FC2ブログ










(-_-) ナイトクルージングのようです


17 :(-_-) ナイトクルージングのようです:2009/05/28(木) 02:58:05.19 ID:FkU0x8oN0

(-_-)「あ……」

目が覚めたら、世界は夕焼け色につつまれていた。
睡眠時間およそ14時間。目覚めの意識が飛び込んだのは、1日の終わりが始まる時間帯。
開け放した窓、網戸の隙間から涼しげに吹き込む風。
いまだ春の陽気をふくんだそれも、僕の気持ちを爽快にさせてはくれない。

また、寝過ごしてしまった。
ざらざらした畳の上で寝返りをうつ僕、世界から置いてけぼりされたような気持ち。

(-_-)「またか」

(-_-)「いい加減にしようよ、僕」

もう何度目かも分からない渇を、弱弱しく自分に入れるも、体はだるいことに変わりない。
結局のところ、僕のダメ人間さ加減は変わらないんだな、と思う。
どこかで見た「どうしようもない、と言うようなやつは、そもそも何も考えていない」という言葉が頭をよぎる。
でも、そんなことにかまっているような奴は、そもそもこんなヒキニート生活は送っていないだろう。



18 :(-_-) ナイトクルージングのようです:2009/05/28(木) 02:59:03.97 ID:FkU0x8oN0

この家の塀にへだてられた道路は、通学路に指定されている。

夕陽で赤く染め上げられた縁側に腰掛けていると、小学生特有の、甲高い笑い声が聞こえた。

(-_-)「下校時間、か……」

僕が子供だった頃のように、他愛もないことで笑っているのだろう。
今日の体育でヘマをしてしまったとか、帰り道の石蹴りで鬼になってしまっただとか。
でも、ほほえましい気持ちは、今の僕には毒でしかない。

(-_-)「……うるさいな」

あたたかな気持ちはしんしんと僕の心の奥へ染み入り、どす黒いものへ変わって、毒素を撒き散らす。
とたんに笑い声は僕へ向けられたものへと、僕を揶揄したものへと、変わっていく。



19 :(-_-) ナイトクルージングのようです:2009/05/28(木) 03:00:09.58 ID:FkU0x8oN0

暗い、陰気、目立たない、つまらない、

(-_-)「やめろ」

やめてくれ。踏み入らないでくれ。僕はただつつましく。誰にも迷惑は。ああ。

夕陽も、そんなにまぶしく、照らさないでくれ。

いつからだろう。ささくれに過敏に反応するようになったのは。
いつからだろう。こわばった心をやわらげるすべを失ったのは。
いつからだろう。昔の自分と今の自分を、分けて考えてしまうようになったのは。

(-_-)「やめよう……」

仰向けに倒れこんで、腕で目を覆った。世界は優しくなる。
くだらない自問自答はここ3年、さんざん繰り返した。
その結果何も変わらないなら、もはや僕はどうしようもないのだ。あ、また、どうしようもないって。
ほらね。ダメだ。



20 :(-_-) ナイトクルージングのようです:2009/05/28(木) 03:02:03.78 ID:FkU0x8oN0

母親の用意してくれた夕食を軽めに取って、お風呂に入って、つけっぱなしのパソコンに向かう。
ネットの情報は無尽蔵で、いつまでも僕と無機質に向き合ってくれる。ヒキ生活には欠かせない相棒だ。

でも、やっぱりそれに耐えられないときもあって。
そんなとき僕は、自分のキャラクターを作り変えてチャットをする。


ホライゾン > いやー、ヒッキー君はほんとおもしろいお!ww

ツン > そうよねえ、毎日のようにチャットしてるのに、毎回笑わせてもらってるもんw

ヒッキー > いやいや、そんなことないよ(^^;)リアルでは全然暗い奴だしw

ショボン > へえ、意外だなー。

ツン > みんな、話題変えてごめん!確か住んでるところ近いよね?空見てみて!星がすごく綺麗!

ホライゾン > おっおっおっwwwwwツンが珍しくロマンチックだおwwwww

ツン > 内藤、明日覚えときなさいよ!

ヒッキー > へえ、ホライゾンは本名内藤って言うんだw

ホライゾン > ちょwwww本名は無しだおwwwww


(-_-)「……」



22 :(-_-) ナイトクルージングのようです:2009/05/28(木) 03:03:33.30 ID:FkU0x8oN0

ショボン > はは。ところで、たしか僕ら、みんな同じぐらいの年齢だよね?

ホライゾン > だおだお!オフ会とかしてみてもきっと楽しいお!

ツン > オフ会って言っても、実は私とホライゾンはリア友なんだけどねw

ショボン > ええ、そうなの?ああ、だから本名……言ってくれればよかったのに。

ホライゾン > あらら、言っちゃったのかおwそれこそオフ会でもやっちゃうかお?


(-_-)「……まずい。」


ヒッキー > ごめん、ちょっと急な用事できたー。また今度ね、みんな。

ヒッキー さんが退室しました。



23 :(-_-) ナイトクルージングのようです:2009/05/28(木) 03:05:05.78 ID:FkU0x8oN0

パソコンの電源を落として、一通り情けない気持ちにさいなまれた後、ふと、散歩に出てみようと思った。
何がきっかけというわけでもない。夕方の小学生の笑い声と、同年代のチャット仲間の輝きに、少し触れてみたくなった。
外に出るのは何ヶ月ぶりだろう。前に出たのは、ネット通販の振込みのためだったっけ。

(-_-)「はは」

かすれた笑い声がこぼれた。本当に情けないな、僕は。

しばらく時間をつぶして、親が寝静まった頃を見計らって、家を出た。

(-_-)「いってきます……なんちゃって」

時刻は深夜2時。服装は上下ジャージ。職務質問でもされたら、どうしたもんだろう。
目的地を近場の広い公園にさだめて、ゆっくりと歩き出す。
空気はまだ冷たくて、歩くとほどよく僕の頬をなでてくれる。
静まり返ったように思える街でも、しんみりとした街の音が確かに存在して、心地いい。
外も悪くないものなのかもしれない。そんな考えが、ゆっくりと闇に溶け出していく。
いつものように、後悔を伴って。



24 :(-_-) ナイトクルージングのようです:2009/05/28(木) 03:06:08.25 ID:FkU0x8oN0


ひきこもりはじめたとき。
僕と同じ歳の人たちが、甲子園で活躍していた。
僕と同じ歳の人が、アイドルになった。
僕はそれを、テレビで見ていた。

気が付くと、僕より年下の人たちが、甲子園に出るようになった。
僕より年下の人が、アイドルになった。
テレビという存在も、億劫なものになった。

(-_-)「……どこで、」

どこで、間違ったんだろう。
何を、間違えたんだろう。



26 :(-_-) ナイトクルージングのようです:2009/05/28(木) 03:07:38.40 ID:FkU0x8oN0

公園に着いた僕は、大きく深呼吸をした。たかだか500mばかり歩いてきただけで、息切れをしていたから。
自分の体力のなさよりも、それに今まで気づかなかったことに、少しさびしくなった。

ベンチに座って、夜空を眺めた。外灯の消された公園から見る星は、信じられないぐらい綺麗だった。
猫の爪のようになっている月が優しくて、星が世界をつつんでいる。

(-_-)「…ぅ」

なぜか、涙ぐんでいる自分に気が付いて、驚いた。

まだ、こんなことで心が動かせるんだ。僕は、世界は、まだ、動けるんだ。
僕らもみんなと同じ、人間なんだ。星が綺麗、それだけで感動できる、同年代の、みんな、同じ。
そんな考えがどんどん膨らむにつれて、涙があふれてきた。



27 :(-_-) ナイトクルージングのようです:2009/05/28(木) 03:09:14.97 ID:FkU0x8oN0

死んでいるのと同じような、今の僕。何も、何も無い。
生きているとも言えないのに、死にたくなんてない。自分が、情けない。

どこで間違えたかなんて話じゃなくて、間違えてすらない。
何も、していなかったんだ。

(-_-)「あ、ぁ、う……うぅ」

頭に浮かんだ言葉が、僕を攻め立てて、逃げ場をなくしていく。
言語化できない感情の波に押し流されながら、嗚咽を漏らしながら。
思考の隅に追いやられた僕は、ようやく自覚した。

まだ、生きてもいない。そんなのは、嫌だ。


ひとしきり泣いて、顔をあげた。
悔しかった。今の自分が、ただただ悔しかった。

足下に石が転がっている。
その石を拾い上げて、振りかぶって、思い切り放り投げた。
高く遠く舞い上がり、一瞬、闇夜にとけた石は、芝生に音も無く落ちたようだった。

明日は、なにか、なにかしてみよう。
きっとそれが、僕を変えてくれる。そう信じて。


[ 2009/05/28 20:06 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

ループするのか進むのか。

良いなぁ、コレ
[ 2009/05/29 18:27 ] [ 編集 ]

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/1879-f118ebe0