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( ^ω^)がリプレイするようです Scene 8

はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ






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Scene 8 :幕間


………

……




目を覚ますと、ベッドに寝かされていた。
起き上がって周囲の様子をうかがう。

部屋は薄暗く、本当に小さく、
起き上がった内藤の目の前には無機質な冷たい壁がすぐに迫っている。
窓はついておらず、あるのは自分が横たわる粗末なベッドと、
天井に吊り下げられたむき出しの明かりだけ。

頭がボーっとする。長い……本当に長い夢を見ていた気がする。
働かない頭をかきむしり、絡まった糸をほどくように記憶をたどる。

「やり直させてくれ! もう一度、ドクオを助けに行かせてくれ!!」

時越から戻ってきたとき、目の前にいたバーテンに放った自分の一言。
それが突然、思い出された。

そうだ。わしは過去へと赴き、そしてドクオを助けられなかった。

夢だと思っていた記憶が夢ではなかったと気づいたとき、老人は再びの無力感に襲われた。


ベッドから起き上がり部屋を出た。

開けた扉の先、淡い光が照らすのは
今やすっかり見慣れたバーボンハウスとか言う名のバーで、
カウンターで相変わらずグラスを磨いているバーテンが、内藤に話しかけてくる。

(´・ω・`)「……目覚めましたか。どうです? 少しは気分が落ち着きましたか?」

/ ,' 3「ああ。昨日は取り乱してすまんかった」

(´・ω・`)「いえ、昨日という表現が適切かどうかはわかりませんが、私は気になどしていません」

グラスを磨く手を休め、酒瓶を取り出したバーテン。
カウンターに腰かけると、彼はお約束のように内藤の前にグラスを差し出し、テキーラを注ぐ。

それに口をつけた内藤。

のどもとを通り過ぎるその熱さが、昨日の光景をまざまざと思い出させてくれた。

                      *

/ ,' 3「やり直させてくれ! もう一度、ドクオを助けに行かせてくれ!!」

時越を終え、時の狭間へと戻ってきた内藤が開口一番にはなった一言がそれであった。

本当にあと一歩だった。

最後の最後でつめの甘かった自分が歯がゆくて、
そして拾い損ねたドクオの命が恋しくて、内藤は泣きながらバーテンの足にすがりついた。

そんな老人を哀れむような瞳で見下ろすバーテンは、
わずかに顔をゆがめると、だが無常にも言い放つ。

(´・ω・`)「それは……出来ません」

/ ,' 3「なぜじゃ! 貴様が時の番人ならば、そんなことなど造作も無いことであろうが!!」

助けを請うような内藤の叫び声は、ただバーボンハウス内に反響するだけ。
なおも執拗に食い下がる老人に向かい、バーテンは静かに、諭すように言う。

(´・ω・`)「内藤さん、私……時の番人は万能ではないのです」

/ ,' 3「嘘じゃ! ならばなぜ、わしを別の時の中に送ることが出来たのじゃ!?」

(´・ω・`)「それにも制約があるのですよ。私の出来ることは、
     ひとつの時の流れの中に人の意識を送りこむことと、
     時の流れを観察することだけなのです。
     それと年を取らないこと以外は、あなた方人間とさして変わりはないのです」

その声は足元にすがりつく内藤だけでなく、バーテン自身をも哀れんでいるかのような声だった。
そして、次に放った彼の一言は、内藤を打ちのめすのに十分な重みを含んでいた。

(´・ω・`)「そして……内藤さん。あなたは勘違いをしています。
     厳密に言えば……ですが、実はあなたはやり直しをしているわけではないのです」

/ ,' 3「……どういうことじゃ?」

(´・ω・`)「いいですか?
     あなたはすでに、ひとつの時の流れの中でその人生を終えられています。
     現在あなたが行っていることは、別の時の中の内藤ホライゾンの身体を借り、
     そこであなたとは別の内藤ホライゾンの未来を変えている、ということに過ぎないのです」

バーテンはしゃがみこむと、内藤と視線を同じにし、言い聞かせるように続ける。

(´・ω・`)「あなたの過ごした時の中での内藤ホライゾン、つまりあなたの人生は終わった。
     その時の中で、あなたの人生は『過去』として確定してしまった。だから修正はできない。
     しかし、あなたを放り込んだ時の中では内藤ホライゾンはまだ人生を終えておらず、
     これからあなたが歩んだであろう人生を送る。だからその未来は修正が効くのです。

     もっとも、別の時の流れの中とはいえ、
     あなたを放り込んだ時はあなたの過ごした時とまったく同じ過程をたどります。
     ですから、あなたの行っていることは『やり直し』とほぼ変わり無いわけなのです」

(´・ω・`)「さて、内藤さん。ここからが本題です。
     先ほど、ドクオさんはあなたを送り込んだ時の中で亡くなられました。
     それはその時の流れの中で『過去』として確定してしまったことなのです。
     そして一度『過去』として確定してしまえば、誰にもその修正は出来ないのです」

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まっすぐに見つめてくるバーテンの瞳の中に内藤の姿が映る。
瞳に映る内藤は涙でぐしゃぐしゃ、刑を言い渡された罪人のような表情をしている。

/ ,' 3「ならば……そうじゃ! さらに別の時の流れの中にわしを送り込んでくれ!!
   ドクオの死が『過去』として確定されていない別の時の流れの中にじゃ!
   それは出来るのじゃろう!?」

バーテンの肩を強く握り締め、必死のまなざしで内藤は訴えた。
しかしバーテンは『ダメです』とつぶやいて、静かに、無表情で首を振る。

(´・ω・`)「先ほども言ったでしょう? 
     私に出来るのは『ひとつの時の流れの中に人の意識を送り込む』ことだけ。
     ある人物の意識をふたつ以上の時の流れの中に送り込むことは出来ないのです」

/ ,' 3「なぜじゃ! なぜそんな……」

(´・ω・`)「……申し訳ありません。それは私にもわからないのです。
     言ってしまえば、それは『時の制約』。その理由は時にしか分からない」

バーテンの肩に置いた内藤の両手がすべり落ち、力なく床に落ちた。
両手を床につき、ひざを突いてうなだれる内藤。こぼれ落ちた涙がしみになって床に広がる。

(´・ω・`)「無力な私ですみません。内藤さん、今日はもうお休みください。
     あなたのやり直しはまだまだ続きます。
     今の悔しさを、のちのやり直しに活かしてください」

/ ,' 3「……」

バーテンは内藤に肩を貸すと、隣の部屋のベッドの上に内藤を寝かせた。
ちいさな、殺風景な、牢獄のような部屋。それは内藤の惨めさを掻き立てるのに十分だった。

/ ,' 3「すまない……ドクオ……すまない……」

部屋を出る間際、泣きながらつぶやく内藤の声がバーテンの耳には痛かった。

そのままバタンと扉を閉める。もう、老人の泣き声は聞こえなかった。


                      *

グラスの中の氷が少しだけ溶けて、カランと乾いた音を立てた。

意識が回想から現在へと引き戻される。
それでも内藤はそれに口をつけることは無かった。

内藤の見つめる先で、やがてグラスの中の氷がすべて溶け、
水とテキーラが絡まりあい、一つの液体となる。

それはまるで時と自分の意識が溶け合っているようで、
一度溶け合ってしまえばもう元のふたつに戻ることは無く、ただそこに存在するだけ。
一度そうなってしまえば、たとえ自分が何をしようと、もう修正は効かない。

/ ,' 3「本当に……情けないのぅ」

カウンター席に腰かけ自嘲気味に笑う内藤の声が、バーテンの耳に届く。
顔を上げた彼の目の前で、内藤は何かを振り払うようにグラスの中身を一気に空けた。

空のグラスは表面に汗をかいているだけで、
そこに再びのテキーラを注ごうとしたバーテンの手が、はじまった内藤の独白にさえぎられる。

/ ,' 3「未来を知っていながら、わしにはなんにも出来なかった。
   あまつさえ、助けようとしたはずの自分がドクオに助けられる始末じゃ。
   本当に情けない。結局やり直しても、わしは誰かに助けられるだけなのかのぅ……」

つぶやく老人の視線は空のグラスに縛り付けられたままで、バーテンは返事をするべきか一瞬迷った。
結局なにも言うべき言葉は見つけられず、返答として彼はテキーラを注ぐ。

それに口をつける素振りすら見せない老人は、顔を上げ、バーテンにたずねる。

/ ,' 3「のぅ、かつてわしと同じように、やり直しをしたものはおるのじゃろう?
   彼らは……目的を果たすことは出来たのか?」

(´・ω・`)「人それぞれです。
     『誰かのあだを討つ』というやり直しをなされた方々の多くは成功しています。
     その後の未来がどうあれね。しかし、あなたのように
     『誰かを助ける』というやり直しをなされた方々のほとんどは失敗しています」

/ ,' 3「やはりのぅ……」

わかっていたかのような声を上げる内藤。
その声に、瞳に、もう力はなかった。

見たくなかった。

過去に一度味わった後悔の場面に再び立つなど、耐えられることではなかった。

どんなにあがいてみても、時の可逆性は自分の前に立ちはだかり、
その力はあまりにも強く、ちっぽけな自分程度のものには到底勝てる気がしない。

結局やり直しても結果は変わらず、ただ過去の痛みだけを再び味わうだけで、
そんな拷問にも似た目に会うのならば、もうやり直しなんてしたくなかった。

握り締めたグラスの液体に、内藤の顔が映る。

それはまるで内藤の心のようにゆらめいて、映った内藤の顔をゆがませる。


(´・ω・`)「……止めますか?」


バーテンの無機質な声が室内に響く。

ゆっくりと顔を上げた内藤の視線の先で、バーテンはいつもとかわらない表情をしていた。


(´・ω・`)「続けてもいい。止めてもいい。
     それはあなたの自由です。私に強制する権利はない。しかし……」

下を向き、間を置いたバーテン。

うつむいた彼が再び顔を上げたとき、
その顔には、はにかんだような笑みが浮かんでいた。

(´・ω・`)「しかし、私はあなたにやり直しを続けてほしい。
     そして、人間の可能性を見せてほしい。
     私は『時の番人』。
     ただ時の流れを監視し、その性質を調べることだけを目的に作られた存在です。

     私にはなにも手助けできません。
     出来ることといえばやり直しの機会を与えることだけです。
     私は本当に無力です。
     時の流れの中に身を置くことも、輪廻の輪をめぐり、生を得ることさえも出来ない。

     私はここで時の流れを……その中で生きる者たちの姿を眺めることしか出来ないのです」

悔しそうに、自らをあざけるかのように笑うバーテン。
内藤には、その表情が人間以外の何者にも見えなかった。

(´・ω・`)「私の眺める時の中で、人々は泣き、笑います。
     そして、たくさんの命が失意の中で消えていきます。

     それらを眺めるだけの私はあまりにも無力で、本当になにも出来ない。
     そんな私が私は嫌いです。

     だから、せめてもの償い……になっているのですかね? 
     私は死した魂をここに呼び、やり直しの機会を与えさせてもらっているのです」


『私の趣味は、激しい後悔を持つ小石を時の流れへと放り込み、あがく姿を眺めることです』

はじめて会ったときにバーテンが言い放った一言を内藤は思い出した。
その時のバーテンの表情と、今のバーテンの表情。
どちらの言葉が真実なのか、老人には迷う必要すらなかった。

(´・ω・`)「私には生きる命のつらさも悲しみも分からない。
     そんな私の言葉に力が無いことは承知しています。しかし言わせてください。

     内藤さん。私は生きて死ぬことができる人間が羨ましく、
     その中で必死にあがき、作り上げて行く彼らのつながりがいとおしく、そして好きです。

     だからこそお願いです。

     残された後悔の中で救うべき命を救い、私に人間の可能性を見せてください。
     そして、人間が時に打ち勝つことが出来るのだということを
     証明してはくださいませんか?」


つぶらな瞳で訴えかけるバーテン。顔に浮かぶのは悲しそうな笑み。


/ ,' 3「お主は……人間ではないのか?」

(´・ω・`)「姿形は同じですが、違います。
     なぜなら、私は年を取ることも無ければ死ぬこともないからです。
     わかっているのは、私が時の流れを観測する『番人』という存在なのだということ
     だけです」

誰もが一度は望むであろう永遠の命。
その結果がこのような悲しそうな笑みだというのなら、内藤にはそんなものなどいらないと思えた。

死ぬことも無く、ただ一つの目的のためだけに作られた存在。
終わりのないバーテンの姿を見ていると、自分の人生が恵まれているよう見えて仕方が無かった。

いつか苦しみから解放され、また別の生を受ける。
そんなサイクルの中に身を置ける自分に対して、目の前のバーテンの姿はあまりにも惨めに見えた。

それに比べ自分は再び時の流れに身を置くことができる。

内藤は、突然に目の覚めるような思いを感じた。

/ ,' 3「……わかった。今一度だけ、やり直しを続けてみよう」

(´・ω・`)「……ありがとうございます」

深々と礼をし、言葉を返したバーテン。
その顔はもとの無表情に戻っていたが、内藤にはそれが、心なしかうれしそうに見えた。



(´・ω・`)「準備はいいですか?」

/ ,' 3「なんの準備じゃ? なにも持っていくものなど無かろうて」

(´・ω・`)「……それもそうですね」

暗闇の中で会話を交わす老人とバーテン。
交互に投げかけられる声には柔らかな笑みが混じっていた。

(´・ω・`)「では、走馬燈に明かりを灯します。あなたのやり直しに幸あらんことを」

/ ,' 3「ありがとう」

そして、内藤の目の前に走馬燈の影絵が広がる。



狭い部屋の中でひざを抱える自分の影絵。

米軍の捕虜となり、投げ込まれた空母の一室で過ごしたときのものだろう。
ドクオを見殺しにして、一人だけ生き延びた自分が情けなくて、
そしてこれからなされるかもしれない拷問が恐ろしくてならなかった。

港に立ち、景色を眺める自分の影絵。

捕虜から解放され、敗戦を迎えた日本に降り立ったときのものだろう。
これから自分は何をなすべきなのか。誰も教えてはくれない未来が不安で仕方なかった。

満員の列車に揺られる自分の影絵。

故郷へと帰るための列車に乗っているときのものだろう。人々の姿は一様にボロボロで、
戦争が終わった安堵感と、これからの生活に対する不安が、彼らの表情の中にすぐに見て取れた。
そんな彼らに話しかける元気すら、そのときの自分には存在しなかった。

荷物を抱えて通りをうろつく自分の影絵。

列車から降り、聞いていたドクオの生家を探していたときのものだろう。
原形をとどめている福岡の街に安心し、自分の故郷も大丈夫だろうと思っていた。
そんな甘い期待は、のちのちうち消されることになる。


そして、走馬燈は映し出す。

うつむく自分と、そんな自分をまっすぐに見つめ返してくる少女の影絵。
ドクオの生家に赴き、彼の死を伝えたあとのやり取り。

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ここだ。
自分の第三の後悔はここだ。

ここで自分は、伝えることをはばかった真実を彼女だけには伝えなければならなかった。
そして、詫びなければならなかった。

影絵が色を帯びる。そこに吸い込まれるような感覚が内藤を襲う。
目の前に立つ彼女の表情が、はっきりと見えた。


わしは……僕はそこで、伝えそびれた真実を彼女に告げるんだお。


一九四五年十月。
敗戦のショックが色濃く残る肌寒い秋夜の街に、僕は、置き忘れた言葉を残しに行くんだお。





この小説は1944年12月某日から2007年3月某日にかけて時の狭間で記録されたものです
作者は78 ◆pSbwFYBhoY 氏
Scene 9 はこちらへどうぞ

記事元はオムライスさんになります



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[ 2009/12/26 20:31 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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