スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

( ^ω^)がリプレイするようです Prologue

はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




走馬灯というものがある。


もとは江戸時代に夜の遊具として生まれた、絵を映す灯篭のことだ。
灯を囲う障子に描かれた絵が影として壁面に映り、メリーゴーランドのようにくるくると幻想的に回る。
それはまるで移り行く人の世のごとき憂いと郷愁を帯び、そして無常なまでの速さで流れていく。

夢物語のごときそれは、転じて死の間際、もしくは死を垣間見た瞬間に
頭の中を駆け巡る風景の代名詞として脈々と語り継がれるようになった。

この現象はなにもこの国の人々特有のものではなく、
他国の言葉に置き換えてみれば『フラッシュバック』という単語がそれに当てはまるであろう。


なぜ、人は走馬灯を見るのか?


死から逃れようとする人の本能が、これまでの経験から何か打開策を模索しようとするが故だろうか?
それとも、概念としてしか確認されていない神という名の不確かな存在が

『所詮お前たち人間の歩んできた道のりなど、
 一瞬のうちに垣間見られるこの走馬灯のごとき短く薄っぺらなものである』

と嘲るために見せるが故だろうか?

どんな高名な哲学者が思惟をめぐらしたとて、その答えは永遠に見つかることはないであろう。
なぜなら、現に走馬灯の前に立つ私の目の前にさえ、
すべてを知ると言われる神は姿を現さないのだから。

その代わりに私の目に前に立つのは、蝶ネクタイを締めたしょぼくれたバーテン姿の男。

そう。

私は今、走馬灯と呼ばれる幻影を見ている。




1_20091226195703.jpg




Prologue:二〇〇六年一二月、東京


( ,,゚Д゚)「ったく、なんで朝っぱらから俺が呼び出されなきゃならないんだよ」

( ゚∀゚)「すんません……当直のもんだけでは人手が足らなかったもんスから」

( ,,゚Д゚)「俺じゃなくてもいいだろうがゴルァ!」


二〇〇六年、十二月、早朝。

師走の街は静かで、まだ日も昇っていないあたりの空気は冷たく、
先日買ったばかりの高級羽毛布団に包まりぬくもりを享受していた身には
その寒さが肌を刺すように痛く感じられる。

使い古したコートを制服の上に羽織り、
『羽毛布団よりも先にコートを新調すべきだったな』などと後悔しながら、
ギコは部下の長岡に連れられ、現場である公園の植え込みへと足を進めていた。

( ,,゚Д゚)「今度呼び出したら、俺、刑事辞めるからな」

( ゚∀゚)「そんなぁ、かわいい部下の頼みでしょう?
     それに、ギコさんが刑事辞めたら、やくざくらいしか就職先ないっスよ?」

憎まれ口を叩く部下の脳天に一発お見舞いして、ギコは人もまばらな早朝の公園を渡っていく。


大都会東京。
毎日が慌しく、常に時代の先頭をひた走るこの街の人々の
憩いの場所になるようにと設けられている都会の公園は、田舎のそれとは違い広く美しい。

ギコの故郷である九州の田舎町にはこんな公園など皆無に近く、
人生の半分以上を過ごした東京にいまだ違和感を拭い去れない彼であったが、
東京の公園というものには愛着を持っていた。

ベンチに囲まれただだっ広い池を通り過ぎ、広葉樹の埋め込まれた遊歩道をのんびりと歩く。

道半ばでふと顔を上げれば、木の枝の上に、
互いに寄り添いながらこちらをじっと見つめている二匹の白猫の親子が見えた。

吸い込まれそうなほどに青い、四つの瞳。
それがあまりにも綺麗で、ギコは親子を見つめたまま立ち止まった。

( ,,゚Д゚)「なんだ? 俺に惚れたのか? 生憎、俺は既婚者でね。悪いが他をあたってくれや」 

白猫の親子に向かい冗談を放つギコ。
そんな彼に飽いたのか、二匹は木の枝から飛び降りると植え込みの奥に姿を消した。

二匹が消えた先に眼をやると、
遊歩道のはずれに、見慣れた『KEEP OUT』と刻印されている黄色いテープが
植え込みの奥を囲うようにして張り巡らされているのが見えた。

その傍らに立つ若い警官の挨拶に対し一瞥を返答として返すと、
常にポケットに突っ込んでいるクシャクシャの白手袋をはめ、
テープを慣れた手つきでくぐり抜ける。

その先にあったのは地面を覆うようにしてかけられているブルーシート。
そこから、何年も履きつぶしたのであろう、汚れで変色した安物のシューズがはみ出している。


( ゚∀゚)「仏さんの名前は内藤ホライゾン。このあたりでホームレスとして過ごしていたらしく、
     仲間内からは荒巻スカルチノフと呼ばれていたようっス」

まだお見舞いされた拳骨で痛むのか、頭上を手でさすりながら遅れてきた長岡が
状況を説明する。
彼は制服のポケットに手を突っ込むと、そこから使い古してボロボロの、
辛うじて原型を留めている財布を取り出し、投げてよこす。

( ゚∀゚)「これ、仏さんの財布っス」
( ,,゚Д゚)「遺留品をポケットに入れるな、この馬鹿野郎が!」

もう一発拳骨をお見舞いすると、その場にうずくまって長岡は動かなくなった。
いつまでたっても現場調査のいろはを覚えない馬鹿な部下に辟易しながらも、
ギコは渡された財布の中身を調べ始める。

札は入っておらず、あるのはわずかばかりの小銭と、
どこかで拾ったのであろう商店街の福引券。
そして、手垢やなんやらで赤茶けた免許証だけ。

( ,,゚Д゚)「内藤ホライゾン……最後に免許を更新したのはもう何年も前か」

免許証の顔写真には若かりし頃の被害者が写っていた。
中肉中背を地でいく、少し肉のついた中年の顔。今のギコと同じ年頃にとった写真だろう。
その目元はやさしく、そして、年には釣り合わない憂いを帯びていた。

( ゚∀゚)「腹部に刺し傷があるんで他殺と見て間違いないっス。
     犯人はこの近辺で起きているホームレス狩りと同一犯と見て間違いないっス……よね?」

( ,,゚Д゚)「……だろうな」

2_20091226195703.jpg


ここ数日、ホームレスを狙った傷害事件が連続して数件おきていた。
どれもナイフなどの鋭利な刃物による犯行であり、被害者はいずれも腹部を刺されて重傷。
しかし、幸いにも死者は出ていなかった。
この内藤とかいう老人が初めての犠牲者ということになる。

マスコミはこの事件を連日こぞって取り上げており、死者が出た以上、
犯人を捕まえられない警察に対する風当たりはさらに強くなることは避けられないであろう。
ますます捜査がやりづらくなる。

大体マスコミはこの連続ホームレス襲撃事件をセンセーショナルに報道し、
今の時代はどうなっているのかと高名なコメンテーター様方は憂いているが、
こんな事件はいつの時代にも存在するものだ。現在がどうということではない。
たまたま最近目立った事件がなかったため、
本事件に世間の注目が集まってしまったに過ぎない。

いつの時代も大衆は刺激を求め、マスコミは彼らの欲求を満たそうと必要以上の脚色を施す。
そのとばっちりを受けるのが我々警察なのだからたまったもんじゃない。

(;゚∀゚)「それにしても、仏さんはなんで荒巻スカトロ……
     なんとかとかいう偽名を使ってたんスかね?」

( ,,゚Д゚)「アフリカでは……ホームレスでは良くあることだ。
    大方、何かやらかして夜逃げやらなんやらでここまで逃げ延びてきたんだろう」


うずくまり続ける長岡の疑問に言葉を返したギコは、ブルーシートをめくり、
被害者の顔を確認した。
免許証の彼とは同一人物と思えないほどに変わってしまったその顔。
老化だけではとても説明できないほどの変貌振りに、ギコは疑問の表情を作った。
そして、その死に顔に再びの疑問を抱く。


なぜ、こいつの顔はこうも安らかなのだ?

他殺体というものは、往々にして苦痛に歪んだ死に顔をしているものだ。
しかし、この老人にそんな表情は見当たらない。
終わりの顔には笑みが浮かんでおり、まるで死を喜んでいるかのようだ。

そう思考をめぐらすギコの頭によぎる三度目の疑問。
彼はブルーシートをめくり、被害者の腹部を確認する。

( ,,゚Д゚)「……おい、仏さんの傷跡は他の害者達と同じだよな?」

( ゚∀゚)「ん? ……そういえばそうっスね」

どこから取り出したのか、あんぱんを口にしながらギコの横に座り込んだ長岡。
三度目の拳骨を食らった彼は、あんぱんが気管支に入ったのであろう、咳き込みながら地面に転がる。


( ,,゚Д゚)「このくらいの傷なら、すぐに助けを呼べば死ななかったはずだ。
     ……なぜこいつは助けを呼ばなかった?」

たどってきた遊歩道に血痕が付いていなかったのを思い出したギコは、三度目の疑問を思わず口にした。
地面に転がっている長岡は口元を押さえながら苦しそうに答える。

(;゚∀゚)「ゲホッゲホッ!……知らないっスよ!!」

( ,,゚Д゚)「馬鹿野郎!知らないじゃなくて考えろ!!お前はそれでも刑事か!?」

四度目の拳骨。地面に仰向けに倒れた長岡はもはや動こうともしない。
そんな彼のわき腹を軽く蹴り上げながら、ギコは質問を続ける。

(  ∀ )「……」

( ,,゚Д゚)「おら、答えろや!」

( #゚∀゚)「……そんなこと、自分で考えてくださいよ」

( ,,゚Д゚)「最近脳が衰えてきて大人のDSトレーニングを買おうとしている俺に
     そんなことを言うのか?」

( ゚∀゚)「うひゃひゃひゃwwww
     暴走刑事と呼ばれたギコさんも形無しっスね! 年はとりたくないもんっスねwwwwww」

長岡のわき腹を蹴るギコの力が強くなる。
苦痛に身を縮めながら地面をのた打ち回る長岡の姿はカブトムシの幼虫の動きに似ていた。

しばらく地面とじゃれあっていた長岡はのっそりと上半身だけ起き上がると、
憎しみを込めた瞳でギコを見据えて言った。

( ゚∀゚)「……仏さん、死にたかったんじゃないっスか?」

そう言葉を発した後で、自分の不謹慎さに思い至った長岡は
五度目の拳骨を覚悟して目をつむった。
しかし、衝撃はいつまでたってもやってこない。
恐る恐る目を開けると、そこには被害者の傍らに座り込み、その死に顔をじっと眺めている
ギコの姿。

( ,,゚Д゚)「……俺の脳みそも、まだまだひよっこと同じくらいには働いてくれているみたいだな」

つぶやいたギコの言葉の意味を考えあぐねている長岡。
ギコは長岡に手を差し伸べて起き上がらせると、
地面に横たわる被害者、内藤ホライゾンの顔を見つめて、言った。

( ,,゚Д゚)「朝早くに起こされるのも悪くない」

(;゚∀゚)「はい?」

予期せぬ一言に長岡の声が裏返る。
ギコは彼のほうへ振り返ると、五度目の拳骨をお見舞いして言った。

( ,,゚Д゚)「久しぶりに面白そうな事件だ。
     遺体は鑑識にまわしておけ。
     俺達は仏さん、内藤ホライゾンの身辺調査をするぞゴルァ!」

(;゚∀゚)「痛ってー……頭が割れる……」

( ,,゚Д゚)「返事は!?」

(;゚∀゚)「りょ、了解っス!!」

ギコはもと来た道を戻り、公園の前に停めてある自分の車へと歩き出す。

空には朝日が昇り始めていた。
『忙しい日々の始まりは、いつも朝日とともに訪れるものだ』と、ギコはくすりと笑った。

そんなギコの後姿を、白猫の親子の青瞳がじっと見つめていた。





この小説は1944年12月某日から2007年3月某日にかけて時の狭間で記録されたものです
作者は78 ◆pSbwFYBhoY 氏
Scene 0 はこちらへどうぞ

記事元はオムライスさんになります



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/26 19:59 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/2719-629fb88c


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。