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中毒のようです


445 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/08/19(水) 17:21:58.84 ID:r8yKU5iB0

ヴン

鈍い起動音がして、ディスプレイに光が灯る。
また兄者がパソコンを始めたようだ。


( ´_ゝ`)中毒のようです


(´<_` )「何だ兄者、またパソコンか?」

( ´_ゝ`)「…あぁ。弟者も見るか?」

(´<_` )「見るよ」

兄者の腰掛けた椅子の傍ら、パソコンの斜め前が俺の定位置だ。
画面を覗き込めば、兄者がインターネットブラウザを起動させるのが見える。
今主流のタブブラウザではなく、一つ一つ画面が開くタイプのかなり古いやつだ。

サイト巡りをするたびにサイトから新しいブラウザを勧められるので、
一度くらいインストールしてみたらどうだと提案してみたことがある。
その時の兄者は少し考え込んでいたが、結局首を横に振ってそのままだった。

(´<_` )「今日はどこから回るんだ?」

( ´_ゝ`)「そうだな、例のまとめサイトから行くか」



446 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:22:40.30 ID:r8yKU5iB0

(´<_` )「相変わらずクオリティが高いな、このブログは」

( ´_ゝ`)「俺のレスが載ってない…」


(´<_` )「ここまで引っ張っておいて…」

( ´_ゝ`)「釣りスレ…だと…」


( ´_ゝ`)「OK、127ゲット」

(´<_` )「流石だな兄者」


( ´_ゝ`)「…ちょっと腹筋してくる」

(´<_` )「5024回もか?」

兄者の見るサイトは、俺にとってもそれなりに面白い。
最もこれは、俺のネタの好みが兄者に多少似たせいかもしれない。
双子というのは好みも似るものなのだろうか。

コピペやスレをまとめたブログを巡り、時には現行のスレを覗く。
兄者がレスの一つ一つにいちゃもんをつけ、俺がそれにツッコミを入れる。
規制を食らって歯噛みする兄者を、俺が笑う。

何だかんだ言いつつも、俺はこの時間を楽しんでいた。



449 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:23:41.42 ID:r8yKU5iB0

スレを巡っている中で、ふと画像のものらしきURLを見つける。
それまでのスレの流れ的に恐らく兄者好みのお子様お断り画像であろう。
そう、素直に見れば。

(´<_` )「画像だぞ、兄者」

( ´_ゝ`)「ん?…あぁ」

返事を返す兄者。
しかし画面の中のポインタはその文字列に重ねられることすらなく、
そのまますいと横のスクロールバーを引き下げていった。

(´<_` )「?開かないのか」

( ´_ゝ`)「ブラクラかもしれんしな」

(´<_` )「何を今更」

最近はこういう事が多い。
以前ならば俺が指摘する前に飛びついて大抵ブラクラを踏み、
そうでなければ精神的なほうのそれに見舞われ、
時に毒にも薬にもならぬ画像に溜息をつき、
ごくごく稀に珠玉の一品を手にしていた兄者だが。

(´<_` )「その時は再起動させればいいだろう。最悪、リカバリだってあるんだから」

( ´_ゝ`)「……俺は大人になったのさ弟者。君子危うきに…えーと、なんとやらだ」

大人になったというならせめてことわざぐらい最後まで言えて欲しいものだ。



450 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:24:50.08 ID:r8yKU5iB0

随分と時間が経ったが、兄者は未だパソコンの前から離れない。
たまに手洗いに立つくらいで、すぐに駆け戻るようにして帰ってくる。
疲れないのだろうか、と思いもするがまぁ限度が来れば自分で休むだろうとも思う。

(´<_` )「そういえば腹は減らんのか、兄者」

( ´_ゝ`)「む、ネットしてると食欲なんぞ忘れてるからな…お前はどうだ、弟者」

(´<_` )「特には」

( ´_ゝ`)「…そうか」

(´<_` )「お菓子のサイトでも見てみるか。減るかもしれんぞ」

( ´_ゝ`)「スイーツ(笑)」

その話題はそこで終った。
しかしそれからしばらくして、部屋の入り口から小さなノックの音が響く。

(´<_` )「む、何か用事か?俺が…」

( ´_ゝ`)「俺が出る」

兄者は言うなりドアの方に大股で歩いていくと、そのまま外に出た。
それから話し声がするが、内容までは聞き取れない。
ぼんやりと待っていると、ドアの閉まる音に引き続いて兄者が戻ってきた。

手にはいくつかのサンドイッチの乗った皿。歪だがなかなかに具沢山で、厚みがある。
気を利かせた母者か姉者が夜食を拵えてくれたのだろうか。
いや、ひょっとしたら父者かもしれない。



452 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:26:35.25 ID:r8yKU5iB0

(´<_` )「美味そうだな。母者か?」

( ´_ゝ`)「いや、妹…」

言いかけ、ふと口を噤む兄者。
その言い間違いに、申し訳なくも俺は笑った。
まだよちよち歩きを始めたばかりの妹の姿を脳裏に描きながら、口に出す。

(´<_` )「妹者にはまだ無理だろう。何歳だと思ってるんだ」

( ´_ゝ`)「…ああ、そうだな。姉者と間違えたよ」

パソコンの横に皿を置き、兄者は再び椅子に座った。
サンドイッチの一つを手に取り、ぱくつきながら再びパソコンを再開する。
行儀が悪いぞ、とからかいながらも俺も再びディスプレイに目を移した。


さて、それから一体何時間経ったのだろうか。
パソコンに表示される時計は日付からして狂っているので分からないが、
何となく丸一日近い…下手をするとそれ以上の時間を消費しているような気がする。

その間、ずっと兄者は同じようにネットを回り続けていた。
たまにサンドイッチをつまみ、時折手洗いに立つ。

見るサイトは豊富にあるし、時間が経てば新しく更新されていたりもする。
だから俺達が話すネタに困ることは特に無かったのだが、
流石にこれだけ長時間パソコンを弄っている姿を見ると、多少心配になってきた。

(´<_` )「兄者、そろそろ休んだ方が良いんじゃないのか」



454 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:27:38.05 ID:r8yKU5iB0

少しの間があった。
やがて振り向いた兄者の顔はディスプレイの光を差し引いても些か血色が悪く、
やはり貫徹の影響が蓄積されているんだろうと推測出来た。

( ´_ゝ`)「…む、何を言う。これしきのことで疲れるほど俺はやわじゃないぞ弟者」

目の下に疲れを溜めて何を言う。

( ´_ゝ`)「緩急つけてこそ生活だ。休むときは休むが、これくらいならまだまだ」

(´<_` )「しかし俺はここしばらく、兄者が休んでいるのを見た覚えがないのだが」

( ´_ゝ`)「………これでもちゃんと寝てるから心配するな」

(´<_` )「いつ休んでいるんだ?殆どずっと、この部屋にいるのに」

そしてこの部屋では、ほぼ常にパソコンが点いている。
パソコンが点いているときは、大抵兄者はその前に座って画面を眺めている。
どこからどう見ても立派な中毒だ。

そもそも俺から見る限りの兄者の生活状況は明らかに立派なひきこもりな訳だが、
まぁそれについて今更どうこう言うつもりはない。
しかし健康に関わる事となれば、また話は別である。

(´<_` )「いつも俺がいる時にはパソコンやってるだろう。
俺も楽しいし別にそれが悪いとは言わんが、睡眠不足は良くないぞ。
しかし本当にいつ寝ているんだ?この部屋に寝る場所なんて―――」

(  _ゝ )「弟者!」



455 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:28:38.88 ID:r8yKU5iB0

(´<_` ;)「ぬお。どうしたいきなり」

( ´_ゝ`)「……あぁ、いや、悪い。確かに疲れてるみたいだな、うん。休むよ」

(´<_` )「おぉ、そうか。それがいいぞ。パソコンはまた、ゆっくり休んでからやればいい」

兄者はいくつか開いていた窓を閉じ、パソコンを終了させ始める。
知らされていた更新をインストールする手順を踏み、終了の命令を出して席を立った。
更新の分のタイムラグは多少あるが、やがて問題なく閉じるだろう。

兄者が部屋のドアに向かう。
その背を目で追う俺に、兄者が振り返った。

( ´_ゝ`)「弟者」

(´<_` )「ん?」

( ´_ゝ`)「俺は今からちゃんと「休む」からな」

(´<_` )「?あぁ」

( ´_ゝ`)「次パソコンする時は、休んだ後だからな。心配すること、ないぞ」

(´<_` )「そうだな。その時はまた見るとしよう」

( ´_ゝ`)「あぁ。見に来い」

兄者の言っていることの意味は良く分からなかったが、休んでくれるならまぁいい。
静かな室内に、パソコンの処理音が響く。
横目で見たディスプレイがインストールの終わりを告げ、今度こそパソコンが終了する。



457 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:29:21.81 ID:r8yKU5iB0

(  _ゝ )「見に来いよ」

兄者?
何で泣い


ヴン








458 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:30:52.38 ID:r8yKU5iB0

弟者の姿が、パソコンの画面と共に掻き消える。
さっきまでは確かにそこにいた。下らない話を飛ばし合っていた。
けれど今部屋に立つのは、自分だけだ。

( ´_ゝ`)「……」

ドアを開け、部屋の外に出る。
廊下の窓から、眩いほどの日差しが差し込んでいた。
もう、朝だ。カーテンもドアも閉め切った部屋では、全く分からない時間の感覚が身に沁みてくる。

風呂も入っていないが、せめて顔を洗ってから寝よう。
そう思って、のろのろと廊下を歩く。
洗面所まで歩みを進めたとき、そこから出てきた影に軽くぶつかった。

l从・∀・ノ!リ人「あにじゃ!おはようなのじゃ!」

( ´_ゝ`)「ああ、おはよう。早いな、妹者」

l从・∀・ノ!リ人「もう八時なのじゃ。そんな早くもないのじゃ」

( ´_ゝ`)「あ、そうなの?」

壁に掛けられた時計を見れば確かにその通りだった。
パソコンを始めたのが昨日の朝六時くらいだから…二十六時間やっていたことになる。

ネット廃人に比べれば大したものではないのかもしれないが、
やはりしがない一般人にはキツいものがある。
しかし、やめる気は起きない。



463 :中毒のようです ごめんさるってた[]:2009/08/19(水) 17:37:35.10 ID:r8yKU5iB0

l从・∀・ノ!リ人「あにじゃ、目の下まっくろなのじゃ。あれからずっと起きてたのじゃ?」

( ´_ゝ`)「まぁな。おはようって言っといて悪いけど、今日はこの後ちょっと寝てくるよ。
      夕方までには起きてくるから」

l从・∀・ノ!リ人「よふかしさんなのじゃ」

返す言葉もないな。
ぼんやりした頭でそんな風に考えていると、後ろから入ってきた影に頭を小突かれる。

∬´_ゝ`)「休みだからいいけど、あんま無茶ばっかしてんじゃないわよ」

( ´_ゝ`)「む、おはよう姉者」

∬´_ゝ`)「おそよう愚弟。酷い充血と隈ね」

( ´_ゝ`)「二十六時間戦ってきました」

∬´_ゝ`)「バカよあんた。朝ご飯食べないの?」

( ´_ゝ`)「今はもう何も考えず眠りたい。でも顔は洗う」

∬´_ゝ`)「あっそ。じゃあさっさと顔洗って寝てきなさい。
母者と父者には私から言っておいてあげるから。夕方には起こすわよ」

( ´_ゝ`)「謝々」

∬´_ゝ`)「中国語選択乙」



465 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:38:20.53 ID:r8yKU5iB0

自分の部屋に戻り、布団に埋まる。
直ぐに訪れるかと思った眠気だったが、不思議と目が冴えてしまっていた。
こんなんならもう少しパソコンしていても良かったかもしれないなと思う。

枕元に置かれたデジタル時計が示す曜日は、日曜日。
授業のない土曜日とはいえとんでもないひきこもりと夜更かしをした挙句
日曜日の半分以上を寝て過ごすという堕落した休日の潰し方など、
昔ならば母者の鉄拳が飛んでいてもおかしくはなかった。

しかし、今はそれを叱られることは殆どない。
家族は皆、こう思ってくれているのだ。

六年前に双子の片割れ―――弟者を失った俺。
そんな俺が唯一没頭出来る趣味が、弟者と共にしばしば行っていたパソコンいじりなのだと。
いわばちょっとした心の慰めのようなものなのだと。
そんな風に。

喪失の痛みを同じように抱えた家族だからこそ。
俺が週か半月に一度、徹夜でパソコンの部屋に篭るくらいは容認してくれている。

俺の方の実情は、そういった家族の優しさとは多少ズレたものであったのだけれど。


きっかけは覚えていない。
弟者がいなくなったという現実を見たくないとか、そんな大層なものでは無かったと思う。
ただ何となく、一人パソコンの電源に触れた。
途端、ディスプレイの明かりに照らされる俺とは違うもう一つの影。
腰を抜かしかけた俺を不思議そうに見て、見知った姿は当たり前のように口を開いた。

(´<_` )「何だ兄者、またパソコンか?」



467 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:39:27.25 ID:r8yKU5iB0

それから六年、あの古いパソコンを立ち上げている時だけ弟者はあの部屋に現れる。
弟者の記憶は中学生の時のままだ。自分がどうなっているのかも、きっと知らない。
ただパソコンを開いている間に見たことや話したことは残っている。

話の流れが不自然になることも何度かあったが、
その辺りは色々誤魔化しながら六年という歳月を過ごしてきた。
最も俺の六年間全てではないし、弟者にとってはもっと短い時間なのだろうけど。

部屋に入り浸り、パソコンだけを続けることは流石に出来なかった。
母者は生活態度については殊に厳しいし、俺にも日常のごたごたがある。
俺が不真面目を働いて、パソコンを捨てられ…はしないだろうが、隠されでもしたら。
そちらの方が俺には怖かった。

事情を説明することも出来なかった。
弟者は俺以外が部屋にいると現れない。そして、部屋から出ることもない。
俺だけが弟者の存在を知っていた。


あの頃まだ中学生だった俺達。
俺だけが高校生になり、そして大学生になった。
よちよち歩きだった幼い妹者は家事の手伝いをしたがる立派な小学生になり、
あの頃高校生という限りない大人に見えた姉者は、社会人として働き出して更に大人びた。

( ´_ゝ`)「…でも、お前は知らないんだよな」

弟者の時間は六年前で止まっている。その姿も。
寸分違わず同じであった筈の背は、気づけば俺の方が頭一つほど上回っていた。
今では双子というよりも、ただの兄弟にしか見えないだろう。
けれど弟者は何も言わない。気づいていないのか、それとも。



468 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/08/19(水) 17:41:26.65 ID:r8yKU5iB0

何かを聞くことも、真実を伝えることも怖かった。

( ´_ゝ`)「実は弟者、お前もう死んでるんだよ」

(´<_` )「MJD?じゃあ成仏するわ」

そして次の瞬間には俺と古ぼけたパソコンしか無い部屋が残るのだ。
まるで最初から何も無かったかのように。
そんなことになったら俺は、多分笑えない。

それどころか、実はあの弟者の存在自体が俺の妄想だとしたら。
俺と見たもの、話したものしか新しい記憶を積まないあの弟者。
そうでないという保証がどこにある。

( ´_ゝ`)「…だから俺は、聞かないし…言わない」

何度も覚えた不安が懲りずに沸き起こるのが嫌で、布団を被る。
さっさと眠ってしまいたかった。
眠って、それから日常を始めて、その忙しさで色々考える暇も無くなればいい。

そしてまた休日が来たら、あの部屋に行ってパソコンを点ける。
それからネットを繋いで、弟者とバカな話をしながら盛り上がったり盛り下がったりする。

失ったと思っていたものが得られた。
何より掛け替えの無かった、下らない会話が出来る。
それでいいんだ。それだけで、いいんだ。


俺は変わることが、恐ろしい。



473 :中毒のようです[]:2009/08/19(水) 17:45:34.65 ID:r8yKU5iB0

ヴン

鈍い起動音がして、ディスプレイに光が灯る。
その前の椅子に腰掛ける姿は、確かにちゃんと休んだようで顔色もいい。
やれやれ、一安心だ。

俺はその傍らに近づき、画面を覗き込む。
そして言うのだ。

(´<_` )「何だ兄者、またパソコンか?」






(´<_` )中毒のようです

おしまい


[ 2009/08/19 22:34 ] 総合短編 | TB(0) | CM(2)

パソコン中毒と思ったが… 弟者中毒か?
[ 2009/08/20 14:29 ] [ 編集 ]

中毒つか依存?
[ 2010/06/06 23:03 ] [ 編集 ]

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