FC2ブログ










( ^ω^)くるぶしを蚊にさされたようです


482 :( ^ω^)くるぶしを蚊にさされたようです:2009/05/17(日) 04:23:44.36 ID:jSoPFVWO0

( ^ω^)「お……?」

夜も更けたころ、一人パソコンをしていると、くるぶしに違和感を感じた。
もどかしい、ゆわゆわした感覚。かゆい。

( ^ω^)「もうそんな時期かお」

住まいは南方。今年はじめての、いつもよりも早めな夏の強敵の到来に、季節の移り変わりを感じた。



( ^ω^)くるぶしを蚊にさされたようです



483 :( ^ω^)くるぶしを蚊にさされたようです:2009/05/17(日) 04:25:52.43 ID:jSoPFVWO0

体の節を蚊に刺されるというのは、なぜこうもかゆいものなのだろうか。
他の箇所を刺されたときの3倍はかゆい気がする。連邦のモスキートは化け物か。
節々を専門に扱う、精鋭部隊のようなものが存在しているのかもしれない。節々を狙い隊、みたいな。そんなわけない。

しかし、かゆい。
くだらないぼけと自己つっこみのおかげで、よりかゆみが増した気さえする。

掻くと余計にかゆくなるのはわかっているものの、耐えかねた僕はぷっくりとふくれた部分を手探りで探し、弱めに掻く。

(;^ω^)「おっおっ」

ダメだ、かゆい。
掻いた瞬間は俗に言う「痛気持ちいい」という状態なのだが、
しばらくするとかゆみは2倍にも3倍にもなって、僕の神経をわた毛のように刺激する。

(;^ω^)「これはムヒを引っ張り出さんとダメかもわからんね」

去年の秋にちんこに塗って以来、封印した魔具を用いた方がよさそうだ。
どこにしまったんだっけ。居間にある棚の、奥のほうだったろうか。
ただでさえ整頓されていない棚を、ひっくり返さなければならないめんどうくささに僕はすぐにげんなりし、他の解決策を探す。

刺された箇所を見てみると、まわりの皮膚よりも白めにはれ上がっていた。
ためしに強めに爪を立ててみる。

(* ^ω^)「あひぃんっ」

気持ちいい。むなしい。アホか僕は。



485 :( ^ω^)くるぶしを蚊にさされたようです:2009/05/17(日) 04:27:53.82 ID:jSoPFVWO0

結局、たかが一箇所の刺し痕のためにムヒを探し出す元気もなく、
かゆみなんぞ意識しなければ耐えられるという持論をたった今持つことに決めた僕は、そのまま布団に入ることにした。

それでも、かゆみは容赦なく僕にアプローチをかけてきて、睡眠を妨害する。

(# ^ω^)「いい加減いらいらしてくるお」

かゆみは痛みの数万分の一の感覚だ、という話を聞いたことがある。
若干マゾヒストな僕にとっては歓迎すべきことなのかもしれないが、
いくらメスによってもたらされた感覚とはいえど、虫を相手に欲情できるほど悟ってもいない。

( ^ω^)「サキュバスいねーかなー」

搾り取られるのが血じゃなくて精子ならいいのに。牛乳なんて用意してないぞ。カムオンバキューム。
そんな風に僕の思考は、布団の中で走り出す。



486 :( ^ω^)くるぶしを蚊にさされたようです:2009/05/17(日) 04:30:02.27 ID:jSoPFVWO0

***

この季節そのものに苛立ちを感じるのは、僕だけではないはずだ。
だんだんと重みを増す空気、我が物顔でのさばりだす虫たち、じっとりとしてくる人々の顔。
蚊。かゆみ。いらいら。かゆい。うっとうしい。
世界はもっとさわやかであるべきなのに、あろうことか季節そのものが湿り気を帯びている。

たとえば先日僕をふったあの子だって、この季節でなければ僕を笑顔で受け入れ続けていてくれたのかもしれない。
今頃僕の上でみだらに腰を振っていたかもしれない。
情事が終わった後はおだやかな微笑みで僕に愛しているか問いかけたのかもしれないし、明日は動物園へ行ったかもしれない。
そう考えるともっといらいらしてくる。
なんなんだ。なんで僕がこんな目にあわなくちゃいけないんだ。ふざけている。こんな季節が悪いんだ。湿り気が悪いんだ。
うっとうしい。かゆい。かゆい。



487 :( ^ω^)くるぶしを蚊にさされたようです:2009/05/17(日) 04:32:28.40 ID:jSoPFVWO0

***

気が付くと僕は眠りに落ちていた。
なぜそれがわかったかって、僕は彼女とよく行ったショッピングモールの通路で座り込み、
既に色を失った元彼女を抱いて、その体をぶすぶすと包丁でぶっ刺していたからだ。
こんなことが現実であるわけはないので、きっと夢なのだろう。というわけで、僕は今眠りの中にある。完璧な証明だ。
生暖かい血が僕の腰から下を浸していき、その暖かさに僕は感銘を受ける。命の暖かさだ。マイルド。

道行く人たちが泣き叫んでいる。警察がどうとか、通報がどうとか、声が聞こえる。
しかし、誰も僕に手を出してこない。当然だ、だってこれは夢なんだから、登場人物は僕の都合のいいように動く。
決して僕が凶器を持っているから手出しができないわけではないし、僕のまわりに2、3人の若い男性の死体があることも、これといって関係ない。
そんなことより、この場の空気にも湿り気があることに、いらいらした。

どうせ夢なのだから、夢でしかできないことをやろう。
そう思った僕は、かばんからストローを取り出した。(夢の中の僕は、未来の自分が何をしたがるかわかっていたらしい)

そう、あの忌々しい蚊の真似をしてやるのだ。
ストローを彼女の首にあいた穴(傷跡は荒くなく、なかなかスタイリッシュだ)に挿そうとしたが、傷跡が狭く、浅くしか刺さらない。
仕方なく包丁でもう少しえぐり(ごめん)、再度挿入を試みる(エロティックだ)と、今度こそしっかりと入った。

ちゅうちゅうと吸う。(普段彼女がしていた行為を僕がするというのも皮肉を感じる)
しょっぱい。血だから当然だ。
なんで蚊はこんなものを吸いたがるのだろうか。理解できない。
たとえば僕は彼女のことを愛しているから、このまま血を飲み続けることもできる。現に僕は飲んでいる。ごくごく。彼女が僕の全身を駆け巡る。
しかし、自分とは無関係の相手の血なんて、気持ち悪くてとてもじゃないが飲めたものではない。
君だってコージー冨田の血を吸いたいとは思わないはずだ。そうだろう?
生きるためにコージーの血が必要だとして、君は躊躇なく飲めるのか?

サイレンが聞こえる。



488 :( ^ω^)くるぶしを蚊にさされたようです:2009/05/17(日) 04:33:59.31 ID:jSoPFVWO0

***

翌日、僕は朝から頭が痛かったので、会社を休んで包丁とストローを買いに行った。
明日死んでいるのは、僕だろうか、彼女だろうか。
1か月ぶりに電話帳から彼女の番号を選び、通話ボタンを押す。
電話のコール音は、いつだって無機質だ。


[ 2009/05/19 20:18 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/1823-40b0ee62