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( ゚д゚ )無題('、`*川


750 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 21:42:25.44 ID:piZfArSm0

椅子から転げ落ちた。
扉が開かれた。
君は、そんな僕を見て笑った。
僕は恋に落ちた。






( ゚д゚ )「明日、引っ越すんだって?」

('、`*川「えっ?」

震えた口先から放たれた言葉に返されたのは、そんな言葉にもならないようなものだった。
酷く落ち込むのと同時、当然とも思える自分がいた。
何しろ、彼女に僕が話しかけたのはこれが初めてだったからだ。

そう理解してはいても、精一杯の勇気が無下にされたような気もしなくはない。
驚いた表情を浮かべた彼女に、僕は申し訳なさそうに俯いた。

('、`*川「……あ、うん、明日引っ越すんだ。知っててくれたんだね」

そんな僕を見かねてか、今度は明るい振る舞いだった。
無理をさせてしまった感じもするが、彼女の笑顔を見れて満足な僕は、現金な奴だった。



754 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 21:44:53.58 ID:piZfArSm0

( ゚д゚ )「親の都合か何か?」

('、`*川「そうなんだ。お父さんが転勤で。家族ごとそれに付いていくの」

( ゚д゚ )「折角だし、お別れ会でもやればよかったのに」

('、`*川「先生に私が言ったの。出来ればそういうのはやらないで欲しいって。
     本当に皆とさよならなんだなぁ、って悲しくなるから」

彼女の父の転勤が決まったのは、二週間程前のことだったらしい。
正確に言うと、父の転勤を彼女が知らされたのは、である。

僕はクラスの女子がそれについて噂しているのを聞いて、ショックを受けた。
そして彼女に何か一言、言おう言おうとしている内に、気がついたら引越しの前日だった。

もう話す機会もないなと諦めかけていたその時、夕陽の差し込む教室で、
一人静かに佇んでいる彼女を見つける。

きっと、これは神様がくれたチャンスなんだ、と僕は思った。

忘れ物でもしたような演技をして教室に入り、高鳴っている心臓の辺りを押さえつける。
そして、充分な深呼吸の後に、ようやく彼女に話しかけたのであった。



758 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 21:47:09.73 ID:piZfArSm0

( ゚д゚ )「寂しくなるね」

('、`*川「そう思ってくれるんだ?」

悪戯めいた表情で尋ねられる。

( ゚д゚ )「……そう思っちゃいけないかな」

('、`*川「ううん。でも、嫌われてると思ってたから」

( ゚д゚ )「なんで?」

否定の意も込めたかったのか、やけにはっきりした声になってしまった。

('、`*川「だって、私のこと避けてなかった?」

( ゚д゚ )「そんなはずないよ」

と言いつつも、心当たりが無い訳ではない。

思春期特有の気恥かしさとでも言うべきか、想いを寄せている女子とはなんとなく距離を取りたいものである。
偶然合いそうになった目を不自然に逸した、などということはあったかもしれない。



761 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 21:50:14.98 ID:piZfArSm0

('、`*川「勘違いなら良かった。
     ……でも、あんなことがあったんだし、もう少し仲良く出来たと思うんだけどな」

彼女は教室の窓の外を眺めながら言う。
もう少しで下校時刻になるせいか、校庭には帰路を急ぐ生徒達が多く見られた。

( ゚д゚ )「あんなことって?」

('、`*川「ほら、放課後の教室で、君が一人で転がってたのを私が見た時だよ」

その時、今までの緊張のものとの比でもなく、僕の心臓が大きく揺れ動いた。
表情にも出てしまっていたかもしれない。
しかし彼女は僕の異常に気付くことなく、語り続けていた。

('、`*川「大きな音がして、慌てて扉を開いたら、君が苦しそうにもがいてるだもん。
     普段は物静かな感じなのに、『うーうー』唸っちゃったりして。
     失礼なんだって分かってはいても、笑わないではいられなかったなぁ」

( ゚д゚ )「……覚えててくれたんだ」

('、`*川「忘れろっていう方が無理だよ」

思い出し笑いをしながら彼女は答えた。



763 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 21:53:39.06 ID:piZfArSm0

( ゚д゚ )「あれは仕方なかったんだよ。目が覚めたら周りに誰もいなくて、時計は六時近かったし。
    『いけない』と思って立ち上がったら、机の裏にももをぶつけて、痛くて、それで」

('、`*川「自業自得じゃない」

( ゚д゚ )「起こしてくれなかった皆が悪い」

('、`*川「ふぅん。そういう厳しいことも言っちゃうんだ。意外」

それは幻滅したとかの意味合いではなく、本当に驚いたから口に出したようだった。
どうやら彼女の中で、僕は根っから真面目で、少し大人しめで、しかし心の優しい奴らしい。
生憎、僕はそんな綺麗な奴ではない。むしろそう思われていたことが、僕にとっては『意外』であった。

('、`*川「……ほら、こんな一面も、仲良くしてたらもっと早く知れたと思わない?」

( ゚д゚ )「そうだけど、今更言われたってどうしようもないよ」

('、`*川「どうしようもない、かな?」

( ゚д゚ )「どうしようもない、よ」

繰り返された『どうしようもない』に、彼女はどんな気持ちだったのだろうか。
少なくとも、僕の胸がチクチクと痛んだのだけは確かだった。



764 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 21:56:59.74 ID:piZfArSm0

('、`*川「……そろそろ帰って荷造りの続きしなくちゃ」

思い出したかのように彼女が言った言葉は、
神様が与えてくれた、この夢のような時間の終わりを示していた。

( ゚д゚ )「あっちに行っても頑張ってね」

('、`*川「頑張れって言葉もちょっと変ね」

今日の彼女はよく笑う。
僕がなにかを言う度に、笑顔で返してくれる。
ただ、夕焼けの作り出す影のせいか、どこか寂しく僕の目には映っていた。

('、`*川「じゃあ、さよなら」

彼女はそう言い残して、教室の扉へと歩を進めた。
一歩を踏みしめる度に艶やかな黒髪が揺れて、僕の心をかき乱す。

喉元まで出かかっているものがあった。
解き放ってしまいたいのに、それが出てくる気配は一向にない。
ぱくぱくと動くだけの口は、自分でも分かってしまうほどに滑稽だった。



767 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 22:00:48.68 ID:piZfArSm0

('、`*川「そうだ」

扉に手を掛けて、彼女は振り返った。
また皮肉でも思いついたのか、本当に楽しそうに彼女は言う。

('、`*川「どうして私がここにいたのか、分かる?」

確かに疑問に思うことだった。
先ほどは『神様のくれた最後のチャンス』などと言ったが、これはあくまで僕の立場からのもの。

彼女は引越しの為に部活も止めていたので、こんな時間まで残る理由はない。
引越し前日なのだ。普通は友達と別れを惜しみ、最後の遊びに出るのが妥当な所だろう。
それを、こんな薄暗い教室に一人とは何故だ。
センチメンタルに浸かっていたというのならまだ分かるが、彼女はそんなタイプでもない。

('、`*川「分からない?」

思考に耽るばかりの僕に、彼女の言葉がかかる。

乙女心なんていうものを理解出来る訳もない。
僕が降参だと手を上げて言うと、やはり彼女は笑った。



768 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 22:03:54.14 ID:piZfArSm0

('、`*川「君がまだ学校にいるみたいだったから、私はここに残ってたんだ。
     もしかしたら何かを期待していたのかもしれない。
     ……それじゃ、元気で」

その笑顔からは、寂しそうな印象が消え去っていた。
逆光の中にいる彼女は綺麗で、どうしようもない程、手が届く気はしなかった。

彼女が廊下を駆けていく音が、耳に響いていた。
僕はその場で立ち竦んでいる。
何も言わず、何も思わないで立ち続ける。




暫くして、立っているのも苦しくなり、僕は自分の席に座った。
静かだった。黒板の黒がいつもより深く、沈んで見える。

頭の重さにも耐えられなくなって、机にうな垂れた。
机の生温さに、もうじき夏なんだなぁ、と思う。

そして、急速に、僕の初恋が終わったことを理解した。



772 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 22:07:06.90 ID:piZfArSm0

あの時喉に出かかった言葉を伝えたら、何かが変わったのだろうか。
僅かな接点を生かして彼女と触れ合っていけば、違った時間を手にしていただろうか。

女々しいのは分かっている。
だがしかし、今だけはIFの世界に浸かるのを許して欲しい。
まだ、この手には感触が残っている気がするのだ。
彼女がこの手をすり抜けて、消え去ってしまったような気がするのだ。

もしも、この言葉を伝えていたならば。







わざとらしく椅子から転げ落ちた。
扉は開かれない。
ぽつりと呟かれた、僕が伝えられなかった言葉。

涙が、零れ落ちていた。



[ 2009/06/30 20:22 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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