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('A`)無題


585 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:00:42.69 ID:f9eGzO7A0

日の暮れた高速道路を、リムジン並みに大きな車が走る。
アクセルを踏む少年を突き動かすのは、一通の知らせ。
それは脳裏に響く、幼馴染の悲痛な声。
電話越しに聴こえたそれは懐かしく、しかし涙に濡れ、掠れていた。
詳しい理由は必要無い。彼女がそれを求めるのならばこの宇都宮ドクオ、世界のどこに居ようが彼女を助けに行こう。
少年はわかったと一言残し、電話を切って車に乗り込み今に至る。

叫ぶエンジン、轟く排気。
横を見れば景色はストライプ。夜光灯の橙が時折、閃光の如く一筆に走る。
止まったようにも見える走行車を、豪快なハンドリングで右へ左へ往なす。
タイヤの抗議の悲鳴をメロディに、黒の車体は突き進む。

しかし目の前に迫る光景に、ドクオはち、と舌打ち。

('A`)「自衛警務隊……だと」

脇の出口付近に配備された大きな白い車二台と、光る棒を持った男二人。そして、道路を横切るように張られたテープ。
それはこの先の封鎖を意味する。
そこに到達した車両はスピードを落とし、男の指揮で出口へと流れていく。

五秒後には自分もそこに達する。
だがドクオはアクセルを床に着かんばかり踏む。
一際猛き排気を鳴らし、エンジンが回る。
加速。

('A`)「悪く思うなよ……!」

男を轢かないようにハンドルを大きく右に切り、テープを千切って突き進む。
ミラーは見ない。見なくとも反応は見えている。



586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:03:40.07 ID:f9eGzO7A0

然らば加速。尚も加速。
エンジンの叫びに混じるサイレンの音。
独特の音色は自衛警務隊の証。
法外なチューニングを施された暴走機械を毒により制す、必要悪の正義。
暗闇の中、パトランプに赤く照らされる白のボディが、ミラーに映った。

『少年、止まれ。私達が何故ここに居るのかを理解しての行動か』

短距離型の公回線を利用した直接無線だ。声の主は知らないが、十中八九自衛警務隊。
左手で、コントロールパネルのピン型スイッチの一つを弾く。開いた無線回線に告げる。

('A`)「あたぼうよ。こちとら珍走団やら自衛警務隊に構っちゃいられねぇ」

言葉を待たずに、火線が二つ、ドアガラスを掠める。
ミラーの向こうの車体下部両端から伸びた細い砲門は、硝煙を垂れ流していた。

遠慮は不要か、ドクオは判断する。即座にコントロールパネルを叩く。
リミットを上げた事により、視界端に展開する非実体情報枠内の棒状スピードメーターがぐんと右に伸びる。
同時に窓の外の景色が吹き飛ぶ。さらにミラーの向こうでは爆発が起こった。

『な……!交戦するつもりか、自衛警務隊と!』

白いボディが爆煙を蹴散らす。
外したならば叫んだ。その相手が居るから。

('A`)「俺の正義は、お前等のロウとは同居できん……今はな!」

『そうか……それでは、任務を遂行する』



589 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:08:17.00 ID:f9eGzO7A0

('A`)「当てて見やがれ……犬が!」

蛇行を開始する。右にハンドルを切れば、左を火線が抜けた。逆もまた然り。
対する自衛警務車の軌道は直線。必然、距離が縮まっていく。

抜けた。五回目の左へのハンドリングで、右側を白の車体が抜ける。

『勝負はここからだ、少年……!』

その声に応じるように、コントロールパネルをタイピング。
慣れたように迷い無く素早い五指の運びは、変形をもたらす。

ガラスに装甲が降り、視界はカメラ映像に変化。
そして車体に起こった変化は、非実体情報枠に文字列として情報化される。

――変形機構搭載車両『ヴィップ』 人型形態起動――

眼前には同じく変形を完了した白の人型機械。
此方に向き合う形でありながらも、足裏にローラーと言う形で収まったタイヤの産み出す推力が後ろへと機体を運んでいる。
その構えるはニ丁の人型機械用小銃。
両の銃口とアイカメラの鋭く青い光を此方に向け、搭乗者の男は無線を通した。

『自衛警務隊第二類、所本博之。これより敵機を撃破する』

マズルフラッシュを見るより早く、右に大きくハンドリング。
ローラーによる推進が、急なスライドを可能にする。
きゅ、と連続する抗議の悲鳴。連続の射撃は、ヴィップの左肩を掠め抜ける。
横へのスライドにより失われたスピード。結果として、所本機は遠ざかる。
アクセルで最加速を命令しながら、コントロールパネルを叩き武装を注文する。



591 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:10:42.17 ID:f9eGzO7A0

胸部ハッチから吐き出されたそれを、前進過程でキャッチする。
短めで太い銃身。無線の開閉など気にせず、ドクオは得物の名を呟く。

('A`)「ラウンジ社製第三式散弾砲……俺のターンだ」

『散弾……正気か少年!?第一、速度差が』

('A`)「黙ってろよロウの犬が。手の内は最後まで見せねぇのがアウトロウのやり方だ」

パネルに下した命令は、背部ハッチのオープンと言う形で現れる。
そこからせり出したのは二門の筒。現れるが早いかそれらは花のように開き、一秒のチャージ音を鳴らす。
光の球が収束。空気の爆ぜる音と共に、その蕾は花開いた。
加速。ストライプ模様の視界が収束する先には、白の所本機。

『ブースターだと……ますます正気を疑う!』

('A`)「黙れ。勝者が正義、俺が正義だ……!」

両のマニピュレータで散弾砲を構える。
砲口が所本機を捉える。トリガーを引いた。

('A`)「チェックメイト……!」

無数の散弾を喰らい吹き飛ぶ所本機を左に、光の推力を得るヴィップが駆け抜ける。
鉄の落ちる音を背後に聴き、ドクオは呟く。

('A`)「デレ……間に合ってくれ……」

前方の巨大なシルエットを見、ドクオは奥歯を噛み締めた。



592 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:13:33.41 ID:f9eGzO7A0

('A`)「アレか……自衛警務隊の撃破目標……」

近くの看板を確認、自分の目的地と照らし合わせる。
残念ながら、少なくともあのデカブツは超えないと高速から降りられない。
ドクオはにやりと笑った。
良いだろう。障害があったほうが燃えるとはよく言ったものだ。
あのデカブツを、排除する。

『自衛警務隊と思ったら、唯の民間車両じゃねぇかよ……。尤も、チューニングは気が狂っているようだが。
 一つだけ聞こう。俺の邪魔をするつもりか?』

明白。

('A`)「あたぼうよ。むしろてめえが邪魔だ」

『は、これも生き物の性って奴か……。良いだろ、ぶち殺してやるよ。俺達の目的の為にな』

亀を思わせる大きな車体が、人型へと変形する。
やや丸みを帯びたシルエットのそれは大きさからは想像できない速度で後退した。

――光力式加速機構使用限界突破 放熱・充填開始――

背部のブースターが内部へと戻り、ハッチが閉じる。
同時、ヴィップの後部から白の蒸気が排出される。
推進力をローラーへと戻したヴィップは、白を撒いて加速する。

『後先見えねえ性格らしいな。悪くはねえ。だが考えろ』

距離は遠く、撃破目標の機体の背から打ち上げ花火のように無数の煙が天に昇った。



594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:16:29.94 ID:f9eGzO7A0

('A`)「垂直落下型ミサイルか」

判ってしまえば対処は容易い。
左手のパネルでセンサーに命令して、着地地点を割り出す。
非実体情報枠に表示されたそれを、ローラーだからこそ出来る急な斜め移動で回避していく。
一つ、二つ、三つ四つ五つ。
タイヤのノイズもリズム良く回避すると、敵機のディティールが明らかになるほど近い。

大きく分類すれば人型に区切られてしまうのだろうが、人型としては異質だった。
例えるならば、二足歩行をする亀。立ち上がったものの、甲羅の重さに負けて猫背気味。
地面に接触しそうな巨大な腕はマニピュレータを持たない武器腕だ。
砲口のサイズを見るに、そこから放つのは実弾系の、対重装甲若しくは防壁破壊用の貫通式砲弾だ。
ヴィップの装甲は、通常の人型機械用小銃を防ぐ程度の強度しかない。一撃が致命傷に、悪ければ機動不能に陥る。

ならば近づけば良いのだが、恐らくは近接防御用の小口径機関砲も備えている。
装甲も厚い故、一撃で沈める事が出来なければ近づくリスクは大きい。

('A`)「さぁどうするドクオ……時間が無いぞ……」

『あー、こちら自衛警務隊所本、少年、応答せよ』

('A`)「敗者に用はねぇよ」

思いがけぬ無線にも冷めた対処で、回線を切ろうと左手をスイッチに伸ばそうとするが、続く所本の言葉にその手を止める。

『どうせアレを倒すならば、共闘が得策だと思わないか』

なるほど確かにそうだ。放たれた砲弾をハンドリングで避けながら、ドクオは思考する。
だが所本の機体は先程機動不能に陥らせたはずでは―――



596 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:19:04.67 ID:f9eGzO7A0

『代わりを遣わせた。今そちらへ合流するから、耐えていてくれ』

所本は無線を切った。
敵機は再び垂直落下型ミサイルを上空へ放った所だ。
着弾地点を横滑り、時には加速で回避。
隙を狙って放たれた砲弾は、肩を前に出すようにし胸部前を通過させる。

『やるじゃねえか、俺達の組織に欲しい位だ』

敵機から無線が入る。

('A`)「そこ通してくれるってんなら考えても良かったんだがな……。
    なにぶん邪魔だ。掃除した方がかえってすっきり来る」

避けた砲弾で、後方の地面が爆ぜる。
その煙を突き破り、黒い砲身が音速の弾を放った。
一、二、三発。全て敵機の装甲に突き刺さり、小さいながらも鋭く孔を穿つ。

『レールガン……だと』

砲身に続けて飛び出してきたのは、白い機体。
先程の所本機よりやや鋭角のある、細いフォルム。

『遅くなったな少年。勝負をつけるぞ』

('A`)「所本……で良かったか」

ヴィップと所本機、黒と白が並ぶ。
所本機は左に構えた得物を、敵機へと向けた。



598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:22:28.45 ID:f9eGzO7A0

『落ちろ……国家の敵!』

放たれた弾丸は空を切る音と共に吸い込まれるように敵機に命中する。
そして、孔と言う形の弾痕を刻む。
だが、それだけだ。よほど内部構造が簡素なのか、骨組みにダメージが届いているはずも敵機に機能不全を起こした様子は無い。

('A`)「成程、理解した」

『どれだけかかる?』

('A`)「次くらい……だな」

敵機の左右両門が光ると同時に、背から五機のミサイルが上空に上る。
ヴィップは左に、所本は右に砲の射線から逃れた。

('A`)「なっ……に」

五機のミサイルは全てヴィップを狙っていた。
左に、前に、右に、右に避けるが、最後、地に着弾しようとするそれが眼前に迫る。

爆発。

『無事か!?少年!!』
『ハハハハハハ!!!やっぱりウチにはいらねぇーわ!』

白い煙が晴れる、前に黒は飛び出していた。
背に光の翼を背負って。

――光力式加速機構 起動――



599 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:25:29.33 ID:f9eGzO7A0

『甘ぇ!煙が薄かったのが残念だったな!』

その射程に入らないうちから、近接用機関砲を乱射。
弾幕が壁となってヴィップの突撃を阻む。
が、それを突き破るようにヴィップはなおも加速。
弾が装甲を穿ち、欠かせ、弾け飛ばす。

('A`)「待たせてるんだよ、泣いてる幼馴染をな」

両の手で散弾砲を構える。距離は爆発的に縮まる。弾幕の装甲を叩く音が、雨音のようにうるさく響く。
骨組みに弾が届けば、アラートと共に真っ赤な警告が非実体表示枠として多数展開される。

『そうか。なら速く行ってやれ』

既に敵機は目の前。レールガンが穿った孔に、散弾砲を押し込む。
鉄のぶつかる衝撃音と共に、散弾砲は穴を押し広げ挿入された。
役目を果たしたブースターを格納し、背からは蒸気が排出される。

『ば……な、何をしやがる!』

('A`)「見ての通りよ」

トリガーを引いた。
散弾が、敵機の内部構造を蹂躙する。
近接無線には断末魔にも似た男の叫び声が響く。鬱陶しいのでスイッチを切る。
警告枠が視界を赤く照らしている以外は、全く静かだった。



600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/23(土) 00:28:07.93 ID:f9eGzO7A0

『カルト教団だ』

横を走る白い車からの無線、相手は所本だ。

『性に囚われた人々を解放しようと言う……ま、その第一活動があの機体の強奪って訳だ。
 奪還が目標だったが、まあよしとしよう』

一人淡々と告げる所本に、ドクオはつい疑問を漏らした。

('A`)「速く行って来いって言ったくせに、何でアンタまだ着いて来るんだ」

『ああ、一応は封鎖中だからな。俺が着いて行って説明したほうが早いだろう』

('A`)「成程な」

それでも、随分と時間が掛かってしまった。
きっと彼女は泣きながらでも怒るだろうな、とドクオは力なく笑った。

電話の向こうで泣いていた少女、そして、変形機構搭載車両『ヴィップ』を駆る少年。
二人が再開した後、彼らは一体何を見、何を経験するのか……!

続かない



[ 2009/05/23 22:13 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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