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川 ゚ -゚)すっぽんマイスターズのようです从 ゚∀从


466 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:06:44.18 ID:AjfeRotP0

西暦2117年13月11日。
月面に存在する人類居住区の一つ、静かの海市のとあるビルに設置された女性用トイレ。
その手前から4番目の個室にて一つの死闘が繰り広げられていた

川 ゚ -゚) 「ふんっ、ハァッ!」

ぎゅっぽん!

川 ゚ -゚) 「ふんっ、ハァッ!」

ぎゅっぽん!

燦然と煌めくどどめ色のラバーカップ(俗称すっぽん他)を握りしめ、
目の前の便器に向かって渾身の力を篭め振り降ろす、という単純作業。

一見酷く簡単な作業に思えて、実際は絶妙な力加減が必要とされる妙技を、
先程から完璧なフォームで繰り返している彼女こそが、
地球連邦公衆衛生局が誇る7人のすっぽんマイスターが一人、撃震の素直クールである。



467 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:08:27.78 ID:AjfeRotP0

高々と掲げられ、燦然と煌めくどどめ色のラバーカップは、
既に労働の成果たる液体に塗れているものの、彼女の流麗なる黒髪には一切汚れが付着していない。
これもまた一流のプロレタリアが発する革命的オーラ故の超技と言えよう。

ぎゅっぽん!

川 ゚ ー゚) 「むぅっ! 敵もさる者、なかなか一筋縄ではいかんなっ!」

一旦作業を止め便器の中身を覗き込むが、水が汚れた程度で一向に流れる気配がない。
にも拘わらず、不敵な笑顔で頬に滲んだ珠の汗を拭う様は、強敵に出会ったときに闘士が見せるソレに酷似していた。


何故彼女がここまでの苦戦を強いられているのか、
その原因は今を遡ること30分前、とある人物がこのトイレを利用したことにある。



468 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:10:15.09 ID:AjfeRotP0

同ビルにて当日行われた、全銀河錬金術師連盟総会において出席した、パレムキフフス星出身の超有名人。
『無駄毛の錬金術師』ことちんぽ・ッ=ぽ女史(21歳)。
そう、彼女こそが全ての元凶にして、今回のラスボスなのだ。

正確には彼女自身ではなく、彼女の体から抜け落ちた一部分――――。

ずばり、下の毛である。

驚かないで貰いたい。何故なら女史はムダ毛の錬金術師だからだ。

女史の毛が一日に10センチも伸びて、12時間周期で生え換わるとしても驚かないで貰いたい。

何故なら女史はムダ毛の錬金術師だからだ。伊達じゃないのである。



469 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:11:13.34 ID:AjfeRotP0

ともかくそんな理由で詰まったトイレからは、毎秒400ミリリットルの勢いで水が流れ出し続け、
数分後にはトイレ内一帯の床を水浸しにするという、大事件が発生してしまった。
(この時何故水が止まらなかったかは、議論の余地があるところである。
 一説によれば秘密結社「自然が呼んでいる団」による卑劣なテロ行為との噂も)

ビル内は汚染物質の流出に一時騒然とし、多くの人々が大パニックに陥った。
消防や警察だけでは到底手に負えない事態、一時は連邦軍の出動さえも検討されたが、
そこに立ちあがったのがたまたまトイレ掃除のパートでビル内にいた、素直クールだったのだ。


しばし考えに耽っていた素直は、おもむろに構えを取って便器を睥睨した。
深い呼吸が繰り返される度、空気は真冬の大気の如く張り詰め、彼女の心は明鏡止水の境地に近付く。

並の人間なら今トイレに踏み込んだだけで失禁してしまうだろう。



470 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:12:21.80 ID:AjfeRotP0

川 ゚ -゚) 「うぉぉぉぉぉっ! ふんっはぁっ!」

ずっぽん! ずぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅっ!

刹那!

必殺のオーラを放ちながら打ち出されるラバーカップは、正確に便器の水溜り部分を直撃。
更に物凄い速度で微振動する両手からは衝撃波が発せられ、汚水を攪拌・分解し異物を粉砕する。
便器が持つか否か、ギリギリの選択での一撃、だったのだが!

川; ゚ -゚) 「うむむ……。私の必殺バキュームすっぽんにも屈せぬとは――!」

驚くべき事に、異物(女史の下の毛)は未だ管内にしっかりと留まっていた。

一層淀んだ汚水を前に、思わず崩れ落ち膝をつくクー。

これまで如何なる強敵に対しても絶大な効果を上げてきただけに、彼女の落胆は大きい。

川; ゚ -゚) 「くっ、ぅ……。駄目なのか、やっぱり私じゃ……あのムダ毛の錬金術師には勝てぬというのか……!」

涙を堪えんと歯を食い縛るが、胸中に渦を巻く昏い感情に視界が歪む。



471 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:13:46.95 ID:AjfeRotP0

足首近くまで水没したトイレ内。
容赦無く染み込んでくる汚水の臭気と、肌を蒼褪めさせる冷徹な水温と。
先程までは闘志を煽っていたはずのそれらが、今は堪らなく辛い。

それでも尚、彼女が此処に留まれていたのは、一つの強い想いのせいだった。



472 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:15:02.70 ID:AjfeRotP0

――

川 ゚ -゚) 「……そう」

川 ゚ -゚) 「かつてトイレ掃除は、下級の労働者の仕事だと蔑まれていた……」

川 ゚ -゚) 「超過労働を容赦無く課せられ、なのに働けど働けど、暮らしは楽にならず」

川 ゚ -゚) 「それでも文句一つ言わずに掃除婦を続けていた母は、私が幼い頃に過労で死んだ……」

川 ゚ -゚) 「親類の家をたらい回しにされ、結局高校にすら通えなかった私は母と同じ掃除婦の仕事に就いて」

川 ゚ -゚) 「そして絶望した」

川 ゚ -゚) 「洗った端から汚していく者達、埋まっていると見れば異性用のトイレに侵入する恥知らず、」

川 ゚ -゚) 「わざと流さない者、水遊びに興じる子供達、そしてトイレットペーパー泥棒に、チラシ業者……」

川 ゚ -゚) 「トイレの利用法を弁えぬ者達に、目にモノ見せてやるためにっ!」

川 ゚ -゚) 「私は誰にも文句を言われない程、美しく整ったトイレを作り上げると誓った!」

川 ゚ -゚) 「そうして今の社会を築き上げてきたんだっ!」

――



474 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:16:47.94 ID:AjfeRotP0

川 :: -::) 「こんなところで、こんなところで……っ、負ける…訳には……!」

川 :: -;;) 「今迄散っていった掃除婦≪戦友≫達の為にも、負ける訳には……!」

脳裏を駆け巡った走馬灯。利用者達が、トイレが、そして何よりも戦友たちの笑顔が。
彼女に再び立ち上がる勇気を、闘志を、力を与えていく。
立ち直り始める心。

しかし冷静な部分はクーに語り掛けていた、『このままではヤツに勝てない』と。

川 ゚ -゚) 「……何か、何か方法があるはずなんだ……。今迄だって、そうだった……」

彼女の記憶の奥底。
強敵≪とも≫達との闘争の思い出≪メモリー≫。
水浸し、配管破断、しつこいビラ、下痢便、誰かさんたちの性交痕、そして究極の詰まり!

蓄積された記憶。

そこにはいつももう一人の姿があった。



475 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:18:19.54 ID:AjfeRotP0

川 ゚ -゚)「例え一人では打ち倒せない敵でも……」

川 ゚ -゚)「「二人の力を合わせれば、きっと勝てる!」」从 ゚∀从

川 ゚ -゚)「――!」

突然背後から響いた声は、全く調子を合せていないのに完璧なハーモニーを奏でた。
はっとして振り返るクーの瞳に映った人影。

それこそが彼女がこの戦いを初めた時からの戦友にして親友、
すっぽんマイスターが一人、濁流のハインリッヒの堂々たる勇士だった。
二つ名の象徴である、青い放水ホースを構えたハインリッヒは、にやりと満足げな笑みを浮かべて。

从 ゚∀从  「それでこそクーだ! 
       危ない予感がしたから急いで駆け付けたが、立ち直る手助けはいらなかったみたいだな!」

川 ゚ -゚) 「……。……ハイン……」



486 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:50:31.09 ID:AjfeRotP0

絶望に打ちひしがれていた時でさえ零れなかった涙が、クーの眦から頬を伝い落ちる。
ハインは腰を屈めると、ピンク色のゴム手袋をつけた指で滴を拭い取り、
今度は幾分優しげな、そして勇気付けるような微笑みを滲ませ、そのまま手を差し出した。

从 ゚∀从 「さぁ、休んでる暇はねぇぞ。多くの人たちが凱旋を待ち侘びてるんだ」

川 ゚ ー゚) 「ふふっ。英雄……なんて、思うよりずっと辛いものだな」

从 ゚∀从 「やりがいはあるだろ?」

川 ゚ ー゚) 「まったく。難儀な仕事だ。……それでも、天職だからな!」

クーの碧いゴム手袋とハインのピンクのゴム手袋。
二つがしっかりと繋がれる。



488 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:54:44.80 ID:AjfeRotP0

滅茶苦茶に汚れた姿でありながら、
どこか神々しい雰囲気を纏うクーの横顔をハインが見遣り、クーがそれに目線で合図を返す。

同時に頷いて便器を見下ろす彼女たちの瞳には、敵を叩き潰すという気迫が煮え滾っていた。

クーの右手にはラバーカップを、ハインの左手にはホースを。

準備はすべて整った。

川 ゚ -゚) 「……いくぞ!」

从 ゚∀从 「おう!」



川 ゚ -゚)「「―――っ、やああああぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」」从 ゚∀从



491 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 21:57:57.64 ID:AjfeRotP0

――

3時間後。

完全勝利の記者会見を終えた二人は、
詰めかけた大勢の観衆達に津波の如き拍手で見送られながら、ビルの前を後にした。

夜時間の迫る静かの海市の市街は、人工灯の橙色と陰影が複雑に溶け合い、夕闇色を為している。

掃除用具一式を運びながらの徒歩行は緩い歩み。
疲労困憊の筈なのに、二人の顔には達成感が満ちていた。

从 ゚∀从 「今日も良い仕事したなぁ……」

川 ゚ -゚) 「ああ、疲れたが……。あれだけ感謝されると、悪い気はしない」

从 ゚∀从 「もっと素直に喜べって! これぞ英雄の醍醐味だよな!」

川 ゚ ー゚) 「ふふっ、そうかもしれないな。……いや、きっとそうだ」

从 ゚∀从 「ところで……。今こんな話をするのもなんなんだけどさ……」



493 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 22:01:38.92 ID:AjfeRotP0

急に神妙な表情になったハインに首を傾げながらも、クーは問い返す。

川 ゚ -゚) 「ん? どうした? 言いたいことがあるならはっきりと頼む」

从 ゚∀从 「あー、んー……わかった」

川 ゚ -゚) 「……」

从 ゚∀从 「ちょっと臭い」

Σ川 ゚ -゚) 「なっ!?」

从 ゚∀从 「いや! 臭いは俺達の勲章だと思うんだ! うん! 思うんだ!」

从 ゚∀从 「でもやっぱり今日はちょっと臭すぎ」

川 #゚ -゚) 「……」

从 ゚∀从 「……」



495 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 22:05:04.92 ID:AjfeRotP0

二人の間に深淵が横たわる。
一触即発の空気。
しかして、汚水に塗れたクーの服からは、実に馨しい臭いが立ち昇っているのも事実であり。

从 ゚∀从 「さっさと家帰ってシャワー浴びようぜえええぇぇぇぇぇぇぇ――――――」

沈黙を破り、一目散に駆け出すハインから数秒遅れて、

川# ゚ -゚) 「……!」

青筋を立てた追跡者が、猛追を開始する。

そんな2人の姿を星の天蓋越しに地球だけが見守っていたとさ。


彼女達の騒々しい1日は、まだまだ終わりそうもない。
そしてこれから先もきっと、続いていくのだろう――。


川 ゚ -゚)すっぽんマイスターズのようです从 ゚∀从


終わり!







498 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/25(月) 22:08:31.10 ID:AjfeRotP0

>>429>>431-432
「月とすっぽん(トイレの)」
「ラバーカップ」
「無駄毛の錬金術師」

がお題でした。



[ 2009/05/27 22:16 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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