ黙ったままだ。



415 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 17:49:08.67 ID:gEaKp7a+O


彼女は夢遊病患者のようです



416 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 17:50:23.49 ID:gEaKp7a+O

(,,゚Д゚)「さて、そこでお前に質問だシュール。なんでこんなに人を殺した?」

lw´‐ _‐ノv「?なぜそれを私にきく?本人にきけばよかろうに」

少女は首を傾げて言った。
嘘をついている風にはとても見えない。

(,,゚Д゚)「…おい…えっと…精神科医。こいつこの期に及んで何言ってんだ?訳せ」

( ・∀・)「名前くらい覚えてください。モララーです。そうですね…異常行動ですし」

ようやく口を開いた男は、今まで検察官のいた位置を借り、シューの正面にやってきた。

( ・∀・)「シュール。さっきこちらの女性が言ったことは全て君のことだよ。本当に覚えていないのかい?」

lw´‐ _‐ノv「…私?」

( ・∀・)「そう。君だ」

lw´‐ _‐ノv「私が、人を、殺した…」

ゆっくりと口にして言葉の一つ一つの意味を確かめてみるが、
それは彼女が幼過ぎるためか、いまいち理解が難しいものであった。



418 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 17:52:10.08 ID:gEaKp7a+O

( ・∀・)「…わからないかい?」

lw´‐ _‐ノv「うん」

モララーは手に持ったカルテに何かを書き、それが終わると検察官二人にこう言った。

( ・∀・)「やはり夢遊病によるものではないかと思います。
これは起きてる間にできることならなんでもできますからね。
音をたてずに忍び込む、見つかる前に素早く逃げると言った合理的なことも」

彼は少しだけ険しい表情になり、一拍置いて付け足した。


( ・∀・)「ただ十に満たない子供がやったとなると…過去に例を見ない」



419 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 17:54:24.15 ID:gEaKp7a+O

(,,゚Д゚)「…被害者は全部で七人だったか。子供と言えど立派な連続殺人だ」

( ・∀・)「家族はどうしてます?」

(*゚ー゚)「母親が別室で事情聴取を受けてます。父親は半年前に離婚していて兄弟もいません」

女性検察官は淀みなくすらすらと答えた。

( ・∀・)「ふむ…ではとりあえずそちらも見に行きますか。重要参考人ですし」

(,,゚Д゚)「だな…よし、来いシュール」

lw´‐ _‐ノv「手錠ははずしてくれんのか」

(,,゚Д゚)「無理だ。部屋につくまで我慢しろ」

シューは渋々立ち上がり、大人三人についていった。
そして歩きながら、今日の出来事についてよくよく考えてみる。



421 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 17:56:31.12 ID:gEaKp7a+O
この三人が言うに、自分は人を殺したらしい。
それも七人。
深夜に他人の家に入って、刃物で。

lw´‐ _‐ノv「殺し…刃物…夜、侵入…夜…」

わからない。
いくら記憶を思い起こそうとも、それらの単語にほとんど心当たりはない。



ただ、昨日の夜。

真夜中に目覚めた時なぜか外で立ちつくしていた自分。


422 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 17:57:20.50 ID:gEaKp7a+O

辺りはとても騒がしかった。
それ以上に、ピンク色だったはずのパジャマがやけにベトベトしていたのが不快だった。


捕まえろ────


声が聞こえた。

大人が何人も走ってきた。
無理矢理に掴まれて、少し痛かった。

そしてここへ連れてこられた。


lw´‐ _‐ノv「……」

いつまでも、わからなかった。

ここへ来た理由、なぜ自分が犯人なのか。



ただちらほらと脳裏をかすめるのは

真っ暗な中で月明りに照らされた、母親らしき人物の陰 だけだ。



424 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 17:58:35.05 ID:gEaKp7a+O

そもそも夜に出歩いた覚えすらないシューに、
それが何を意味するのかなんて、まだわからない。わかるわけがない。


lw´‐ _‐ノv「…わからない」


いくら考えても、やはり自分は何も悪いことなどしていなかった。



lw´‐ _‐ノv「私は、何も、悪くない…」



425 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 17:59:15.78 ID:gEaKp7a+O

(´・ω・`)「…ではあなたは一切気付かなかったということでよろしいですね」

('、`*川「はい…」

若い男が浅く頷いた時、彼の後ろのドアががちゃりと開いた。
入ってきたのは二人の男。

(´・ω・`)「ギコさん、と…えー…精神科医さん」

(,,゚Д゚)「とりあえずシュールの方はざっと見せたから連れてきた」

( ・∀・)(俺ってそんなに名前覚えづらいのかな)

('、`*川「あっあの…シューは今…」

(,,゚Д゚)「女性検察官と別室に移動させました」

('、`*川「そう…ですか…あの、一つ聞きたいことが…」

(,,゚Д゚)「はい、なんでしょう」

('、`*川「あの子は…」


('、`*川「本当にあの子が…犯人なんですか…?」



428 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 18:00:29.48 ID:gEaKp7a+O

消え入りそうなか細い声で、シューの母親はギコに尋ねた。
その不安げな表情は今にも泣き出しそうである。

(,,゚Д゚)「…残念ながら間違いありません。
血まみれで包丁を持っていた彼女を目撃し、保護したのは他でもない我々です」

( 、 *川「…そう…ですか」

(,,゚Д゚)「ご安心ください、14歳未満が法で罰せられることはありませんから。しかし精神科医によると
夢遊病による可能性が高いそうですので当分は我々が保護・監視することになります」

( ・∀・)「夢遊病といっても詳しい検査はまだなんですがね」

('、`*川(シュー…)

('、`*川「…今日は…もう帰らせていただけませんか?」



430 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 18:02:58.40 ID:gEaKp7a+O

(,,゚Д゚)「そうですね…今日はゆっくり休んでください。また後日お伺いすることになりますが」

('、`*川「構いません…じゃあ失礼します」

よろりと立ち上がり、重い足どりで彼女は部屋をあとにした。

残った男の中で、一人の刑事が数枚の書類を手にしながら疑問を口にした。

(´・ω・`)「しかし夢遊病で人殺しとは…できるもんなんですか?あんな子供に」

( ・∀・)「可能だよ。年齢なんて実質関係ない」

(,,゚Д゚)「そうかねェ…それにしたって捕まえるまで時間がかかりすぎた気もするが」

( ・∀・)「だから言ったでしょう?起きてる間にできることならなんでもできると」

軽く嘲笑うようにモララーは言う。



431 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 18:04:58.12 ID:gEaKp7a+O

( ・∀・)「あんたらが思う以上に夢遊病というのは複雑なんです。殺しなんてまだ単純な方で、
奴らは証拠隠滅からアリバイ工作までなんだってできるんですよ」

(,,゚Д゚)「へーすげーな…」

(´・ω・`)「じゃあ今回のケースでシューは何をしたと考えられますか?」

( ・∀・)「そうだね、血のついた服を洗ったりだとか…そもそも喉を初めに潰すあたり彼女自身の計画性の高さが見られる」

(,,゚Д゚)「もう少し大人だったら誰かを身代わりにするなんてこともできたかもな…本当に恐ろしい子だ」




話しながら三人もまた部屋をでていく。

カチッと電気を消す音が鳴り、最後に扉が閉められた。



彼らはまだ、気付いていなかった。



433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 18:07:59.15 ID:gEaKp7a+O

淡いスタンドライトの光が穏やかに枕もとを照らしている。

ただ考え事をするだけならこんな明かりは必要ないのだが、
しかし今の彼女はどれだけ明るくても不安でたまらなかった。

いつも隣で寝ているシューが、いない。そしてそれ以上に


('、`;川(シューが…人殺しだなんて)

もうずっとこのことばかり考えている。

もともと無口で不思議な子だったが、自分が夫と別れてから精神をおかしくしてしまったのだろうか。



435 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 18:09:59.04 ID:gEaKp7a+O

そういえば自分も色々とおかしくなった気がする。

朝目覚めると、時々シューを抱きしめて寝ていることがあるのだ。
そんな日は何故か寝る前とは別のパジャマに着替えていて、
ベランダには洗った覚えのないそのパジャマが干してある。

シューは単に寝ぼけて抱きしめていたのかも知れない。
しかしパジャマの件は、一体どういうことなのか。

今まで散々考えたが、未だにわからない。

('、`*川「離婚なんてしなければ…こんなことにはならなかったのかな」


彼女はどうしようもなく泣きたくなったが呟いた瞬間からだんだんと瞼が重くなり、
まるで別の何かに支配されるかのように、ゆっくりと意識を手放していった。



437 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 18:11:59.74 ID:gEaKp7a+O

lw´‐ _‐ノv(やってない…な、うん。絶対そうだ)

女子少年院の粗末なベッドに横たわるシューもまた、母親同様この事件を考えていた。

警察の人は寝ている内にやったから覚えていないだけだと言っていたが、
シューは確信していた。自分は本当にやっていない、これは濡れ衣だ、と。


しかしはっきり言って根拠はなく、あの夜に血まみれの包丁を持って血まみれの服で立っていたのもまた事実である。
誰でもない、自分が証人だ。


lw´‐ _‐ノv「…おかしい、な」


ジレンマを感じながらも、考え続けてはみる。

しかしやはり変わらない答えに彼女はようやく諦めて、
母の隣でいつもそうするように目を閉じて、ゆっくりと眠りについた。



440 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/12(火) 18:13:40.34 ID:gEaKp7a+O


まだ、誰も気付かない。
考えただけで答えがでるはずもないのだ。

進化しすぎた人間の脳とは、実に面倒なものである。








『次のニュースです。今日未明VIP州の民家で一人暮しの男性が何者かに殺害されているのが見つかりました。
えー、同様の手口と見られる事件が半年前から同じ地域で7件起きていますが、
昨日もお伝えしましたようにその犯人と思われる9才の少女はおととい現行犯で保護されており…』



-fin-


[ 2008/08/12 18:15 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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