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(´<_` )弟者には心当たりがあるようです


741 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 00:33:38.79 ID:0Lwl4r0o0

(´<_` )弟者には心当たりがあるようです

帰宅するとテーブルの上にはラップのかかった丼があった。もうすっかり温度を失った大好物を前に俺は帰ってきた安堵感を覚えた。

そう言えば昨日誕生日だと言うのに急にバイトが入ったからケーキは明日にお預けだと母が言うと自分の誕生日が数ヶ月先であるはずの妹がしょげていた。

ケーキはみんなで食べたほうがおいしいだろ。

兄がそう言うと妹は残念そうに唸ったあと、明後日は早く帰って来いとせがんだ彼女の背は少し伸びたように見えた。

(´<_` )「俺ももう17か・・・・・・」

そう言えば自分と同じ誕生日の兄に少し悪いことをした。一年に一回しかない祝い事なのに自分の都合で一日のばしてしまって申し訳なく思う。

(´<_` )「まぁ・・・・・・でも」

ほぼ同時に産まれて同じ家で同じ時間を過ごしてきた俺たちは好物まで一緒だった。

(´<_` )「親子丼うまいしな」

好物は冷えたものでさえもうまい。それは確認せずとも色々なものを共有してきた兄もきっと同じことを思うと思い、済まないと思う気持ちは薄らいだ。

仕事をした後の飯は体は疲れているのにひどく美味しく感じられる。俺は残っている飯を勢いよく飲み込んだ。

バイトは10時で終わるものの家から大分遠いせいで家族はすっかり床についている。

俺は起こさないように静かに皿を洗ってから風呂に入ることにした。



742 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 00:37:54.33 ID:0Lwl4r0o0

明日も学校があるので早く上がりたかった。

しかし、風呂の電気はなぜか付きにくく二三度付け直す羽目になった。

調子が悪い照明は生き物のような不気味で不連続な点滅をしていた。俺にはそれがひどく気味悪く見えた。

それが原因というのは、いささか子供みたいで恥ずかしいが泡をゆすぐために頭を下げる時も薄く目を開けていた。

久しぶりに排水溝に頭から流れる湯が渦となって流されていくのを見届けた。

すっかり流し終えると手元を見ないで栓を回し顔を上げた。

鏡に映った顔は地から鳴る虫の音のような光の中で一瞬ぼんやりと浮かんだ。

それは青白くてまるで死に顔のようだった。

俺はもっと気味が悪くなった。鏡は見ないようにした。

いつしか水の音も不気味なものに聞こえてきたので俺は急いで風呂を出た。

湿った足の裏が床にくっついては離れるたびにぺたぺたとした音を出す。

誰もいないかのような空気がながれる家で俺は誰にも気付かれないように階段を上がる。

あれは金属がなってるのだろうか。ゆっくり開けてもどうしてもキィっと音を上げてしまう。

兄は起きているだろうか?自分の足音だけが聞こえる部屋で二段ベットの上を少しだけ目をやった。

視点をすぐ下の段へと戻し布団をめくると「弟者か?」 真上から聞きなれた声が届く。



743 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 00:41:02.34 ID:0Lwl4r0o0

(´<_` )「あぁ、どうしたんだ?」

返事をしてから体を床に預ける。

「音・・・・・・聞こえないか?」

声は続く。

(´<_` )「別に静かだが」

「ガリガリという音が聞こえてくるんだが」

(´<_` )「いや、物音一つせんな」

「そんなはずはない。ずっとしてるんだ」

怪訝に思いながらも俺は壁に耳をつける。

体が休めと言っているのを無視してそこに集中してみる。

勿論兄の言う音など聞こえなかった。隣の部屋は社会人になって姉が家を出たため幼い妹しかいないのだ。

(´<_` )「聞こえないが?」

「何を言う。もうしばらく前から聞こえているじゃないか?」

(´<_` )「そんなはずはないが」

少なくとも他の兄弟に比べれば一緒にいると思っている。母からしたら双子とは同じように扱っても支障はないようだ。



750 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 00:48:37.98 ID:0Lwl4r0o0

「ほら、あの音だよ。ずっと壁を引っかいてるような音なんだ」

彼はふざけてなどいなかった。俺は目が冴えてしまった。

真剣な口調に急に怖くなったのだ。

恐怖は

(´<_` )「多分疲れているんだよ。寝れば直るさ」

当ての分からぬ言葉に混ぜてうやむやにしてなかったことにしようと思った。

すると「そうだな」と今まで食い下がってきていた兄がいつも通りに言ってきた。

会話はそこで途切れた。上から兄が声をかけることはなかった。

俺は胸の辺りがざわざわして寝れなくなってしまった。

焦燥感は意味のない寝返りにぶつけることにした。

そのたび兄の意図の分からない問いがまとわりつくようだった。

朝が来ればまた昨日と変わらぬ日だった。母が起きろと言い、父は新聞を読んで、兄が寝ぼけ、しっかりした妹はすでに着替えを済ませていた。



ただ一つ違うことは夕方には兄は亡くなっていたことだった。



754 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 00:51:36.59 ID:0Lwl4r0o0

死因は調べられるようなものではない、こんな言い方は悪いがどこにでもあるようなものだった。

みなが形式的な儀式に感情を埋めながらも俺は兄の言葉を何度も思い返していた。

胸に迫る焦りはもうない。でも心にぽっかりと空洞ができたようだった。

空洞を通る風は流れるべき涙を乾かしているのか、数日たっても涙は出てこなかった。

数日経ってから俺は二段ベットの上に寝るようになった。今までの寝床にはぞんざいに荷物でも置いておいた。

3日ほど経てば短い梯子を上るのに慣れた、1週間たてば家族は真っ先に上の段に俺を探すようになった。一ヶ月経てば・・・ねずみだろうか? 音がする気がした。

うとうととしているとそれは聞こえてきて、俺は夢見心地で聞いた。

寝ぼけている時に音が聞こえると友人に言えば前世で何かあったかもなと言われた。ずいぶん適当にあしらわれたものだ。



756 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 00:54:50.80 ID:0Lwl4r0o0

半年経てば布団に入るときからしてきた。

母にねずみがいるんじゃないかと言ったら殺鼠剤を買ってきた。

音は死ななかった。

段々近くなっている気がする。

そう言えば音がしてからと言うより兄が死んでからもう三つも季節が過ぎた。

思い返せば兄が居なくなったことで悲しいと思えど涙を流したことは無かった。

初めて迎える彼の命日には泣こうと思う。

きっと兄はなんとも思わないだろうが。それが弔いになると誰かが言っていた。

                    (故・流石弟者の日記から亡くなる3ヶ月前より抜粋)







757 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/20(水) 00:59:39.18 ID:0Lwl4r0o0

支援ありがとうございました。

そしてお題切らせちゃってすいません。

あと名前欄いじってなくてすいません。これは途中で気づいたらそのときからつけるべきなのか・・・・・・?



お題

・親子丼
・雑音
・2段ベット


>>741>>742>>743>>750>>754>>756

中学生の時に夜中眠れなくてふとネットで芥川龍之介「凶」を読んだら余計眠れなくなった気持ち悪さを書きたかったんだけど出てないと思います。
青空文庫は宝の宝庫です。


[ 2009/05/20 23:18 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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