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( ^ω^)ブーンと  殺人者のようです


331 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 14:45:02.73 ID:7tS7ZEub0

胸を強く押さえた手に、感じるのは生暖かい液体の感触。
焼け付くような熱さが胸元から前身にじわじわと広がる。
冷たいナイフが、それよりも冷たい表情を顔に宿した誰かが、こちらを射抜くように見つめる。

目が霞む。痛い。そして何より一番寒い。
足の力が抜け落ち、僕はなす統べも無くその場に膝をついた。
嘲笑の笑みは見て取れなかった。憤怒でも、悲しみでも、嘲りでもなく。
ただひたすらの無表情。体中に広がる死の感覚と、目前の「殺人者」への恐怖が頭を支配する。

僕は――死ぬのか?

口は開かない。イメージだけが頭にとどまり、そのイメージが電気信号となって、喉を震わすことは無い。
それでも「殺人者」は無表情のまま、無表情な声で僕に語る。
頭の中を見透かしたかのように。

「怖いか?」

肯定も、否定すらもままならない。
足元の血だまりに顔をうずめ、僕は小動物のように体をふるふると震わせる。
ああ、僕は今、惨めだな。



332 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 14:46:37.57 ID:7tS7ZEub0

「怖いだろうな――」

くつくつと喉元から笑いが漏れるのが聞こえる。
首も動かない今の僕には彼の表情を窺い知ることは出来なかったが、少なくとも彼は微笑を顔に浮かべてはいないだろう。
作り物のような、形だけの笑いが響く。

薄れゆく意識の中で、「殺人者」が何かを語っているのが聞こえた。
しかし全身を疲労と倦怠感で支配され、聞くことも億劫な今の僕には、なんだか御伽噺のように頭に入り、消えていくだけだった。
「殺人者」の語りが終わり、彼は一間置く。

「397回目に――」

「殺人者」は言う。

「また、会おう」

意識は、落ちる。



333 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 14:47:20.22 ID:7tS7ZEub0





( ^ω^)ブーンと 殺人者のようです。







334 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 14:49:36.50 ID:7tS7ZEub0

( ^ω^)「おっおっ、クーにゃんおはようだお!」

川 ゚ -゚)「おはようブーン」

朝、活気溢れる教室に僕は悠々と入る。
出迎えてくれたのは窓際で静かに本と対峙している彼女、クーだった。
容姿端麗、成績優秀である彼女はなぜか僕の彼女であった。

クラス、否、若しくは学校中のアイドルである彼女と交際をしているわけだから、普通多くの人に妬まれる結果となるだろう。
しかし元々明るい性格として自負できるほどポジティブな僕には、妬みなど関係の無いことだった。
寧ろさらに名前が知れたことで、友達が増えたくらいかもしれない。

最初であったときからつんけんとした態度であったクーは、今のような近しい関係を持っても振り回されることがある。
言いたいことははっきりと言う。しかし僕はそこに惹かれたのであり彼女の一番良い所であると思う。
兎に角。今僕は、幸せだ。



335 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 14:51:01.91 ID:7tS7ZEub0

( ^ω^)「そういえばクーにゃん、今日は変な夢を見たんだお」

川 ゚ -゚)「どんな夢なんだ?」

( ^ω^)「よく覚えてないけど……確か誰かが誰かに殺される夢だったお」

川 ゚ -゚)「それはまた物騒な夢だな」

( ^ω^)「だおwwww」

川 ゚ -゚)「もしかしたら殺す側がブーンで、殺される側がドクオかもな」

(;^ω^)「クー、そんなこと言っちゃ駄目だお!」

川 ゚ -゚)「別にいいだろう。私はあいつが嫌いなんだ」

そういって彼女は遠くの席のドクオを睨む。
机の上にされた落書きを見つめながら、ドクオは悔しそうに俯いていた。
ドクオはいじめられっ子であり、クーのストーカーだった男だ。
陰湿な気質が災いして、彼はDQNにいじめられることが多いようだった。

当初はそんなに酷いものでもなかったのだが……僕はあの日をゆっくりと思い出す。
クーに襲い掛かった日。忘れもしないあの日から、ドクオはさらに迫害される身となった。
クーはその事件のせいでドクオを忌み嫌っている。僕も彼が好きなわけではないのだが、ここまでやるのは酷いのではないか、と薄々思っていた。

それでも言えないのは、やっぱりDQNたちの怒りの矛先が僕に向くかもしれないからだろうか?
結構なエゴだな、と嘆息しながら僕はクーと他愛の無い会話を取り交わす。
ときたま、ドクオの恨めしそうな視線を背中に感じながら。



336 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 14:52:22.71 ID:7tS7ZEub0

…………

……





午前中の授業が終わり、僕はクーと一緒に食堂に向かっていた。
この学校では食堂で学食を買って食べることが義務付けられている。
一応購買部も存在するのだが、学食のほうが値段も安く量も多いので購買はおやつ程度に考えられることが多い。

それに中々美味いので、学生からは好まれている。
だけどたまにはクーの手作り弁当でも食べたいなぁ、などと妄想していると、廊下でモララーに鉢合わせした。

( ・∀・)「やあ、ブーン。今日もクーお嬢と一緒に食事か。うらやましくて反吐が出るよ」

( ^ω^)「おっおっ、モララーも彼女さっさと作れお」

( ・∀・)「そんな簡単に言うなよ」

つんとふてくされたようにモララーは言うが、目が笑っている。
モララーとは中学の頃からの付き合いなので、結構仲が良かった。
たまには一緒にどうだお? と声を掛けるが、今日は約束があると断られてしまった。

成績優秀、さらには文武両道、止めにイケメンと来たモララーは、誰からも好かれるいい奴。
クーの恋人候補第一位だった彼がクーとくっつくことはなく、結局クーはブーンとくっついているんだから、不思議なものだ。
ひらひらと手を振って一足先に廊下を曲がったモララーが、突然立ち止まる。



339 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:02:44.85 ID:7tS7ZEub0

( ・∀・)「そうだブーン。お前気をつけろよ?」

( ^ω^)「お?」

( ・∀・)「ドクオ、相当お前とクーお嬢を恨んでるらしい。刃物携帯してるって噂だから、お前等注意しろよ?」

( ^ω^)「大丈夫だおwww心配するなおww」

そう言って、今度こそモララーは曲がり角の向こうに消えていった。
ブーンはクーと雑談をしながら、モララーの忠告があながち間違ってもいない気がしてならなかった。
ドクオがクーに襲い掛かってたあの日、真っ先にあいつを殴り飛ばしたのは僕だったし、あの日のあいつの恨めしそうな顔を忘れたわけではなかった。

そしてあの日以来、ドクオがクーを酷くうらんでいるのも知っていた。
何より、クーに危険が及ぶことだけは避けなければならないだろう。
ドクオはいつも一番入り口から遠いテーブルで一人で飯を食べる。今日は、入り口付近で食べることにしよう。

食堂に入るとまず最初にざわざわとした喧騒が僕たちを迎えた。
扉を開けて中に入ると、そこにはドクオが一人で僕を向かうようにして立っている。
身長が低めで服も傷だらけな分、少し離れて取り囲む人垣の中では、みすぼらしく見える。



340 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:03:57.12 ID:7tS7ZEub0

('A`)「……ブーン、クー」

川 ゚ -゚)「気安く私の名を呼ぶんじゃない」

(;^ω^)「ちょ、クー!」

既に一触即発の空気が漂う。
しんとした食堂の中で、凛としたクーの蔑みの声がよく響いた。

川 ゚ -゚)「私やブーンを傷つけたお前に、私達の目の前に立つことなど許されない。
                さっさと、消えろ」

('A`)「クー」

川 ゚ -゚)「気安く呼ぶなと――」

('A`)「――くっくっ」

ドクオが押さえたような笑いを上げる。
うつむいたままで、表情も見せないままに暗く笑うドクオに、僕は薄い寒気を感じる。



342 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:06:22.67 ID:7tS7ZEub0

('A`)「お前等のせいなんだよ。俺のいじめが酷くなったのも、俺がこんなに駄目になっちまったのも。
    クー、お前が俺の彼女になれば、俺のいじめはもっと軽くなった。お前はアイドルだからな。
     でもお前だ、ブーン。お前がクーを俺から浚っていくから、俺はいじめから抜け出せないし、寧ろお前の偽善的な行動のせいで
      さらに酷くなったんだ。そうだ全部お前のせいだお前さえいなければよかったんだ」



343 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:07:37.24 ID:7tS7ZEub0

ぺらぺらと早口でまくし立てる。
何なんだこいつは? そこまで僕が殴ったことを恨んでいるのか?
確かに暴力行使に出たことはいけないことだと自負しているが、それでもそれが最終的に間違った選択かといったらそれは違う。
一体何がこいつをそんなに駆り立てる?

('A`)「もういい。お前もクーも死んじまえ」

そう言いながらドクオはポケットからバタフライナイフを取り出す。
人垣から上がる悲鳴。隣のクーも絶句して、顔が青ざめる。
ナイフをくるくると回しながら、ドクオがこちらに突進してくる。
避けたい。足が動かない。やばい、このままじゃ

――死ぬ?



346 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:10:45.04 ID:7tS7ZEub0

(;^ω^)「く……ぁっ!」

(;'A`)「なっ!?」

ドクオの刃がわき腹に突き立てられようとする瞬間、僕は体をひねってその刃を避ける。
そのままドクオの手をひねってナイフを落とさせた。
くそったれ、と怒りの形相でナイフを取ろうと僕を払いのける。
しかし僕が一足先にナイフを手に取り、そのまま勢いでドクオの腹部に向かってナイフを突き上げた。

(;゚A゚)「ぐああっ……!」

苦しそうなうめき声とともに、ドクオが膝を突く。
ナイフの刺さった腹からは止め処なく血が溢れ、地面を濡らしていく。
うめきながら、ドクオは血の海にばたりと倒れた。

(;^ω^)「はぁ……はぁ……」



347 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:16:07.67 ID:7tS7ZEub0

刺して、しまった。人を殺してしまった。
勢いもあったとはいえ、僕は何をしてしまったのだろうか。
恐る恐るドクオの死体に触れる。冷え切った体にナイフは深々と刺さり、血はずっと流れ続ける。
僕はクーのほうに顔を向ける。きっと彼女は僕が間違ってないことを証明してくれるはずだ。
僕が殺したのは仕方の無いことだと――

川 - )「人殺しめ」

(;^ω^)「……クー?」

「人殺しめ」

「人殺しめ」
「人殺し」
「人殺し」
「お前は人殺しだ」「人殺しめ」
「憎い人殺し」「お前はただの殺人鬼だ」「お前は人殺しだ」

辺りの人垣からも、僕をあざけるかのような声。
絶え間なく響き続けるその声に耐えられず、僕は耳を抑えて叫ぶ。



349 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:19:23.87 ID:7tS7ZEub0

(  ω )「やめるお――やめるお! 僕は仕方なく――」

('A`)「仕方なく殺した、とでも言うのか?」

(  ω )「――ドクオ」

('A`)「クーと付き合ってた俺が憎らしくて、俺に殴られたことが憎らしくて俺を刺したとでも?」

(  ω )「僕はお前を殺してなんか――」

('A`)「いいや殺したな。思い出せ、真実を。お前が誰に殺されて、誰が俺を殺したかを」



352 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:24:52.33 ID:7tS7ZEub0

そうだ、僕がドクオを殺した。
いじめにあって苦しかった僕に手を伸ばしてくれたのがクーだった。
だから僕は彼女に恋をし、自分の手中に収めたいと思った。
彼女はアイドルだから、きっと僕をいじめから護ってくれるはずだと、そう信じていた。

彼女には精一杯のアピールをした。
毎日のように彼女の後ろをついていったし、ポストに手紙を入れるのも欠かさなかった。
24時間彼女の顔を見ていなくてはすまなくなって、写真も幾つも撮った。
彼女の家にカメラをつけて、彼女に悪い虫がつかないように見守った。

そして忘れもしないあの日、僕がクーの家に行ったとき。
ドクオに、殴られたのだ。
そのニュースはたちまち学校中に広がったから僕のいじめは酷くなった。

ドクオとクーのせいだ。
ドクオとクーのせいで、僕の人生は大きく狂った。
だから刺した。
だから僕は――ドクオを刺し殺してやった。



355 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:31:10.95 ID:7tS7ZEub0


('A`)「ここはお前のただのイメージの中だよ」

('A`)「彼女になりたくて仕方なかったクーの、ただのイメージの中でも、彼女になりたくてな」

('A`)「そしてここはお前の罪を裁くための無間地獄でもある」

( ^ω^)「何を言って……」

ドクオが、僕の体に向かって走る。
僕が反応するより早く、ドクオは僕の胸にバタフライナイフをつきたてた。
今日の夢がフラッシュバックする。いや、夢じゃないだろう。デジャブでもなければ。

あぁ、ドクオ、お前だったのか。僕を殺したのは。
無間地獄の中で、終わらない痛みの中で、僕に刃をつきたてた「殺人者」は。

胸を強く押さえた手に、感じるのは生暖かい液体の感触。
焼け付くような熱さが胸元から前身にじわじわと広がる。
冷たいナイフが、それよりも冷たい表情を顔に宿したドクオが、こちらを射抜くように見つめる。



357 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:33:36.10 ID:7tS7ZEub0

目が霞む。痛い。そして何より一番寒い。
足の力が抜け落ち、僕はなす統べも無くその場に膝をついた。
嘲笑の笑みは見て取れなかった。憤怒でも、悲しみでも、嘲りでもなく。
ただひたすらの無表情。体中に広がる死の感覚と、目前のドクオへの恐怖が頭を支配する。

僕は――死ぬのか?

口は開かない。イメージだけが頭にとどまり、そのイメージが電気信号となって、喉を震わすことは無い。
それでもドクオは無表情のまま、無表情な声で僕に語る。
頭の中を見透かしたかのように。

('A`)「怖いか?」

肯定も、否定すらもままならない。
足元の血だまりに顔をうずめ、僕は小動物のように体をふるふると震わせる。
ああ、僕は今、惨めだな。

('A`)「怖いだろうな――」



360 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:37:47.63 ID:7tS7ZEub0

くつくつと喉元から笑いが漏れるのが聞こえる。
首も動かない今の僕には彼の表情を窺い知ることは出来なかったが、少なくとも彼は微笑を顔に浮かべてはいないだろう。
作り物のような、形だけの笑いが響く。
薄れゆく意識の中で、ドクオが何かを語っているのが聞こえた。

('A`)「この無間地獄はお前が罪を清算するまで終わらない」

('A`)「人を殺すことだ、お前の罪は、千年経とうが一万年経とうが消え去りはしないだろう」

('A`)「お前が行った罪を、完全に刻み付けない限りはな」

全身を疲労と倦怠感で支配され、聞くことも億劫な今の僕には、なんだか御伽噺のように頭に入り、消えていくだけだった。
ドクオの語りが終わり、彼は一間置く。

「398回目に――」

「殺人者」は言う。

「また、会おう」

意識は、落ちる。


361 : ◆dcpSr6u5OE :2008/08/05(火) 15:39:58.15 ID:7tS7ZEub0

( ^ω^)ブーンと  殺人者のようです。





( ^ω^)ブーンとは、殺人者のようです。


fin


[ 2008/08/05 16:13 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
悔い改めれば罪が許されるというのは傲慢
[ 2009/09/14 20:04 ] [ 編集 ]

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