FC2ブログ










(´・ω・`)~のようです


965 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 09:07:26.05 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` ) 「手塚治はいい…」

開口、彼はそう呟いた。
僕には分からない。

(´・ω・`)「はあ」

よく分からないので曖昧模糊とした返事を返す。
彼は滑らかに続ける。
 _、_
( ,_ノ` )「天才とはかくも美しい」

(´・ω・`)「まあ」

分からない。
分からないので彼を見ないようにミルクを啜る。
温いが甘さは変わっていないなと思う。
 _、_
( ,_ノ` )「ふふっ…君に分かるかな」

(´・ω・`)「いやぁ」

分からない。



966 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 09:09:49.18 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )「大丈夫、難しいことではない。心で感じるんだ」

(´・ω・`)「へえ」

分からない。
 _、_
( ,_ノ` )「さあやって見て」

(´・ω・`)「いやぁ」

分からない。
ずるずる、ミルクは甘い。
 _、_
( ,_ノ` )「ふふっ…照れ屋だな」

(´・ω・`)「まあ」

それにしても
 _、_
( ,_ノ` )ニヤニヤ

変な男だ。



967 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 09:10:47.20 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )「私が彼の話で好きなのは悲恋だ」

(´・ω・`)「ほう」

僕は何となく相づちを打つ。
男はまだニヤニヤしながらタバコを胸のポッケから取り出した。
 _、_
( ,_ノ` )y━「彼は数えきれない話を描いているが、特に悲恋の話は素晴らしい」

(´・ω・`)「ふうむ」

いおでこに男の視線が感じなくなったので、顔をあげてちらりと男の目を覗く。
目は齢を重ねた者に相応しいものだったか、瞳は子供のように光っていた。
僕の中でちょっぴり好感度が上がった。
こういう人間には心底悪い奴はいない。
十年以上生きている僕の的確な勘だ。
男はタバコを指で弄んで話を続ける。



969 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 09:13:39.23 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )y━「特に人と人外が恋する話は泣けた」

(´・ω・`)「ああ」
 _、_
( ,_ノ` )y━「人種を越えた愛はあるが種族…いやいや機械と人間じゃそれ以前の問題じゃないか」
 _、_
( ,_ノ` )y━「大きな、大き過ぎる壁、山がある…」

(´・ω・`)「そう」

重厚な音が響いて男の目を更に輝かせた。
白い煙りと独特の匂いが充満して、ぼやける視界の中で男は笑顔をまた僕に向けた。
僕は慌てて視線をミルクに戻す。
白いカップの黄ばんだ染みが気になった。
あとミルクが無くなりそうだ。
 _、_
( ,_ノ` )y━・~「まあ、ゆったりしてくれ」

(´・ω・`)「…はい」

男が何を言ってるのかよくわからないし、おかしかったが笑顔は優しかった。



970 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 09:15:26.67 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )y━・~「まあね、そういう話が好きなんだ私は」

男がタバコを吸う姿は形容しがたい哀愁が漂っている。
僕は唇を舌で舐めて耳をピンと立たせて話を聞き漏らさないようにした。
行動は無意識だったが、何故か男の話を聞き漏らしてはいけないと思ったのだ。
テノールの声が煙りと共にやんわりと空気に投げ出された。
 _、_
( ,_ノ` )y━・~「ハッピーエンドじゃないのが好きなんじゃない。寧ろそんなのは嫌いだし出来ることならその二人にも幸せになって貰いたいと思う」

(´・ω・`)「うん」
 _、_
( ,_ノ` )y━・~「だがそうはならない。話は必ず愛し合ってる二人を差別し迫害し、不幸にする」

(´・ω・`)「うん」
 _、_
( ,_ノ` )y━・~「読者の私たちには何も出来ないし変わらない。…君にこのもどかしさが分かるかな」

いや、悔しさ…という言葉に近い感情かも知れないな、と男は付け足した。



971 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 09:17:22.97 ID:eUdjEGyGO

しかし僕は分からない。
高等な人間の感情を察する事は出来ても理解には苦しむ。
そう男に伝えると、賢いなと笑って鍋に残っていたミルクを黄ばんだカップに足してくれた。
誉められたのとミルクを貰ったのと、両方が年甲斐もなく嬉しかった。
男は笑っている。
 _、_
( ,_ノ` )y━・~「まあ、読者にもその二人にもどうすることは出来ないのだ。何故かわかるかい」

(´・ω・`)「えと…」

きかいだから。
僕はいまいち分からないながらも答える。
男は嬉しそうにまだ半分も残ってるタバコを消した。
 _、_
( ,_ノ` )「やはり賢い。そうだよ、機械だからだ。片方が機械だからいじめられるんだ」

(´・ω・`)「なんで」

なにせ僕は分からない。
そもそもさっきから「きかい」というのが分からないのだ。
それも伝えると男は声をあげて笑った。
ちょっぴり悔しかった。



972 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 09:20:48.93 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )「正直すまなかったな…。そうだな、じゃあここで例え話をしてあげよう」

(´・ω・`)「たとえ」
 _、_
( ,_ノ` )「ま、話を聞いてくれればいい」

僕は長くなりそうな話に向けてミルクを啜った。
ミルクは注いで貰ったばっかりだったためか、少し熱く舌が火傷した。

 _、_
( ,_ノ` )「あるところに冴えない男がいたんだ」

少し掠れた声はなにかを懐かしんでいるようだった。
僕も何故か懐かしい感じがする。
耳がぴくぴく動いた。
 _、_
( ,_ノ` )「男は家族も友達もおらず、とてもとても孤独だった」
 _、_
( ,_ノ` )「そんな孤独と暮らしていたある日、そいつは散歩の途中猫を見つけたんだ」

(´・ω・`)「ねこ」

僕がそう繰り返すと男はにこにこ顔の皺を増やす。
猫と人間、そうか確かにこれなら分かりやすい。



973 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 09:23:02.81 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )「そう、猫だ。その猫はよく見れば足に怪我をしており歩くのがとても辛そうに見えた。」
 _、_
( ,_ノ` )「男は動物が苦手だったがほおっておくわけもいかないだろうと猫を連れて帰って手当てをしてやった」

掠れた声は心地よく、僕は不思議と死んだ母さんのいた安心感を思い出した。

もう十年も前の記憶だった。
 _、_
( ,_ノ` )「猫は手当てのお陰でなんとか持ちこたえた。男は猫を助けたんだ」
 _、_
( ,_ノ` )「ほっとした男は猫がとても美しい毛色なのに気付いた。茶色とも黒とも似つかない色で、太陽が当たるとキラキラと虹色に輝いていた」

そういえば母さんも綺麗な毛をしていたな、と僕は思う。
…あれ?



979 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 10:03:37.32 ID:eUdjEGyGO

男は歌うように続ける。
 _、_
( ,_ノ` )「猫は動けるようになるといつの間にか逃げてしまった」
 _、_
( ,_ノ` )「男は悲しんだ。猫が家からいなくなったことで、紛れていた同居人も帰ってきた。孤独と共に男は泣いた」

存在したものが消えてしまう、頭に浮かべると胸がくしゅんと痛んだ。
男も辛そうな顔をしている。
 _、_
( ,_ノ` )「それから数日後、嵐の夜に男の家に女が尋ねてきた。いやに綺麗な髪をしていた」

(´・ω・`)「おんな」

女とは何か、と男に聞く。
男は少し笑って答える。



980 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 10:07:03.15 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )「うん、人間の雌だ。赤ちゃんを生めるんだ」

“母さんはよく人間の雌に化けたんだよ?”
 _、_
( ,_ノ` )「女は泊まらせてくれと男に頼んだ。男も嵐の中ほおっていくわけもいかず、家に泊めた」

“人間に会いにいくのに猫の姿もままじゃおっぱわれちまうからね”
 _、_
( ,_ノ` )「女はその日から何故か男の家に住み着き、嵐が去っても帰ろうとしなかった」

“あたしはね、なんとかして恩返しがしたかったんだよ”

 _、_
( ,_ノ` )「男は帰らない女と暮らす中、徐々に女に惹かれていく」

“なのに人間様なんかに恋をしちゃったのさ”

ああ、
僕はこの話は聞いたことがある。



982 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 10:10:38.20 ID:eUdjEGyGO

(´・ω・`)「ああ」

僕はため息ともつかないものを漏らした。
 _、_
( ,_ノ` )「しかし男は感が良かった。本を沢山読んだせいかもしれない。」

“何十年もすると猫は化けれるようにはなるけど、それにも条件があってね”

自然と母さんの声も重なる。
まるで合唱のようだ。
 _、_
( ,_ノ` )「彼女の毛並み、それはあの時助けた猫そっくりだった」

“人にバレちまうと二度化けられないんだよ”

(´・ω・`)

悲しいというかもどかしいというか、僕は突然猛烈な感情で胸が一杯になった。
そして男の言っていたことが理解出来た。



984 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 10:13:05.80 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )「彼女と愛し合った夜、男は彼女に聞いたんだ」

(´・ω・`)

どうにも出来ない、どうすることも出来ない、僕のカップを持つ手が震える。
窓から夕日が差し込み、男の顔が見えなくなる。
 _、_
( ,_ノ` )「“君はもしかしてあの時の猫じゃあないか”」
 _、_
( ,_ノ` )「そう聞くと彼女は一瞬驚いた顔になって、まばたきをすると猫に変わっていた」

(´・ω・`)「母さん」

カップを覗き込んで母さんの顔を描く。
 _、_
( ,_ノ` )「猫はとたんに逃げようとした。しかし男が引き留める」
 _、_
( ,_ノ` )「男は彼女がなんであろうと愛していたのだ。猫の姿でもここにいてくれ、僕を一人にしないでくれ」

“おかしなやつだったよ”

 _、_
( ,_ノ` )「私たちは一緒に暮らした。彼女は子を宿し、とてもとても幸せだった」

母さんの口癖はしあわせだった。



986 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 10:17:28.57 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )「しかし私は元々誰とも喋らず、村人に気味悪がられていたのがいけなかった」
 _、_
( ,_ノ` )「彼女は賢い猫だったので、人語を喋ったのも遠からず原因だ」
 _、_
( ,_ノ` )「私が畑仕事をしている間に彼女が…」

そこで男は初めて言葉を詰まらせた。
言いたくないのだろう。
僕も聞きたくない。
しかし聞き耳を立てていると、すうっと息を吸い込む音が聞こえた。
 _、_
( ,_ノ` )「彼女は、村人に殺された。呪いの猫だと訳の分からないいちゃもんを付けられて」

男の声が震えている。
 _、_
( ,_ノ` )「信じれなかった。信じた時には頭が真っ白だった」
 _、_
( ,_ノ` )「怒りと悲しみの感情がわかると私は村で滅茶苦茶に暴れて、死体は何処に捨てたか聞きだした」
 _、_
( ,_ノ` )「そしてその山に住むようになった」

男の影が揺れている。
僕は唐突にその哀れな姿を慰めてやりたいと思った。



989 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 10:21:52.54 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )「孤独に悲しみが加わり毎日が辛かった。死のうかと何度も思った」
 _、_
( ,_ノ` )「しかしどこかで彼女が死んだということが信じられなくて、私は生き続けた」

苦しかった。
ぼそりと呟く声から男の感情が染み出した。

そしてでも、と繋げる。

 _、_
( ,_ノ` )「そんなある日君を見つけた」

(´・ω・`)「あ」

ああ、
救われた。
 _、_
( ,_ノ` )「昨日のことだな。見間違えたよ、毛並みが彼女そっくりだ」

やっと男の顔が見ることが出来た。
笑顔だった。
僕も笑った。



990 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 10:23:06.18 ID:eUdjEGyGO
 _、_
( ,_ノ` )「…彼女は死んでしまったか」

(´・ω・`)「…うん」

母さんの最後を聞くと男の笑顔はうっすら消えていた。
今は寂しそうな、悔しそうな笑顔だった。
でもその笑顔は母さんの最後に見た笑顔にそっくりで、僕は思わず泣きそうになる。
男はそれを察したのか、僕の頭をまた優しく撫でてくれた。
 _、_
( ,_ノ` )「この話は天才の書く悲しい終わりじゃない。私の好きなハッピーエンドだ」

(´・ω・`)「はっぴー」
 _、_
( ,_ノ` )「幸せ、という事だ」

(´・ω・`)「しあわせ」

“しあわせだったよ”

そういうと男は立ち上がり、僕を抱き上げた。
 _、_
( ,_ノ` )「彼女の墓…、いや死んだ場所に連れて行ってくれないか。久々に話がしたい」

(´・ω・`)「わかった」

僕は男の暖かな手から降りて外に出る。
しあわせ、しあわせ、母さんの口癖を繰り返し繰り返し口の中で呟きながら森の中に入った。
僕は分かった。
しあわせというものが。



992 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 10:24:06.83 ID:eUdjEGyGO




(´・ω・`)「にゃあ」

( ´_ゝ`)「嘘だ嘘だ…俺は長男だってのに叔父者から預かってた猫一匹だなんて…」

(´・ω・`)「にゃ…」

( ´_ゝ`)「ああ、そうだ。きっと誰かが遺書を書き直したに違いない…そう、そうだあの弁護士が…」
(´・ω・`)「…」

( ´_ゝ`)「それか弟者だ…。遺産を全部手に入れやがってあのやろう…今頃童貞卒業してるに違いない…くそう…」

(´・ω・`)「…」

(´・ω・`)「おい」

(;´_ゝ`)「ぬ、ぬこがしゃべ…!?」



993 :(´・ω・`)~のようです:2009/05/24(日) 10:25:27.34 ID:eUdjEGyGO

(´・ω・`)「お前悲しいか」

(;´_ゝ`)「えっ、そりゃか、悲しいけど…」

(´・ω・`)「しあわせになりたいか」

(;´_ゝ`)「俺も人間だし一応…」

(´・ω・`)「…なら」


(´・ω・`)「僕に長靴を買え。話はそれからだ」


お前にもしあわせを分からせてやろう。
僕はそう言って笑った。
男は訳が分からないようだった。







995 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/24(日) 10:28:16.11 ID:eUdjEGyGO

終わりです
支援ありがとうございました!
思い切りさるってさるって死ぬかと思いました!

お題は
>>262「手塚治はいい…」
>>263長靴をはいた猫
です

スレギリギリでごめんなさい
本当にありがとうございました


[ 2009/05/24 20:36 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

いいな。実にいい
[ 2009/05/25 15:12 ] [ 編集 ]

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/1863-141412bd