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( ^ω^)ブーンがピアノを弾かされるようです 第一幕第一節


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




どれだけ時間が経っただろうか。

シクシクと痛む腹も大分マシになってきていた。
しばらく停車していないということは、信号も無い山道なのだろうか。
そんなことをブーンが考えていると、急に車が止まった。
そしてすぐに頭の方からドアが開く音がした。どうやらどこかに着いた様だった。

男「おら、降りろや」

声が聞こえたと思うと襟首を掴まれて、ブーンは強引に車の外に投げ出される。
顔が擦れるかと思い反射的に顔面に力が入ったが、どうやら草地だったらしく、
痛みは無いものの青臭い匂いが鼻の奥まで届いた。



1_20091227230735.jpg



―第一節―


男「早く立って歩けよ」

別な男の声に促されて、ブーンはゆっくりとバランスを取りながら立ち上がり、
男に背中を押されながら歩き出した。

( ^ω^)「ツンは…ツンはどこだお」

男「黙って歩かんかい」

服を掴まれたまま軽く蹴りを入れられた。
ブーンはそれですっかり怯えてしまった。

どうやら話は聞いてもらえないらしい。
ブーンはとりあえず自分の状況を把握することに専念すると決めた。

自分でも驚くほど冷静で居られるのは何故なのだろうか。
実のところそれはツンの存在が大きく関与しているのだが、ブーンにはその理由がわからない。
おそらくブーンはひとりで拉致されたのならここまで冷静に離れなかっただろう。
ブーンは自分が思っている以上にツンを大切に思っていたのである。


音の反響、匂い、雰囲気、五感に伝わってくるものがガラリと色を変えた。
この感覚は、おそらく建物に入ったのだろう。
ブーンはここから平衡感覚をよりいっそう研ぎ澄ませる。

1,2,3,4,5,6,7,8,R 1,2,3,4,5,6,......

歩数と曲がった方向を丁寧に覚えていくブーン


( ^ω^)(8R54L…)

しかし数えても数えても一向にたどり着かない。

(;^ω^)(くそ…遠回りしてるっぽいお)

そしてついにブーンは憶えきれなくなってしまう。

(;^ω^)(こんな事なら指に爪で傷でも付けるんだったお…)

そんなことを考えていると、ピタリと足音が止んだ。
ブーンが後悔している間にどうやら目的の場所に着いたようだ。
重いドアの軋む音がしたと思うと、ブーンはその中へと押し込まれ、そして目隠しが外された。

目を開けたが余りのまぶしさに目が眩む。
そしてその間にゆっくりと扉が閉まる音がした。


(;^ω^)「へ、部屋が真っ白に見えるお…」

しかしブーンの発言は目が眩んでいる人間にしては的を射ていた。

(;^ω^)「………」

目が慣れたはずなのに部屋の白さは一向に衰えることは無い。
そう、この部屋は元々真っ白に塗られていたのだ。

ブーンはとりあえず辺りを見回した。

壁も床も天井も照明も病的なまでに白い。
部屋の広さは1人には広すぎるほどの空間的余裕がある。
よく見ると鉄格子がはまっているものの、高い場所に小さな窓も付いているようだ。
出入りできる唯一の扉は一目見ただけで人の力じゃどうにもならない頑丈さを持ち合わせていることがわかった。

そして一際目を引いたのが、部屋の奥においてある真っ白なグランドピアノだった。


2_20091227230734.jpg


( ^ω^)「なんでこんな所にピアノがあるんだお…」

ブーンは置かれている状況が未だよく把握できずにいた。
そんな時、急に部屋の中を声が反響する。


『部屋は気に入ってくれたかな?』


どうやら声は天井に着いたスピーカーから聞こえているらしかった。


『私の部下が手荒い真似をしたようだったらすまない。謝罪しよう』

( ^ω^)「お前は誰だお!」

『自己紹介が遅れたね。私は、とある芸術を愛するグループのリーダをやっている者だ。
 今回私達の活動に是非ブーン君の協力が必要だったのでね、ここまで足を運んでもらった、という訳だ』

しばらくして返事が返ってきたということは、どうやらこの部屋の音声は拾われているらしかった。

( ^ω^)「…協力?」

『私達のグループは先にも言ったように芸術を愛するものたちで構成されていてね、
 今回はブーン君にピアノを弾いてもらいたいんだ』

( ^ω^)「ただピアノを弾かせるためだけにこんな大げさなことをしたのかお!?」

『いやいや、これもまた芸術には必要なことなのさ』


明確な答えが返ってこなかったので、ブーンは更に質問をする。

( ^ω^)「なんで僕なんだお」

『君が一番都合がよかったんだよ。プロじゃあ居なくなれば大事だが、君はただの一般人。
 そして今現在ある程度幸福で、ピアノの経験もある…。それも中々の好成績を残しているじゃないか』


ブーンはドキリとした。

言われた事が的中していたのである。
何故コイツはそんなことを知っているのだろうか。
調べた? どうやって?
ブーンは加速する心臓の鼓動を抑えるのがやっとだった。

『と、言う訳で、今日から君にはここでピアノを弾いてもらう。
 ちなみに選択権があるとは思わないように』

意味深な言葉にブーンが反応した。

( ^ω^)「ピアノを弾かないこと位簡単な事だお。なんで僕がわざわざ弾かなきゃならないんだお」

ブーンは強気だった。
理不尽な悪の言いなりにはなりたくない。
先ほどよりも明確になったその輪郭に、ブーンには反抗心が芽生え始めていた。

『まぁ、君がそういうなら仕方ない。最初のご飯は君の彼女の頬肉にしようか』

その一言にブーンは凍りついた。
後に一呼吸置いて、凍りついた体の内側から灼熱のマグマが湧いてくる。

(#^ω^)「ツンに手を出すなお!!」

おそらく目の前に本人が居たら殴り殺してしまうだろう位の勢い。
ブーンは顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。

『…そうそう、それだよ。芸術にはそれが必要なのだよ』

少し間を置いて、またスピーカーは喋りだした。

『君の彼女にはまだ手を出してはいない。
 君が立場をちゃんと理解してくれれば彼女も無傷でいられる。それは約束しよう』

(#^ω^)「………」

もしかしたら逃げれたのではないかと思っていたのだが、やはりツンも捕まってしまっていたのか。
ブーンは未だ腸が煮えくり返っていたが、ツンを想い発言を控えた。

『そうそう、それでいい。なに、条件は簡単なことだ。まずは君の口癖を矯正してもらいたい』

( ^ω^)「…口癖?」

『語尾の「お」を取ってくれればいい。それだけだ』

( ^ω^)「そんなの簡単だお」

言ってしまってからブーンは口を塞いだ。

『会話の機会は少なくは無い。
 食事の受け渡し、健康診断、それにもしかしたら君の彼女とも会話があるかもしれない』

( ^ω^)「ツンはどこにいるんだお!」

『言ったそばからこれだ。そんなに腹が減っているのか?』

(;^ω^)「………」

子供の頃大人に叱られた時、こんな気持ちだった。
手が届かない。どんなに足掻いても届かない、そんな絶対的な力。
それを今ブーンは感じていた。

(;^ω^)「ツ、ツンは…どこに、いる…!」

ただ語尾を切り落とすだけなのに、こんなにも疲れるものなのだろうか。
ブーンはしどろになりかけながらもツンの安否を確認する。

『彼女は別室でちゃんと保管してあるよ。安心したまえ』

人をモノみたいに言うこいつらに従わなければいけないのか。
ブーンは真っ赤になるほど拳を握った。

『楽譜は奥の引き戸を開けてもらえばあるはずだ。
 君がピアノを弾けば弾くほど、明るい未来も近づくというものだ』

そうだ、冷静になってみれば、ピアノを弾いて、極力喋らなければいいこと。
ただそれだけだ、とブーンは自分に言い聞かせていた。
しかし、この状況下に納得してしまった今、ブーンには自ら未来を進める気力が無くなったとも言えた。


1人になって(と、言っても元々この部屋には1人しか居ないが)ブーンは考えていた。

ピアノに近づくでもなく、ただ壁にもたれ掛かりながら床に座り、白い天井を見つめながら。

( ^ω^)(ピアノを弾くなんて、何年ぶりだお…)


一番最近弾いたピアノ……ブーンは幼少時代を振り返る。

4歳でピアノを始めたブーンはメキメキとその才能を伸ばし、
小学校に上がって間もなくあるコンクールで銀賞に選ばれる。
気をよくした両親はさらにブーンの才能を伸ばそうと、
ブーンの為にグランドピアノを買い、家を建て、専用の防音室を作った。
それからもブーンの成長は目を見張るものがあった。

ついには小学校6年生にして小中学生の大会で全国3位に輝く。

しかし、ブーンにはそんな賞よりも友達と遊ぶ時間が欲しかった。
友達と遊んでいても、午後4時になるとこれからという時に練習があるからと帰る毎日。
楽しそうに盛り上がっている友達を思い浮かべながら1人部屋で練習をする毎日。
大会前ともなれば、練習で課題曲をミスする度に父親から罵声が飛んでくる。
涙を流しながら、震える指で同じミスをし、また叱責される。

そんなピアノをブーンが嫌いになるのは自然なことだった。
ブーンは中学に上がりすぐにピアノと決別する。
周りからの惜しむ声も、ブーンには呪詛に等しかった。

こうしてブーンはピアノとは無関係の人生をスタートした。
堕落することもなく、ちゃんと大学にも入れた。
けれども時々ブーンは思い出す。

( ^ω^)(あの時、僕はピアノをやめてなかったらどんな人生が…)

少なくともこんな所に閉じ込められることは無かったかもしれない。
ブーンはそう思い、クスリと笑って立ち上がった。

( ^ω^)(……弾くお)

今僕がピアノを弾いてツンが助かるならそれでいい。
ブーンはピアノを嫌いになったあの頃以来、久しぶりに自らの意思でピアノへと向かった。
そこには、嫌悪と高揚の入り混じった複雑な感情があった。

ピアノを弾く前に、ブーンはさっき言われた引き戸の前に立った。
さっきまでは気付かなかったがどうやら横にはトイレがあるようだった。
引き戸を引くと、そこには想像以上の収納スペース、というよりは収納部屋があった。
作曲家別に棚が出来ており、学校の図書室を彷彿とさせた。
ブーンは迷う事無くハノンとツェルニーを引っ張り出してくる。

( ^ω^)「まずは指を動かす練習からだお」

言ってからピタッと止まった。
この部屋の音声が拾われていることはさっきの時点でわかっていた。
もしかしたら、今のも聞かれていたか。
ブーンはびくびくしながらも、部屋へと戻った。

譜面台に楽譜を広げ、かつて弾いていたように指を動かす。
正直なところこの位のレベルなら余裕だとブーンは高を括っていた。
しかし、現実はあまりにも違った。

(;^ω^)(く、薬指が動かないお…)

どうしても思い通りに動かない薬指のせいで、音の粒は勿論、リズムさえも崩れる始末。
右手のリズムと左手のリズムが合わないなんていう経験は、もしかしたら初めてだったかもしれない。
こんなにも自分は衰えてしまっていたのか。
それはかつての栄光を背負って生きてきたブーンには、耐えがたい苦痛だった。
ブーンは考えを改め、曲のリズムを変えたり、スタッカートをつけたり、基本に忠実に練習を進めていく。
もう何年も経っているのに、弾けば弾くほど練習法を思い出していく。
気付けばブーンはいつの間にかピアノに夢中になってしまっていた。



(;^ω^)「ふー……」


どれだけ時間が経っただろうか。
ブーンはまだ完璧ではないにしろ、昔の勘を取り戻しつつあった。

ふと窓を見上げると満月が顔を覗かせていた。
そこでブーンは思い出したように譜面を取りに行く。

取り出してきたのはベートーヴェンのソナタ集。
そしてブーンはパラパラとページをめくり、目当ての曲を見つけるとしっかりと折り目をつけて開いた。
開かれた番号は14。

ピアノソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」である。

譜面を一通り見てまだ自分が曲を覚えていると確認すると、
ブーンは壁のスイッチを押して部屋の照明を落とした。
月明かりがちょうどピアノ全体をぼんやりと照らす。
そんな中ブーンはゆっくりと旋律を奏で始めた。

第1楽章ならば今のブーンでも弾くことが出来る自信があった。
静かに、静かに、反響するピアノの音。
ブーンは、ツンを想いながら月明かりに照らされ1人、月光を弾いた。

ピアノを弾いているこの瞬間は、自分だけの世界に居られる。
ブーンはそんな気がしていた。


3_20091227230734.jpg




「おい、飯だぞ」

気が付くと朝になっていた。
どうやらあの後そのまま床に寝転がって寝てしまったらしい。
目の前にトレーに乗ったスープとパンが見えた。
ブーンは起き上がり声のする方を見上げた。

( ゚∀゚)「お、起きたか。飯だぞ、食えよ」

見知らぬ男が自分にご飯を持ってきていたようだ。
自分をさらってきた男とは違う服を着ていた。
白を基調とした制服を着ていて、ブーンの目には眩しかった。

( ^ω^)「誰だ――ふぉ?」

ブーンは思わず「お」と言いそうになるところを、口を歪めて咄嗟に誤魔化した。

( ゚∀゚)「俺か? 俺はお前の世話係だ。飯を運んだり、お前の様子を確認するのが俺の仕事って訳」

一人だけかと思いチラリとドアの方を見たが、どうやら少なくとも3人は居るようだった。

( ^ω^)「とりあえず、布団が欲しい……よ。一晩寝ただけで体が痛い…んだ」

ゆっくりと気をつけながらブーンは要望を出す。

( ゚∀゚)「あん? この部屋布団も無いのか。よっしゃ俺が取ってきてやるよ。その間にそれ食ってろ」

男はトレーを指差すとあっという間に駆けて行ってしまった。
思いの外軽い返事にブーンは戸惑った。
昨日の威圧的な男とのギャップは一体何なのだろうか。
油断させてこの食事に毒でも盛っているのだろうか。
ブーンはトレーのパンを割ってみたり、スープの匂いを嗅いでみたり、すべてを疑ってかかった。
でもここで殺す意味なんて無いと、ブーンは開き直って出された食事を食べ始めた。

ブーンが半分ほど食事を食べた頃、大きな白い塊が部屋の中へゆっくりと入ってきた。

(;゚∀゚)「おっ…とっとっ……よし、と」

男がそれを床に落とすと、勢いよく埃が舞うのが見えた。
ブーンは慌ててトレーを両手で持ち上げる。

(;^ω^)「ちょ、汚いお! …しいれからでも出してきたの…か?」

咄嗟に口から出る言葉はさすがに制御しきれなかった。
果たして誤魔化しきれているだろうか。

( ゚∀゚)「悪い悪い、ちょっと布団が見つかんなかったから、
      俺が今朝まで使ってた愛用の布団を持ってきてやったぞ。ちょっと臭うけど勘弁な」

そう言って男は顔中の筋肉を緩ませて笑った。

普通に友達にでも笑いかけるようなその笑顔に、ブーンは戸惑いを隠せなかった。
この男は何故こんなことをしているんだろうか。
何も言わず腹に蹴りを入れたり、人を監禁したり、それがこいつらの本性じゃないのか。

( ゚∀゚)「じゃあそれ食い終わったらどっか置いといて。昼また来るからさ」

( ^ω^)「あ!」

ブーンは整理が付かない頭で男を呼び止めた。

( ゚∀゚)「何?」

男が振り向いて返事を持っている。

( ^ω^)「……布団…助かった…よ」

ブーンは複雑な気持ちのまま感謝の意を伝えた。

( ゚∀゚)「いいっていいって。俺の布団が新しくなるだろうし」

(;^ω^)(あれ…もしかしてそれが本当の目的じゃ…)

どちらにしても、何でも話してくれるこの男に少なからず好意を覚えたことは事実だ。
ブーンはぐちゃぐちゃなままの布団を見つめながらしばらくボーっとした後、勢いよくパンをほお張った。





この小説は2006年3月15日から2006年3月16日にかけてニュース速報(VIP)板に投稿されたものです

作者は◆HGGslycgr6 氏
第一幕第二節は、こちらからどうぞ

記事元はオムライスさんになります



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[ 2009/12/27 23:09 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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