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( ^ω^)がリプレイするようです Scene 6

はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ






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Scene 6 :一九四五年三月、硫黄島


『者が、物になった重さ。それが骨身を軋ませ、胸を潰した。
 清永、と呼びかけた声は声にならず、甲板にこぼれ落ちた御守りを拾うこともできずに、
 征人は同期の――この世に二人といない親友の死に顔を、ただ見下ろした』

                           「福井晴敏 終戦のローレライⅢ『第四章』」




――

―――


「ブーン……起きてるか?」


暗がりの中で声がした。
嗚呼、分かる。分かるぞ。遠い昔に失った戦友の声。

同時に五感が目覚め始める。異常なまでに高い湿気と
汗や火薬、糞尿やかすかな硫黄臭が混じりあったなんともいえない強烈な臭気。

鼻でそれらを吸い込んで、内藤は一気にむせた。


(;^ω^)「げほっ! ごほっ!! すごいにおいだお……」

('A`)「俺はもうとっくに慣れちまったよ。お前も早く慣れろよ……」

咳き込みながら涙目であたりの様子を伺う。
暗い穴倉。ロウソクの光だけが照らすその中で、
若かりし内藤とドクオは壁に背を預け、むき出しの地べたに座っていた。

( ^ω^)「ここは……通路かお?」

('A`)「当たり前だろ?
    俺らみたいな下っ端で無傷な奴らが個室で寝られるわけないだろう……常識的に考えて」

( ^ω^)「おお……それもそうだお」

とりあえず、自分が硫黄島の地下壕の中に潜伏しているのは分かった。
外は静かだ。米軍は夜に攻撃することは基本的にしない。ということは、今は夜と考えて妥当だろう。

では、今はいつなのだ?

生前の記憶を頼りに、ブーンは現在地の割り出しにすべての意識を集中させた。


                  *

硫黄島で内藤が配属されたのは北方の地下壕。
一方、米軍が島の南側から上陸。北に向かって侵攻していった。

硫黄島本部から出ていた命令は配属された地下壕の死守。
よって、前線でない北方の地下壕にいた内藤とドクオは、しばらくの間戦闘を経験しなかった。

しかし米軍は着実に島南部を制圧。
逃げ延びた兵隊や負傷兵が内藤たちの壕に逃げこむようになり、
それに続けと言わんばかりに米軍の攻撃が北方の内藤たちの地下壕にも押し寄せるようになった。

初めて自分の地下壕を攻撃されたとき、内藤は身体を縮こまらせて震えながら泣いた。
雷が自分の真上に落下したかのような振動と轟音。
身体の奥底まで恐怖が押し寄せ、一歩たりとも動くことが出来なかった。

やがて米軍の攻撃がひと段落すると、上官から

『地下壕の数ある入り口のひとつから顔を出し米兵を狙撃せよ』

との命令が、内藤とドクオに下される。

ミ,,゚Д゚彡「ゆけ! 一人でも多くの米兵を殺すのだ!!」

上官の命令は絶対。逆らえば銃殺。
震える身体を鼓舞して内藤はドクオのあとに続き、指定された地下壕の入り口から顔を出した。


( ;ω;)「怖いお……怖いお……」

('A`;)「まったくだ。やってらんねーよな」

入口から外を眺めると、数台の戦車を率いて米兵が周囲を闊歩していた。
相手はこちらに気づいていないようで、今ならば新兵の二人にでも狙撃が出来そうだった。
しかし結局、内藤とドクオは一発も発砲することはなかった。

('A`)「発砲すれば俺たちの居場所がばれる。そしたら手榴弾や戦車のいい的になっちまう。
    ここは黙って潜んでいるのが正解だな」

恐怖で頭の回らない自分とは対照的に、ドクオは落ち着いた様子で自分の意見を述べる。
内藤は震えながらドクオの言葉に黙って従うだけだった。

やがて夜が訪れ、米兵の姿はどこかへ消えた。
生きている安堵感をかみ締めながら上官の下へ戻ると、二人は衝撃的な命令を下される。

ミ,,゚Д゚彡「お前たち二人は明日の朝この壕を離脱!
      独自に作戦を展開し、米兵を根絶やしにせよ!!」

(;゚ω゚)「……そ、そんな」

おもわず反論しかけた内藤を制し、ドクオは敬礼をして言った。

('A`)「了解しました! 我々はフサギコ大尉のご命令どおり
    明日の早朝、この地下壕から離脱し、
    たとえこの見が朽ち果てようとも鬼畜米兵を根絶やしにします!!」

ミ,,゚Д゚彡「うむ! 貴君らの健闘を祈る!! では解散!!」

事実上の死刑宣告だった。


『敵軍を向かいうち、殲滅せよ』


過去の戦闘、特に南方戦線と今回の硫黄島戦線において、大営本部から下された命令はほぼ同じ。
しかし、ただ一点において異なる点があった。

それは『特攻』という二文字。

これまでの戦闘、特に南方戦線においては
どうしても勝てない場合に限り『特攻』もしくは『散華』という選択肢が許されていた。
『生きて虜囚の辱めを受けることなかれ』の精神である。
つまり、死と言う名の逃げ場が南方戦線の兵士たちには残されていたのである。

しかし、硫黄島戦線においてそれが許されることはなかった。

最後の最後まで戦い抜くことだけが求められた。
硫黄島が陥落することは、米軍の本土上陸を可能にするも同義。
そのため、『死ぬまで基地を守り戦いぬけ』との命令が内藤たちには下されていたのである。

硫黄島の兵たちは自ら死ぬことすら許されず、迫り来る恐怖の中で地下に身を潜めていた。

そんな中で上官が下した命令。
裏を返せば『特攻』と同義だった。
許されていないはずの『特攻』。それを上官は命令したのだ。

それはつまり日本軍の命令系統の、いや、日本軍そのものの崩壊を意味していた。


                  *

('A`)「日本は負ける。俺はフサギコ大尉の命令でそれを確信した」

生前の記憶を回想していた内藤の耳に入ってきたドクオの静かな声。
懐かしいその声に、内藤は自分の現状を把握した。

今自分がいる時間は、フサギコ大尉にあの命令を下され特攻する前の最後の夜。
そして、ドクオが死ぬ直前の最後の夜。
ここで彼は、ドクオと生涯忘れ得ない会話を交わすことになるのだ。

('A`)「大方、口減らしをしたかったんだろう。
    地下壕に潜伏して戦うには食料の温存が不可欠だからな。それは分かる。
    だけど本部からの命令で『特攻』は許されていない。
    しかしフサギコ大尉は特攻と同じことを命令した。
    日本軍はもう崩壊したも同然だ。
    ここの日本軍はもはや統率の取れていないゲリラと一緒だよ」

誰にも聞かれることのないよう、ドクオは声を潜めて言う。
ロウソクの頼りない炎がわずかに揺らめいた。

('A`)「それに見ただろう? あの圧倒的な物量差をよ。
    広大な太平洋を越えてあれだけの兵器をここまで持って来るんだ。
    米軍に日本が勝てるわけがねぇ」

内藤はドクオの顔を見た。
ロウソクのわずかな明かりに照らされたその顔には、場違いな笑みが浮かんでいた。

('A`)「だけどな、俺はあんな馬鹿げた命令に従ってみすみす死ぬつもりはねぇ」

( ^ω^)「……米軍に降伏する気かお?」

ささやかれた内藤の声に、ドクオは驚愕の表情を浮かべて眼を見開いた。

('A`;)「……よく分かったな」

( ^ω^)「まあいろいろと事情があるんだお」

そう言って内藤はにやりと笑った。

今でこそ当たり前の考え方かと思えるかもしれないが、
ドクオの考え方は当時の日本人としてはあまりに異端なものであった。

国賊的な考え方といっても差し支えない。当時の日本人にとって、
国のために戦って死ぬことが美徳であり、生き残ることはまさに生き恥を晒すことであった。

この精神が日本の強さでもあり弱さでもあった。
優秀な兵士や戦艦、戦闘機のパイロットはこの精神のもとに戦い、戦果をあげ、そして死んでいった。

しかし、そんな国家的な考え方にドクオは確固たる信念で反逆していた。

もちろんそのことを表面上見せないところが彼のすごいところだと内藤は考えていたが、
それ以上に、ただ周囲に流され漠然と死ぬことが美徳だと考えていた自分が
恥ずかしくなるくらいの芯の通った彼の意志にこそ、内藤はただただ感服していた。

そしてこれから聞かされるであろうドクオのその言葉に、内藤は救われるのである。


('A`)「俺さ、前にも話したけど……九州の福岡で生まれたんだ。
   六人兄弟の長男でさ、親父とお袋は毎日遅くまで安い賃金で働いて俺たちを育ててくれた。

   金もないくせに俺や弟や妹たちを全員学校にやってさ。俺をここまで育ててくれた。
   だから俺も学校からすぐに帰って弟や妹の面倒をみてきたんだ。
   親に対するせめてもの恩返しさ。
   下のガキ達もわがままを言わない出来たガキでな。お互いに支えあって一生懸命生きてきた」

('A`)「そんで俺も徴兵されてさ。
   最後の夜、親父とお袋は俺のためにパイナップルを用意してくれたんだ。
   知ってるか? パイナップルってめちゃめちゃ高いんだぜ?

   俺はもちろん断ったよ。 俺なんかより育ち盛りの弟や妹たちに食わせたかった。
   だけどそんな俺の申し出を断ってさ、弟や妹たちは俺に食えって言うんだ。
   俺は……泣きながらそれを食べたよ。……うまかった。すげーうまかったよ」

懐かしそうに語るドクオの目がにじんで見えるのは、きっとロウソクの光がゆらめいたからだろう。
彼は懐に手を入れると、そこから紙で出来たちいさな御守りを取り出した。

('A`)「これさ、訓練所に向かう列車に乗る前に、そら……俺のすぐ下の妹がくれたんだ。
   『兄さん、必ず生きて帰ってきてくれ』って言ってな。その一言で俺は決めたんだ。

   誰を裏切ろうと、誰に恨まれようと、俺は生きて故郷に帰る。
   帰って親父とお袋に恩返しするんだ。そして、弟や妹たちを幸せにするんだ」

誰にも聞かれないように話すその声には本当に小さく、だけどなぜかしっかりと耳に入ってくる。
ドクオはゆっくりと顔を上げた。

('A`)「だから俺は生き残るためになら米軍にだって降伏してやる。どんな拷問にも耐えてやる。
    日本に帰って国賊だって罵られようとも、俺は必ず生きてあいつらのもとに帰るんだ」


生前、はじめの人生でこの話を聞いた内藤はどんなことがあっても生き延びると心に誓った。
ドクオと同じように、自分の故郷で待つ家族と、幼馴染のために生きて帰ると誓ったのだ。

そんな決心をくれたドクオは、この瞬間、内藤にとって命の恩人といっても差し支えない存在となった。
しかしそんなドクオは死に、彼になんの恩返しも出来ないまま内藤だけがおめおめと生き延びてしまう。

それが時の用意したシナリオ。
しかし、今の内藤にはそれを書き換えることが出来るチャンスを得ている。

時の番人が与えてくれたやり直しという名のペンを握り、
内藤は今、運命と言う名のシナリオを書き換えるためにこの時代へとやってきたのだ。

これからの自分の行動しだいで、ドクオは生きもするし、死にもする。
その重みが内藤の心にのしかかり、彼の身体をわずかに震わせる。

だけど、その重圧から逃れるわけには行かない。内藤はうつむいて、ゆっくり、深く息を吸った。

('A`)「……なあ、ブーン。一緒に米軍に投降しないか?」

息を潜めたドクオの声が内藤に届く。その声に、内藤は静かに顔を上げた。
わずかな笑みを浮かべた内藤は、自分の懐に手を差し入れた。

そこから取り出したのは黒色の体にロウソクの光をまとわせる一丁の銃で、
その口をゆっくりとドクオに向ける。

差し金を引く音が暗がりの地下通路を渡る。銃弾が装てんされた。

まさかの光景にドクオの眼が一瞬にして見開かれたが、それでも内藤はたずねないわけにはいかなかった。


( ^ω^)「ドクオ……たとえ生きて故郷に帰っても、僕たちの前には様々な悲しみが立ちふさがるお。
     世界は僕たちに優しくはないお。それでも君に、未来を生きる覚悟はあるのかお?」

('A`;)「ブーン……お前、いったいなにを……」

( ^ω^)「これからこの壕に向けて米軍の爆撃が始まるお。
     僕たちはここを脱出し、米軍に投降しようとするお。
     そして入り口に差し掛かったそのとき、君は崩れ落ちた土砂に潰されて死ぬお」

('A`;)「オマエはいったいなに言ってるんだ……」


そのとき、地下壕に強烈な爆撃音と振動が響いた。
震える地面と空気に揺られながら、ドクオは信じられないといった顔をする。


('A`;)「う、嘘だろ!?」

天井からパラパラと小石が降りそそぎ、反射的にドクオは身をかがめた。
しばらくして振動がやみ、ドクオは恐る恐る顔を上げる。

内藤の銃は依然としてドクオに向けられたままだった。


( ^ω^)「さあ、答えるお、ドクオ。
     もし君にその覚悟がないなら、僕はここで君を殺すお。
     そのほうが君にとって幸せだからだお。
     だけど、もしも生きていく覚悟があるのなら、僕は全力で君の未来を切り開くお。
     そのために僕はこの時代に戻ってきたんだお。
     君に恩返しをするために僕は今、ここにいるんだお」

内藤は引き金を遊びのぶんだけ軽く引いた。
あとわずかでも引き金を引けば、すべてが終わる。

二人の間を流れる静かな緊迫感の中で、ドクオの双眸は確かな光をたたえてこちらを見据えていた。

('A`)「……あるに決まってるだろ」

( ^ω^)「そう言うと思ってたお」

怒っているようにも聞こえるドクオの憮然とした声。
その声に満足した内藤は銃をおろし、にっこりと微笑んだ。そして、最後にたずねた。

( ^ω^)「ドクオ、なんで君は自分の考えを僕に話してくれたんだお?
     僕が上官に密告するなんてことは考えなかったのかお?」

ドクオはゆっくりと立ち上がり、懐の銃を捨てる。内藤も、それに習って銃を捨てた。
衣服を脱ぎ、二人は下着と黄ばんだ肌着一枚になった。重火器の類は暗がりの通路にすべて捨てた。

('A`)「……なんとなく、お前なら俺の考えに賛同してくれると思ったからだ。
    訓練所からずっと同じ苦労を耐え抜いた仲間ってだけじゃなくて……なんていうかな、
    人間の種類が同じっていうのか? とにかく俺は、お前に俺と同じにおいを感じたんだよ」

( ^ω^)「そうかお」

生前、最後の最後まで聞けなかった言葉を耳にして、内藤は嬉しそうに笑った。

('A`)「それより、さっきお前が米軍の攻撃を予測したこととか
    俺が死ぬとかそれを守るとかわけわかんねぇことをぬかした理由、あとで必ず聞かせろよ?」

( ^ω^)「お。君を助けてすべてを話すお。それまでは僕の指示に従ってくれお」

('A`)「わかったぜ」


交わされたやり直しの契約。

二人は、地下壕の奥へと駆け出した。


('A`;)「おい、ブーン! 地上に上がるなら反対側のほうが近いぜ!?」

(;^ω^)「ダメだお! あそこは米軍の攻撃が激しくて入り口が崩壊してしまうお!!
      確実じゃないけど、生き延びるためにはこっちの入り口のほうがいいはずだお!!」

ドクオの言う反対側の入り口とは、はじめの人生で二人が向かった入り口。
間違っても行くわけにはいかないその方向に背を向け、二人は狭い地下壕の中をひたすらに走った。

爆撃の振動で転がっても、這いつくばりながら地上を目指した。
すれ違うほかの兵士たちが危機狂々とした表情をしていた。
その中には見知った顔もいたが、内藤にはドクオ一人を守ることだけで精一杯だった。

ついに地下壕の入り口が見えた。一筋の外の光が二人の目に飛び込んでくる。
瞬間、はじめの人生の光景がフラッシュバックする。

土砂に潰されたドクオ。その前でひざを突きうなだれる自分の姿。
死体が握っていた、真っ赤に染まった御守りの色彩だけが妙に鮮やかだった。
その幻影を振り払うかのように内藤は叫ぶ。

(;゚ω゚)「ドクオ! 一気に駆け抜けるお!!」

('A`;)「わかった!!」

二人は光を目指し、死に物狂いに走った。
先頭を走る内藤の目の前に地上の光景が広がる。そして後方を振り返る。
飛び出した地下壕の入り口は崩壊しなかった。ドクオは生きていた。

勝った。自分は時に勝った。ほんの少しだけ、内藤は笑った。


地上の明かりが目の前に広がると同時に、二人は地面に伏せた。
そのままほふく前進で周囲の草むらへと身を隠す。

周囲には米軍の兵隊、そして戦車が点在していた。

ここからは自分が体験していない時間。内藤は必死に頭を働かせる。
しばらく草むらに身を潜めたあと、彼は黄ばんだ肌着を脱ぐとすぐさま身を起こし、
それを両手に持って大きく振った。

(;゚ω゚)「投降するお! 撃たないでくれお!!」

下着一枚、全裸に近い状態で叫ぶ内藤。
頬のすぐ横を銃弾が通り過ぎた。同時に風切り音が鼓膜をゆらす。

彼の視線の先には銃を向けてこちらをにらみつける数人の米兵の姿。
向けられた銃口にひるむことなく、内藤は掲げた肌着を振り続けた。
それに続くかのごとく、ドクオも立ち上がり着ていた肌着を大きく振る。


('A`;)「俺たちに戦闘の意思はない! 投降させてくれ!!」

(;゚ω゚)「銃は持っていないお! 投降するお! ギブアップだお!! 」

米兵が銃を向けたまま恐る恐る二人に近づいてくる。
内藤とドクオは滴り落ちる汗をそのままに、ただ腕を振り続けた。

「Raise your hand !!」

眼の前の米兵が叫ぶ。意味が理解できない二人。
ただひたすらに腕を振り、米兵を見据える内藤とドクオ。
その視線の先で、米兵は驚愕の表情を浮かべて顔を真横に向けた。

米兵の視線の動きを不審に思い、同じ方向を見たドクオ。
その眼は信じられない光景を目撃する。

ドクオは、反射的に次の行動に移っていた。


('A`;)「ブーン! あぶねぇ!!」


その瞬間、『パン』と乾いた音が周囲にこだました。


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ドクオの叫び声がするや否や、内藤はドクオに体当たりされ地面に転がった。
裸体の背中が地面に接触し、衝撃で咳き込む。

すぐに起き上がろうとしたが、何かが自分の上に覆いかぶさっていてすぐには起き上がれない。

内藤は地面の上を転がり、覆いかぶさっていた何かから這い出して起き上がった。
見下ろせば、そこには背中からおびただしい量の血を流しうつぶせに倒れているドクオがいた。


(;゚ω゚)「ドクオ……ドクオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


内藤は力なく地面にひざをついた。
ぐったりとしたドクオの身体を仰向けにし、両手で抱えた。

瞬間、内藤の耳の真横を銃弾がかすめる。


ミ,,゚Д゚彡「米兵に投降しようとする国賊が! これは天誅である!!」


聞きなれた怒鳴り声に顔を上げる。
視線の先には、二人が出てきた入り口から顔を出し、銃をこちらに向けているフサギコ大尉の姿があった。

すぐさま米兵がフサギコに向けて銃撃を開始する。

フサギコは地下壕の中にとっさに身を隠し、二度と出てくることはなかった。


(;A;)「いやだ……いやだよ……」

その光景を呆然として眺めていた内藤。
真下から響いてくるか細い声に、彼は我に返った。

(;゚ω゚)「ドクオ! しっかりするお、ドクオ!!」

(;A;)「なんで……仲間に殺されなきゃなんねぇんだよ……」

ドクオの右手がプルプルと動く。
その手のひらには先ほど見せてくれた御守りが握られていた。

(;A;)「俺……なんにもしてないんだぜ?
    ……親父やお袋、弟や妹たちに……なんにもしてやれてない……
    こんなのって……ねぇよ……」

ドクオの、そして内藤の目から涙がこぼれ落ちた。

やがて口からどす黒い血を吐き出すと、ドクオはそれきり動かなくなった。

彼を支える内藤の両手に、ずしりと重みが伝わる。

( ;ω;)「ドクオ……しっかりするお……」

死体の手から御守りがはらりと落ちた。
それは彼の血で溢れる地面に落ち、真っ赤に染まる。

( ;ω;)「僕は……また守れなかったお……」

真紅の御守りを見下ろし、誰にともなく内藤はポツリとつぶやいた。

あと一歩だった。本当にあと一歩だった。
あそこでフサギコが発砲していなければ、ドクオは助かった。
フサギコがこちらを狙っていることに自分が気づいていれば、ドクオは死ぬことはなかった。
ドクオが自分をかばうことさえしなければ、ドクオは生きのびた。

( ;ω;)「なんで……なんで君は僕をかばったんだお!
     誰を裏切ろうと、誰に恨まれようと生き伸びるって言ってたじゃないかお!!
     裏切れお! 僕を裏切ればよかったんだお!!」

抱えた亡骸に問いかけても、答えは何も返ってこない。
自分は死んでよかった。あんなくだらない人生を歩む自分より、ドクオに生きてほしかった。

だけどドクオは自分を助けた。その理由はもはや知る由もない。


これが時の可逆性というものなのか?
こんなことまでして時はドクオを殺したかったのか? そして自分を生かしたかったのか!?

なぜ? なんのために!? 


( ;ω;)「答えろ! 答えてくれおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


かつてドクオだった肉塊を抱え、内藤は慟哭した。


はじめの人生と同じように、米兵たちは泣き叫ぶ内藤を黙って見守るだけだった。
はじめの人生と同じように、見下ろした御守りは血で真っ赤に染まっていくだけだった。

はじめの人生と同じように、風は内藤のそばを通り過ぎるだけだった。
はじめの人生と同じように、時は何も変わることなく流れ続けるだけだった。


やがて、世界が色をなくした。


にじむ視界の中を漂い、内藤の意識は静かに時の流れから離脱した。


3_20091226202312.jpg






この小説は1944年12月某日から2007年3月某日にかけて時の狭間で記録されたものです
作者は78 ◆pSbwFYBhoY 氏
Scene 7 はこちらへどうぞ

記事元はオムライスさんになります



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/26 20:24 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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