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人と獣のようです


411 :人と獣のようです(1/30):2009/07/13(月) 21:37:21.93 ID:aRw65Gx3P

朝と夜

世界は、この二つによって世界を変えた

人は朝目覚め、夜眠る
獣は夜目覚め、朝眠る

それが、この世界の理
遺伝子に刻まれた、偽りの記憶

それに、人は目覚めてしまった

('A`)「百獣の王、かよ……本当……格好良いじゃねぇか」

目の前に、その巨体を現した獅子
ドクオはそれに向け、言い放った

('A`)「なぁ、ブーン」


――人と獣のようです――



414 :人と獣のようです(2/30):2009/07/13(月) 21:39:25.88 ID:aRw65Gx3P

空は陰り、赤く染まっていく
朱と藍が混じり合い、夜が空を浸食していく

('A`)「あと少しで……夜が来るな」

人気の消えたマンションの一室
そこから外を眺めて、俺は一言、そっと呟く

時刻は、18時30分過ぎ
いくら夏とはいえ、そろそろ空が黒に染め上げられてもおかしくない時間帯だ

緊張でで汗ばんだ頬を、袖で拭う

('A`)「町は猛獣の住処となる、か……」

人には、獣の因子が組み込まれている
ある学者が発表したその研究は、世界に震撼をもたらした

人の裡に眠る遺伝子から、眠りについていた獣の力を、呼び起こす薬を作り上げたのだ

事実、それを服用した人間は、普段の何十倍もの能力を発揮するようになった

力は獅子にそれを上回り、身のこなしはチーターのように素早く軽やかで、
骨は、従来のしなやかさに増して、鋼鉄のような強固さも持ち得たのだ

人はこぞって薬を欲し、求められるがままに、それは世界にばら撒かれた



415 :人と獣のようです(3/30):2009/07/13(月) 21:41:33.32 ID:aRw65Gx3P

それから60年
それは世界に蔓延し、誰一人、恩恵を受けていないモノはいなくなった

人は、躍進を――進化を果たした

('A`)「だけど、そこには一つ、落とし穴が潜んでいた」

太古に眠りに就いた遺伝子は、再び現世に溢れたことで、人を変容させていったのだ
文字通り、人から獣へ

('A`)「人は夜に眠りにつき、……夜には、血肉を求める獣になった」

親から子へ、そのまた子へ
獣の因子は年月を重ねるごとに血は強く、そして、深くなっていった

もはや、自然界のそれとは、かけ離れた存在と言っても良い
見た目も何もかも……

それ程に、超越的だった

('A`)「あと、5分も無いな」

薄い朱色の光を放ち、落ちて行く夕日
人は、太陽が消えた瞬間に、獣に変わる

('A`)「それが、ボーダーライン」



417 :人と獣のようです(4/30):2009/07/13(月) 21:44:10.97 ID:aRw65Gx3P

俺は、片手に持った携帯を握りしめた

この事態でも、電波があったこと、
それは、奇跡と言い換えても良いかもしれない

それがなれば、きっと、被害者はもっと多かったはずだったから

('A`)「人を食う、人だった獣か……」

俺は、思い出す

獣となったカーチャンに、トーチャンが食い殺された光景を
それを、自分が生き残るために、カーチャンだったモノを自らの手で殺した光景を

('A`)「……」

胸を撫でる

その時受けた傷跡が、胸に深く刻まれている
まるで、罪過であるかのように

(#'A`)「ハッ…………クソ食らえだ」

俺は吐き捨てた
胸糞悪い想いと共に



419 :人と獣のようです(5/30):2009/07/13(月) 21:46:17.32 ID:aRw65Gx3P

prrrrrrrrrr prrrrrrrrr

Σ(;'A`)「――――ッ!?」

どうやら考えごとをしている間に、既に夜へと変わっていたようだ
3コール目に差しかかるところで、俺は通話ボタンを押した

('A`)「ショボンか!?」

『いつもはそっちからかけてくるのに、今日は全然鳴らないんだもの……冷や汗が凄いよ、今の僕。
でも、良かったよ。今日もドクオがドクオのままで』

('A`)「スマン、考えごとしてたんだ。……俺もそう思うよ、ショボン。」

本当に、心からそう思う
もう二度と、あんな想いはゴメンだ

('A`)「それじゃ、切るぞ」

『うん。ブーンからの連絡を待とう』

指を動かし、通話終了のボタンを押した

('A`)「ふぅ……」

安堵のタメ息
これで、ショボンの無事は確認出来た

夜を迎えても、人であった人間は、その日は獣にならないことが確認されている
また、例え獣になったとしても、朝を迎えれば人に戻れることも



422 :人と獣のようです(6/30):2009/07/13(月) 21:48:20.39 ID:aRw65Gx3P

('A`)「だけど、カーチャンは戻らなかった……」

獣の状態で死んだ人間は、死しても――朝になったとしても、獣のまま死に絶えている

('A`)「……逆を言えば、俺があの時カーチャンを殺さなかったら、カーチャンは人のまま生きていられたんだ」

横たわった、カーチャンだった獣
その姿が、胸の傷と共に、俺を縛り付けていた

( A )「死ね」

誰に向かったとも知れない言葉
自分自身か、それとも別の何かか
俺にも分からなかった

prrrrrrrr――――

('A`)「来たッ! ブーンかッ!?」

すぐさま通話ボタンを押し、問いかける

いつもなら、すぐに底抜けに明るい声が返ってくるはずだ
だけど、聞こえたのは、

『ぐす……ずずっ……』

鼻をすする、ツンの声だった
それだけで、何が起こったのか分かった



423 :人と獣のようです(7/30):2009/07/13(月) 21:51:03.07 ID:aRw65Gx3P

('A`)「ツン。何があっても、そこを動くなよ。分かったな?」

微かに、『うん』という呟き

('A`)「安心しろって! 明日になったら、何もかもが元通りなんだから! な?」

もう一度、『うん』

その声に力は無い
それに俺は、ブーンのようにはいかないな、と自嘲するだけだった

('A`)「ショボンにも伝える。今度はしょぼんにかけさせるから」

それだけを伝え、アドレス帳からショボンの名前を引っ張り出す
無機質な電子音が1・2秒鳴り響き、

『ブーンかい!?』

('A`)「いや、俺だ」

『――――ッ!?』

俺と同じく1コール目で出るショボンに、残酷な知らせを伝える
それだけで、意図は伝わった

嫌な、世界だ



424 :人と獣のようです(8/30):2009/07/13(月) 21:53:02.24 ID:aRw65Gx3P

('A`)「ツンが泣いてるんだ。頼む」

『……うん、分かったよ』

('A`)「悪いな。いつも、こういったことはショボンに任せて」

『それだけが取り柄のようなもんだからね。それじゃ』

('A`)「頼りになるよ。それじゃ」

それを最後に、通話が消えた
冷徹な機械音が、俺の心を冷たく凍らせる

(#'A`)「……クソッ」

自身をベットに放り投げた

スプリングによって弾む体
包み込むように広がっていく布団の安心感に、意識を投げ出そうとした時、

prrrrrrrrrr prrrrrrrrrr

三度、着信音が響いた



426 :人と獣のようです(9/30):2009/07/13(月) 21:55:03.24 ID:aRw65Gx3P

**

(;'A`)「クソッ!」

俺は口癖になりそうな悪態をつく

最悪だ
最悪なパターンだ

(;'A`)「『知能持ち』かよ、ブーンの奴!」

知能持ち
その身を獣に変えた時、人間は知能も獣のように退化させる
だが、その中のほんの一部の人間だけが、その大部分を保持したまま獣に変わるモノがいる

それが、知能持ち
人の頭脳を持ちながら、獣の本能に流される、最悪の『獣』

(;'A`)「いつも無駄に才能溢れ過ぎてんだよ、あの馬鹿!」

ショボンからの電話で、ツンが襲われていることを知った
襲った犯人――いや、獣の正体はブーン

人間の時に執着していたモノに、知能持ちは真っ先の向かう
つまり、ツンは既に……



434 :人と獣のようです(10/30):2009/07/13(月) 22:11:03.97 ID:aRw65Gx3P

(#'A`)「……いや、まだだ! まだ、何も分かってないだろ!」

――――ツンがいる部屋は二つ上の7階。一階下のショボンより俺の方が早く着く。ショボンは武器になりそうなモノを持って来てくれ――――

俺はそう伝え、全力で走っていた
薬が世界に広がる前ならば、余裕で世界新記録を狙える速さ

だからといって、身体能力の上では獣に遠く及ばない
ただの時間稼ぎにもならないかも知れない

('A`)「だから、早く来てくれよ……ショボン!」

そう、強く想い、俺は走り続けた



438 :人と獣のようです(11/30):2009/07/13(月) 22:14:37.44 ID:aRw65Gx3P

**

「ここか……」

目の前には、15階建のマンション
そこから、手に持ったセンサーに反応がある

「個体数は2。目標の位置は不明。しらみ潰しでいくぞ」

雲に隠れた月が顔を出し、全体を明るく照らし出す

「状況を、開始する」

その声を合図に、3つの影が散った



439 :人と獣のようです(12/30):2009/07/13(月) 22:17:45.92 ID:aRw65Gx3P

**

そこは、荒れ果てていた

ドアは滅茶苦茶に潰され拉(ひしゃ)げ、
そこから見える部屋の中は暗く、壁は縦横無尽に切り刻まれ、窓は大きく割れ、風が吹き抜けていた

(;'A`)「これは……」

絶望に押し潰されそうになる
こんな惨状の中で、人が生きていられるとは思えなかった

( A )「ああ…………ツン……」

力無く、呟く
膝が落ち、両手を床につき、項垂れた

その耳に、

「――――――ぁ――」

ツンの声が聞こえた



442 :人と獣のようです(13/30):2009/07/13(月) 22:20:50.77 ID:aRw65Gx3P

('A`)「――ッ!」

胸に、喜びの心が溢れだす

生きてる……生きてるんだ!

そう思って立ち上がり、走り出す
壊れた壁に手を当てて、部屋の中に踊り出る

('A`)「ツ――ン……!」

尻切れトンボの声
名前を呼ぶことすら叶わなかった

何故なら、俺のこの目には、

『ヅン゙ヅン゙ヅン゙ヅン゙ヅン゙――――』

狂ったようにツンの名前を呼び、
狂ったように腰を振り、
狂ったように、ツンを犯している獣の姿と、

ξ ⊿ )ξ「――ぁ――――ぁあ――――」

壊れたように目を濁し、
壊れたように血を流し、
壊れたように、喘ぎを漏らすツンの姿があった



444 :人と獣のようです(14/30):2009/07/13(月) 22:24:07.77 ID:aRw65Gx3P

('∀`)「は、……ははっ……」

体から力が抜け、壁に手をついた
反対の手で前髪を掻き上げ、声を漏らす

( ∀ )「は、はははは……」

声が漏れる

余りにも衝撃的な光景に、理性が受け付けない
現実感が、一欠けらも存在しない

笑うしか、なかった

『ド……グオ゙――――?』

獣が振り返る
闇色の中でも輝く、その金色の体毛をなびかせながら、金色の双眸で俺を睨みつける

『ドグオ゙ォォオ――――ッ!』

吠えた

獣が全身を深く沈め、力を溜める
それを見た途端。意識を離しているのも拘わらず、体が反応した

('A`)(ああ……こういったところが、獣の因子、って奴なのかな)



446 :人と獣のようです(15/30):2009/07/13(月) 22:28:36.12 ID:aRw65Gx3P

『ォオオオオォォオオオオォオオ――――ッ!!!』

咆哮を上げ、目にも止まらない素早さで突進してきた巨体を、無意識の内に横っ跳びで避ける
その横を、轟音を上げ鋼鉄にも比肩する硬さを持った猛獣が走り抜け、消えた

振り返った先にも居ない
恐らく、廊下を抜け、部屋を出て行ったのだろう

(;'A`)「……そうだ、……ツンは!? ――――ッ!」

彼女のことを思い出し、目を向け――そして、背けた
……見ていられなかった

死んではいない
だが、生きてもいなかった

出血は、酷くないように見えた
だけど、心の方が、どうにもならない

そう、思えた

('A`)「……ツン」

せめてと思い、来ていた上着を脱ぎ、何一つ身に着けていない彼女にかける

その時、僅かに視線を向けられた
何も見ていない、虚ろな瞳を



448 :人と獣のようです(16/30):2009/07/13(月) 22:31:50.60 ID:aRw65Gx3P

(;'A`)「――――ッ! ……ゴメン」

それが、俺を責めているように見えて、急いでその場を離れる
一秒でも早く、この場を去りたかった
玄関の――本来ドアがあるところに手をかけ、外に出た

――――瞬間

('A`)「――ッ!?」

風切り音が聞こえ、伏せる
その上を、壁を切り裂きながら、獣が走り去って行ったのを、暴風と共に感じた

見上げたそこには、4本の爪痕
それが、コンクリートを深く、抉り取っていた

('A`)「ブーン……」

勢いそのままに走り去っていた獣は、地面に爪を突き立て、制止
反転し、月明かりの下で、こちらを睨みつけている

そこで、気付く
それがかつて、百獣の王と謳われた、獣の王者だということに

('A`)「百獣の王、かよ……本当……格好良いじゃねぇか……なぁ、ブーン」



450 :人と獣のようです(17/30):2009/07/13(月) 22:35:11.28 ID:aRw65Gx3P

見惚れる

美しく、気高く、その輝きは永遠に続くであろうと思える程の、本当の金色に
それに、心奪われ、

(#'A`)「――――下衆が!」

その生き方
弱肉強食を体現するような、その謳われた存在に、――俺は嫌悪した

(#'A`)「お前は自分が何をしたのか、分かってんのかよ、ブーンッ!」

俺は、吐き捨てるように、叫びを上げる
黙っていることなど、出来なかった

(#'A`)「お前は、ツンを、――――ッ!」

空回りする言葉
想いに口がついてこない

(´・ω・`)「ドクオ?」

その俺に、獣の背後から、ショボンの声が聞こえた



452 :人と獣のようです(18/30):2009/07/13(月) 22:38:14.17 ID:aRw65Gx3P

それに振り向く獣
既に体勢は深く、一瞬の猶予も無い

(#'A`)「チッ! クソがぁあああああああああ!!」

声を張り上げ、その尻尾を掴む
何倍にも向上したその筋力は、細い獅子の尻尾を握り潰した

『――――ギャァアア゙ア゙ァァァ゙グァ゙ア゙アァァアアア!?!?』

(メ'A`)「ぐはっ!?」

叫びを上げ、その太い後ろ足で俺を薙ぎ払う獣
それに腹を打ちつけられ、吹き飛ばされる

だが、お陰で注意は俺に向いた
金色の両目が俺を確と捕らえ、睨みつけて唸りを上げている

(メ'A`)「ショボ、ン! ……そこの、部屋の……中に、ツンが居る! 頼む!」

苦しい呼吸の中で、何とか伝える
返事は聞いていられない

立ち上がり、背を向けて走り出した
それに、死の予感が膨れ上がっていく
自分の何倍もの力、スピード、威圧感を放ち、百獣の王が駆けてくるのを、背に感じる

『ドォ゙オ゙オ゙ググゥ゙オ゙オ゙ォオオオオォォオオ――――ッ!』



457 :人と獣のようです(19/30):2009/07/13(月) 22:41:06.89 ID:aRw65Gx3P

すぐ後ろから、獣の呼び声
肩越しに振り返った視線に、再び、一直線に走り飛びかかってくる獣の姿

速い

故に、避けられない

(メ'A`)「つぁっ!?」

何とか体を捻り、首筋に伸びた牙を両手で受け止める
だが、胸に落ちた獣の片足が、ずしりと俺を苛んだ

骨が軋む音が聞こえる
ぎりぎり音を立て、限界が近付いて来ている

『ドグオ゙ォ゙ォォオオオオオォオオオォオオオ――――ッ!』

( A )「ブーン……」

幾度となく呼ばれる名前
それに、悲しみが増す

理性を失い、自ら惨状を引き起こし、まともに俺の姿も認識出来ないブーン
その姿に、涙が流れた

(;A;)「ゴメンな」

胸の中が、熱くなっていく
肌がざわつき、粟立つ



461 :人と獣のようです(20/30):2009/07/13(月) 22:45:30.83 ID:aRw65Gx3P

自身の体に、何か変化が起こっていっているのが、手に取るように分かった
だが、それに抗う気も起きず、身を委ねた

( A )「今、終わらせるから……」

獣の口に当てていた両手の内、右手を引き、獣の顔めがけて――――強く、拳を打ち込んだ

『――――――――――――ッ!?』

人の何十倍もの体重があるだろうに、悠々と浮かび上がった獣
そのまま背中から落ちることも無く、空中で回転、四肢で地に舞い降りた

威嚇するように牙を剥き、雄叫びを上げる獣を見据え、俺は立ち上がる
獣が、こちらに飛びかかろうと四肢に力を入れた一瞬、

(#'A`)「――――ふっ!」

その低く下げられた頭に、渾身の拳を突きたてた

『――――――――――――ッ!?!?』

コンクリートの床を砕き、地面に頭が突き刺さった
だが、動きを抑えるだけ
すぐに頭を持ち上げ、その鋭い爪を持って襲いかかる

('A`)「この程度じゃ、駄目か……」

左、右と、執拗なまでに繰り出される爪と牙
その最中、俺も拳を打ち込むが、一瞬動きを止めるだけで効いているようには見られない



464 :人と獣のようです(21/30):2009/07/13(月) 22:49:06.09 ID:aRw65Gx3P

('A`)「流石、百獣の王と謳われることだけあるな……糞みたいな理由だけど」

飛びかかって来た獣の顎を、下から上へ足を振り上げ吹き飛ばす
その勢いを利用して、距離をとる

獣は空中で体を捻り、華麗ともいえる身のこなしで地に足を付けた

('A`)「意味がないな…………夜明けまで、あと何時間だ?」

一瞬、目を離した

左手に身につけた時計
それに目をやろうとした瞬間だった

まるで、今までのはお遊びだったと言わんばかりのスピードで、獣が頭から俺を吹き飛ばした

(メ'A`)「ぐはっ!?」

もんどりうって背中から倒れる
その俺に、影

Σ(;'A`)「――――ッ!?」

空中に跳ねた金色の巨体が、俺にのしかかった

( A )「――ぁ――――ッ――――!?」

声さえ上げれない



467 :人と獣のようです(22/30):2009/07/13(月) 22:53:05.64 ID:aRw65Gx3P

呼気が漏れ、音がなった
肺の中の酸素全てが、今ので吐き出されたような苦しさ

動きが、止まってしまった

『ドグオ゙ドグオ゙ドグオ゙ドグオ゙ドグググドドドドグオ゙ォオオオオオオオオオオオ――――ッ!』

狂った叫びを上げる獣
首筋に伸びる牙

それが、俺を――――

「させんよ、知能持ち」

横手から、声
その一瞬後、俺に乗っていた獣の姿が、爆音と共に横に逸れた

爆風によって俺も吹き飛ばされる――――獣とは反対方向に

「そして、これで終いだ」

ぷしゅっ、という音

倒れた視界で、獣を捉える
獣の体に、何か細い針のようなモノが生えていた

「即効性の麻痺薬だ。安心しろ、翌朝まで目覚めることはない」

それでも起き上がろうとする獣
だが、その動きは徐々に緩やかになり、やがて、完全に止まった



471 :人と獣のようです(23/30):2009/07/13(月) 22:57:10.17 ID:aRw65Gx3P

「これで、こちらは完了だな」

俺は声の主を視界に入れる

俺より5・6程度上に見える容姿
腰まで伸びた黒髪が特徴的な女性だ
上下共に黒一色の服を身に纏っている

川 ゚ -゚)「ふむ……やはりな」

彼女が何か、俺を見て納得したような声を出す

('A`)「やはりって……何がだよ?」

小さな呟きが聞こえた気がした
恐らく、「まだ、気付いてないのか」という呟きが

('A`)(……気付く? 何を?)

川 ゚ -゚)「いや、こちらの話だ。ところで君、アレは君の関係者か?」

ブーンを差して、彼女が言う

('A`)「ああ、友達……そうだ!」

そこで思い出す
ショボンに、もう安全になったことを伝えに行かなければ



474 :人と獣のようです(24/30):2009/07/13(月) 23:01:29.02 ID:aRw65Gx3P

川;゚ -゚)「ちょ、待ってくれ、君!」

('A`)「もう二人、友達がいるんだ!」

彼女の言葉を振り切り、俺はツンとショボンの元に急ぐ

壊れたドア
それを再びくぐり、切り刻まれた部屋の中央へ足を走らせる

そして、辿り着く
そうして、知る

('A`)「……ショボン?」

その部屋に、変わらずツンが倒れているだけで、彼の姿がないことに

川;゚ -゚)「ったく、勝――――手に……」

横から、先ほどの女性の声
それが、途中で途切れる

当然だろう
同性の女性が、裸当然の格好で――汚された姿で放置されているのだから

川#゚ -゚)「おい」

怒気を含んだ声
肩を掴まれ、無理やり正面に向けられる
そのまま壁に押し当てられ、胸倉を掴み上げられた



478 :人と獣のようです(25/30):2009/07/13(月) 23:05:02.91 ID:aRw65Gx3P

川#゚ -゚)「これは、どういうことだ……!」

歯を強く噛み締める彼女
ギリッ、という音が、こちらにも聞こえてきそうな程強く、噛み締めている

だけど不思議なことに、その顔は目に入らなかった
全てがぼやけたように、霞んでいた

川#゚ -゚)「答えろ! これはお前が原因かッ!」

( A )「…………おかしいんだ……」

川 ゚ -゚)「――――? 何がおかしい?」

不思議そうな彼女の声
それに構わず、自然のままに言葉を紡ぐ

( A )「だって、俺はショボンにツンを頼むって……そう言ったんだ…………だって、ツンがこんなことになって……ブーンは、どうにもならなくて…………
    だから、ここにショボンがいるはずなんだ……俺が時間を…………いないはずが、ないんだ…………あいつは頼りになって、それで…………」

意味の繋がらない言葉
溢れ出るままに口にしているから、前後の言葉の辻褄が合わない



481 :人と獣のようです(26/30):2009/07/13(月) 23:08:34.09 ID:aRw65Gx3P

( A )「だって……そんな、ショボンが……――――」

それでも、呆けたように言葉を垂れ流すことしか出来ない
尚も、言葉を吐き出そうとする俺の、

川 ゚ -゚)「おい!」

その頬が打たれた

強く、力の籠った平手
頬がじんじんと、熱を持ち始める

衝撃で、目の焦点が合い始めた俺の瞳に、
強い意志を感じさせる黒の瞳を、真正面に、俺にぶつける女性が目に入った

川 ゚ -゚)「事情を聞かせてくれ……ゆっくりでいいから」

包み込むような甘い声が、俺を溶かしていく

不安、混乱、戸惑い、悲しみ
俺の裡に渦巻く感情の波が、緩やかに、その力を無くしていった

(;A;)「……ぁ、ああ…………ッ、あ、あああぁぁああぁあぁあぁぁあああ!」

いつの間に込み上げたのだろうか
まぶたの淵に溢れる涙を零しながら、俺は叫びを上げて泣き続けた



483 :人と獣のようです(27/30):2009/07/13(月) 23:11:49.20 ID:aRw65Gx3P

**

川 ゚ -゚)「『半獣態』というモノがいる。それが、君だ」

半獣態
それは、知能持ちとは逆に、獣の力を持った人
人の一部分だけが獣の力によって獣化し、人の理性を持ちながら獣の力を行使するモノの総称

知能持ちよりも更に、存在する確率が低い、『人』

('A`)「それが、……俺」

川 ゚ -゚)「ああ、そうだ」

俺は両手を前に出し、マジマジと見る
両手といわず、上半身全てを獣毛に覆われ、人間として生きてきた頃の面影は見られない
恐らく、顔の形も、伝説上の狼男のような形状に変化しているんだろう

このまま、俺はこの格好で生きていかなければならないのだろうか

川 ゚ -゚)「安心しろ。半獣態が獣化、または人化する時は、意思によって制御出来るよ。
     ただし、獣の範疇には入っているから、獣化出来るのは夜の間だけだがな。
     朝になれば、どんなことがあろうと、強制的に人に戻れる」

('A`)「そっか……良かった」

俺の不安を見透かしたようなタイミングで、彼女の声
どうやら、すっかり性格を見抜かれたらしい

(*'A`)(それはそれで、恥ずかしいな)



486 :人と獣のようです(28/30):2009/07/13(月) 23:15:48.11 ID:aRw65Gx3P

俺は彼女と並んで座り、彼女からの説明を受けていた

彼女の仲間によって、ツンは病院に連れて行かれ、ブーンは、彼女が所属する組織に連れて行かれた
ショボンは……分からない

この建物の中には、既にいないそうだ

(*゚ー゚)「報告です。順次、全ての作業は完了致しました」

彼女の仲間である女性が敬礼し、報告する

川 ゚ -゚)「ああ、分かった。ギコと共に、先に戻っていてくれ、しぃ」

(*゚ー゚)「はい」

女性――しぃ――は彼女の言葉に頷き、再度敬礼

その後俺を見て、訳知り顔でウインクしてきて、「よろしくね」、そう言ってきた
そのまま廊下を歩き出し、後ろ姿が闇に消えた

川 ゚ -゚)「さて、我々はこれで、この場を撤収することになる。……君は、どうする?」

彼女は立ち上がり、俺を見下ろす
そして、その手をそっと差し出した

まるで、元々俺の答えを知っているかのように

(*'A`)「はは、……まいったな」

それに、俺は笑うしかなかった



492 :人と獣のようです(29/30):2009/07/13(月) 23:19:28.28 ID:aRw65Gx3P

月明かりの中、月光を浴びながら微笑む彼女
それを視界に入れて、俺の心は自ずと決まっていたから

俺は、彼女の手を取った

そして、立ち上がる
彼女の真っ直ぐな、引き込まれるような黒い瞳を見つめる

川 ゚ ー゚)「ふふ……」

(*'A`)「ははっ」

どちらからともなく笑い出した

こんな自然に笑えたのは、いつ振りだろう
少なくとも、カーチャンを殺してから笑えたことがなかったのだけは、嫌でも覚えている

……嬉しかった
ただもう一度、こんな風に笑えること、それだけが

川 ゚ ー゚)「自己紹介がまだだったかな」

彼女の名前
それは、俺が最も知りたいことの一つかもしれない

彼女は頬笑みを湛えたまま、自らの名前を告げる

川 ゚ ー゚)「素直空。親しい人はクーと呼ぶ。どうか、君にもそう呼んで欲しい」



494 :人と獣のようです(30/30):2009/07/13(月) 23:20:28.23 ID:aRw65Gx3P

素直空、……クー

口の中で、小さく呟く

入り日に呟いた、不安の入り混じった声じゃなく、
希望――それだけに包まれた、その名前を優しく

だから、それに応えようと思った
その彼女と、共に歩むことが出来るような、そんな1人の『人』として

('A`)「鬱田独男。友達には、ドクオって呼ばれてる」

一つ、言葉を区切る
次のたった一言に、万感の思いを込める為に

(*'∀`)「――――よろしく!」


それが、俺の全てが変わった日
彼女との、忘れられない出会いだった


――人と獣のようです・おわり――







―――以下、補足的レス抽出―――

502 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/13(月) 23:28:35.19 ID:iKZ3D8eEO


一気に読めた

ショボンはなぜツンのとこに行かなかったのかが気になった
どっくんが知らないだけで、ブーンに殺されてしまったのか、怖くて逃げ出したか、何か別の思惑があったのか
そしてクーらの所属する組織とは一体?

最初のほうでドクオとショボンがもしもししてたのは、友達が今日も人だったと確認するためなんだね
なんだか怖いよね、明日は我が身、みたいな



506 :人と獣のようです(おわり):2009/07/13(月) 23:32:45.33 ID:aRw65Gx3P

>>499
続編は無しです
いつか、没ネタスレが立ったらそこにぶち込む予定なんで

>>498>>502
クーの組織についてはレス数の関係上書けないので、
最初から考えてません

ショボンに関しては、逃げただけと考えてます


最初はツンがブーンに犯された後、もう一度、ショボンにさせようと考えていたんですが、
これまたレス数の関係上、変更いたしました


それでは、さようなら
支援ありがとうございました




[ 2009/07/13 23:29 ] 総合短編 | TB(0) | CM(2)

ドックンドックン~!ふぅん!クーにゃーんにゃーん
このショボン…
[ 2009/07/14 18:58 ] [ 編集 ]


総合スレ内の補足説明で抜けてたところを書いておく
何故なら、没スレで投下するときに説明する手間が省けるから
――――
クーの組織は獣専門の対策部隊? みたいな感じにしようとしてました
ただし、殺してはいけない
それが掟として、飽く迄「尊重すべき」モノとしてあります(正当防衛は認められてます)

元々は人間であり、尚且つ、夜明けが来ると『人』に戻りますから
[ 2009/07/14 20:20 ] [ 編集 ]

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