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爪'ー`)y‐ 黒薔薇散らす荊のようです


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:14:05.22 ID:U860QV7b0

顔も知らないとーちゃんかーちゃん、僕を捨てて頂き本当にありがたく御座いません。
教会のシスター、ごめんなさい。僕はもう神様の元へは戻れません。

思えば、難儀な人生だよな。
親の顔なんか知らないうちから孤児として教会に突っ込まれるわ、
教会から引っこ抜かれたと思ったら培養層に詰め込まれるわ、
挙句の果てには僕は人殺しの道具になっちまった。
僕の身はすっかり血に濡れて紅く、闇に染まって黒くなってしまって。
こんな結果、僕は望んじゃあ居ないよ。これっぽっちも、ね。

そうだね、恨むべき相手は、僕をこんな人間にした、あいつら……かな?



86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:17:15.86 ID:U860QV7b0

爪'ー`)y‐「大統領直属特務13課……ですか。
       当主様ったら、すっかり天下取った気になられて」

眺めていた紙切れを、そっと机の上に置く。
それをスイッチに、向こう側に座っていた黒髪の女は口を開いた。

川 ゚ -゚) 「うちの"姫君"が万全な状態になれば、"白百合"の連中などすぐに捻り潰せるのは明らかだろう?
      "黒薔薇"の当主は既に大統領だよ。言うまでも無く、な」

爪'ー`)y‐「あーそー。でも黒薔薇と白百合は何年も統治権巡って争ってるんだろ?それこそ僕らの年より二倍は長く。
       現在拮抗状態のそれがほんの一瞬でこっちに傾くとは到底思えないなー僕」

そう口にすると、女は僅かに眉をひそめる。
僕の言葉に怒りを覚えたのだろうが、口調はそんなものを感じさせない。

川 ゚ -゚) 「現在の拮抗状態はこちらから異能使いが流出してしまったからだろう?
      異能使いが白百合に渡る事が無ければ、既に決着は付いていたはずだ」

流れ出るような言葉。彼女の黒薔薇に対する忠誠心が高い事を、すっかり忘れていた。
適当に同意を打って機嫌をとらないと、説教じみた話に延々と付き合わされることになってしまいそうだ。
僕は慎重に言葉を選んだ。

爪'ー`)y‐「かつて異能使いの力が人間に対し圧倒的なイニシアチブを取ったように、姫君も異能使いに対してそうだって言うのかい?」

彼女の眉間のしわは、目に見えて減ったようだった。

川 ゚ -゚) 「そうだな。何せ当主様が何年もかけて仕込み上げた異能を宿し、それを自在に操るのが我らが姫君。
      私達のような実験的異能を持った異能使いなど、悔しい事だが足元にも及ばない――」

……煽て過ぎも、逆効果って事だねぇ。



90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:19:10.70 ID:U860QV7b0

川 ゚ -゚) 「……ともかく、記念すべき13課初の任務は三日後、白百合の食糧貯蔵庫の襲撃だ」

爪'ー`)y‐「思い切ったねぇ。そこは白百合本部内じゃないか。
       あの超ヤバイ"雷光"シャキンがすぐに出てこられるじゃないか。捨て駒か僕達は?」

川 ゚ -゚) 「それだけ当主様は我々の実力を評価しているという事だ。
      それにシャキンがいくら強かろうと、三人相手じゃ分が悪いだろうよ」

なんという楽観主義。むしろ主君に対する狂信と言うのか、これは。
ここでそれを指摘しても先程のように長時間お説教コース行きである事は目に見えているので、

爪'ー`)y‐「そいつは面白い。当主きってのお墨付きとあれば、やってやろうじゃないの」

川 ゚ -゚) 「珍しくやる気じゃないか。それでこそ黒薔薇の異能使い。
      ジャンクの山の白百合に、優性たる我らの力を見せ付けるぞ」

爪'ー`)y‐(……うまくいった)

女は満足そうに立ち上がり、僕の部屋から出た。
ばたんと扉が閉まる音に合わせて、僕は肺の底から溜息をつく。ぶはー。

爪'ー`)y‐「全く、組織の幹部って何で皆ああも堅っくるしいのかねぇ」

椅子の背にかけてあったコートのポケットをまさぐり、煙草の箱を取り出す。
底を三度ほど指で叩くが、僕のいらいらを静めてくれるそれが出てくることは無かった。

爪'ー`)y‐「……嫌な時に、切らしちゃったー・・・…」



93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:21:45.41 ID:U860QV7b0

仕方なく僕は町に煙草を買いに行く事にした。
立ち上がり、漆黒のコートを掴み、羽織る。
机においてあった薔薇を模した金のバッジを摘み上げ、襟元につける。
これ無しで歩き回ってあの女に見つかった日には何を言われるか予想も付かない。

爪'ー`)y‐(学校の風紀委員か、っつーの……)

がちゃりとドアノブを回し、扉を押すと、そこは赤い絨毯の敷かれた廊下だ。
真っ黒の壁を、天井に等間隔で吊られたシャンデリアが暖かく照らしている。
ここは黒薔薇本部、当主モララーの屋敷。
廊下を歩き、僕と同じ黒衣を着た男女が僕とすれ違えば、必ず向こうは礼をする。
大統領直属特務13課、フォックス。全く僕も偉くなったものだな。

重い扉を押して屋敷から出れば、気の遠くなるほど広い庭を通って門まで歩かなければ街には出られない。
歩きながら空を見れば、暗闇には満月。
上を見ながら歩いていても人一人としてぶつからない。
黒薔薇の者は、夜は大抵事務や訓練で屋敷篭りだ。
金属の門を押して通れば、ようやく屋敷の敷地から出られた。
商店街まで十分。すれ違う人々が黒衣を着て居なかろうが頭を下げるのは、ここが黒薔薇統括の地区だからだろう。
もう少し白百合寄りになると、すれ違いに中指立てられたりして中々面白いんだけど。

そんなこんなで煙草屋を目の前にした。
お辞儀の数は三十辺りで数えるのを止めた。
こんこんと扉を叩く。「開いとるよ」の声を聞いて、僕は扉を開けた。



97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:24:34.63 ID:U860QV7b0
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「フォックスじゃねーか。聞いてるぞ。何か偉い所に配属になったとか」

煙草屋に足を踏み入れて、第一声がそれか。
正直うんざりする所だが、カウンターの向こうで煙をくゆらすオッチャンに悪気は無いだろう。

爪'ー`)y‐「まーねー。何とか特務13課だっけ……?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「大統領直属特務、だ」

爪'ー`)y‐「おっちゃん僕より詳しいじゃーん。僕の代わりに白百合とドンパチかましてきてくれね?」

オッチャンはがっはっは、とひとしきり笑った後で、
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「無理」

爪'ー`)y‐「ま、そーだろうネー。おっちゃん無能だし」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ無能だ。無能な俺……否、俺達に代わって、お前が戦いを終わらせてくれよ。
        黒薔薇が値段見ないで生活必需品買ってくお陰で、俺達市民は超絶物価で生活きついよ。商人は歓喜してるがな。
        勿論、仕入れなんかにも白百合管轄地通るモンは厳しいしな。いっそどっちでも良いから終わって欲しいもんよ」

ふ、と僕の口元から笑みがこぼれた。殆ど無意識に。

爪'ー`)y‐「黒薔薇の僕の前でそんな事言っちゃっていーのかなーオッチャン」
  _、_
(;,_ノ` )y━・~「おっといけねぇ。いつもの奴ただにしといてやるから、見逃してくれや」

オッチャンの放り投げる煙草の箱をキャッチすると、さんきゅ、の一言を残して僕は煙草屋を後にした。



99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:26:35.67 ID:U860QV7b0

爪'ー`)y‐(……そーなんだよねー。僕が生まれる前からモノは高いし仕入れは危ないし。
       フツーの人はどーやって生活してるんだか気になってたもんだなぁ)

黒薔薇と白百合。
何年、何代も続いてきた統治権争いを終わらせたいと願うのは他でもない一般市民だろう。

爪'ー`)y‐(それを長引かせてるのが他でもない黒薔薇当主である可能性がある、ってのが中々複雑だよねぇ)

噂によれば白百合のエース、雷光使いのシャキンは、思想面の相違で黒薔薇を追放された裏切り者らしい。
先日も、まだ幼い異能使いの被験体を二人、投棄したと聞いている。

爪'ー`)y‐(全く後先考えない……否、何考えてるか解らない当主様ですねぇ)

……ま、大義名分は出来たかな、これで。



101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:29:22.49 ID:U860QV7b0

――三日後の夜。
白百合管轄地との境界に、僕達は集まった。

川 ゚ -゚) 「……揃ってるな」

爪'ー`)y‐「君以外に二人だけだろ?見ればわかるもんでしょーに」

この言葉に気分を悪くしたのは僕の隣に立つ女性だ。
赤い髪を肩越しまで伸ばした彼女は奥歯を噛み締め拳を握るが、黒髪の女がなだめると、しぶしぶ従った。

ノパ⊿゚)「……あまり御姉様をバカにするなよ、ピエロ」

爪'ー`)y‐「良い妹さんを持ったね、クー嬢?」

川 ゚ -゚) 「ふざけるのもいい加減にしろフォックス。
      緊張を解きほぐしているつもりなのだろうが、お前のそれは単なる挑発だ。
      ヒートも、こんな安い挑発に乗るんじゃない」

言って、黒髪のクーはコートのポケットから銀色の懐中時計を取り出す。
ちらと見て素早くポケットに叩き込むと、クーは白百合本部の方角を向いた。

川 ゚ -゚) 「時間だ。行くぞ」

言うが早いか、彼女は地を蹴った。
生み出された速度は彼女を弾丸の如く、闇の彼方へ運ぶ。

ノパ⊿゚)「遅れるなよ、フォックス!」

続いてヒートも跳躍。相違があるとすれば、彼女の踏んだ地面が盛大に爆ぜた事だろうか。
爆風に足裏を押されるように、彼女はクーに続いた。



102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:31:49.79 ID:U860QV7b0

爪'ー`)y‐「全く、最近の餓鬼は"能ある鷹は爪を隠す"と言う言葉を知らないから困る」

僕は胸前で両手を交差させると、一気にそれを外側に振るった。
両の袖口から走るのは銀色の鎖。両腕を持ち上げ肘を折ったのを一気に振り下ろすと、銀の鎖は前に飛ぶ。
先端に付いた棘が遠くの地面に突き刺さる手ごたえを合図に、僕は独り言を口にする。

爪'ー`)y‐「行こうか、僕も」

地面と僕。軽いのは僕のほうだ。
故に鎖を巻き戻せば、僕は前進の力を得ることになる。
初期動作として軽く地面を蹴って跳躍すれば、すぐさまそれは滑空と化す。

爪'ー`)y‐「両腕を前に伸ばして飛ぶ様、まさにヒーローだねッハハハハアア!!!!」

風が前髪を後ろに流す。頬を引き締める。黒衣をはためかす。
適当に加速を得た所で両腕を内側に捻ると、鎖は切断される。
引き絞り放たれた矢の如く飛ぶ僕は、間もなくヒートを追い越した。

爪'ー`)y‐「いえーいヒーちゃん見てるー?」

ノハ#゚⊿゚)「フォックス……貴様には負けんぞ!」

ヒートの踏み込みの左脚。
伸び切って体を前に押し運んだ刹那、踏みしめた地面が爆ぜ、推進力を増す。
瞬時に加速を得た彼女は、あっという間に僕を引き離す。

ノパ⊿゚)「追いつけまい?フォックス!」

その台詞すら、遠ざかりにより語尾に近づくにつれ聞き取りづらかった。



103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:34:15.34 ID:U860QV7b0

爪'ー`)y‐「参ったなぁ、まけっちまうよこれじゃ」

別に勝ち負けで何かが決まるわけではないが、あれに負けるのは癪だ。
前を見れば、目標の食糧貯蔵庫……背の低い円塔は目視できる大きさとなっている。

爪'ー`)y‐「多少遠いけど……やってみるか」

後ろに流していた両の腕……袖より鎖が伸びる。
大振りでそれを前に飛ばす。マトは勿論貯蔵庫だ。
伸びる、伸びる、伸びる。放たれた弾丸の如き速度で、貯蔵庫の壁を先端の棘を以って穿たんと伸びる。
僅かにたわむ鎖。続いて感じる手ごたえ。

爪'ー`)y‐(刺さった……!)

鎖をまき戻す。
加速が生まれる。
線の集合体と化すヴィジョン。
髪を、頬を後ろに思い切り引っ張る風。
赤い何かを追い越す。
黒い何かも追い越す。
迫る貯蔵庫の壁。
穿った際に生まれたひび割れすらも、視認できる。

爪'ー`)y‐「YEAAAAAAAA―――HAAAAAAA―――!!!!!」

腕を思い切り上に振って、鎖を千切る。
反動で、足裏が壁の方へ向く。

爪'ー`)y‐「突貫――!!!」



105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:39:14.64 ID:U860QV7b0

僕の踵が壁をぶち破る。
砂埃礫片諸々のカーテンが晴れれば、視認できたのはまた壁。
それが壁だったのも一瞬。踵がぶち破る。空気が少し涼しくなる。
下に鎖を飛ばし、巻き戻せば僕は地面に引き寄せられる。
僕の着地は轟音を伴い、周囲の地面を浅くへこませた。

川;゚ -゚) 「全く、無茶をやる。気づかれたらどうするつもりだ?」

爪'ー`)y‐「僕の本気をクー殿に見せ付けてやろうと思ったら、やりすぎちまった」

ノハ;゚⊿゚)「や……やるじゃないかフォックス……悔しいが、私の負けだ……!」

僕に続いて貯蔵庫の脇から姿を現した二人には、疲れの色が浮かんでいた。
丁度良い。非常に丁度良い。

爪'ー`)y‐「……で、これをぶち壊せば良い訳か。どうやって?」

ノパ⊿゚)「そのために焔使いの私が居るんだろう」

爪'ー`)y‐「成程……氷使いのクー嬢とは相性が悪いと思ってたが、そういうわけで……」

川 ゚ -゚) 「……そうだな。今さっきフォックスがこじ開けた穴から入って、火を放ってきてくれ」

ノパ⊿゚)「わかったぞ、御姉様」

ヒートが、穴から貯蔵庫に入らんと一歩を踏み出す。
僕とクーの距離は、瞬き一回では詰められない。
待ちに待ったチャンス、それがここでやってきた。
右腕に力を走らせる。ここでヒートを殺し、呆気に取られているクーを殺して僕の寝返りは完了。
後は白百合の連中に話をつけるか、それが駄目だったら一人で復讐、やっていこう。



108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:43:02.21 ID:U860QV7b0

ここで僕が使うのは、地面から鎖を生やす能力。
天へ伸びるそれは先端の棘を以ってヒートを下から貫くだろう。
後三歩……二歩……一歩……

爪'ー`)y‐(今!……だ……?)

僕は押し飛ばされていた。
飛んでいる方向と逆を見てみれば、クーの姿。
彼女も僕と同じ方向に飛んでいる。となれば、彼女が僕に跳びかかって押したのか。よく気づいたもんだ。
発動が遅れた鎖は、ヒートの後ろ頭を掠めるだけの結果に至った。

倒れる音が二重に響く。一つは僕で、一つはクー。

川 ゚ -゚) 「何のつもりだ、フォックス!?」

クーは僕の首根っこを掴もうとするが、僕は鎖を後ろに伸ばし、地面に突き刺して巻き戻し飛んだ。
彼女の掴みかかりが空を掻く。
鎖を切り離し、僕は後方宙返りを経て着地する。

爪'ー`)y‐「殺そうとした」

そう口にしたとき、彼女は既に立ち上がっていた。
もう彼女と話すのも飽きた。気分も乗ってきたし、殺っちまうか。
素早く彼女の足元に鎖を生やすが、跳んでそれを回避される。

川 ゚ -゚) 「やる気か。地獄で後悔するんだな、フォックス!
      ヒート!火を放つのは後でで良い!こいつを始末するぞ!」

ノパ⊿゚)「解った、御姉様!」



109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:46:11.99 ID:U860QV7b0

爪'ー`)y‐「ま……僕だって勝算があってやってんだ。君ら程度で僕を……」

僕の腹に向けて放たれた氷の槍は、上に跳び、脚をたたんで足裏を通らせる。
たたんだ脚を伸ばせば、槍を蹴って前方への推進力とする。
右腕に力が走る。

爪'ー`)y‐「殺せると……思うなよッ!」

放つ。走る鎖はクーの額をピンポイントで狙う。

川;゚ -゚) 「くっ……」

彼女はしゃがむことで寸での所で避けるが、

爪'ー`)y‐「この鎖、曲がるよ」

鎖の進路が横にずれる。
真の狙いはこっちだ。自分に攻撃は来ないと予測している――ヒートを穿つ。

ノハ;゚⊿゚)「ちょっ……がぁぁっ!」

成程、中々反射神経は良い。
鎖の先端が此方を向いたのを見て、ヒートはすぐに横に飛んで避けようとしたが、少し遅かった。
結果として僕の鎖は彼女の右肩に当たった。刺さりはしなかったが、彼女はきりもみで後方に吹き飛ぶ。
そして倒れ、肩の傷を押さえ、痛みにうずくまる。
情けは無用だ。左腕に力を宿し、鎖を飛ばそうとする――が

川 ゚ -゚) 「させん!」



110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 01:48:43.05 ID:U860QV7b0

しゃがみこんでいたクーが、僕が頭上を抜けるのにあわせて立ち上がりで頭突きを放つ。
鳩尾にそれを受けた僕は体制を崩し、倒れ姿で着地した。無論、左腕の鎖など放てているわけも無い。
吐き気を催す痛みが腹から湧き上がるが、食いしばってそれを耐え、立つ。

川 ゚ -゚) 「喰らえ……!」

彼女の背後には多数の氷柱が浮いていた。
その先端は何れも僕を向いている。
発射される。

一発目、横跳びで回避。
クーを中心に円周をなぞるように走る事で二発目から五発目を回避。
六発目は僕の軌道上に飛んできた。

爪'ー`)y‐(これは……イチバチだね)

踏む足に力を込める。
狙いは、その氷柱が僕の身を突き刺す前にその軌道を交差して抜ける事。
ひんやりとした空気が圧力として迫る。

爪'ー`)y‐(行け……!)

足が地を離れる。
圧が迫る。
通り――抜けた。
僕が地面に転がるのと同時、足先から少し離れた所にその氷柱は突き刺さった。

川 ゚ -゚) 「残念、もう一発あるんだよ」



113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 02:00:16.05 ID:U860QV7b0

僕の頭目掛けそれは迫っていた。
ただ、敗北の絶望も死への恐怖も感じはしない。

爪'ー`)y‐「イチバチが通って助かったよ」

川 ゚ -゚) 「何……?」

爪'ー`)y‐「僕が迎撃しなかったのはこの為だったってことさ……!」

氷柱を、地面から伸びた鎖が貫く。
先端、中央、後部を同時に貫かれた氷柱は、一瞬にして粉々に砕け散った。
勿論、僕に突き刺さる事も無い。

ただ嫌な予感が過ぎったのは、クーの不敵な笑みを見てからだ。

川 ゚ -゚) 「今だヒート!!溶かせ!」

それは一瞬だった。
一瞬だけ膨大な熱が産まれて、氷の欠片を一瞬で気化させた。
視界の端にヒートを捉えると、その熱を放ったことで彼女は全ての力を使い果たしたようだ。
ぶるっと震えると、全身の力が抜けたようにばたりと倒れた。

爪'ー`)y‐(どういう事だ…… ッ!? そうか……そういう事か……!)

息を吸った途端、その違和感は生まれた。
ウェイトをおいて体を巡る倦怠感。

川 ゚ -゚) 「私はただの氷を使うだけじゃあ、ないってことだよ」



114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 02:03:21.23 ID:U860QV7b0

爪'ー`)y‐「毒……か、これは」

川 ゚ -゚) 「私は氷そのものじゃなくて液体を精製して凍らせることで氷としているわけでな……。
      毒を仕込むなんて面倒な事は、普通はやらないんだが……成程当主様は良く考えていらっしゃるよ」

この毒が回りきるまで、おおよそ後三分。
下がり続ける身体能力で、三分以内にこいつを葬れるか。
葬れても、その間にヒートが回復したら負けだ。

取り敢えずは立ち上がる。
まだ全身に力は入る。まだやれるなら……

爪;'ー`)y‐「逃げ切り大作戦と行こうじゃないの」

両手から闇がこぼれる。
地面に垂れたそれは素早く広域に渡り、蜘蛛の巣のような文様を描く。

爪;'ー`)y‐「行くよ」

蜘蛛の巣は強く黒い光を放つと、掻き消えた。
その代わりに生まれたのが空に開けられた多数の孔。
まずはクーを囲む孔から……鎖が飛び出す。

川;゚ -゚) 「チッ……!」

跳んで避けるが、その先にもまた空中に孔。
飛び出す鎖を、彼女は厚い氷を使って弾いた。
砕け散った氷片を腕で跳ね除け、彼女は走り、孔から、鎖から逃げ回る。



116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 02:06:08.56 ID:U860QV7b0

爪;'ー`)y‐「成程……放って置いても僕はそのうちだめになるから逃げ切り……か。
       僕がそんな事をさせると思ってるのかい?死亡フラグへしおりついでに」

指を鳴らす。それを合図に倒れているヒートを無数の孔が取り囲むと、そこから飛び出た鎖がヒートの体を貫いた。
何度も何度も何度も。或いは念入りに。或いはクーの怒りを駆り立てる為に。
なにぶん遠くの事なので様子はわからない。しかしあれだけ派手に紅いものを撒き散らしてりゃァ……余裕で死んでるでしょう。

川#゚ -゚) 「貴……様ァァァァッ!!!!!!!!」

その効果は顕著に現れる。
彼女は一際大きな氷柱を形成し、僕に飛ばす。
が、それが僕を穿つ事は叶わず。多数の鎖が壁となってそれを凌ぐ。

背後に、着地音を聞いた。
振り向く暇も無い。今日になって始めて死を覚えた瞬間でもあった。

川 ゚ -゚) 「チェックメイトだ、ピエロめ」

首筋に当てられる、氷の刃。
ひんやりとした感触はむしろ焼かれている方に近い。

川 ゚ -゚) 「言い残す事はあるか?」

――言い残す事はあるか?(キリッ)
そのフレーズは、僕の脳に何度も反響する。反響。反響。呼び起こされる――

爪;'ー`)y‐「だってよwwwwwwwwwwwwwwww」

哄笑。



117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 02:10:01.34 ID:U860QV7b0

哄笑、哄笑。笑いが止まらない。
後ろのクーが、半ば発狂状態に至った僕に戸惑っている様子が手に取るようにわかる。
この分なら僕が今袖から右手に落としたものにも気づいてはいなかろう。

川#゚ -゚) 「何が可笑しい!?」

爪;'ー`)y‐「お前の甘さが」

大きく首を逸らせ、右腕を胸前に運ぶ。
そこに握っているのは拳銃。
引き金を引けば、銃弾は氷の刃を砕く。
そのまま、僕の後ろのクーの眉間に銃口を向けた。

爪;'ー`)y‐「僕の本命は、こっち」

乾いた銃声が、クリーンに響いた。
倒れる音には粘着質な音が混じる。

爪;'ー`)y‐「終わってみれば、あっけないもんだなぁ。裏切りなんて。
       弱いし甘いし。黒薔薇さんはもっと殺人道具の教育に力を入れるべきだ……ね……」

そういえば、毒を喰らっていたんだ。
忘れていた体の重みが、思い出した瞬間一気に増したように感じる。
勝手に膝から力が抜け、僕はうつぶせにくず折れた。



118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 02:11:04.46 ID:U860QV7b0

味方を殺しての裏切り。そして、"ピエロ"と称されるその掴みようのなさ。
これが、白百合に寝返った後のフォックスが"血塗られた道化師"と呼ばれる所以である。

― 爪'ー`)y‐ 黒薔薇散らす荊のようです Fin.







119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/23(水) 02:12:41.58 ID:U860QV7b0

テラ中二wwwwwwww一回寝て起きてこれ読んだら俺は間違いなく発狂するwwwwwwwww
感想批評等あったら喜びます

お題
大統領直属特務13課
血塗られた道化師
焔使い
氷使い
死の霧←回収率低い
闇に染まる
血の弾丸←回収率低い



[ 2009/09/23 15:20 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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