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( ・∀・)無題('A`)


157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:05:16.22 ID:FlW0gxJT0


よぉ、と手を上げた彼は酷く衰弱しているように見えた。
学生時代、それなりに人気者だった彼のそんな姿を見るのは少し残念で、そして少しいい気味でもあるように感じて、僕は曖昧に微笑んだ。

( ・∀・)「悪いな、こんな汚い部屋でさ」

山積みになったコンビニ弁当の箱を横に避け、モララーは僕を座るように促した。

('A`)「いいさ、っつーか僕の部屋も大して変わらんよ」

( ・∀・)「はは、お前は相変わらずイイヤツだなあ」

にやっと笑い、肩に手を回す。
やけに骨ばった、まるで骸骨のような手だ。
学生時代、確かに彼は線が細い感じではあったが、それなりに筋肉質だったのに。

( ・∀・)「突然呼んだりして、悪かったな」

('A`)「気にするなよ」

彼から連絡があったのは、3日前のことだった。
正直学生時代、そこまで仲の良く無かった彼から連絡があったときは驚いた。
家に来てくれないかと言われたときもまたしかりだ。
最近ではメールなんかもやり取りした覚えはなかったと言うのに。

最初は断ろうと思っていた僕だったが、電話越しの彼の声が
あまりにも切羽詰っているように聞こえて、断りきれなかったのだ。



158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:06:01.30 ID:FlW0gxJT0

僕が電話口で説明された住所を頼りに、彼の家へとたどり着くと
そこは学生時代の彼のイメージにそぐわない綺麗なマンションだった。


( ・∀・)「最近外に出て無くてさ、こんなもんしかないんだけど」

('A`)「あ、ありがと」

そういって煌びやかな外見からは裏腹に、しなびた茶葉をお湯に浸したものを僕に渡してくる。
僕はとりあえず受け取ったが、口をつけようとは思わなかった。

('A`)「ところで、どうして急に僕を呼んだりしたんだ?」

( ・∀・)「うん、ちょっと聞いてほしいことがあってさ」

ニヤニヤと、気味の悪い笑みを浮かべながら近付いてくる。
僕はなんとなく嫌な予感がして、飲みもしないのに湯飲みを握り締めた。
じっとりした汗が肌にまとわりついてきて、嫌な感じだ。

( ・∀・)「このあたりにさぁ、赤子池ってあるだろ?」

('A`)「ああ、僕はあんまりこの辺については詳しくないんだけど…そこなら知ってる」

なんでも、戦争時代食うに困った人たちが口減らしに殺めた赤子を
その池に沈めたとかで有名な話だ。



159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:06:43.31 ID:FlW0gxJT0

以来その池は赤子池と奇妙な名前がつき、夜には赤ん坊の泣き声聞こえるとか
近付いたら赤子と同じように沈められるとかで、滅多に人は近付かないとされているのだそうだ。

('A`)「そこがどうかしたの?」

( ・∀・)「この間ね、彼女がその池にちょっとした興味を持っちゃってさ、肝試しがてら行ってみたんだよ」

(;'A`)「え…」

僕は背中にじわりと汗が浮き出てくるのを感じた。
キィンとした耳鳴りが響く。

だって、あの池には色々な噂が飛び交っているけれど、とにかく「誰も近付かない」が第一とされているのだ。
たまに肝試しで近付く輩もいるそうだけど、僕には理解できなかった。

(;'A`)「だ、大丈夫だったの?」

( ・∀・)「…………」

その問いに彼は答えることはなかった。
ただ、真剣な表情になったかと思うと、俯いて呟くように言葉を続けた。

( ・∀・)「俺はさ、別に大して行きたくなかったんだよ。
     ただ彼女がどうしても行きたいって言うからいったんだ」

(;'A`)「うん…」

そういって、聞いてもいないのに、モララーはそのときのことを唐突に語り始めた。



160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:07:54.10 ID:FlW0gxJT0

彼の口調はやたら静かで、それが返って不気味に思える。

( ・∀・)「彼女とはその池に車で行ったんだけどさ、あそこって森だろ?
     で、やたら草木が伸びまくってるから、途中まで行って車を降りたんだ」

そういえば、赤子池は森の中にあると聞いたことがある。
僕は近付いたことすらあまりないからわからないけれど、彼の口ぶりから察するに相当鬱蒼としていたのだろう。

( ・∀・)「で、車を降りたんだけどさ、普通、夏だったら虫とか飛んでるだろ?鳴き声も聞こえるだろ?
     でもな、まったく聞こえなかったんだよ」

(;'A`)「え…?」

( ・∀・)「しかも耳元でなんか変な音がするんだ、…ぐわんぐわんってすすり泣くような。いやあな音。
     耳鳴りっつーのかな。俺は嫌な予感がしてさ、彼女に言ったんだ。帰ろうぜって」

('A`)「で、帰ったの…?」

( ・∀・)「いや、そしたらバカにされるような顔されてさ、ムカついたからさらに奥に進んだんだ」

僕はその情景を頭に思い浮かべる。
暗い森の中、虫の泣き声一つしない森を進む、2人の男女。
森の奥にあるのは、一体なんなんだろう。



161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:09:09.96 ID:FlW0gxJT0

気がつけば喉がからからに渇いていて、僕は手に持っていたお茶を一口、口に含んだ。
不味いハズなのに、味は不思議と感じなかった。

( ・∀・)「歩いていくにつれ、段々と森が深くなってな、さらに耳元の声も大きくなっていったよ。
     正直もうたってられないくらいの耳鳴りだったって、今になって思うんだ」

(;'A`)「帰ればよかったのに…」

( ・∀・)「…最初俺はね、あの池にまつわる噂ってのは信じてなかったのよ。
     だってよくある話じゃん?それにプライドだってあったんだ」

ククッと含んだように笑う彼は、やはりどこか覇気というものが感じられなかった。
僕はやけに背後が気になって、理由もなく辺りを見回した。
…何も、ない。何もないはずなのに、なんだろうこの嫌な感じ

( ・∀・)「だから、さらに奥に進んだよ。そしたら、赤子池にたどり着いた。
     思ったより小さな池でさ、水面に浮かぶコケとかのせいで濁った緑色だった。
     ホラ、小学生の時育てたザリガニいるじゃん?あれの水槽みたいな感じ。
     とにかく緑で、底が見えないんだよ」

僕はどろどろとした藻で池どころか一面が暗い緑である様を想像した。
ところで、さっきからざわざわと背筋が寒くなるのは気のせいだろうか。



162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:09:58.51 ID:FlW0gxJT0

( ・∀・)「これで用は済んだとばかりに、俺は彼女を振り返ったよ。もういいだろ、帰ろうってね。
     そしたらさ


     彼女が  いなくなってた」




(;'A`)「……」

( ・∀・)「変だよな、一緒に来たはずなのに、いつの間にかいないんだもん」

赤子池に近付いた人は、一緒に池に沈められる。

( ・∀・)「俺は自分が目を離した隙に先に車に戻ったのかと思ったんだけど、でもそれは違ったんだよ。

     聞こえたんだ、赤ん坊の泣き声と」

(;'A`)「…っ!」

赤子池に近付いた人は、赤ん坊の声が聞こえてくる。

( ・∀・)「一度聞こえたら、後はもうずっと耳に鳴りついて離れない、まるで産声みたいな可愛い声から
     すすり泣くような声、大泣きする声、ああ、笑い声なんてのもあったな」

森に一人、目の前には不気味な池、そしてそんな中聞こえてくる声。
普通だったら気が狂うはずだ。



163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:11:31.91 ID:FlW0gxJT0

この話を聞いている僕ですら、さっきから鳥肌が収まらない。

( ・∀・)「気が狂うかと思ったよ。とにかく半狂乱になって、俺は逃げた。
     逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、ようやくこのマンションに帰った時には震えが止まらなかったよ
     もうそのときには彼女のことなんて忘れてたし、今となってはどうでもいい」

それからかな、ご飯を買う以外は家を出ないんだ、とモララーは続けた。
不健康な白さとすっかり筋肉の落ちた体は、どうやらそれが原因のようだった。
僕は肌に張り付くシャツを不快に思いながらも、彼に問いかける。

(;'A`)「で…ど、どうして、それを僕に言うの…?」

にんまり笑う。
彼は僕がこのマンションにきてから笑ってばかりだ。
まるで獲物がかかった蜘蛛のように。

( ・∀・)「…家に帰ってからも、赤ん坊の声が聞こえてくるんだよ
     あーんあーんって、まるで母親を探すような声が。
     それでね、バカにしてたけど、あの池にまつわる噂を調べてみたんだ」

ふいに、モララーの腕が僕の肩に伸びてきた。

(;'A`)「えっ…!」

僕がその動作に反応する真もなく、ぐいっと顔を近づけられ
どこにそんな力があったのかと聞きたくなるような物凄い力で押さえつけられた。

(; A`)「いっ…!」



165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:12:34.79 ID:FlW0gxJT0

( ・∀・)「そしたらさぁ!そしたらさぁ!あったんだよな、赤ん坊の泣き声が聞こえる噂!」

(;'A`)「な、何…」

( ・∀・)「ドクオ、お前さ、いいやつだよね、人に頼まれたらうんとしか言えないタイプだったよね、俺知ってるんだぜ?」

ニヤニヤと、嫌な笑いで息を吹きかけてくる。
やめろ、その先を言うな。
僕は逸る心臓を押さえながら耳を塞ぎたい衝動に駆られたが、モララーの手がそれを許さなかった。

( ・∀・)「ドクオ、お前さ、俺の話を聞いてるときに何を想像した?森?池?
     はははっ、この赤ん坊の声ってのはさ、どうやらその池を知ってる奴のところにしか聞こえないらしいんだよな!
寂しいんだってよ、こいつら!だから、自分達を少しでも考えてくれたやつのところにくるんだって!笑っちゃうよな!」

押し付けられた頭が痛い。
ぐわんぐわんと耳が痛い。

( ・∀・)「その池をイメージした奴、赤ん坊の声が聞こえる形を想像した奴のところに、この赤ん坊の声が聞こえて来るんだよ!」

(; A )「あ、ぐうう…」

僕は耳を押さえた。いや、押さえたかった。
しかしその前に、聞こえてしまったのだ。



166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:13:13.59 ID:FlW0gxJT0






――――――――あーん…あーん…

(; A )「ひっ…!」

体中に怖気が走るのを感じる。
怖い。
怖い怖い怖い怖い!

赤ん坊の声が、泣き声が、僕の耳に座わざわざわと鳴り止むことなく響いてくる。
部屋全体が冷たく感じて、僕は目を開くことができなかった。
嫌だ、やめてくれ!僕はこんな声なんて聞きたくない!

怖いよ、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!誰か助けて!

( ・∀・)「あは、あはは!怖いだろ?俺も怖くてさ!だからお前を呼んだんだ!
     この話を聞いてくれそうな、お人よしのお前をさ!あはははははははは」

モララーは笑っている。
心底愉快だと言うように、笑って、僕を押さえつけている。

その姿に、僕は目の前が真っ白になった。

(# A )「こ、の、野郎ー…!!!」



177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:40:39.80 ID:P+hqQUZgO





















178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/07(木) 01:41:54.31 ID:P+hqQUZgO

それから、僕は部屋から一度も出ていない。
部屋の外に出ても出なくても常に声が聞こえてきて、周囲に狂人扱いされるのは目に見えているからだ。
最近は食事すらまともに取らなくなってきた。
近くに横たわっている彼から虫が沸いてきて、部屋は嫌なにおいが充満している。
嫌なにおいに、嫌な声、もしかしたら僕はとっくに狂ってしまっているのかもしれない。
僕は今、あの声に耐えながらこれを掲示板に書き込んでいる。
もしもこの話を読んで、情景を想像してしまった人がいたなら、気をつけた方が良いかもしれない。
油断をしたら、僕と同じように、声が聞こえてくるかもしれないから。

耳を押さえても無駄だと思う。
目を瞑っても無駄だと思う。
後ろに何かいるような気がしたときは要注意だ。
だって、赤ん坊は寂しがりやだから、自分に気づいてくれた人に寄って行くんだ。
ほら
    また声  

           が 





[ 2008/08/11 10:09 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
南無三
[ 2009/09/15 20:01 ] [ 編集 ]

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