スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

偉大な親父の最終戦のようです


223 :偉大な親父の最終戦のようです[]:2009/10/18(日) 00:06:52.68 ID:XXETFOZH0

 俺はロマン溢れるものが大好きだ。
 そんな俺に、親父は言った。

「野球ほどロマンが溢れるものはないぞ」

 その言葉を信じ、親父を目標として頑張ってきた。

 親父は不動の四番であり、打率四割に四冠王などの数々の大記録を作った。
 今や百年に一人の大打者だとか、ミスター四番だとか呼ばれている。
 そんな親父の後を追うのは、遠かった。そう、遠すぎたんだ。


 プロ野球の最終戦、ヴィッパーズの優勝は既に決まっている。
 二位のシベリアーズはそれでも諦めずに、この最終戦でも全力を尽くしてきた。
 勿論、ヴィッパーズもそれに対して全力で迎え撃った。

 そして、1-0の接戦で迎えた9回裏。
 満塁のランナーたちの顔を見てみる。
 いずれも、バッターボックスに立つ大打者を信じる、真っ直ぐな目だった。

ミ,,゚Д゚彡「…………」

 あくまで自分のペースでバットを振りながら、バッターボックスに立つのは、伝説の大打者。
 そして、俺の親父。
 ツーアウト、たった一つのゴロや三振で終わる勝負だ。
 プレッシャーは相当なものだろうに、親父の目は闘志で爛々と輝いていた。

 ああ、これこそが俺が理想とする、本当にロマン溢れる勝負だ。



224 :偉大な親父の最終戦のようです[]:2009/10/18(日) 00:10:17.13 ID:XXETFOZH0

('A`)「……もう優勝は決まっている。打たせるか、討ち取るか。
    あの大打者の野球人生のピリオドをどう打つかは、お前に任せるぜ(キリッ」

 毒尾監督はそう言うと、逃げるようにベンチへ走っていった。
 こう言われる立場になったら、この監督はどうなるんだろうな。
 マウンドに集まったナインは、その小さな背中を見送るとそれぞれのポジションへ戻った。

 鳴り止まない声援。
 今まではうっとおしくて仕方なかった。
 でも、今はこの大勝負を盛り上げてくれる、大事なものだとようやく気がついた。


 いつもうるさいはずのキャッチャーのサインがない。
 監督の言葉通りに気の毒な投手に、任せてみようという訳なのだろう。

 第一球。
 内角高めの打者の手元で鋭く切れるスライダー。
 どんな打者でも、これには仰け反るしかないはずだった。

《打ったァァァァ――――ッ! これは大きいィィィ――ッ!》

 それなのに、親父は両腕をたたみ、軽々とそれを振り切った。
 俺は思わず歓声が沸きあがったレフトスタンドへ目を向ける。
 小さく見える白球が、ポールめがけて飛んでいくのが見えた――



227 :偉大な親父の最終戦のようです[]:2009/10/18(日) 00:14:29.44 ID:XXETFOZH0

《ああ――――っとおおお! ファ――ル!! 僅かに切れました!》

 ――それが左へ切れたと同時に、レフトスタンドが落胆の溜息に包まれる。
 だが、親父は切れるのを分かっていたのかように、バッターボックスに佇んでいた。

 第二球。
 外へ逃げるカーブ。
 親父は興味なさそうに見送って、ボールとなった。


 俺はいつも親父と比べられてきた。
 偉大すぎる父と、その息子。
 周りの扱いはそうだった。

 自らの存在を主張するのかように、血がにじむような練習をしてきた。
 バッティングセンターへ通い、少年野球でも四番を任されるようになった。
 いつだっただろうか、この親父は超えられない、と悟ったのは。


 第三球。
 ギリギリストライクになるぐらいの外角低めのストレート。
 振る素振りを見せたものの、結局振らずにボール。


 打率四割、百年に一人の天才打者。
 そんな親父だったが、家庭でも最高の親父だった。
 家族と一緒にいようと、時間を割いて家へ帰ってくる。
 俺自身ではなく親父の息子、と扱われる事が多かった俺は素直になれず、反発ばかりしていたな。



228 :偉大な親父の最終戦のようです[]:2009/10/18(日) 00:17:43.06 ID:XXETFOZH0

 第四球。
 真ん中の低め、落ちるフォーク。
 バウンドするはずの球が、一振りと共に消えた。

《掬い上げた! これは高い――が、ファールです!》

 あれですら打つか、親父は……親父と戦ってきた奴の心情を察するぜ。

 プロ入りから十年経っても、親父は相変わらず四番に居座っていた。
 年間のホームラン数は30本を超え、打率も三割を安定して出している。
 最盛期を超えても、大スラッガーとして活躍していた。


 第五球。
 目に止まらないほどの速さで、インローへ突き刺さるストレート。
 親父の目がさらに輝き、信じられないほどのスイングスピードで振り切った。

 そして、今。
 二十年目になっても、未だに不動の四番だ。
 しかも、不調というものがなくて、ずっと並以上の戦績を残していった。
 そんな親父が、自慢で、大嫌いだった。

 ……結論から言うと、俺は親父のような偉大な打者にはなれなかった。



229 :偉大な親父の最終戦のようです[]:2009/10/18(日) 00:21:17.74 ID:XXETFOZH0

《振ったああああああッ――――! 空振り三振ッ!
 擬古選手、偉大な父、房擬古の最後の打席を三振で討ち取ったァァァァァ―――!》

 ライトスタンドの大歓声と――親父のスイングによる風なのだろうか。
 それが、俺の体を震わせる。

ミ,,゚Д゚彡「……やってくれたな、最高の馬鹿息子よ」

 親父は俺を真っ直ぐ見て、満面の笑顔を見せて言った。
 俺はいつの間にか涙を流していた。
 親父の野球人生を、三振で終わらせてしまった罪悪感からだろうか。

 いや、違う。きっと違うだろう。

 確かに、親父のような偉大な打者にはなれなかった。

(,,;Д;)「……その馬鹿息子に、三振取られちまうかよ、馬鹿親父」

ミ*,,゚Д゚彡「ハハハッ! 違いねえ!」

 その代わり――俺は、その打者を討ち取った、偉大な投手になるんだ。

           偉大な親父の最終戦のようです -完-







230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/18(日) 00:24:14.14 ID:XXETFOZH0

>>223-224>>227-229
支援ありがとう!

いつ貰ったのか覚えてないお題
九回裏ツーアウト満塁
馬鹿息子



[ 2009/10/19 18:19 ] 総合短編 | TB(0) | CM(2)

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
親子現役?
[ 2009/10/19 19:08 ] [ 編集 ]

いつもまとめお疲れ様です

>親子現役?
はい、この時のフサギコは引退試合ですが二人共現役です。
[ 2009/10/19 20:09 ] [ 編集 ]

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/2678-318258c2


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。