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( ^ω^)がリプレイするようです Epilogue


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ






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Epilogue:二〇〇七年八月


『俺は、晴れわたった青空の中、
 ゆっくりとまた回り始めた萩原さんのルーレットが見える気がした。
 そしてその青空いっぱいに仲間たちのルーレットが、
 止まることだけを拒み続ける俺たちのルーレットが、
 幾つも、幾つも、回っているのを、見た気がした』

                         「辻内智貴 青空のルーレット 『青空のルーレット』」


高い日差しがアスファルトを照らし、照り返されたそれが下からも肌を刺す。

スーツと風呂敷包みを脇に抱えながら路上を歩くギコは、
締め付ける首もとのネクタイを緩め、襟を開けた。

汗だくの肌をなでる風は湿っており、
それはけたたましく鳴り響く蝉の音とともに身体の不快感をさらに増長させる。

(;,,゚Д゚)「……こいつはたまらん」

ここ数ヶ月で急に出始めた下腹を引っ込めようと、
できるだけ移動は歩きにするよう心がけているギコ。

しかし、季節は真夏。行く道の熱気に晒され、
まるでサウナに入ったときのように全身汗まみれになり、文字通り彼は死にそうな顔をしていた。

うつむき、背を曲げながらとぼとぼと進む。
ゾンビを連想させる歩き方で通りを渡る彼は、見上げた視線の先に希望の光を見た。

(;,,゚Д゚)「……飲みもんだ!」

目の前にあったのは自動販売機。
犬のように舌を出しながら、喉の渇きを癒そうと即座に財布を取り出す。

中にあったのはしわくちゃの千円札ただ一枚。
まさかと思って自動販売機の口に入れてはみるが、予想通りそれは何度入れても戻ってくる。

まるで『残念でしたー』と言わんばかりに、繰り返し千円札を返却する自動販売機。
ギコにはそれが、自分を嘲りながらあっかんベーをしているように感じられた。

(,,゚Д゚)「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

悔しさを拳に乗せ自販機に一撃をかます。
しかし頑丈なそれは長岡のようにはいかず、ギコの渾身の拳をいとも簡単にはじき返す。

その反動で尻餅をついたギコは、痛む拳をさすりながら何気なく視線を空に移した。

押し寄せる渇きの中で仰ぎ見た夏空には、高く伸びた入道雲が悠々と蒼の中を流れていた。


                         *

(,,゚Д゚)「と、いうわけで拳が痛い」

自席に座り、適当な物で顔を扇ぎながら、ことの一部始終を話すギコ。
空調の効いたVIP署刑事課の室内は、炎天下をさまよった彼には理想郷のようにも感じられていた。

そんなユートピアに、いつものあの笑い声が響き渡る。

( ;∀;)「うひゃひゃwwwwww あんたバッカじゃねぇのwwwwwwwwwwww!?」

(,,゚Д゚)「ああん? 何だと?」

(;゚∀゚)「い、いえ! ギコさんはおバカさんではあらせられませんか!?」

(,,゚Д゚)「言葉の内容は同じだろうがゴルァ!!」

怒鳴り声と共に長岡の脳天を殴りつけるギコ。床と口付けを交わした長岡。
同室の刑事たちは、『またやってるよ』と言わんばかりに二人を遠目に眺めている。

(,,゚Д゚)「おら! そんなところで寝てねぇでさっさと飲みもん持って来い!!」

( ゚∀゚)「……へーい」

頭上をさすりながらぬらりと起き上がった長岡は、
不機嫌なオーラを背中に宿し、給湯室の方へと消えていった。


                           *

(,,゚Д゚)「……なあ、長岡」

( ゚∀゚)「はい? なんでしょう?」

(,,゚Д゚)「この茶の湯気……尋常じゃねぇ量だな」

( ゚∀゚)「はい、それはもう! やかんに入れてグツグツとヤキを入れてやりました!!」

給湯室から戻ってきた長岡。
彼の手から差し出されたギコの湯のみ(猫さんカップ二世 \6.980)は、煮えたぎるお茶で満たされていた。

表面張力によりかろうじてその身を湯飲みの中に留めるお茶。沸き立つ湯気は見ているだけで暑い。

長岡はこれをどうやってこぼさずに給湯室からもってきたのだろう。
そんな疑問を感じながらも、ギコは湯のみを前にして、懐から細長い何かを取り出した。

そしてその先端を液体の中に入れる。

(,,゚Д゚)「……ふむ、ちょうど百度か」

(;゚∀゚)「ギコさん……なんであんた、My温度計なんか持ってるんスか?」

(,,゚Д゚)「ああ、それはな、半年くらい前に貴様に煮え湯を飲まされたからだ」

そう言ってボキボキと拳を鳴らすギコ。
背中に怒りの炎を燃え上がらせる彼を前に、長岡は額に脂汗を浮かべながら後ずさる。

(,,゚Д゚)「なあ、長岡。お前は猫舌の俺に煮えたぎる茶を飲ませる気だったのか? しかも真夏に」

(;゚∀゚)「や、やだなぁギコさん……あ、暑いときこそ熱いお茶じゃないですか! 
     『これぞ最良の納涼術なり!』って、ケロロ軍曹で東屋小雪ちゃんが
     言ってた気がします!!」

(,,゚Д゚)「ならてめぇが飲めよゴルァ!」

ギコのアッパーカットが長岡のあごを捉える。同時に彼の身体が宙に浮く。
長岡はふわりと中空を舞いながら、スローモーションで動く世界の中で、最後の言葉を呟いた。


( ;∀;)「ああ……時が見える……」


彼の墓前には、煮えたぎるお茶が添えられていたという。


                        *

( ゚∀゚)「で、こんなクソ暑い中どこに行ってたんスか?」

(,,゚Д゚)「……何事も無かったかのように話を進めるな」

アッパーカットの直撃を受けながらもすぐに立ち上がった長岡。
さすが長岡だ。あごを砕かれてもなんともないぜ。

まるでゴッグのような彼を呆れたように一瞥したあと、ギコは自席の上に置いた風呂敷包みに目をやる。

(,,゚Д゚)「こいつを受け取りに行っていた」

( ゚∀゚)「あー、ようやく許可が降りたんスね?
     にしても長かったですねー。申請出したの一ヶ月くらい前じゃなかったっスか?」

(,,゚Д゚)「まあ、役所仕事ってのはそういうもんだろ」

ぼやくギコ。
視線はその中身を見通すかのように風呂敷へと注がれている。
同じく風呂敷を眺めながら、長岡は問いを投げかける。

( ゚∀゚)「で、先方には連絡入れたんスか?」

(,,゚Д゚)「ん? ああ。盆に現地で合流する手はずになっている。お前も来るか?」

( ゚∀゚)「そうっスね。盆は連休とってあるし、
     することといえばお袋たちの墓参りだけなんで、ついていきましょうかね」

望みどおりの答えを長岡の口から聞き、ギコはにやりと口の端を上げた。

(,,゚Д゚)「そんじゃ、本場のちゃんぽん食わせてやるよ」

( ゚∀゚)「うひゃひゃ! ゴチになります!!」

それに長岡も笑って返した。


                      *

お盆当日。二人は離陸を待つ飛行機の中に座っていた。

ギコは喪服に身を包み、膝元に風呂敷包みを置いて新聞を読んでいる。
一方、彼の隣の窓際座席には、アロハシャツとサングラスに身を包んだ変人が座っていた。

ヽ( ●∀●)ノ「わーい! 飛行機なんて初めてっスよー! 緊張するナー!!」

機内に設えられた四角い小窓に張り付きはしゃぐアロハ。
まるでハワイにでも行くかのような彼のはしゃぎぶりに、ギコは心底あきれ果てながら呟く。

(,,゚Д゚)「……あのなぁ、まがりなりにも盆なんだ。その格好はねぇだろ……常考」

( ●∀●)ノシ「ああ、大丈夫です。ちゃんと喪服は持ってきていますから」

そう言って足元に置いた紙袋を手に取り、誇らしげに掲げる変人。
再びそれを足元に置くと、アロハは隣に座るギコの服装を舐めるように見まわして、言う。

( ●∀●)「それにしても、ギコさんっていつもスーツか喪服っスね。
      余所行きの私服持ってないんスか?」

(,,゚Д゚)「持ってねぇよ。俺は服には疎いんだ。ほっとけ」

( ●∀●)「ふーん。それなら奥さんに選んでもらえばいいのに……」

そこまで言った長岡は、まるで『しまった!』と言わんばかりに口を両の手で押さえる。
その姿を一瞥して広げた新聞に視線を戻し、ギコは少し考えたあとで、つぶやく。

(,,゚Д゚)「……別にいいよ。最近はそんなに仲が悪いってわけじゃないしな」

( ●∀●)「あれ? そうなんスか?」

(,,゚Д゚)「んー、会話はそれほど増えてはいないんだがな。
    仕事帰りに手土産買っていったり、洗濯もん畳んだり風呂掃除したりしてたら、
    前まで感じていた威圧感があいつから消えた。
    それに晩飯が心なしか豪華になってな。
    それが妙にうまいもんだから、おかげでこの有様だ」

そう言ってギコは新聞をたたみ、喪服の上から腹をつまんでみせる。
中年にふさわしいそれを見て、長岡は甲高い笑い声を機内に響かせる。

( ●∀●)「うひゃひゃwwwwwwwww 
      そういや心なしか顔が丸くなりましたねwwww
      性格も丸くなればいいのにwwwwww」

(,,゚Д゚)「うるせぇ。俺にこのままでいろって言ったのはてめぇじゃねぇか」 

( ●∀●)「あー……そんなこともありましたねぇ。
      でもまあ、仲直りできて良かったじゃないスか。
      どうせなら奥さんもつれてくればよかったのに。俺、人妻萌えでもありますし」

(,,゚Д゚)「今日のは仕事の延長みたいなもんだからな。あいつを連れてくるのは筋違いだろ。
    まあ、用事が終わったらすぐに東京に戻って、
    あいつをどこかに連れてってやるつもりさ」

ほのかに赤らめた顔を、再び広げた新聞で隠しながら呟いたギコ。

長岡は隠れた彼の表情を想像して、
色恋沙汰の話で盛り上がる女子高生のようににんまりといやらしい笑みを浮かべる。

同時に機内アナウンスが流れる。

そして若干の間を置いて、飛行機が徐々に動きはじめた。

(;●∀●)「おお……来る! いよいよ離陸だ! I CAN FRRRRRRRRRRRRRRRRY !!」

(,,゚Д゚)「うるせぇ! 揚げてどうする!? お前が揚がれ!!」


スピードは確実に上がっていき、生じ始めたGに身体が座席へと押し付けられる。
押し寄せる圧力の中でギコはおもむろに新聞を折りたたみ、その表情をこわばらせた。

『何度体験してもこれは慣れんな』 

そんなことを心の中で呟いていると、一瞬尻の辺りが少し浮いた気がして、身体が一気に軽くなった。
同時に長岡が両手をばたつかせながら雄たけびを上げる。

ヽ( ●∀●)ノ「うおおおおおおおおおおおおおおお!
        飛んだああああああああああああああ!!」

(,,゚Д゚)「うるせぇ! いちいち騒ぐな! サングラスぶち割るぞゴルァ!!」


从#゚∀从「お客様! 黙りやがれ!!」


( ●∀●) 「はい、ごめんなさい」

(,,゚Д゚)「はい、ごめんなさい」

前の座席に対面していたフライトアテンダントに鬼の形相で怒鳴られた。
それ以後の機内で、二人は要注意人物として監視され続けることとなった。


                        *

空港へと無事降り立った飛行機。

般若のフライトアテンダントから開放された二人は、
構内に降り立ってようやくほっと人心地ついた。

世界初の海上空港として開業したこの空港。
その構内を見渡しながら、長岡は『うわ、ボロッ!』と呟いた。
返す言葉も無いギコはその言葉を聞き流し、県庁所在地に向かう高速バスへと乗り込む。

空港と県庁所在地は高速道路を使っても一時間かかるほどに離れている。
これがこの町の発展を妨げている理由だろうと、人事のように思い浮かべながらバスに揺られるギコ。

やがて、それまで山と海しかなかった風景の中に建物の色が宿り始め、流れていく町並みが少しはマシなる。
窓越しに見える懐かしい風景にまどろんでいると、ふいに長岡の声が聞こえた。

( ゚∀゚)「ギコさん。着いたっスよ」

(,,゚Д゚)「……んぁ。ああ、すまん」

どうやら少し眠っていたらしい。
長岡から起こされたことになぜか悔しさを感じながら目を開ける。

眼前に立つ彼の姿は、いつの間にか喪服に包まれていた。


降り立ったバスターミナル。

その構内に入り、待合室へと足を踏み入れ、そこにいるであろうあの人を探す。
風呂敷包みを両手に抱え、喪服姿であたりをキョロキョロと見渡すギコ。

やがてその視線は、行きかう人々の中に彼女の姿を捉える。

从'ー'从「……ギコさん、お久しぶりです~」

(,,゚Д゚)「お久しぶりです。本日はわざわざお出迎えいただきありがとうございます。
    それで、須名そらさんは?」

从'ー'从「数時間前に~、お孫さんとこちらにお越しになったので~、
     ぺニサスが先にお連れしています~。
     あなたたちの案内は~、私がさせてもらいます~」

(,,゚Д゚)「恐縮です。ありがとうございます」

渡辺さんを前に一礼をし、話を続けようとしたギコ。
そこに割って入り、長岡がギコの耳元でささやき声をあげる。


(;゚∀゚)「ちょ、ちょっとギコさん!」

(,,゚Д゚)「ああん? 何だこら……っておい!!」

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長岡はギコの腕をつかむと、慌てた表情を浮かべ待合室の隅へと引っ張っていく。
そんな二人の姿を不思議そうに首をかしげて眺める渡辺さん。

無理やり自分を引っ張る彼に、
抱えた風呂敷包みを落とさないよう注意しながら、ギコは怒鳴る。

(,,゚Д゚)「いきなりなんだ! 先方に失礼だろうが!!」

(;゚∀゚)ノシ「いやいやいや! なにあのばあさん! めっちゃ美人じゃないっスか!?」

(,,゚Д゚)「……それがどうした?」

(;゚∀゚)「いえね、福岡で会ったクーちゃんのばあさんのときも思ったんですど……」

長岡は真剣なまなざしでギコを捉え、言った。

( ゚∀゚)「もしかしてあんた……ばあさんキラー?」

(,,゚Д゚)「死ね」

( ;∀;)「おふぅ!!」

ギコの強烈な頭突きが長岡の額を割った。


从'ー'从「あれれ~、あの人大丈夫なんですか~?」

(,,゚Д゚)「はい。たぶん死にはしないでしょう」

待合室の隅で仰向けに倒れる長岡。
渡辺さんの前に戻ったギコは、額からよくわからない蒸気をあげる長岡を一瞥することなく答えた。

彼は手にした風呂敷包みを渡辺さんの前にそっと差し出し、言う。

(,,゚Д゚)「それで、こちらが……」

从'ー'从「……ええ。わかっています~」

ギコから風呂敷包みを受け取ると、
渡辺は微笑みつつも、それを複雑なまなざしで見つめる。

喜び、そして悲しみ。

相反する二極の感情を瞳に宿し、小さな声で彼女は呟く。


从'ー'从「……内藤さん、お久しぶりですね~」


受け取った包みを眼前に掲げた渡辺さん。
彼女はまるで誰かに話しかけるがごとく、柔らかに言葉を連ねる。

从'ー'从「私、ずっと待っていたんですよ~? 
     誰とも結婚することなく~、いつかあなたが帰ってくることを信じて~、
     ずっとずっとこの町で~……あなたを待っていたんですよ~?」

そして、目じりからしずくを一粒落とす。
こぼれ落ちたきらめきの欠片をそのままに、
彼女は風呂敷の結び目をそっとほどき、包まれていた白い陶器の肌に頬を重ねる。

ひんやりと冷たい陶器の骨壷。
それは渡辺さんの体温を吸い、わずかばかりの暖かさに包まれる。

从;ー;从「だけど~……こんな形で再会したくはなかった~……
      だってあなたはもう~……何も答えてはくれないんですもの~……」

声は空気を介することなく、触れた渡辺さんの頬から陶器へと伝わる。
そのまま骨壷をギュッと抱きしめ、力なく膝を折って、地面へとへたりこむ。

从;△;从「内藤さん……内藤さん……!!」

待ち望んだ再会は、命と命によるそれではなかった。
繰り返し同じ名を呼ぶ彼女は、骨壷の中で眠る彼に何を想うのだろうか。

これからバスに乗り、町から町へと行きかうであろう人々が見つめる中、
老婆は半世紀以上の時を経た再会に、ただ嗚咽の声を上げ続けるだけだった。


                 *

(;゚∀゚)「坂の町っていうのは本当っスねー」

从'ー'从「うふふ~、それしかない町だからね~」

(,,゚Д゚)「それより渡辺さん、例のこと……」

从'ー'从「……ええ、わかってます~」

十分ほどで落ち着きを取り戻した渡辺さん。
彼女に連れられてバスターミナルを出たギコと長岡は、
五分ほど平地を歩き、そこからこの町特産の坂道へと差し掛かっていた。

かつて二十六人の聖人が殉教したと伝えられる丘へ続く坂道。
そのさらに先に、目的地はあるようだ。

坂を上る三人。その道程でひと騒動あったが、ここでは割愛させていただく。

丘を抜け、その先の入り組んだ狭い坂道も越えて、
やがて三人は山の斜面に開かれた墓地へと足を踏み入れた。

傾斜の中に段状に密集する数々の墓。
お盆というシーズンのためか、敷地内にはちらほらと人影が見える。

三人は墓と墓の間に敷かれた通路を抜け、一基の墓の前にたどり着いた。

そこに、彼女たちはいた。


ヽ('、`*川「おーい、ギコ坊! こっちたい!!」

(,,゚Д゚)「おー、ぺニサスのおばちゃんやっか。まだ生きとるみたいやな」

両手に風呂敷に包まれた骨壷を抱え、口だけであいさつをするギコ。
ぺニサスは顔をほころばせながら、憎まれ口を叩く彼に言葉を返す。

('ー`*川「やかましかw あんたより長生きして見せるさねw
     それより、先にお見えになられとるお二人にちゃんとあいさつばせんね」

そう言ってぺニサスは自分の隣へと顔を向ける。
つられて視線を移したギコが捉えたのは、須名クーと須名そらの二人。

彼女たちは墓の敷地に足を踏み入れたギコたちに向けて、慇懃な礼をする。

川 ゚ -゚)「……こんにちは」

爪 ゚/-゚)「ご無沙汰しております。本日は私どものためにわざわざすみません」

(,,゚Д゚)「いえ、ちょうど里帰りの時期だったのでお気になさらないでください。
    それで、こちらが……」

爪 ゚/-゚)「……内藤さんの遺骨ですね」

包んでいた風呂敷をはらりと取り去れば、
抱えたギコの腕の中に現れたのは白い陶器の骨壷。

それが白日の下に晒されると同時に、
クーとの再会を喜んでいた長岡を含め、その場にいた全員が沈黙する。

ギコは静寂に包まれる敷地内を歩き、その真ん中に設えられた墓石の前で足を止めた。
古ぼけておりながらもしっかりとたたずむそれに書かれている文字は『内藤家之墓』。
一礼して、その場に座り込む。

墓石の下には小さな石製の戸があり、
開けばその先には骨壷を収めるための空間が設けられていた。

数個の骨壷が納められているそこに、ギコは手にした内藤ホライゾンの骨壷をそっと置く。

すると渡辺さんがギコの側へと座り込み、内藤の骨壷を別の骨壷の隣にスッと移動させる。

从'ー'从「ツンさんの隣に置いてあげたいんです~」

そう言って、ギコの顔を見て微笑む渡辺さん。
すでに主のいなくなった内藤家の墓をずっと保っていたのは、他ならぬ彼女であった。

失った内藤麗子を弔い、いつか内藤ホライゾンが訪れることを信じて、彼女はこの墓を守り続けた。

しかし、その結果がこれだ。結局、内藤ホライゾンとともに内藤麗子を弔うことは叶わず、
叶ったことといえば、かつて自らが慕い、想いを寄せた二人をこうしてただ独り弔うことだけ。

だのに彼女はこうやって微笑んでいる。
涙を流すことなく、静かに手を合わせて、内藤夫妻の再会を心から喜んでいる。

彼女と同じの立場に置かれたとして、
自分はこうやって彼女のように静かに故人の再会を喜んであげることが出来るだろうか?

出来るわけがない。自分なら残された悲しみに打ちひしがれ、
その痛みを周囲の人間か、もしくは故人にぶつけて当り散らすことだろう。

心中でそんなことを呟きながら、ギコは渡辺さんの顔を改めて眺めた。

しゃがみこみ、眼前で両手を合わせ、
寄り添うようにして置かれた二つの骨壷に菩薩のような笑みを向ける彼女。

潤んだその瞳が、夏の日差しに照らされてわずかにきらめいた。

『綺麗だ』と、それだけを思った。



爪 ゚/-゚)「……よろしいですか?」

(,,゚Д゚)「あ、すいません。どうぞ」

背後に気配を感じたギコ。振り返れば、そこには須名そらが立っていた。
歳を感じさせない凛とした表情。そして、まっすぐに伸びた背筋。

ギコと渡辺さんは立ち上がり、骨壷の前をそらに明け渡す。
彼女はしゃがみこむと、目を閉じ、静かに手を合わせた。

その背中を一瞥し、ギコは傍らの渡辺さんと少し離れたところに立つぺニサスに視線を送る。
二人はギコの目配せにあらかじめ申し合わせていた通りコクリと頷き、言葉を発する。

('、`*川「それでは、我々は献花を買ってくることにします」

从'ー'从「申し訳ないですが~、少し席をはずしますね~」

(,,゚Д゚)「そんじゃ、俺たちは花火でも買って来るか。長岡、クーさん、ついてこい」

川;゚ -゚)「は、はあ……。しかし……」

(;゚∀゚)「……なしてまた花火を?」

(,,゚Д゚)「ここらじゃ盆の墓参りには花火をする風習があるんだ。いいから黙ってついてこい」

そう言って五人はそらだけを残し、内藤家の墓を離れようとした。


あらかじめ献花と花火を買っておかなかったのは仕様だった。

須名そらと内藤ホライゾンの過去をギコは知っている。
彼女は内藤ホライゾンに謝罪できなかったことを深く後悔している。

そんな彼女が今回の墓参りで望むことは何かと考えたとき、その答えは一つだろう。

ペニサスと渡辺さんにもそれを電話で伝えた。
そして三人が出した結論は、いったん彼女を一人にしてやること。

周りに誰かいれば、彼女は思う存分謝罪が出来ないだろうという三人なりの気遣い。
持ってこなかった献花と花火は、席を離れるための口上だった。(そらは花を持参していたが)

戸惑う長岡とクーを連れ、三人は敷地内へと出ようとする。

そんな彼らの耳に、凛とした声が響いた。


爪 ゚/-゚)「お待ちください」

聞こえてきたのはそらの声。


しゃがみこんでいた彼女はスッと立ち上がり、
振り返った五人の前で確かな光を瞳にたたえ、こちらをまっすぐに見つめていた。

爪 ゚/-゚)「ギコさん、渡辺さん、伊藤さん。
     申し訳ないですが、あなた方はこちらに残ってはいただけませんか?」

発せられたのは静かな声。
それなのに、聞いている側に反論を許さないような強い声。

ペニサスと渡辺の顔を交互に見てしばし逡巡したあと、
ギコはそらに向けて静かに頷き、傍らの長岡に財布と同時に意志を手渡す。

それをしっかりと受け取り、真面目な顔でコクリと頷いた長岡。

彼は心配そうなまなざしで祖母を見つめるクーの手を取ると、早々に墓をあとにした。


残された四人。
神妙な顔つきで見つめるギコ、ペニサス、渡辺を前に、そらは軽く笑って見せた。

爪 ゚/ー゚)「お気遣いありがとうございます。みなさんのお心遣いはいたく胸に染み渡りました」

(,,゚Д゚)「いえ、それは一向にかまわないのですが……」

('、`*川「本当に我々が同席してもよろしかったのですか?」

从'ー'从「なんなら~、今からでも席をはずしますけど~?」

申し訳なさげに次々と言葉を発する三人。
それを前にそらは首を横に振り、泣き笑いのような表情を浮かべて言葉を連ねる。

爪 ゚/ー゚)「……いえ、ぜひこちらにいてください。私はあなた方に見ていてほしいのです。
     これから成す私の謝罪が確かなものとなるように、
     あなた方に見届けてほしいのです」

(,,゚Д゚)「……わかりました」

('、`*川「そうおっしゃるなら、我々は喜んでお受けしましょう」

从'ー'从「ですから、どうぞ存分に~」

墓石の前でまっすぐに立つそらの後ろに並び、声を発した三人。

そらはコクリと頷いて身体を翻すと、再びしゃがみこみ、骨壷を前に手を合わせる。


爪 ゚/-゚)「内藤さん、お久しぶりです。
     あなたと出会って、もう六十二年の歳月が流れましたね。
     そんな長い年月の中で、私は子を生み育て、孫の顔も見ました。
     そしてご覧の通り、すっかり年老いてしまいました。
     あとはただ死を待つだけのこの身で、
     本日はこちらへとはせ参じたしだいです」

そして墓の下から骨壷を取り出すと、丁寧に地面へと置き、しゃがんだまま深々と礼する。


爪 ゚/-゚)「あの日のこと、覚えていらっしゃいますか? 私は死んでも忘れません。
     わざわざ私の家を訪れ、兄の死を教えてくれたあなた。
     その行動にどれだけの覚悟と労力が必要だったか、
     あなたがどれほど兄を慕っていてくれたのか、今、年老いたこの身にならば、
     あの日のあなたの想いが痛いほどに感じられます。それなのに……」

最後に震えた語尾。
そのままそらの背中は小刻みに震え始める。

そして内藤の骨壷を手に取り、胸に抱きしめ、悲痛な叫びをあげる。


爪 ;/-;)「それなのに! あの日の私はあなたに言ってはならないことを口にした!!
      許してもらえるなんて思ってはいません!
      だけど……だけど謝罪させてください!!
      子が生まれたとき、子が自立し結婚したとき、
      そして孫が生まれ私に笑いかけたとき!

      そんな幸せに直面するたびに、あの日の言葉が悔やまれるのです!!
      あなたに言ったあの日の言葉が、あなたのあの悲しそうな顔が、
      浮かび上がっては頭の中からはなれないのです!!
      そのたびに気が狂いそうになった! 懺悔したくてしょうがなかった!!」
  
老婆の叫び声が墓地を支配する。
涙混じりに、つっかえつっかえに激しい懺悔の言葉を叫ぶ彼女。


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夏の日に銀色に輝く頭髪をはためかせ、かつての内藤の欠片を抱いて縮こまり、力なく呟く。

爪 ;/-;)「……あの日から、何度私はあなたを探したことか。
      あなたと娘さんの事故は記事になったそうですね。
      それなのにあなたを見つけられなかった愚かな私を、どうぞお笑いください。
      ……そしてようやく見つけたのはあなたの死後。
      私の懺悔はもうあなたには届かない。
      私はこの先もあの日の罪を抱えて生きていきます。
      だけど……だけど言わせてください。
      本当に……本当に申し訳ありませんでした!!」

最後に発した声は、深い夏空の先まで届きそうなほどに強い叫び。
それきり何も言わなくなった彼女は、
内藤ホライゾンの成れの果てを胸に抱き、静かに背中を震わせるだけ。

泣き崩れる彼女の後ろで立つ尽くすペニサスと渡辺。
そして、その真ん中に立つギコ。

捉えた須名そらの背中が、ギコには十代のか弱い少女のそれに見えて仕方がなかった。

                      *

それから数十分後。すっかり落ち着きを取り戻した須名そらは、
ペニサスや渡辺さんとすっかり意気投合し、先ほどまでの涙が嘘のように談笑していた。

『三人寄れば姦しい』 そんな慣用句を目の前で体現する三人の老婆。
その輪に入れなかったギコは、居心地が悪そうに墓石に寄りかかり煙草をふかしていた。

ぼんやりとあたりを眺めるギコ。
その視線はお目当ての人物を捉え、その奇妙さに素っ頓狂な声を上げる。

(,,゚Д゚)「……なんだ、それ?」

川 ゚ -゚)「……拾いました」

戻ってきた長岡は傷だらけの顔で両手に花火と献花の束を抱え、
傍らのクーは、その胸に目つきの悪い子犬を抱えていた。。


从'ー'从「あらあら~、可愛い~」

('、`*川「この犬どがんしたとね?」

二人に駆け寄ってきた渡辺さんとペニサス。
クーの胸に抱かれた子犬をものめずらしそうに眺めている、

川 ゚ -゚)「途中で長岡さんと一緒に見つけて……」

(メメ゚∀゚)「……俺には襲い掛かってきて、クーちゃんにはこの通りべったりです。
     おまけにこのクソスケベ犬、クーちゃんのおっぱいから離れようとしないんスよ。
     離そうとしたら噛み付くし……しかたがないんで連れてきました」

顔を引っかき傷まみれにしながらぼやく長岡。
しかし女性陣の視線はすべてクーの胸元の子犬に注がれている。

惨めな彼は両手の花火と献花を地面に置き、むくれたようにしゃがみこむ。
さすがに気の毒に思ったギコは彼の傍らに立ち、そっと煙草を一本差し出す。

(メメ‐∀‐)「いらねっス」

憮然と呟いた長岡の肩を、ギコはポンと一つ叩いてねぎらってやった。


爪 ゚/ー゚)「どうやらクーを気に入ったみたいですね」

長岡の買ってきた献花を墓前に活けたそらは、汚れた手をはたきながらクーに近づく。
その姿を捉えた子犬は、尻尾を執拗に振りながらクーの胸元から飛び降り、そらの足元にすがった。

ひょいと抱き上げたそら。その顔を、子犬は嬉しそうにペロペロと舐める。

爪 ゚/ー゚)「こらこら……やめなさいw」

仲むつまじくじゃれあう一人と一匹。
その孫娘は、微笑みながら言う。

川 ゚ー゚)「おばあちゃんのことも気に入ったようですね。飼ってあげたらどうです?」

爪 ゚/-゚)「うちはマンションだからな……だけど……」

一瞬だけいつもの無表情に戻った彼女は胸元の子犬の瞳を見つめると、
不思議そうに、だけどいとおしげに呟いた。


爪 ゚/ー゚)「この子……すごく懐かしい匂いがする」


その声は同時に鳴り響いた爆竹の音にかき消されて、誰にも聞かれることはなかった。


ヽ( ゚∀゚)ノ「うっしゃー! 花火だ花火だー!!」

盛大に爆竹をうち鳴らす長岡。
その音に驚き、彼に突進する子犬。
ビビる長岡。慌ててその子犬のあとを追いかけるそら。

手持ち花火に火を付け、地面に向けてクルクルとまわすクー。
そんなクーの傍らで線香花火の炎を見つめ、微笑む渡辺さん。
墓の側に置いてあったバケツに水を入れるペニサスのおばちゃん。

それぞれがそれぞれの想いを抱え、今、内藤ホライゾンの墓前で嬌声をあげている。

そんな彼らを墓石に寄りかかりながら眺めるギコ。
彼は懐に手を入れると、煙草とライター、そしてひとつのカップ酒を取り出す。

そのアルミのふたを『カポッ!』と開けて内藤の墓前に供えた彼は、
数本目の煙草に火をつけ、再び内藤ホライゾンの墓石に寄りかかりながら、
皆の姿を柔らかなまなざしで眺めた。


内藤さん、あんたを想って集まった人間が、今、こんなにもいるぜ?
それなのにあんたは、これを見ても『死にたかった』って言うのかい?

内藤麗羅を失ったあんたは、きっと絶望の中でその後を過ごしたんだろう。
だけど、そらさんに渡辺さん、あんたを想っていた人間はその当時でも二人もいたんだぜ?

今だって、長岡、ペニサスのおばちゃん、須名クーさん、このカップ酒を俺に託したホームレス、
そして俺も含めて、あんたと会って話をしたい人間はたくさんいるんだぜ?

確かに、あんたの人生は不幸だった。
だけどあんたが気づかなかっただけで、この世界にはあんたを必要とする人間はまだまだいるんだ。
あんたを想って悲しみ、涙を流し、こうやって笑う人間は確かにいるんだ。

あんたの気づかないところで、幸せの種は確かに転がっていたんだ。

内藤さん、見ているかい?
あんたの骨を抱いて泣き崩れた渡辺さんの背中を。
人目をはばからずに泣き叫び謝罪したそらさんの涙を。

そして、あんたの墓の前でこうやって楽しげに笑う人々を見ても
やっぱりあんたは、『死にたかった』って言いながら、笑うのかい?


見上げて問いかけた空。
濃い蒼に浮かぶ純白の雲が、日に照らされてかすかな陰影を作り出していた。

ギコが吐き出した煙の灰色さえも、蒼と白はその洗練された美しさの中に包み込んでいく。

耳元で甲高い花火の音がした。
同時に発射されたロケット花火が、空気を切り裂くように中空を進んでいく。

どこまでもどこまでも遠い夏空の中、
どこまでもどこまでも高く伸びたロケット花火のまっすぐな軌跡は、
まるでギコの想いをその先へと届ける代弁者の足跡だ。

やがて中空で失速したそれは一瞬だけ立ち止まり、『パン』と大きな音を立てて蒼にはじけた。
そして、自らの役目は終えたと言わんばかりに、力なく地面へと戻っていく。

それを見上げていた子犬が、そらの傍らで一つ、大きな遠吠えをあげた。

その声は、はるか遠く、透き通る空の彼方まで届くかのごとく、世界に響いた。


4_20091226212309.jpg



                       *

翌日の午前。ギコは片手に土産の入った紙袋を掲げ、再びのバスターミナルに立っていた。
見送るのは昨日の面子。おのおのが楽しげに談笑しながら、待合室に座っている。

('、`*川「にしても一日で帰っとね? もう少しゆっくりしていけばよかとに……」

(,,゚Д゚)「いや……まあ……いろいろあってな」

( ゚∀゚)ノ「この人、帰ったら奥さんとデートなんですよ」

(;,,゚Д゚)「お、おい! 余計なこと言うんじゃねぇ!!」

慌てながらもちゃんと長岡をノックアウトするあたり、さすがはギコである。
しかし、長岡の遺言を聞きつけた女性陣は、我先にと言葉を繰り出す。


从'ー'从「あらあら~、お熱いですね~」

('ー`*川「ちゃんと奥さんとは仲直りしたとか。よかったやっか」

爪 ゚/-゚)「歳をとっても女は女です。その辺をお忘れなく」

次々と発言する老婆たち。その片隅でクーは、床に倒れた長岡の頭をつついていた。
そして、そんな長岡の頭よりそらの頭に目をやりながら、ギコは尋ねる。


(,,゚Д゚)「……ところでそらさん、なんでまた犬を頭に乗せているんですか?」

爪 ゚/-゚)「ああ、これですか? どうやらこの子、私の頭上が気に入ったようで……」

そう呟いて、頭上でダレている子犬の頭をなでるそら。
一見すると微笑ましい光景だが、公衆の面前で犬を頭に乗せるのはどうだろう?

意外と茶目っ気のある人なのかもしれないと、ギコは複雑な表情で彼女の頭上を眺める。
すると、地面にキスする長岡の髪の毛をグリグリしながら、クーが合いの手を入れる。

川 ゚ -゚)「おばあちゃん、その子を飼うことにしたんですよ」

(,,゚Д゚)「あれ? でもマンションはペット禁止じゃないんですか?」

爪 ゚/-゚)「大丈夫です。あのマンションは私が管理人ですから、
     規定を書き換えればそれで済みます」

(,,゚Д゚)「……」

『金持ちっていいなー』と内心呟いたギコ。

そして、ターミナル内にギコの乗るバスの発車アナウンスが流れる。


(,,゚Д゚)「そんじゃ、私はこれで失礼します」

( ゚∀゚)ノ「いよっしゃああああ! これで好き勝手できるぜ!!
      クーちゃん! デートしようぜええええええええええ!!」

アナウンスを聞いて立ち上がり、老婆たちに一礼したギコ。
そして喜び勇み立ち上がった長岡。はしゃぎまわる彼に向け、ギコは呆れた声を上げる。

(,,゚Д゚)「おいおい、お前確か彼女いただろ? 浮気すんなよ」

( ゚∀゚)「ああ、あいつとは別れましたよ。
     今はクーちゃん一筋です! メールもあれ以来ずっとしてるし!!」

(,,゚Д゚)「……マジかよ」

( ゚∀゚)ノ「マジです! というわけでクーちゃんデートだああああああああ!!
      カステラちゃんぽん皿うどんんんんんんんんんんんんんんんんん!!」

川;゚ -゚)「え……ちょ……ちょっと!」

クーの手を取って叫び、ターミナルの外へと駆け出していった長岡。
ギコは呆然と立ち尽くし、そらに向かって深々と謝罪した。


(,,゚Д゚)「うちのバカが失礼を……何といってお詫びをしたらよいか……」

爪 ゚/ー゚)「いえ、大丈夫です。我々もついていきますから」

('ー`*川「あん子たちのことは任せて、あんたはさっさと東京に帰らんね」

从'ー'从「そうですよ~、バス出ちゃいますよ~」

渡辺さんの言葉で腕の時計に視線を移し、ギコは最後にもう一度礼をしてバスへと駆け出す。
その背後で不吉な声がして、彼はもう一度振り返った。

('ー`*川「さーて、長岡さんにギコの恥ずかしい話でもしてやるかね」

爪 ゚/-゚)「ほう、それは興味深いです」

(;,,゚Д゚)「ちょっ! おいクソババア! 止めろ!!」

从'ー'从「ギコさ~ん、バス出ますよ~」

(;,,゚Д゚)「おわあああああああああ! おいババア、余計なこと話すんじゃねーぞ!!」

('ー`*川「さーてねーw」

不敵な笑みでギコを見据えるペニサス。
ギコはバスと彼女を交互に見たあと、諦めたように駆け出してバスの中へと姿を消した。


                      *

降り立った空港は人で満ち溢れていた。

故郷のそれとははるかに異なる立派な建物、そしてたくさんの人々。
行きかう人々の波にのまれながら、ギコは改めて首都の巨大さを痛感した。

この国の人口の十分の一以上を抱え込む世界有数の大都市。
そこでは自分の存在などちっぽけなもので、そこにいる誰もが自分など気にも留めようとしない。

すれ違うたくさんの人々は、数秒後にはギコの存在など記憶から抹消してしまう。
そしてギコまた、彼らの存在を消していく。

彼らの中で、自分の存在を覚えてくれる人はいったい何人いるのだろうか?
そしてそんな大都市の中で、自らを記憶にとどめてくれる数少ない人々は、
自分にとって限りなく貴重でいとおしい存在なのではないか?

当たり前の事実を反芻しながら喫煙所へと足を踏み入れたギコ。
煙草とともに携帯を取り出し、貴重でいとおしいその人物へ繋がるボタンを押す。


(,,゚Д゚)「もしもし……ああ……俺だ……うん……それでさ…………」



                    *

数時間後、ギコはとある公園のベンチに座っていた。

その公園はすべてが始まったあの場所。
あの日以来、なぜだか彼はこの公園が気にいっていた。

噴水の見えるベンチに腰掛け、腕の時計に目をやる。
時刻は四時十五分。待ち合わせの時間を過ぎている。

所在無げに立ち上がり、あたりをキョロキョロと見渡すギコ。

視界に入るのは、対面のベンチに腰掛ける若いカップルやランニングウェア姿で歩く男性、
散歩を楽しむ老人や自転車で仲間と連れ立って進む子供たち、そして談笑する主婦たち。

実に雑多な人々。
人種のルツボたるその場所に立ち、懐から煙草を取り出そうとしたギコ。

そして彼の視線は、お目当ての人物の姿を捉える。


(*゚ ‐゚)「……待った?」

(;,,゚Д゚)「い、いや、俺も今来たところだ。とととと、とりあえず座れよ」

現れた妻、よそ行き様にめかしこんだいつもと違うしぃの姿に、
不覚にもギコはトキメキを感じてしまっていた。
見惚れてしまったせいで口からこぼした煙草を、彼は慌てて拾い上げる。
そして人ひとり分の間隔をあけて、妻と同じベンチに腰掛ける。

(*゚ ‐゚)「……」

(;,,゚Д゚)「……あの……これ、土産のちゃんぽん」

(*゚ ‐゚)「……ん。ありがと」

とりあえずギコは持参した土産をしぃに手渡す。
それを一言でいなし、無言無表情で噴水を眺めはじめる彼女。
それきり言葉が出てこないギコは、間を保つために手にした煙草に火をつけようとした。
彼女はそれをひょいと取り上げる。

(;,,゚Д゚)「お、おい……返せよ」

(*゚ ‐゚)「ダメ。灰皿無いでしょ?」

(;,,゚Д゚)「……はい」

妻の反論にぐぅの音も出なかった彼は、しょんぼりと広い肩を落とした。


(*゚ ‐゚)「……最近、妙にやさしいね」

(;,,゚Д゚)「い、いや! んなこたーねーよ!!」

しばしの沈黙のあと、突然につぶやいたしぃ。
痛いところを聞かれあからさまに狼狽しながら、ギコは反論にもならない言葉を述べる。

依然として噴水を眺め続ける彼女は、没収した煙草を手のひらでコロコロと転がしながら続ける。

(*゚ ‐゚)「半年くらい前だっけ? 急に家の手伝いとかするようになったの。
    たしか、あなたが実家から戻ってきたくらいの頃からよね。何かあったの?」

(;,,゚Д゚)「え、えーっと……あのー……そのー……」

膝に手を置き、背筋をピンと伸ばしながら歯切れのない声をあげるギコ。
自分のペースがつかめない。
これまで彼女をほったらかしにしていた罪悪感がそうさせるのだろうか。

その姿に、刑事としての威厳はかけらも見当たらない。
長岡が見たら、きっと鬼の首を取ったかのように騒ぎながら笑いまくるであろう。

(*゚ ‐゚)「……話したくなかったらいいよ。あなた、口下手だしね」

(;,,゚Д゚)「……すまん」

威圧感のある妻の声に、ギコは本当に申し訳なさそうに首を垂れた。


再びの沈黙。
あたりには噴水から水が滴る音と、ツクツクホーシの悲しげな声だけが響く。

ギコの頬を汗が伝う。
それは暑さによって出てきた汗ではない、緊張による脂汗だ。

気まずすぎる間。こうやって二人きりでまともな会話をするのは久しぶりだ。

思わずくせで、ギコは先ほど禁止された煙草を取り出し火つけた。
それから『まずい』と思いなおし隣を見ると、そこにあるのはジトッと湿った視線を送る妻の顔。

彼女はやれやれと言わんばかりに少し微笑むと、
ひざの上に置いたバックから何かを取り出し、ギコに手渡す

(*゚ー゚)ノ「……はい、携帯灰皿」

(;,,゚Д゚)「あ、ああ。すまん」

受け取った灰皿。そのときに触れた妻の手は柔らかくて暖かかった。

その感触と彼女の表情の変化、そして煙草を吸わない彼女が
『なぜ携帯灰皿を持っているだろう』という疑問にドギマギするギコ。

『もしかしたら俺のためか?』 

淡い期待の中で煙草をふかす彼を、しぃはやはり微笑みながら見つめる。


(*゚ー゚)「あなたとこうやって公園に座るなんて何十年ぶりかしらね。
    たしか、結婚する前以来じゃないかな?」

(;,,゚Д゚)「あー……そんなに前だっけ?」

(*゚ー゚)「そうよ。もっとも、結婚する前も後援にはたいして来てなかったけどね。
    で、今日はなんで私を呼び出したの? もしかしてデート?」

(;,,゚Д゚) 「ゴェェ!!ガハッ!ゴェェェ!!」

妻の口から発せられた青々しい言葉を聞き盛大にむせ返るギコ。
同時に、『デート』という言葉の恥ずかしさに顔が真っ赤になる。

それを見て笑う彼女に対し、ギコは慌てながら釈明する。

(;,,゚Д゚)「ち、ちが……きょ、今日は服を選んでもらおうと思っただけだ!」

(*゚ー゚)「へー……」

(;,,゚Д゚)「そ、その代わりにうまいラーメン屋に連れて行ってやるからよ!
     この前長岡に奢らされた一杯千円の店なんだが、
     高いだけあってこれがうめーんだよ!!」

(*゚ー゚)「ほー……お土産のちゃんぽんといい、あなた本当に麺類が好きねw
    楽しみにしておくよ」

年甲斐もなく慌てふためく夫の姿がよほどおかしいのだろうか?
彼女は口を手で押さえながら上品に笑いをこらえている。

ああ、こいつの笑い方は昔から変わらんな。

がさつな俺とは対極の性格をしている人間なのに、妙に馬が合って結婚まで至った。
確か決め手は、こいつの笑い方が見ていて気持ちよかったからだったけか?

そんなことを思い出しながら、恥ずかしさやら何やらで顔の赤みが取れないギコは、
気合を入れるかのごとくひざを一つポンとたたく。

(;,,゚Д゚)「そ、そんじゃ、そろそろ行くか!!」

そう言って立ち上がろうとした彼は、身体にわずかな抵抗を感じた。
不審に思って視線を下げると、彼のスーツの裾をしぃがギュッと握っていた。

(;,,゚Д゚)「あー……どうした?」

(*゚ー゚)「別に急ぐことないじゃない? 
    せっかくだから、もうちょっとゆっくりしていこうよw」

(;,,゚Д゚)「あー……別にかまわんが……」

呟いて再びベンチに腰掛けるギコ。
正直、恥ずかしさやら何やらでさっさとこの場から立ち去りたかった。

しばらくは黙って座っていたギコ。
やがて手持ちぶさたからか、ココに来て数本目の煙草に火をつけた。

傍らの妻はゆったりと腰掛け、目の前の噴水を微笑みながら眺めている。

その姿は、顔面に刻まれ始めたしわだけが異なるだけで、
丸っこい瞳も、頬のえくぼも、愛らしい童顔も、細く小さな体躯も、
若かったあの頃とはなんら変わらない。

肉のつき始めた自らの下腹を一瞥して『俺も変わっちゃいかんな』とダイエットの決意をすると
煙を空に向けて吐きし、再び大きく煙を吸い込む。

変わらない妻の姿と煙草の煙に、少しだけ落ち着いた。

噴水の向こう側から吹く風に、額の脂汗が徐々に引いていくのが感じられた。


(*゚ー゚)「ココってさ、ホントにたくさんの人がいるよね」

(,,゚Д゚)「ん? ああ、そうだな」

吹いてくる風のように緩やかな彼女の声。
つながりのわからない言葉ではあったが、今度のギコは自然に返せた。
子供のように高い彼女の声が耳に優しく、心地よい。


(*゚ー゚)「こんなところにいたらさ、
    『私がいてもいなくても関係ないじゃん』って思うときがあるの」

(,,゚Д゚)「……」

久しぶりに聞く甘い声が発するのは、一見するとネガティブな言葉。
だけど声の主たる彼女の顔に、悲壮感は微塵も感じられない。

少しばかりのギコの心配とともに、
吸い込んだ煙草の先端がチリチリと音を立てて燃え上がる。煙を肺の中に吸い込む。

(*゚ー゚)「初めて来たとき、私はこの街が嫌いだった。いや、今も嫌いかもしれない。
    知り合いは誰もいない。無駄に大きくて、人ばっかりで、ただそれだけの街。
    居場所なんてどこにもなくて、私がいてもいなくても何も変わらなくて、
    時はただ、ひたすらに流れていくだけ」


やわらかい声は空気を渡り、傍らのギコの鼓膜を心地よく震わせる。
流れて行く煙の行方にそって、何気なく彼女の方に視線を移したギコ。

その眼前で、彼女はギコの肩に頭を預けて、静かに寄り添ってきた。

引いていた汗が再びぶり返し、額だけじゃなく全身の汗腺がフル活動し始める。
ふたたび直座不動となったギコは、続いて聞こえてきた彼女の声に、驚いて目を見開いた。

(*゚ー゚)「だけどね、誰かが私の側にいてくれて、
    こうやって同じ景色を眺めていられたら、それでもいいんじゃないかって思うんだ。
    誰かと寄り添って、同じ空を見上げて、
    一緒に歳をとって、そうやって時が流れていくなら、
    居場所がなくても、世界が変わらなくても、
    私は幸せを感じていられるんだろうって思うの」

(,,゚Д゚)「……」

自らの肩に頭を置くしぃ。肩越しに感じる彼女の体温と声が心地よかった。
しぃはこちらを見ることなく、ギコに頭を預け、ただ繰り返し水を吐き出す噴水を眺め続けるだけ。

彼女のかすかな息遣いが聞こえた。彼女のほのかな髪の香りがした。

それに反応したギコが彼女の肩に手を回そうとしたそのとき、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。


<ヽ`∀´>「ホルホルホルwwwww 暴力刑事さんよ、見せ付けてくれる二ダーwwwww」

(;,,゚Д゚)「げぇっ! てめぇはあのときのホームレス!!」

振り返ったギコは、見覚えのあるエラの張った顔に慌てて立ち上がる。

先ほどまでの淡い情事に顔が赤らみ、頭の中が沸騰する。
そんな彼のにらみにいつものキレはなく、ニダ男は誇らしげに腰に手を当ててしゃべり始める。

<ヽ`∀´>「違う二ダー! ウリはもうホームレスじゃない二ダー!!
      ウリは合資会社『二ダータクシー』の社長二ダー!
      毎度お世話になってます二ダー」

( ><)「そうなんです! お世話になってるんです!!」

(;,,゚Д゚)「えー……あー……よくわからんがこちらこそ」

突然背中から現れたあの運転手とともに、ギコに向かって深々と礼をするニダ男。
先ほどの偉ぶりからいきなり媚びへつらいへと移った彼ら。

その豹変振りにギコが戸惑いの声をあげていると、
いつの間にか立ち上がっていたしぃが、二人に向かって慇懃な礼を返す。


(*゚ー゚)「いつも夫がお世話になっております」

<ヽ`∀´>「いえいえ、こちらこそ旦那さんにはお世話になってる二ダー」

( ><)「そうなんです! おかげでお客が増えたんです!!」

(*゚ー゚)「あらあら、それは何よりです。でもこの人、見ての通り人付き合いが苦手でして……
    今後もどうか仲良くしてあげてください。あとこれ、つまらないものなんですが……」

<ヽ`∀´>「ホルホルホルwwwww すまん二ダーwwwwww
      ありがたく頂戴する二ダーwwww」

( ><)「社長! ちゃんぽんなんです! 早速会社に帰ってパーティー開くんです!!」

そう言って彼女は、ギコから受け取った土産の紙袋を元ホームレスたちに手渡す。
受け取った元ホームレスはその中身を見てはしゃぎ声をあげる。

二人をみてニコニコと笑う彼女に向けて、ギコは思わず声をあげた。

(;,,゚Д゚)「お、おい! それはお前の土産に……」

(*゚ー゚)「いいじゃない。お友達は大切にしなきゃダメよ?
    それに、これからラーメン屋さんに連れて行ってくれるんでしょ? 私はそれで十分よw」

(;,,゚Д゚)「お前がいいならそれで構わんが……」

呟いて視線を上げれば、元ホームレスたちは嬉しそうに土産を掲げ、公園の出口へと走り去っていた。
その後姿を『やれやれ』と呆れながら見ていると、再び背後から声をかけられる。


(-_-)「……あ、あのー……」

(;,,゚Д゚)「おわぁ! びっくりした!! 急に現れるな!!」

(-_-)「……いえ、先ほどからいたんですけど……」

(;,,゚Д゚)「いたのかよゴルァ!!」

(-_-)「……存在感がなくてすみません。それで、お願いしていたあれは……」

突如現れたかに見えた彼だったが、ギコが気づかなかっただけではじめから彼はここにいたそうだ。

彼は申し訳なさげな地顔と申し訳なさげな声でギコに尋ねる。
その質問にすぐにピンときたギコは、力強く頷いて答える。

(,,゚Д゚)「ああ、あのカップ酒は内藤の墓前にちゃんと供えといた。だから安心しな」

(-_-)「……ありがとうございます」

覇気のない声で必要以上に深々と礼をすると、
彼は先に出て行った二人の後を追って公園の外へと駆け出していった。

その背中を見送って『俺らも行くか』と声をかけたギコ。

振り向いたギコの視線の先で、彼女は噴水を見つめながら『ちょっと待って』と呟いた。

(*゚ー゚)「見て、あの猫の母子。可愛くない?」

しぃが指差した噴水の縁には、いつの間にかその場に陣取っている二匹の白猫。

日差しは西に傾き始めており、ちょうど噴水の真ん中に設えられたモニュメントの陰になるところで、
母子は避暑をしているかのごとくゴロリと寝転んでいた。

(,,゚Д゚)「ああ、あいつらならココでよく見かけるぞ。どれ、ちょっと撫でてやるか」

(*゚ー゚)「やめなさいよ。せっかく気持ちよさそうにしてるんだから」

そんな二人の話し声に反応したのか、身体の小さな子猫の方がむくりと起き上がった。
しばらくの間、警戒の色をまとった青い瞳でギコとしぃを見つめていた子猫。

やがてその両耳がピン立ち上がり、視線がすばやく上空へと動いた。

(,,゚Д゚)「なんだ?」

(*゚ー゚)「あ! 小鳥よ!!」

つられて空を見上げた二人は、見上げる子猫の青い瞳の先に一羽の小鳥の姿を捉えた。
子猫の上空をパタパタと飛び回る小鳥。それを捕まえんと何度も飛び上がる子猫。

やがて、飛び疲れたのであろうか、
小鳥はその羽根を折りたたみ、眠り続ける母猫の頭上へとゆっくり着地した。


眠る母猫の頭上で羽根の手入れを始めた小鳥。
そしてようやく頭上に重みを感じたのか、のそりと起き上がる母猫。

(*゚ー゚)「あ、小鳥が起こした」

(,,゚Д゚)「あの鳥、一体何がしたいんだ?」

小鳥は起き上がった母猫に驚き、噴水の頂へと飛びあがって着地した。

母猫の傍らには、相変わらず小鳥に向けて飛び跳ねている子猫。
一方で、母猫の青い瞳と小鳥の黒い瞳は互いに互いを捉え、しばし見つめ合いながら沈黙する。

やがて、周囲に鐘の音が響いた。
ギコが公園の時計に目をやると、その針は五時丁度を指していた。

鳴り響く鐘の音は町内会か何かの時報なのだろう。

その音を合図に、母猫は小鳥から視線をはずすと、
噴水の縁から跳ね降りて、公園の奥へと歩き始めた。

子猫は小鳥を名残惜しそうに見上げた後、しぶしぶと母猫のあとを追う。

しばらく二匹の後姿をジッと眺めていた小鳥は、
思い立ったかのように羽根を広げ、噴水の頂から飛び立った。


(,,゚Д゚)「……一体なんだったんだ?」

飛び立った鳥の後姿を見つめながらぼやき、煙草を取り出したギコ。
彼が口にしたそれをひょいとひったくり、しぃは公園の出口へと走りを始める。

(,,゚Д゚)「おい、返せよ」

(*゚ー゚)ノ「ダメー! 今日から禁煙ね!!」

(;,,゚Д゚)「マ、マジですか!? って、危ねえぞ!!」

(;*゚⊿゚)「キャッ!」

ギコに向けて笑いかけながら振り返ったしぃは、足を絡ませて尻餅をついた。


慌てて駆け寄り、倒れこむ彼女に手を差し出した夫。
そして、それをしっかりと握り返した妻。


(,,゚Д゚)「ガキみたいなことやってんじゃねーぞ」

(*゚ー゚)「……うん。ごめん」

互いの存在のぬくもりを確かめ合うように手を握り合った二人は、
テレながらすぐにその手を離し、ぎこちない距離をとりながらも、同じ道の先へと歩き始めていった。


                  *

歩き始めた夫婦のはるか上空、
晩夏の夕空にあるのは、
心なしか紺に染まり始めた蒼と、
夏の終わりを惜しむかのように高く伸びる漂白の入道雲。

渡る夕風は秋の匂いを含みはじめ、
移ろいゆく季節の予感を感じさせていた。

その中を、小鳥が一羽舞っていた。

小さなその羽根を最大限に空へと広げ、
風を受けた翼をはためかせながら悠々と中空を渡るその姿は、
浮世にひしめく人間の後悔など振り切るかのごとくしなやかに、

どこまでも高く、
どこまでも遠くへ、
蒼の先をしっかりと見据えて、

飛んだ。


5_20091226212308.jpg






この小説は1944年12月某日から2007年3月某日にかけて時の狭間で記録されたものです
作者は78 ◆pSbwFYBhoY 氏
おまけの 没ネタ編 はこちらへどうぞ

記事元はオムライスさんになります



ご意見等あれば米欄にお願いします

 
[ 2009/12/26 21:26 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(1)

素晴らしかった。ありがとう
[ 2011/11/10 15:11 ] [ 編集 ]

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