FC2ブログ










/ ,' 3無題*(‘‘)*


964 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 22:47:44.99 ID:V2sD7b7u0

板張りの床には、火の蛇がのたうち回っている。
柱は黒煙をあげて崩れ落ち、建物の中心にいる師弟の退路を、徐々に潰していく。
奥に鎮座して二人を見下ろしている、厳しい表情の巨大な彫像は、炎に包まれ、焦熱地獄の鬼のようだ。

/ ,' 3 「ヘリカルか……」

荒巻師範が弱弱しく呟いた。
抱きかかえていた少女、ヘリカルは、祖父が正気を取り戻したことに気付き、声を荒げる。

*(;;)* 「おじいさま! しっかりしてください!!」

溢れ出た涙が、荒巻の顔に降りかかった。
目の前で泣きじゃくる孫に、荒巻は目を細めた。

/ ,' 3 「ふっ……わしがこうしているということは、お前はわしを超えたということかのう……」

記憶と理性を失くす代わりに、人体の限界を超えた能力を引き出す、荒巻流秘奥儀「狂犬病」。
全盛期以上の力は、自身の破滅を促す。
荒巻の身体は、筋肉の全てを断裂させ、骨が所々で粉砕されていた。

支えているヘリカルでも容易にわかる。
この男は、もうすぐ死んでしまう。

/ ,' 3 「ヘリカル、わしはもう、駄目のようじゃ……」

更には、先ほど彼女が決めた一撃が、荒巻の脇腹を抉り取っていた。

自我をなくした完全な戦闘狂となった、全盛期の荒巻。
己の編み出した新たな奥義によって、“天衣滅行獄変態ヘリカル”と化した彼女。
二人の激突は、手加減などをして終えられる代物ではなかったのだから、当然の結果ともいえた。



966 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 22:49:27.08 ID:V2sD7b7u0

*(;;)* 「ッッ!! そんな、そんなっ……!!」

彼の口から絞り出された一言に、ヘリカルはびくりと身体を震わせ、絶望に顔を歪ませる。

御冗談が過ぎます!
あなたの口からそんなこと、聞きたくはありません!
医者に診せて、すぐに治療してもらえればきっと……。

唇は忙しなく動くのだが、声帯がまるで機能しなかった。
空気をうまく吸い込めないのだ。
うまく吐きだせないのだ。

唐突に忘れ去られた肺すら放って、それでも空しく口を動かしていると、師範の血に濡れた指が、彼女の頬を撫でた。

/ ,' 3 「ヘリカル……我が愛弟子よ。操られていたとはいえ、すまなんだ……」

徐々にか細くなっていく声が、彼の残った時間を表しているように思えた。
しっかりと支えているはずなのに、自分の手から、祖父が砂のように零れ落ちていく。

ヘリカルは形があやふやになった世界の中で、確かに荒巻の輝きが失われていく様を感じ取っていた。

/ ,' 3 「さあ、もう行きなさい。このままここに居ては、お前まで死んでしまう……」

荒巻の眼は、既に彼女を捉えてはいなかった。
急速に彼の身体が、頬を撫でている手が、冷たくなっていく。

周囲はこれほどまでに暑いというのに。
私の肌からはこんなにも汗が噴き出ているというのに。
何故冷たいのだろう?



967 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 22:50:40.87 ID:V2sD7b7u0

祖父の手が、ゆっくりと落ちていく。
祖父の身体が、ゆっくりと重くなる。

*(‘‘)* 「あっ」

思わず、自分の両腕の力も抜けてしまい、荒巻はごとり、と音をたてて床に転がった。

*(‘‘)* 「はっ、あっ」

一瞬の静寂の後、彼女の心に、悲しみと恐れと焦りが入り混じった感情が、特大の波となって押し寄せた。

*(‘‘)* 「ああっ、あああぁあぁあああ」

空いてしまった両手で、顔中を掻きむしり、髪を引きちぎる。
不思議と痛みは気にならなかった。

言葉の消えた彼女の世界で、めらめらと燃える光と、がらがらと落ちる木の音だけが、いつまでも響いていた。

終わり







969 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 22:52:22.89 ID:V2sD7b7u0    New!!
お題:狂犬病、変態ヘリカル
>>964>>966-967

目一杯叩いてください。


[ 2009/05/20 23:21 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/1847-6beade42