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面をつけた男のようです


373 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:19:09.29 ID:1tTe3wef0

( <●><●>)「怖い話ですか?」

( <●><●>)「そうですね・・・怖いかどうかは分かりませんが今でも不思議というか心にしこりが残っているような話なら知ってますよ」


―――――――――――


――――――――
あれはまだ、蝉は鳴いていないというのにうっすらとした汗が
肌に張り付いるようでずいぶんと気持ちが悪い日でした。

こんな天気では絵日記なんて元々進まなかった気がさらに進まなくなる。

私は少しだけ気分を変えようと台所へ向かい、
冷蔵庫に入っている麦茶を取ろうと扉を開けました。

( ><)「お兄ちゃん、牛乳も取って欲しいんです」

後ろから聞こえた声は弟のものでした。

牛乳が嫌いではなかったのではなかろうか。

外部との温度差でしずくのついたパックと、ついでにコップを取って渡してやると弟は答えた。



376 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:23:15.62 ID:1tTe3wef0

( ><)「僕が飲むんじゃないんです」

野良猫でも入れたのだろうか。

弟の返事でさらに疑問が深まりつつも、
居間にかけて行く弟に続いて歩くとそれは居たんです。



( ∵)







面をつけた男のようです



378 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:26:06.54 ID:1tTe3wef0

男が椅子に座っていました。

真っ白で厚くはあるが繊維でできた・・・・・・あれは紙の一種なのでしょうか。
特有のボコボコとした表面に筆で三つの黒い点が力強く描かれた面をつけていました。

それ以外は白いシャツに黒いズボンが似合っていてすらっとした、
けれどそれ以上にはこれといって特徴という特徴がない男でした。

そんな男がまるでこっちを見ているようなのです。

まるでと言うのは、男のつけている面にはどう見ても
目玉を出しているような穴がないからなのですが。

私は不気味さのあまり少しだけ息をのみました。

しかし、弟はそんなことも気にせずに平然に男の向かい側の椅子に座りました。

そしておぼつかない手つきでコップ牛乳を入れると、弟は男にそれを差し出しました。

男は正面に向かい直して弟に差し出された牛乳を見るように少し下に顔を傾けました。
そしてその後ゆっくりと顔を上げて面と弟の視線が合うようにしてからゆっくりと会釈をしました。

見慣れた居間に弟と見知らぬ面をつけた男。

これほど違和感のある光景を私は今後見ることが出来るのでしょうか。

動揺している私を置いて、当の二人はそれが当たり前かのように座っていました。

( ><)「お兄ちゃんも座るんです」



380 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:30:12.78 ID:1tTe3wef0

弟に言われたのならしょうがない。

私は弟の横に座ると、持っていた麦茶を透明なコップに注ぎました。

弟にも麦茶はいるかと聞いたのですが

( ><)「僕は飲まないんです」

と、こんな調子で返されてしまいました。

大して気温が高くなくても体内の水分は結構持ってかれているはずだから
飲むのに越したないのだけれど、本人が言うなら仕方がない。

私は自分に納得させるように先ほどの麦茶を飲みました。

意外と体は欲していたのか、
普通に飲んでいたつもりがコップの半分ほども飲んでいました。

ふと向かい側の男を見ると男のコップの中の牛乳も半分ほども減っています。

いつの間に飲んだのでしょう。

本人に聞くのはなんだか憚れたので横に座っている弟に聞いたのですが
弟は少し不思議そうな顔をしてさっき飲んだんですと答えただけでした。

大体こんな奇妙な存在を簡単に許容ができるのでしょうか。

ですが、どうしていいかわからない私はなんとなしに膝に置いた手を握り締めました。

汗で湿った自分の手は間違いなく不快でした。



382 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:34:14.37 ID:1tTe3wef0

* * * * * * * * * * * * *

その後も狭い居間に三人もいるのに誰もしゃべることはありませんでした。

その静寂はなんだか私のしゃべらなければという気持ちをひどく焼きつけていきました。

ですがそんな気持ちとは裏腹に、
私は面をつけた男のこと以外で特に話題にすべき話題持ってはいなかったのです。

会話の糸口を掴もうと私はふと、弟の方を見やりました。

すると、なぜか弟はテーブルの傷を指でゆっくりなぞっているのでした。

どうしたのですか。

テーブルを囲う静かな空気を崩してしまおうと考えもなしに聞いてみました。
しかし手持ちぶさたで仕方なしにした行動を聞かれれば、弟も戸惑うのではなかろうか。

自分の質問の結果が出たのは言葉が口をついた後でした。

しかし弟はしんみりとテーブルの傷から目を逸らさずに言った。

( ><)「ちょっと気をつけてるだけなんです」

はて。時たま不思議に思うことはあるのですがこんなにも会話がかみ合わなかったことはあるのでしょうか。



383 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:37:47.52 ID:1tTe3wef0

弟は地面につくことのない足をテーブル下でぶらつかせています。

ふむ。きっと何考えなしに発言したのでしょう。

私は弟の言ったことなど気にせずに身にかかる緊張を取ろうと
右手を自由にして少しだけ麦茶を喉に通しました。

* * * * * * * * * * * * *

コップの表面にできた結露がテーブルに垂れました。

三人の間にいまだに会話らしき会話はありませんでした。

私はこの静寂に耐え切れなくなりました。

なんとなしに私は弟に問いかけてみました。


宿題は終わりましたか。

( ><)「まだやってないんです」

友達と遊びに行かないんですか。

( ><)「引っ越したばっかで友達なんてこっちにいないんです」

何か冷たいものが欲しくはありませんか。

( ><)「欲しくないんです」



386 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:41:27.59 ID:1tTe3wef0

( ><)「はい」

あの。

( ><)「なんですか、お兄ちゃん」

ビロード・・・あのお面をつけた男の人は誰ですか?

( ><)「あぁ・・・・・・お兄ちゃん」

名前を言ってはいけないんです。


弟がそう言うと面をつけた男は椅子から立ち上がると弟の横へと来たのです。

男が弟に手を差し出すと弟はおずおずとその手を掴んだのでした。

そして二人は私のことを気にすることもなく、手を繋いでドアの方へ向かったのです。

扉を開けてれば一足早く来た夏の光が二人を包みました。

「バイバイなんです」

あぁ、さようなら。


私は振られた手はを返すことが出来ませんでした。

何が起こっていたのかわからないのに気づけば溢れ出た涙を
この手二本で果たして覆い隠すことが出来ましょうか。



388 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:45:43.40 ID:1tTe3wef0

~~~~~~~~~
  _
( ゚∀゚)「オイ! しっかりしろ!」

「えっ・・・あぁ」

男の人が目の前にいて私の頬を軽く叩いていまいした。

重い体を起こしてみれば、着ていたTシャツが体にぴったりと貼りついて気色が悪いものでした。

なぜか呼吸は少しだけ苦しくて体中が冷たいです。
  _
( ゚∀゚)「良かったな、坊主」

男の人が声をかけてくれました。

しかしその男性の方へ顔を向けた私はそんなことなどどうでも良くなりました。

えぇ、だってどうでもいいじゃないですか。

そこにいたのは冷たくなった弟なんですから。



390 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:50:44.09 ID:1tTe3wef0

そこら辺の記憶はいまいち曖昧なのですが、
どうやら私たちは親に連れられて川辺で遊んでいたようなのです。

その川辺ではたくさんとは言わないながらも何組もの家族がバーベキューをしていて
私たちの周りにも川に入って戯れていた子供はいたはずなのです。

それなのに私たちだけ、私たちだけが突然溺れだしたとみなが言うのです。

あの時私が見た男は一体なんだったのでしょうか?

あの男が連れて行ったとしたら
何故弟はあんなにも依然としていられたのでしょうか?

もしもあの時、弟の名前を言っていなかったら今頃弟は元気に暮らしていたのでしょうか?

今でもとても不思議に思います。


・・・・・・私の話はここで終わりです。







394 :面をつけた男のようです:2009/06/19(金) 01:53:46.61 ID:1tTe3wef0

>>376>>378>>380>>382>>383>>386>>388>>390

支援ありがとうございました。

お題


ミルク
初夏
テーブル


ジャンル指定:ホラー

[ 2009/06/19 23:20 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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