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(,,゚Д゚)移行するようです


390 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:15:52.96 ID:sPEtX9iN0

   (,,゚Д゚)

私はクマである。
昭和の頃からこの居間の片隅でご厄介になっている、しがないクマだ。

所謂バブル時代に生を受け、一般家庭の主人に買われた。
黒のプラスチックに覆われたボディ、ピカピカのブラウン管。
現在でも有名な某企業に作られた。やってきた当初は主人以外のご近所の方々からも、大層もてはやされたものだ。

前の持ち主が亡くなり、若い主人に代わってからも、私は変わらず仕事を続けた。
日々新しくなっていく情報と娯楽を提供し、食卓には笑顔を振り撒き、
深刻な報せによる議論を、衝撃的な映像による感動を、与えつづけた。

時おり定時を越え、主人らが寝静まった後も仕事をし続ける羽目になったが、文句は無かった。
家の増築の際に頻繁に持ち運ばれては壁に角をぶつけられたりしたが、不器用な主人の精一杯を感じ、許した。

移り変わる彼らの生活をこっそりと眺めていられるだけで楽しかった。
私は幸せだった。

そんな折、奴が現れたのだ。



392 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:17:13.10 ID:sPEtX9iN0

   ( ・∀・)

奴は、2階のベランダから現れた。

( ・∀・)+ 「よう」

(,,゚Д゚) 「誰だ貴様。何の用だ」

( ・∀・) 「俺はシカだ。どうだこのケツのライン、プリティーだろうが」

(,,゚Д゚) 「不法侵入者は今に捕まるぞ」

( ・∀・) 「ははっ。確かにお前にとっては侵入者だが、合法な侵入者なのさ」

(,,゚Д゚) 「なんだと?」

( ・∀・) 「ベランダの横の壁を見てごらん」

奴から目を離すのは躊躇われたが、言われて見ないわけにはいかない。
私は警戒を解かないままじりじりと後退し、ベランダに近づくと、そっと外を見た。



393 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:18:44.94 ID:sPEtX9iN0

(,;゚Д゚) 「…!?」

驚愕した。
屋根から伝い落ちた雨の染みと、でかい蜘蛛の巣以外に何も無かった白壁に、
いつの間にかプロテクターのような丸いアンテナが設置されていた。

( ・∀・)+ 「驚くのにはまだ早いぜ、これは小手調べみたいなもんだ。
        ここからが怒涛のシカ・ムーブメントよ。こいつは始まりに過ぎない。
        まだまだまだ…まだ、まだ、まだ!シカはやってくるぞ!」

奴は…シカは劇役者気取りで両手を広げ、小生意気にニヤ、と笑った。



394 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:21:38.17 ID:sPEtX9iN0

それからの流れは、大体お察し頂きたい。
奴の言った通りになった。食い止めがたい変化の波が、時代に向けて怒涛の勢いで押し寄せてきていたのだ。

"デジタル化"である。

そう、私のような古いもの達は、目に見えて急速に廃れていった。
訪れた変化の波に、押し流され、飲み込まれ、変えられていった。

同期のクマなんぞは夜中悔しそうに咽び泣きながら、
  _
(#゚∀;) 「どいつもこいつもお部屋でもしもししやがって!
       俺は、俺は留守電用のカセットテープじゃない!受話器だって子機だってある!!
       まだちゃんと使えるんだ!声を届けられるんだ!」

と嘆いていた。

(*゚-゚) 「奥様がね…私を見て、そろそろ遠隔操作のスチームかしらねぇ、って言っていたの…」

そう不安げに漏らしていたクマの居場所には、いまや真っ赤なボディが美しいシカがふんぞり返って座っている。



395 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:24:46.43 ID:sPEtX9iN0

ミセ*゚ー゚)リ♪

(,,゚Д゚) 「何者だ?」

ミセ*゚ー゚)リ 「ぁたしぃ?キャハッ♪新型スチームオーブン☆どぅぉ~かわいいデショ?」

(,;゚Д゚) 「(スイーツ…(笑))」

((( <●><●>) フイヨフイヨ...

(,,゚Д゚) ン?

(,,゚Д゚) 「貴様は誰だ?」

( <●><●>) 「ぴちょんくんです」

ギョロ目のシカ?が指差したのはエアーコンダクターだった。扇風機とストーブが不必要になった。
そういえば、あのクマも言っていたな。

"温暖化が進んでいる、自分では屋内の空気を循環させるのが精一杯で、快適にはしきれない、
もしかしたらこの先、布とビニールを羽に被せられて、物置の中で一生暮らす事になるかもしれない。"

と。



398 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:27:45.97 ID:sPEtX9iN0

我々クマは皆、人の目に映らずとも、そこにいる者達だ。

ものに付き添い、常にものと共に在った。

だから、"もの"しか知らない主人達は、決して我々を想うことはない。
周りがシカに浸食されていく中で、目に見えぬ者が何を感じようと、
彼らは新しいものに目移りし、快適を手にして笑うだろう。

どんなに付き合いが長かろうとも。

躊躇いも無く。


そして私自身も、その時を感じ始めていた。



400 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:31:33.03 ID:sPEtX9iN0

<ワイワイ
<ガヤガヤ


(('A`) ウトウト...


<ズガシャピーン!


<キャーーー!!!
<ウワーン!!!

∑('A`;)


-=(;'A`) 「何だ!どうした!」

*(;;)*=-「びゃぁぁぁおどうざーん!」ドガッ

(*'A`)そ 「おうっふっ」

('、`;川 「あなた、テレビが、テレビが…!」



402 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:35:08.19 ID:sPEtX9iN0

テレビ台から落下した黒い機体のプラスチックには大きなひびが入っていた。
モニターは内部から破損し、何も映らなくなっていた。
主人の息女は恐慌をきたし、彼の股間に強烈な頭突きを食らわせて泣きついていたが、
当の主人は悶絶しつつも何かちょっと気持ちよさそうな表情を浮かべている。

(*'A`) 「けっ怪我っ、ないかっ?ぁっは…」

('、`;川 「えぇ、二人とも大丈夫よ。凄くビックリしたけど」

(*'A`) 「そっ、そか!…はんっ」

*(;;)* 「うびぇぇぇーーー!!!」

('、`*川 「これはもうダメかしら…」

(*'A`) 「んっ、た、多分な…あふんっ、かなりひびいってる、し…いやー参っ、た…ぉぅんっ」

('、`#川 「ちょっと、変な声出してる場合じゃないでしょ!」

(*'A`) 「す、すまん…」

*(;;)* 「ぐびぁゃぁぁぁーーー!!!」



403 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:37:45.72 ID:sPEtX9iN0

(,,゚Д゚) …


('A`) 「地震も何も無かったのに、突然落ちるなんて…」

('、`*川 「…逆に、いい機会じゃない?買い替え時だったのよ、もうかなり画質悪くなってたし、ね」

('A`) 「うん…じゃあ、いつもの業者さんに頼もうか。
     接触も良くて元気そうだったから、まだ先の事だと思ってたんだけどなぁ」

*(;;)* 「びぃえぇぇぇぇーーー!!!」


ふん。今までの扱いが悪かったんじゃい。
時には日中から夜明けまで点けっぱなしにしくさりおって。
いつどこがどうプツってもおかしかなかったわ。

心の中のぐちぐちとした呟きと、目頭の熱い痛みとを、喉の奥に飲み込んだ。



407 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:46:06.34 ID:sPEtX9iN0

機体の割れ目のそばに、はがれた紙とノリの跡が残っている。
目の前で泣き喚いている主人の息女が小学生に上がる前、戯れで貼り付けたシールの跡だ。

思えばこの家族には随分と…少なく見積もってもクマ一倍分くらいは苦労させられたが、
もうそんな思いもさせられずにすむのだ。
せいせいすることだな…。

私は静かに座り込み、倒れた機体の傍らで目を閉じようとした。


しかし、奴はいた。

視界が完全に闇に覆われる直前、私はあの忌々しいシカの奴が、こちらをじっと伺っていることに気付いてしまった。

( ・∀・) 「オイ」

(,, Д ) 「なんだ小僧」

( ・∀・) 「お前、自分から落ちたな?」

(,, Д ) 「フン…」



409 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 14:51:50.11 ID:sPEtX9iN0

( ・∀・) 「イタチ…いや、アナログなクマ野郎の最後っ屁ってとこか?
       ま、無機物にとってはルール違反だが、これでテレビもデジタルに買い換えだ。本格的に俺たちの時代だぜ」

(,, Д ) 「だろうな。お前や新しく来た奴らにとっては、大層おめでたいことだ」

( ・∀・) 「なんだつまらん。何を喚き散らされるか期待して待っとったのに」

(,, Д ) 「…」

( ・∀・) 「口を閉じてないで、なんか言ってみろよ」

折角だから小うるさいシカの声が届かない場所で眠ろう。

重い腰を上げ、歩き出そうとしたところを奴に捕まった。
その蹄でどうやるんだか知れないが、とんでもない力で腕を掴まれたために、私はその場を動けなくなった。

(,; Д ) 「離せ貴様」

( ・∀・) 「今目を閉じれば、お前の一生そこでおしまいだぞ。悔しくないのか?」



411 :さるこわい[]:2009/09/27(日) 14:57:51.36 ID:sPEtX9iN0

(,, Д ) 「ない。
      私は最後まで立派に働いて、自ら散ることが出来た。
      悔いは無い」

( ・∀・) 「引き際の潔いことが立派だとか考えてるのか?
       ハッ、だからお前は古いんだよ。何故足掻かない」

(,, Д ) 「足掻いてどうする。

      このまま時が経つにつれ、いずれ私も接触が悪くなるだろう。

      画面にノイズが走り、白黒や砂嵐が増え、
      やがて映らないチャンネルが出てくるだろう。

      私が壊れまい、捨てられまいと、足掻けば足掻くほど…
      見えづらい画面は刻々と、見るものの視力を確実に、奪っていくんだ」



414 :さるこわい(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 15:02:11.61 ID:sPEtX9iN0

(#, Д ) 「人に迷惑をかけてまでだらだらと永らえて、何が家電だ!

      私の、テレビのキャッチコピーは、何だ?!
      "一家に一台"だぞ!

      一家に一台必要な家電が、人の生活に必要な力を奪う道具になってどうする!!

      プラズマテレビの方がクリアに決まってるだろう!
      液晶テレビの方が目に優しいに決まってるだろう!
      アクトビラが使える方が便利だろう!

      整備点検が容易で壁にへばりついているだけが仕事の、貴様と一緒にするな!!!」



(# ∀ ) 「いいかげんにしろ!!!」



417 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 15:06:50.25 ID:sPEtX9iN0

(  ∀ )  「嘘ばっかだ…まだ諦めきれてないくせに…お前だって、まだ稼動しつづけていたいくせに!」

(# ∀ ) 「主人のため、主人のため!?
       そうだよ、俺達は人間のご主人様の役に立つ為に存在するんだ!
       役に立たなければ、立てなければ、用無しだ。使われなくなっちまうだろう。
       みっともなく捨てられるか、物置の肥やしになっちまう。
       そうなっちまえば死んでいるも同然かもしれないけど、だからってなぁ、それだけだぜ!

       死にやしないんだよ!クマはまだ、生きてるんだよ!本当は動けるんだよ!
       お前みたいに、まだ動けるうちから今ある生を放棄するなんてのはなぁ…」

(#・∀・) 「ただの逃げの言い訳に過ぎないんだよ!!!」

(,; Д ) 「…!!!」



420 :っちまうが多すぎた(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 15:13:45.71 ID:sPEtX9iN0

腹の奥底に滞らせていたものが、ずっと見えないように目を背けていたものが、
一気に喉元までこみ上げてきた。

怖いさ。
悔しいさ。
悲しいさ。
寂しいさ。
口惜しいさ。
生きていたいさ。


:(,; Д ): 「だが…」


だが、みっともなくずるずると生にしがみ付いていて何になる?

私はもう古いんだ、皆新製品の綺麗なものが欲しいに決まっている。
私はもう古いんだ、皆高画質の画面が見たいに決まっている。
私はもう古いんだ、皆高機能の機械を使いたいに決まっている。
私は、私は…

:(,, Д ): 「私は、もう…」

誰にも、必要じゃ、ない。



421 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 15:17:37.81 ID:sPEtX9iN0

( ・∀・) フッ

( -∀-) 「間抜けが。
       今の流行はリデュース・リユース・リサイクルで、ロハスなエコなんだよ。
       こんなセレブリティーの家では尚更さ。

       大概の奴らはバラバラにされて服とか新幹線になっちまうが…

       あんたの体はそのままテレビ部品として使えるだろうから、
       運が良ければまるごと再利用…

       シカとしての進化が可能だ」



422 :(,,゚Д゚)移行するようです[]:2009/09/27(日) 15:23:03.48 ID:sPEtX9iN0

(,; Д )そ 「はぁ!?
       んなっ、んなもんなりたいわけあるかー!」

( -∀-) 「まぁそう言うなってw
       シカはいいぜ。衛星経由であらゆる情報を得られるし、なんたってケツがプリティーだからな」

( ・∀・) 「殺すもんか。捨てるもんか。
       簡単に未来をあきらめんなよ。

       あんたはこれからクマじゃなくなるが、
       "優秀な"シカとして一から生まれ変わるんだ。みすみす死なせやしないさ。


       そうだろう、未来の後輩君?」



424 :(,,゚Д゚)移行するようです/終[]:2009/09/27(日) 15:27:23.62 ID:sPEtX9iN0

それは、昭和の頃からご厄介になっている主人の家の、リビングルームの片隅で、

*(;;)*('、`*川 ヨシヨシ   モシモシ ('A`)】

大切に、大切に思ってきた人達の預かり知らぬ、ほんの僅かな時間、


悔しさと悲しさと寂しさと口惜しさと、

間に横入りしてきた希望を胸に、

忌々しい奴に手を取られ、

家電回収業者のトラックが来るのを待ちながら、


私は、

(,,;Д;)( -∀-) ムリスンナヨ オッサン

泣いた。







投下された絵

(,,゚Д゚)( ・∀・)
15_20091004103307.jpg


[ 2009/10/04 10:32 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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