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( ^ω^)がリプレイするようです Scene 3

はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ






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Scene 3:一九四四年十二月、長崎


『水穂はそのときの水穂がどんな水穂になっていたとしたって、
 たぶん、あのころの猛々しい視線でつかつかと近寄ってきて黙って僕を小突き、
 それからあのころと同じ瑞々しい笑顔を向けてくれるだろう。
 それから僕は何を話す? ――たぶん、僕が聞きたいことは一つだけだ。
 ――僕は墓石に目を向けた。「なあ、今の君に今の僕はどんな風に見える?」』
                    「本多孝好 真夜中の五分前side-B」




――

―――


「ねぇ……ブーン?」


暗闇の中で、自分の名を呼ぶ声がする。

ブーン。

このあだ名で呼ばれるのは何十年ぶりだろうか?


「ブーンってば! 黙ってないで何とか言いなさいよ!!」


耳を柔らかく包む、透き通った高めの声。

もう遠い昔。

幸せだったあの頃に何度も聞いた、懐かしい声。


「こんなクソ寒い中に呼び出しておいてなに!? ぶちころすわよ!!」


かつて何度も浴びた罵声。
かわいらしい声とアンバランスな口の悪さが絶妙なハーモニーを奏でる。
今となってはたまらなくいとおしいその声。

もっと……もっと罵ってほしい。

彼女の気の済むまで、そして僕の気が済むまで、ひたすらに罵ってほしい。


「何とか言いなさいよ! このばかち―――ん!!」


心地よい罵声にウットリしていた内藤を、衝撃が襲った。



(#)ω;)「おっ?」

ξ#゚⊿゚)ξ「おっ? じゃないわよ、このばか!!」

頬に走る衝撃に目を開けた内藤。
痛みから流れる涙でにじんだ視界の先に彼はもんぺ姿の幼馴染、津出麗子の姿を見た。

半世紀ぶりに見る彼女の姿。

脳裏に焼きついた思い出と寸分たがわぬその姿に、
内藤は目からこぼれ落ちる涙を禁じえなかった。


(#)ω;)「……麗子!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「な、なによいきなり!? 名前で呼ぶなんてどう……」


……したの?


そう言いかけた彼女の身体を、内藤の腕が強く抱きとめた。


2_20091226201318.jpg


( ;ω;)「麗子……いや、ツン! 
      会いたかったお……ずっとずっと……会いたかったんだお……」

ξ ////)ξ「ちょ、ちょっとブーン……どうしたのよ……昨日会ったばかりじゃない!
     な、殴られて頭がおかしくなっちゃったの?」

突然抱きしめられてんやわんやするツンであったが、
内藤の腕はピクリとも動くことなく、ふたりの距離を固定する。

甘美な髪の香。
衣服に染み付いた鼻腔をくすぐる甘い体臭。
やわらかな、ちいさな体躯。

そのすべてが懐かしくていとおしくて、内藤は抱いたツンの肩にあごをのせさめざめと泣いた。
二度と自分のもとから離れることがないよう、彼女のちいさな身体をあらん限りの力で抱きしめた。

はじめはただ涙を流すだけの彼であったが、次第に嗚咽の声が混じりだす。

その泣き声はしんしんと冷える夜の町を、乾燥した空気を震わせながら伝わっていく。


ξ ////)ξ「い……いたいよ……ブーン……」

耳元でささやかれるかすかな声。
苦しそうなその声で我に返った内藤は、抱きしめた手をはなして後ろへと飛びのく。


(;^ω^)「ご、ごめんだお! これは故意でも作為でもなくて
      本能というか虫の知らせというかそういう類の神の見えざる手が
      僕の身体を通して勃起して……」

ξ ////)ξ「い、いや、あああたしも気持ちよかったなんてそういうことじゃなくてブーンの身体って
     大きくてあったかいなーってそそんなこと思ったりしてなくないわけでもなくて
     あばばばば……」

支離滅裂を通り越し、メダパニにかかったがごとき言い訳を並べる内藤とツン。

意味不明のボディーランゲージを見せる内藤の目の前で
ツンは顔を真っ赤に染め、うつむきながらもじもじしている。

気まずい沈黙がふたりを包む。

自分のおこないに「アッ――!!」と頭をかきむしり後悔する内藤。

しばらく自己嫌悪にもんもんとしていると、
ふと見上げた視線の先の彼女の姿に、自分の本来の目的を思い出す。


(;^ω^)「(僕はツンを抱きしめて興奮するなんていう変態行為をするために
      来たんじゃないお!!)」

そう思うやいなや、顔を上気させながらうつむいているツンの肩に両手を置いたブーン。

( ^ω^)「ツン!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「は、はひ!!」

( ^ω^)「これから僕の言うことをよく聞いてくれお!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「か、かしこまりました!!」


いきなり豹変した幼馴染の真剣な表情にドギマギする彼女。
自分のひとみの奥まで貫くかのような彼の視線に、ツンは無意識に姿勢を正した。


( ^ω^)「来年の夏、この町は大変なことになるお!
      アメリカのスゴイ爆弾が落とされて、この町は一面、焼け野原になるんだお!!」



ξ ゚⊿゚)ξ「……はぁ!?」


予想外の出来事に直面しても、それが一定の域を超えると人はとたんに冷静になるものである。
幼馴染のわけの分からない発言に対し、ツンはごく一般的な反応を示した。

(;^ω^)「だから、この町は来年の八月にこっぱみじんになるんだお!
      僕の母ちゃんも、ツンの父ちゃんも母ちゃんもみんな、みーんな死ぬんだお!!」

ξ ゚⊿゚)ξ「……あんた、本当にだいじょうぶ?」

(;^ω^)「……」


そう言われても無理はない。今の自分の発言はあまりに突拍子なものだった。
ここは一から筋道を立てて話し直すべきだ。

反省反省。

内藤はツンの肩に置いた両手を夜空へかかげると、大きく深呼吸をした。


( ^ω^)「おk。頭が冷えたお。もう一度、一から話し直すお」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」


( ^ω^)「僕は僕であって僕でないんだお。
      僕であることは変わりないんだけど、僕の中身は今、未来の僕なんだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」


( ^ω^)「未来を生きた僕は死んで、今、人生をやり直しているんだお」


よし、完璧だ。
自分の言語能力のすべてを使いきった的確で最高に分かりやすい説明だ。

内藤は期待を込めて目の前のツンの回答を待った。


呆然とした表情の彼女は、しばらくの間何かを吟味するかのごとく内藤の顔をマジマジと見続ける。
その視線をはずし、首をひねって何かを考えているツン。

そうだよな。突然こんなことを言っても、『はいそうですか』と信じられるわけないよな。

だけどツン、君なら分かってくれるはずだ。
だって僕は、君を救うためにこの時代へとやってきたのだから。

額に汗を浮かべながらツンの一言を待つ内藤。そしてようやく、彼女は重い口を開いた。


ξ ゚⊿゚)ξ「……うん、わかった!」

( *^ω^)「ツン……」

さすがは生まれたときからの付き合いだ。そしてのちの最愛の妻だ。
僕と彼女の間にはやはり通じ合うものがあったのだ。神様、本当にありがとうございました。

内藤は意気揚々と本題の説明に入ろうとした。
しかし彼の口が開く寸前、ツンのほうが先に口を開いた。



ξ ゚⊿゚)ξ「お医者さんに行こう! ブーン!!」



(;゚ω゚)「……」


なんということだ。僕の言ったことをツンは一ミリも理解していない。
なぜだ。どうしてだ。僕とツンは目と目で通じ合う仲じゃなかったんですか、神様。

そこで内藤は、もう一度我に返った。


神などいるはずがない。


もし仮に神が存在するのであれば、目の前の幼馴染にあんな最期を用意するはずがない。
母に、ドクオに、麗羅に、あんなむごい最期を用意するはずがない。

神はいない。いるはずのないものに何を願っても無駄だ。
それならば、僕は、僕の力で未来を切り開いていくしかない。

なぜこんな簡単なことに初めから気づかなかった? 自分の頭の悪さに辟易する内藤。

そしてもう一度はじめから説明し直そうとした彼に、時は無情な仕打ちを用意していた。



(;゚ω゚)「……うっ!!」


視界が……世界が、色を無くした。

目の前にいるツンは、先ほど見ていた影絵同然の姿になる。
その表情も、栗色の美しい髪も、すべてが真っ黒に染まる。

色を無くした漆黒の世界にあるのは、
身を切る冷たい風でもなければ、ここにいるという確かな質感でもない。

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと!? どうしたのよブーン!?」

(;゚ω゚)「……あ……う……」

響くのはツンの心配する声と、苦痛にうめく自分の声だけ。
世界が揺れる。まるで高熱にうなされて朦朧としているときのような苦しみが内藤を襲う。
異物である自分の意識を、時がむりやり引きはがそうとしているのだろう。


「こちらも『輪廻の番人』に無理を言ってあなたをここへ招待しているのです。
 輪廻の番人はせっかちなんですよ。正直、あなたにはあまり時間がありません」


ここにきて、バーテン……ショボンとかいう男の言葉が頭をよぎる。
時間がないというのはこういうことなのか? 

しかし、自分はまだ何も残していない。

ツンに投げかけた自分の言葉に、まだ真実と思わせるだけの力は込められていない。

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン! だいじょうぶ!? お医者さんにいこうよ!!」

(;゚ω゚)「……ツン……よく……聞いてくれお……」


すでに影絵となってしまったツン。その表情は黒く染められてわからない。
揺らめく視界と意識の中で、内藤はありったけの想いを込めて、言葉を影絵の彼女に投げかけた。


(;゚ω゚)「来年の八月九日午前十一時二分、この町に原子爆弾が投下されるお!
     君はそのとき、この町を離れているから死にはしない!
     だけど、君は後日、放射能に汚染されたこの町に帰ってきて被爆するお! 
     それが君の死ぬ原因となるお!!
     お願いだお! 絶対にこの町に帰ってくるなお!! 約束だお!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「なに言ってるのよ! 全然意味がわかんないよ!!」


叫ぶ内藤。

想いを込めた自分の声に、過去の悲惨な光景が頭をよぎったのであろうか。
いつの間にか、その目からは涙がとめどなくあふれていた。


( ;ω;)「僕は必ず生きて戻ってくるお! だから……だからお願いだお!!
      この町を捨ててくれお! 何年かかっても僕は必ず君を見つけ出すから、
      この町を捨ててくれお!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと! ホントにどうしたのよ、ブーン!!」


悲痛な声とともに、影絵となった彼女の姿が揺らめく内藤の視界すべてを包んでいく。

きっと、自分は彼女の細く柔らかな腕に抱かれているのだろう。
だけどそのぬくもりを感じる余裕すら、今の内藤には存在しなかった。


( ;ω;)「お願いだお、ツン! 死なないでくれお!!
      世界のすべてを敵にまわしても僕が君を護るから!
      だから、僕の言葉を信じてくれお!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン! しっかりして!!」

( ;ω;)「君のきれいなその声を、僕は死の間際まで聞いていたいんだお……。
      だから……だから頼むお! この町を捨ててくれ、ツン!!
      僕は、君に生きてほしいんだお!!」


ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン! ブ――――――――――――ン!!」



自分の名を叫ぶ幼馴染の声。


いとおしいその声を最後に、内藤の意識は時の流れから離脱した。


3_20091226201317.jpg






この小説は1944年12月某日から2007年3月某日にかけて時の狭間で記録されたものです
作者は78 ◆pSbwFYBhoY 氏
Scene 4 はこちらへどうぞ

記事元はオムライスさんになります



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[ 2009/12/26 20:14 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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