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( ^ω^)がリプレイするようです Scene 7

はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ





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Scene 7 :二〇〇七年一月下旬、福岡


『赦されるのを前提に謝ることを、詫びとはいわない。自分程度のものが
 どれほどのたうち苦しんだつもりになったところで、ミジュの腹は、ぱっくりと口を開けたままだ。
 そう――どんな詫び状も、死者には届かない』 

                                  「村山由佳 星々の舟『名の木散る』」


たまに見る夢がある。

その中の俺は幼く、目の前に横たわる母の遺体を見て、しゃくり声を上げながら泣いてる。
やがてたくさんの警官がやってきて、母の遺体を布でくるみ、運んでいく。

すでに父はおらず、頼るべき母も死に、俺は狭いアパートの一室に一人残された。
がらんどうの部屋は幼い俺にとってあまりにも広く、泣き声は反響してさらに寂しさを募らせる。

そんな俺の背中を、大きな手がポンと叩いた。振り返ると、そこには一人の刑事の姿。
彼は俺の眼の高さまでしゃがみこむと、手にしたあんぱんと牛乳を差し出す。

「悲しいとき、つらいときは何かを腹に入れろ。そうすれば少しは気分がマシになる」

若い、だけども威圧感のある強面の顔が、幼い俺に食べるよう促す。
初めは怖くておびえていた俺だったけど、差し出されたあんぱんを手に取り、恐る恐る口に運ぶ。

甘かった。うまかった。涙が溢れて止まらなかった。

あんぱんを食べ終わり、牛乳を口に注ぎこんで、顔を上げた。刑事の強面の顔が、優しく笑っていた。

「坊主、いいか? 絶対に負けるなよ。お前にはこれからたくさんつらいことがあるだろう。
 だけど、これ以上つらいことなんて絶対に起こらない。
 こんな経験をしたお前はもうすでに強いんだ。
 お前はどんな困難も乗り越えられる力を持っている。
 だから前を向いて、笑って、まっすぐ生きろ」

そして、刑事の姿は闇に消える。夢はいつも、そこで終わる。


                     *

( ,,゚Д゚)「そんじゃあ行って来るわ」

(*゚ー゚)「……」

妻の後姿から無言の返事を受けて、ギコはわが家をあとにした。
玄関を閉めると同時に深いため息をひとつ。

( ,,゚Д゚)「……うまくいかねぇな」

それと同時にポケットから携帯の着信音が鳴り響く。
折りたたみ式のそれを開いて発信元を確認。

署長だった。また、ため息が出た。



( ,,゚Д゚)「あー、もしもし、ギコですわ」

(;-@∀@)『ちょっとギコ君! 今日から一週間の有給休暇をとるなんてどういうことなの!?』

( ,,゚Д゚)「どういうことってそういうことですわ。
    年末年始に取れなかった分の休みをもらうんですよ」

(;-@∀@)『バカじゃないの!? ホームレス襲撃犯はまだつかまっていないの!!
      前線に精通している君が休んでどうするの!?』

( ,,゚Д゚)「俺より階級の高いやつなんざ他にもたくさんいますよ。
    そいつらに任せればいいでしょう? 俺なんかよりきっと成果を上げてくれますよ。
    そんじゃまあ、いまから出かけるんで失礼しますわ」

(;-@∀@)『ちょっとギコく……』

通話を切り、携帯をポケットにしまった。

これでまた出世の道が遠のいたな。家庭も仕事も、ホントにうまくいかないことだらけだ。
ひさしぶりにやりたいことを全力でやっている自分に、周囲は容赦なく立ちはだかる。

三度目のため息。吐き出した息は真っ白だった。

コートの襟を立て、使い古したマフラーをしっかりと巻くと、ギコは最寄りの駅へと向かった。


                     *

( ,,゚Д゚)「おう。待たせたか?」

( ゚∀゚)「別にかまわないっすよ! 
     それより男にその台詞言われると
     気持ち悪いんで勘弁してください」

駅の前にいたのは長岡だった。
くったくなく笑う彼の表情に、ギコは今日はじめての笑顔をみせる。

そのまま二人は構内に入ると、切符を買い、新幹線へと飛び乗った。


( ,,゚Д゚)「にしても悪かったな。せっかくの有給なのにつき合わせてよ」

( ゚∀゚)「ああ、別にいいっスよ。俺も興味ありますしね。宿の手配だけは頼みますわ」

( ,,゚Д゚)「俺の実家でよけりゃ好きなだけ泊めてやるよ。
    それより彼女の方は大丈夫なのか?
    たまの休みくらいかまってやらんとうるさいんじゃないか?」

( ゚∀゚)「大丈夫っス。これくらいで別れるっていうなら所詮その程度の仲なんスよ」

長岡の一言が耳に痛かった。ギコは四度目のため息をつく。

( ,,゚Д゚)「若いってのはいいねぇ。女をとっかえひっかえ出来てよ」

( ゚∀゚)「うひゃひゃwwww奥さんとはうまくいっていないんスか?」

( ,,゚Д゚)「おかげさまでな。離婚していないのが不思議なくらいだよ」

そう言って、ギコは座席の窓から外の風景を眺めた。
景色は信じられない速さで後ろに流れると、すぐに真っ暗になった。トンネルに入ったようだ。

数十年前に故郷から上京してきたときは、もっとゆっくり景色が流れていった気がする。

これも年をとったせいなのだろうか? ギコは今日五度目のため息をついた。


( ゚∀゚)「ため息一回つくたびに寿命が一日縮まるらしいっスよ?」

( ,,゚Д゚)「バカ言え。
    それならお前の面倒を見て毎日ため息ついている俺はとっくの昔に死んでるよ」

( ゚∀゚)「うひゃひゃwwwwそれもそうっスねwwwwwwww」

駅の売店で買ったあんぱんをむさぼりながら笑う長岡。食べかすがギコに向かって飛んだ。

( ,,゚Д゚)「きたねえな! ちゃんと口を押さえろ!!」

( ゚∀゚)「うひゃひゃwwwwサーセンwwwwwwww」

また食べかすが飛んできた。ギコは露骨にいやな表情をして顔を袖でぬぐう。

( ,,゚Д゚)「それにしてもお前、本当にあんぱん好きだな。毎日食ってねーか?」

( ゚∀゚)「刑事にあんぱんは必需品でしょ? あと、これもね」

そう言って長岡は牛乳を取り出すとそれを一気飲みした。紙パックが一気にすぼむ。

( ゚∀゚)「昔、警察に厄介になったことがありましてね。
     そんときに世話になった刑事が食べてたんスよ。
     いやー、あの時の刑事はカッコ良かったなぁ。今のギコさんと違って」

( ,,゚Д゚)「うるせえよ。それにしてもなんだ? 万引きでもやらかしたのか?」

( ゚∀゚)「まあ、そんなとこっス」

『あっそ』とやる気のない返事を返すと、ギコは再び視線を窓の外に向けた。
冷たく輝く冬の日差しが眼についた。トンネルはもう抜けていた。


              *

数時間後。
二人は目的地の駅の前のベンチにすわっていた。
駅前は行きかう人でにぎわっている。

( ,,゚Д゚)「この景色を見るのも久しぶりだな」

( ゚∀゚)「あれ? 帰省するときに通るんじゃないんスか?」

( ,,゚Д゚)「帰省するときは飛行機なんだよ」

他愛もない雑談を交わしていた二人。
そんな二人の目の前に、お目当ての人物が姿を現す。


川 ゚ -゚)「遅れてすみません。お待ちしましたか?」

( ゚∀゚)「いえいえ、全然!
     いやー、やっぱりその台詞は若い女性に言ってもらうに限りますね!!」

( ,,゚Д゚)「黙れバカ」

目の前の女性の姿に浮かれる長岡を拳骨一発で黙らせると、ギコは彼女に抱えていた荷物を手渡す。

( ,,゚Д゚)「うちのアホがすみません。これ、たいしたものじゃないですが……」

川 ゚ -゚)「気を使わせて申し訳ありません。ありがたくいただきます」

女性は軽く一礼すると、ギコの手から差し出された土産を受け取った。

端正な顔立ち。いまどきめずらしい真っ黒な長髪がきれいだった。
しかし表情はあまり豊かではないようだ。彼女は無表情でギコを見つめると、言った。

川 ゚ -゚)「車をあちらに止めてあります。祖母の家までお連れします」


三人を乗せた車は福岡の街を走る。

さすがは九州一の都市だけあって、喧騒は都心に限ってみれば東京とさほど違いはない。
広い後部座席で一人、ギコはのんびりと流れ行く街並みを眺めていた。

( ゚∀゚)「へー、クーさんは大学生なんですか!ずいぶんと大人びていますね!!モテるでしょ?」

川 ゚ -゚)「いえ……別に」

( ゚∀゚)「またまたー! 俺が同級生だったら放っておかないよ~?」

助手席の長岡が、運転するクーを口説いている。

本日六度目のため息のあと、ギコは前に座る長岡のテンプルに向けて一撃を食らわせた。
『あば!』という断末魔を残すと、長岡はグッタリと首をたれて動かなくなる。

( ,,゚Д゚)「このバカが!……本当にすみません」

川;゚ -゚)「いえ……それよりこの人、大丈夫なんですか? 耳から血が出ていますけど……」

( ,,゚Д゚)「大丈夫です! これくらいで死ぬほどやわな鍛え方はしていません!!」

ギコはこれでもかというくらいに断言した。

川;゚ -゚)「……刑事さんとお聞きしましたが……大変そうですね」

( ,,゚Д゚)「ええ、こんなバカな部下を持つと特にね」

すると、彼女はクスリと笑った。
その笑顔を見て年甲斐もなく嬉しくなったギコは話を続ける。

( ,,゚Д゚)「おばあさん……須名そらさんはどちらにお住みなんですか?」

川 ゚ -゚)「もうすぐです。
     祖母は生まれがこの近辺だそうで、こんな騒がしい街中でも離れる気はないようです。
     私の実家はここから少し離れたところにあるのですが、
     大学がこの近くなので祖母の家に下宿させてもらって通っています」

( ,,゚Д゚)「そうですか。あ、タバコいいですか?」

川 ゚ -゚)「かまいませんよ。祖母も吸いますので。しかし……」

言葉と同時に車が止まった。


川 ゚ -゚)「もう着きました」



窓から外を見ると、高級そうな高層マンションがそびえ立っている。
その入り口に、背筋をまっすぐ伸ばして立っている一人の老婆の姿があった。


爪 ゚/-゚)「わざわざこんな田舎までご足労いただき、ありがとうございます」

2_20091226202629.jpg



車から降りると、ギコは老婆から丁重なあいさつをうけた。
長岡を片手で引きずり、ギコは恐縮して頭を下げた。

老婆は美しかった。

年を感じさせないつぶらな、まっすぐとした黒い瞳が壮健なまなざしをたたえていて、
白髪の中にわずかな黒の混じった長髪はわずかに巻いて銀色に輝いており、
しわさえ取ってしまえば孫のクーと瓜二つだった。


川 ゚ -゚)「では、私は大学の講義がありますのでこれで」

( ゚∀゚)「ちょっと待ったー!
     あなたのような美しい女性を一人で大学まで向かわせるのは大変危険だ!! 
     私が運転手として同行しましょう! なーに、本職が刑事ですのでお構いなく!!」

川;゚ -゚)「え……ちょっと……」

いきなり復活した長岡は半ば無理やり運転席へと乗り込むと、
戸惑うクーを助手席に移動させてそのまま車を発進させてしまった。

あまりにすばやい長岡の行動。それを阻止できなかったギコは頭を抱えた。

( ,,゚Д゚)「うちのバカが本当に失礼を……帰ってきたら脳天に風穴を開けておきますので」

爪 ゚/-゚)「いえいえ、ちょうどいいです」

( ,,゚Д゚)「はい?」

爪 ゚/-゚)「クーはいい年頃の娘なのに色恋沙汰にはどうも縁遠いようで。
     あの子にはああいう強引な性格の男性があっているのではないかと思います」


『いや、そういう問題じゃねぇ!』


そんなギコの心中などお構いなしで、老婆は『こちらです』と言うとマンションの中へと進んでいった。



通された部屋はマンションの最上階にあった。
内部は白を基調とした現代的な造りになっており、おおよそ老人が住んでいるようには思えない。

取り揃えてある家具も西洋風のもので、もともとの部屋の造りに無理なく調和している。
広いリビングの南側には壁一面に大きな窓が設えられており、そこからは福岡の街が一望できた。

『夜景はさぞかし美しいことだろうな』とギコがそこから見える景色に見惚れていると、
老婆が『お茶です』と言って、ギコに白いテーブルのいすへ腰掛けるよう促す。

爪 ゚/-゚)「驚かれたでしょう? 年寄りがこんな部屋に住んでいて」

( ,,゚Д゚)「え、いえ、そんなことは……」

爪 ゚/-゚)「夫が企業家でして、わりかし裕福な家庭だったもので」

( ,,゚Д゚)「そう……なんですか」

自分の家のみすぼらしさと比べ、ギコは少しの劣等感を覚えた。
すぐにそれを振り払うと、差し出された茶をすすり、テーブルを挟んで老婆と向かい合う。


爪 ゚/-゚)「あらためて自己紹介を。私は須名そら、旧姓毒田そらと申します」

( ,,゚Д゚)「ご丁寧にどうも。私は東京VIP署刑事課のギコと申します。
    本日はホームレス連続殺傷事件の捜査の一環として、
    被害者の内藤ホライゾンさんについて、お話をうかがいに参りました」

そう言って土産を出そうとするが、先ほどクーに渡してしまったことを思い出しギコは頭をかいた。
その旨を伝えると、そらは小さく笑って『お気になさらず』と一言。

清掃が行き届いている室内をもう一度見渡し、再びの茶をすすると、ギコは早々に本題に入った。

( ,,゚Д゚)「早速ですがお話しをお聞きしたい。
    内藤さんの墓についてこちらにたずねられたようですが
    彼とはいったいどのようなご関係だったのでしょうか?」

爪 ゚/-゚)「直接お会いしたのは一度だけです。それも、もう六十年近く前ですが」

老婆は茶に口をつけると、その顔を上げた。
つられて顔を上げたギコの視線の先では、
柔らかい色をした木目調の天井の下で、送風機がゆっくりと回っていた。

しかし老婆の目は天井のそんな風景など通り越しており、
その先の別の何かを見ているかのようにうつろだった。

その何かが、ギコにはすぐにわかった。
今の老婆の目は、あの時のホームレスや
何か物思いにふけっているときの妻の目にそっくりだったからだ。

彼女はきっと、過去の幻影を見ている。それもはるか遠い昔の……。

しばらくの沈黙のあと、老婆はゆっくりと、言葉を選ぶように、静かに口を開いた。


爪 ゚/-゚)「私は……内藤さんに一言、詫びたかったのです」


爪 ゚/-゚)「あれは終戦直後のことでした。
     兄の戦友だった彼は昔の私の家を……こんな部屋ではなくとても寂れた家でしたが
     ……そこをわざわざ訪れて、兄の死を伝えてくれました」

( ,,゚Д゚)「間違えていたらすみません。
    もしかしてお兄さんの名は、毒田勇男ではありませんか?」

爪 ゚/-゚)「……どうしてそれを?」

( ,,゚Д゚)「ちょいと下調べをしておりましてね」

爪 ゚/-゚)「……警察の情報網とは素晴らしいものですね」

老婆は表情を変えずに声だけで驚いて見せた。
クーのポーカーフェイスは祖母の遺伝だなと、ギコは心の中で笑った。

爪 ゚/-゚)「勇男は……本当に素晴らしい兄でした。
     兄弟の面倒をよく見てくれる、とてもしっかりした人格者でした。
     そんな兄も徴兵され、そして戦死しました。
     その事実を内藤さんが伝えに来てくれたのです」

相変わらずの無表情で老婆は続けた。
その声は淡々としていて、抑揚が無ければ機械の音声のように聞こえたに違いない。


爪 ゚/-゚)「内藤さんは両親と私たち兄弟の前でこう言いました。
     『勇男さんは敵陣に爆弾を抱えて飛び込み、
     多くの米兵をなぎ払い、見事お国のために散華なされました』と。

     父は問いました。『それは本当ですか?』 内藤さんはしばらく間を置くと『はい』と一言。
     そのまま早々に席を立つと、一礼して私たちの家から出て行きました」

『ですが……』と前置きすると、老婆はなにか考え込むようにしばらくの沈黙。
そして、口を開く。

爪 ゚/-゚)「私には内藤さんの言葉が信じられませんでした。
     兄は戦地へ赴く直前、私にこう言いました。
     『俺は絶対に生きて帰る。生き恥を晒しても逃げ延びて必ず帰ってくる』と。

     そんな兄が爆弾を抱えて敵陣に突っ込むようなバカな真似をするなんて、
     私にはとても考えられませんでした。……兄の死は分かります。
     兄の戦地である硫黄島は相当な激戦区だったことは当時の新聞で知っていましたから。

     ただ……その死に方だけはどうしても信じられませんでした。
     ……いえ、信じたくなかったと言ったほうが正確でしょうね。
     私は知りたかったのです。大好きだった兄が、本当はどのような死に方をしたのかを。

     だから私は出て行った内藤さんを追いかけてもう一度問いました。
     『本当に兄は敵陣に飛び込んで……爆弾を抱えて死んだのですか?』と。
     内藤さんは何も言わず、ただ私にこれを手渡してくれただけでした」


老婆は羽織っていたカーディガンのポケットに手を入れると、テーブルの上に何かを置いた。
黒く変色したそれは、ちいさな御守りのようにも見える。

爪 ゚/-゚)「これは……私が兄に渡した御守りです。この黒は兄の血の色だそうです。
     これを受け取った瞬間、私は内藤さんが嘘をついていると確信しました。
     だってそうでしょう? 兄が敵陣に爆弾を抱えて飛び込んで死んだのなら、
     兄の血で染まったこの御守りを回収するのは不可能なはずです。
     こっぱ微塵になっているはずですから。

     だけど何度問い詰めても内藤さんは何も答えてくれませんでした。
     結局、今でも真相は闇の中です。
     そして彼の去り際に、私は本当にひどいことを彼に言いました。

     『嘘つき!なんであなたは生きているの!?
      兄だけ死んで、なぜあなたは生きているの!?』と……」

無表情をそのままに、老婆は目から一筋の涙を流した。


頬に一筋の流れを造ったそれは、
窓から差し込む光に悲しげに輝いて、テーブルの上にポトリと堕ちた。


爪 ;/-;)「あの時の内藤さんの悲しそうな表情を、私は今でも私は忘れません。

      それから時が経ち、私は気づきました。
      あの嘘は内藤さんの優しさだったことを。

      兄はきっと別の死に方をした。それはきっと私たちには言えないような死に方で、
      だからこそ内藤さんはそのことを黙っていたのでしょう。

      そして、たとえ内藤さんが言ったような死に方を兄がしていたとしても、
      私の発した人生最悪の一言を、私は内藤さんに詫びなければなりませんでした。

      ……私は内藤さんに詫びるため、去り際に聞いていた彼の故郷へと足を運びました。
      しかし、結局彼は見つけられず……
      そしてつい先日、内藤さんが殺されたことを知り……」


老婆は顔をうつむけた。
続けた声には嗚咽が混じり、聞いていたギコもいたたまれずに顔をしかめた。


爪 ;/-;)「私は! 私は内藤さんに放ったおろかな一言を詫びたかった!!
      許してもらえなくてもいい! ただ私は詫びたかったんだ!!
      身勝手だと言われようがかまわない! 自己満足だと言われようがかまわない!!
      土下座して、心のそこからお詫びをしたかった!! だけど……」


老婆の独白。痛いほどに胸を刺すその声に、ギコはしかめた顔を上げた。
老婆はこちらを向いていた。その顔には自分をあざけるかのような笑み。

それは、涙でぐしゃぐしゃだった。


爪 ;/ー;)「その言葉はもう……彼には届かない。どんな詫び状も……死者には届かない」


それっきり彼女は何も言わず、ただ許しを請うような視線だけをギコに向けるだけ。
ギコは何も言わずに、何も言えずに、窓の外を見た。

はるか上空から見下ろした都会の風景は、二人の気持ちなど知らないかのように整然とそこにあった。


                    *

( ゚∀゚)「電車こないっスねー」

( ,,゚Д゚)「……」

ホームのベンチに腰かけ、ギコはただ黙っていた。
老婆の家を後にしたギコは長岡と駅前で合流していた。もちろんその際に一発殴った。

( ゚∀゚)「で、なんかいいこと聞けました? あのきれいなばあさんから」

( ,,゚Д゚)「……あとでゆっくり話すわ」

( ゚∀゚)「そうっスか……」

そう言ったきり、ギコは何も言葉を発しなかった。
なんだか重い沈黙。場を取り直そうと、長岡は話題を軽いものに変えた。


(;゚∀゚)「俺、長崎行くの初めてなんですわ! 長崎っていいところなんでしょ?」

( ,,゚Д゚)「まあな」

(;゚∀゚)「あー……そ、それより聞いてくださいよ!
     あの子……クーちゃんの電話番号ゲットしたんスよ! 
     ギコさんもいります? なんちゃってー! 教えませんよ! 普通にダメー!!」

( ,,゚Д゚)「そうかい。そりゃ良かったな」

拳骨の一発は覚悟していた長岡。
拍子抜けするほど素っ気無いギコの反応に、それ以上彼は何も言わなかった。

ギコはベンチから立ち上がると、ホームの隅っこにある喫煙スペースへと向かう。

その後姿を、長岡は黙って見送った。


( ,,゚Д゚)「やり直し……か」

タバコの煙を大きく吸い込み、ギコは小さくつぶやいた。
先ほどの去り際、老婆の放った一言がギコの耳にこびりついていた。

爪 ゚/-゚)「ギコさん。あなたは人生をやり直したいと思ったことはありますか?」

靴を履き、玄関の扉を開けようとしたギコ。見送る老婆は静かにその一言を口にした。

爪 ゚/-゚)「私はとある企業家にみそめられ、このような裕福な暮らしが出来るようになりました。
     私の家族も夫の支援を受け彼の企業に就職し、
     みな、それまでとはうって変わって裕福になりました。
     子を産み育て、孫の顔も見れました。こんな年まで元気で生きながらえています。
     これ以上の幸せが人の生にあるとは思えません。はっきりいって満ち足りた人生でした。
     しかし……」

ギコは靴を履くと老婆の方を振り返った。彼女は寂しそうな笑みを浮かべ、言った。

爪 ゚/ー゚)「それでも私は人生をやり直して、あのとき内藤さんに放った一言を撤回したい。
      たとえその後の人生が今のように満ち足りたものでないとしても、です。
      ギコさん。あなたにはやり直したいことはおありでしょうか?」

結局何も答えられずに、ギコはその場を後にした。
 

ホームに設置された自動販売機で缶コーヒーを二本買うと、ギコは長岡のもとへと戻った。

ベンチに座る彼にそのうちの一本を放り投げてその隣に腰掛ける。
ふたを開けて中身を飲む。熱い液体がのどもとを通り過ぎていくのがはっきりと分かった。
そして、ゆっくりと長岡に話しかけた。

( ,,゚Д゚)「なあ、長岡。お前は人生をやり直したいって思ったことはあるか?」

(;゚∀゚)「……なんスか? 急に……」

長岡が怪訝そうな声で返す。

( ,,゚Д゚)「いやな、あのばあさんに言われたんだよ。『俺にはやり直したいことはあるか?』って」

少し考えた後、長岡はいつものような明るい調子で言った。

( ゚∀゚)「まあ、あるにはありますけど、それは俺にはどうしようもないことでしたからね。
     それ以外は別に何もありませんよ。なりたい職業にもつけたし」

( ,,゚Д゚)「……そうか」

ギコは立ち上がり、飲み干した缶をゴミ箱に捨てた。
戻ってくると再びベンチに腰かけ、視線を足元に向けた。


( ,,゚Д゚)「俺には……あるよ」

( ゚∀゚)「……ふーん。意外っスね」

気のない長岡の返事。視線を下に向けたまま、ギコは続ける。

( ,,゚Д゚)「あるっていうか……全部だ。
    全部やり直したいな。子供のころからだ。
    いい大学入っていい企業に就職してれば、
    今頃こんな人生歩かなくてもすんだのかなと思うよ」

( ゚∀゚)「……」

( ,,゚Д゚)「お前も知ってるだろ? 俺、かみさんとうまくいってねぇんだよ。子供もいねぇ。
     ……それだけじゃない。仕事だってそうだ。
     いい年してまだ下っ端だ。落ちこぼれもいいところだな。

     若いころはそれでもいいかなと思ってた。
     仕事にやりがいさえ感じられてりゃそれでいいと思っていた。
     やりたいことに全力を注げば、必ずそれは報われると信じていた。
     だが、世間はそんな甘いもんじゃなかった。

     今の俺は昔みたいに仕事に情熱を持ててねぇ。いつでも何かを持て余している。
     今、サボり同然でこんなところに来ている自分がそれを証明しているよ」

顔を上げたギコ。眺めようとした空は、ホームの屋根にさえぎられて見えなかった。


( ,,゚Д゚)「最近な、俺の人生ってなんだったのかなーって思うんだ。
    何をやってもまったくうまくいかねぇ。
    若いころ好き勝手しないで黙って上司の言うことに従っていれば、
    今頃ちっとはマシだったのかもな。
    長岡、お前は俺みたいになるなよ。今からでも遅くない。
    俺に下につくのは止めて、もっと別の奴に……」


(  ∀ )「ふざけんな」

ギコの隣で黙っていた長岡が立ち上がって叫んだ。
何事かと、周囲の人々が二人に視線を向ける。そんなことなどかまわず、長岡は続けた。

(# ゚∀゚)「ふざけんな! あんたがそんなこと言うなよ!!
     それじゃあ俺の今までの人生が間違っていたみてぇじゃねぇか!!」

( ,,゚Д゚)「おい、お前……なにを……」

(# ゚∀゚)「うるさい! 俺はあんたを目標にここまで来たんだ!!
     そのあんたがそんな情けないこと言わないでくれよ! もっと毅然としていてくれよ!!」

怒った表情できびすを返すと、長岡はホームの階段へと足を向ける。
遠ざかる彼の後姿に、ギコは慌てて声をかけた。


( ,,゚Д゚)「お、おい! どこに行くんだ!!」

(# ゚∀゚)「帰ります! 今のあんたの姿なんて見たくねぇ!!」

最後に振り返った長岡。

(# ゚∀゚)9m「故郷の景色でも見て、そのゆがんだ根性叩きなおしてきてくださいよ!
       それまで東京に帰ってこないでください! いいっスね!?」

捨て台詞を残し、肩を怒らせた長岡の後姿は階段の奥へと消えた。
わけがわからないといった表情のギコ。禁煙スペースにもかかわらず、彼はタバコに火をつけた。

吐き出した煙はホームの中をゆらゆらと漂って消えた。
立ち上がり、足を一歩踏み出して見上げると、屋根の隙間から青い空が見えた。
空を仰ぎ、再びの煙を吐き出したギコ。それは風に吹かれて、空気に溶けて、消えた。


( ,,゚Д゚)「内藤さん……あんただって、人生をやり直したいと思ったこと……あったよな?」

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つぶやいたギコ。
彼の言葉は、直後に鳴り響いた電車の到着を告げるベルの音にまぎれて、誰にも聞かれることはなかった。





この小説は1944年12月某日から2007年3月某日にかけて時の狭間で記録されたものです
作者は78 ◆pSbwFYBhoY 氏
Scene 8 はこちらへどうぞ

記事元はオムライスさんになります



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/26 20:28 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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