FC2ブログ










(´`) Kと名付けられたようです


238 :(´`) Kと名付けられたようです:2009/05/06(水) 05:42:04.37 ID:hXKf4DscO

(´`) ガサゴソ ガサゴソ

誰も寄り付かない路地裏、

誰も着ない汚い布切れ、
誰も開かない臭いゴミ箱、

誰も食べない腐った肉、

それを噛み千切って、呑み込んで、嘔吐感を感じながら僕は泣く。


誰にも必要とされない、誰も知らない人間。

それが僕。



239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 05:44:44.16 ID:hXKf4DscO

満腹になったお腹をさすりながら、僕は寝床へと戻る。

裏路地の隙間から隙間へ、姿を隠すようにして走る。

それもこれも、僕が住む町VIPは、名が現すようにお金持ちがたくさん住んでいるんだけども、
もちろんスラム街もあって、お金の無い人や「しょうふ」って女の人が住んでいる。

そこで産まれた子供は、親だけの手で育てられなくなると、捨てられちゃうんだ。

もちろん僕もその中の一人、巷ではストリートチルドレンって呼ばれてる。



240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 05:48:09.32 ID:hXKf4DscO

そんな僕には友達なんていないし、むしろ名前を知ってる人もいない。

友達は僕の寝床にいる一匹の猫だけ、お母さんやお父さんの顔すら覚えて無い僕には、ちょうど良い親友さ。


小さな家の床下に僕は滑り込む、そこば僕の寝床で唯一の家。

(,,゚Д゚) はにゃーん

そこで出迎えてくれたのは、真っ黒な体の猫。
その小さくて滑らかな体を僕は撫でる。

(´`) よしよし、ただいまギコ

僕よりも先にここに住んでいて、僕がここに住んでからは何をするにでも一緒だ。



241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 05:50:17.14 ID:hXKf4DscO

(´`) ん、どうしたんだい?

何時も通り体を撫でていると、どうやらギコが落ち着かない。

ゴロゴロと喉を鳴らして、何かを気にしてるみたいだ。

(;´`) ん~ 困ったなぁ

と、いきなりギコは外に向かって駆け出す。

普段はとっても大人しいから、僕はちょっとビックリして、慌てて後を追う。

(;´`) もぉ…勘弁してよぉ……



242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 05:53:14.00 ID:hXKf4DscO

そして
僕が何かと衝突したのは、床下を飛び出して直ぐだった。

ゴツンっ、という音をたてて、尻餅をつく。

(;´`) あいててて……

直ぐに僕はその衝撃が、人としたものだと悟る。
逃げなくちゃ、と思って立ち上がる。

だけど僕は、目の前の人間を見て目を見開いた。

o川* ― )o

尻餅を着いているその子は、こんな裏路地にいるのが信じられないほど、綺麗な服を着て、綺麗な姿をしている。

身長も僕より少し小さいくらいで、同い年くらいだろうなぁと思った。



243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 05:55:29.29 ID:hXKf4DscO

流石に少し驚いてしまったけど、僕も"じぇんとるめん"だ。

すかさず、薄汚れている小さな手を差し出した。

(;´`) あぅ…あ……と……だ、だいちょうぶ……?

僕はしまった、と思った。
"じぇんとるめん"らしく、格好よくしようとしたつもりが、どもってしまった上に、噛んでしまった。

o川*゚―゚)o ………

そのとても綺麗な子は、キョトンとした顔をしていたがしばらくすると、

o川*゚ー゚)o あははっ、ありがとう。

小さく微笑んで、僕の汚い手をぎゅっと握った。



244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 05:57:41.27 ID:hXKf4DscO

その、白くて柔らかい、小さな手を僕もぎゅっと握り返し引っ張り起こす。

(;´`) あ、あの……本当に…大丈夫…?

o川*゚ー゚)o えぇ、私は大丈夫よ、それよりアナタは?

(;´`) え、ぼ…僕……?

困ったな、僕には名前なんて無いからなぁ…などと考えていると、女の子はちょっと焦った顔で、

o川;゚ー゚)o どっか…痛いの……?

と僕の顔を覗いた。
なんだ、そう言うことか。それよりも、良い匂いがするし近い。



246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:00:53.44 ID:hXKf4DscO

(*´`) あ…僕も……大丈夫

よく見ると、
しっかり整った眉毛
大きくて透き通った瞳
はにかんだ口元
小さな顔
金色で艶のある長い髪

とても可愛いじゃないか、僕の頬もどおりで熱い筈だ。

o川*^ー^)o そう、ならよかったわ

そう言ってにっこり笑う女の子も、飛びっきり可愛い。

(*´`) と、ところで…君は……?

僕にも色々と聞きたいことがあるんだけど、先ずは"名前"を知らなくちゃ何も始まらない。



247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:02:16.77 ID:hXKf4DscO

o川*゚ー゚)o 私?私はね、キュート!素直キュートよ!

o川*゚ー゚)o 君の名前は?

元気一杯に話すキュート、だけど困った、僕には名前がない。

(;´`) ぼ、僕…?

ん~、本当に困ったな

(;´`) 僕には…名前がないんだ……その、物心ついた頃には一人だったから……

o川*゚o゚)o えっ……
そう言うとキュートはとってもビックリしていたが、
その内、何かを思い出したように

o川*゚ー゚)o じゃあ、私が名前付けてあげるっ!



248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:04:42.36 ID:hXKf4DscO

ふふふ、と笑って突拍子もなく、キュートは言った、それはそれでいいかも……

(*´`) 本当に?

o川*^ー^)o ホントホント!

「とりあえず…そこが君のお家……?」

とキュートは床下の入口を指差す、僕はちょっと恥ずかしくてうつ向きながら頷く。

o川*゚ー゚)o わぁっ!床下だなんて、秘密基地みたいで格好良い!

僕の気持ちなんて、気にせず、とても可愛く笑った。



249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:06:07.39 ID:hXKf4DscO

そして、いつの間にか戻ってたギコも一緒に床下へと潜る。

o川*゚ー゚)o わっ…結構広いのね……

外にいるのと変わらないトーンで話すキュートに僕は、口元に指をあて、更にその指で上を指差す。

(;´`) 上の人にバレないように、声小さくしてね

「わわっ」と言ってキュートは口に手を当てる。

その姿が可笑しくて、僕は笑った、キュートも小さく、笑った。



250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:08:05.81 ID:hXKf4DscO

o川*-~-)o ん~そうだなぁ……

かれこれキュートが僕の名前を考え始めて、結構な時間が経った。

キュートは腕を組んだまま、ずーっと悩んでいた。

このままずっと悩んでるんじゃないかな、って心配し始めた時、キュートは閃いたらしくパッと明るい顔になる。

o川*゚ー゚)o 決まりっ!

o川*゚ー゚)o 君の名前は…

僕に与えられる名前、初めて仲良くなった人が、僕にくれる名前…

(*´`) ドキドキ

o川*゚ー゚)o じゃーん!



251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:10:06.98 ID:hXKf4DscO

そう言ってキュートは、何処からか取り出した紙を僕に渡した。

その紙には女の子らしく可愛い文字で、
『M・K』
と書かれていた。

(´`) えむ・けー?

そう僕が呟くと、キュートはニコニコしながら、

o川*^ー^)o そう!Mが名字で、Kが名前!

(´`) K、Kか……

しばらく僕は、与えられた名前を呟いてみた、何だかとても気に入った。

(*´`) 僕はM・K…

o川*゚ー゚)o いい名前でしょ?

エッヘンと胸を張りながら、自慢気にキュートは言う。



252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:12:07.51 ID:hXKf4DscO

(*´`) うん!凄く良い!

きっと僕の顔は笑顔に包まれてるのだろう、キュートの顔も笑顔になった。



それからも、お話は途切れなかった、僕がキュートから名前を貰ったように、
僕もキュートに名前をあげて、僕はキュートをその名前で呼んだ。

僕はキュートを『Q』と呼んだ、キュートのキューからで、安易な発想だったけどもQは、

o川*゚ー゚)o それはニックネームって言うのよ!

o川*^ー^)o だけど嬉しい!

と言って、それを受け入れてくれた。



254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:14:11.89 ID:hXKf4DscO

それから、僕とQは色々なとこへ行ったんだ。

初めての友達が嬉しかったからかな、僕の知ってる凄い場所は全部連れて行った。

山の間から朝日が見える、VIP町唯一の場所。
キラキラと光る水面に夕陽が沈んで行く海岸。
月に手が届きそうなくらい近くに見える、ビルとビルの間の裏路地。


本当に色んなとこに行ったけど、Qが一番喜んだのはVIPの町が一望できる山だった。



255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:16:11.78 ID:hXKf4DscO

女の子のQには、登るのが大変な斜面を、僕は手を引っ張って登る。

o川;゚ー゚)o K、こんなとこ……登れないよぅ…

目に涙を蓄えながら、Qは泣き声を吐く…

(;´`) 大丈夫、大丈夫だよ…もう少しだから……

繋いだ手をぎゅっと握り締めて、ひたすらに引っ張る。

一歩一歩のぼる度に、段々と開ける視界。
ゴールは直ぐそこだ。

(;´`) もうちょっと…もうちょっとだから……

僕はうわ言のように呟く、その声が聞こえたか、繋いだ手にも更に力が込められる。



256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 06:18:02.68 ID:hXKf4DscO

と思っていると、Qの小さな頭が僕の肩に寄りかかる。

o川* ー )o ホントに…綺麗……

(*´`) う、うん……

サラサラの髪の毛、女の子の甘い匂い、それらは僕を容赦なく襲う。

o川* ー )o ねぇK……

(*´`) なに……?

o川* ー )o Kってさ、誕生日も知らないんだよね…?

(*´`) う、うん……

o川* ー )o じゃあ今日が、Kの誕生日ね……

その言葉を聞いて、僕は呆気にとられた。

名前に続いて誕生日も貰えるなんて…僕は幸せ者だ!



257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 07:00:13.22 ID:hXKf4DscO

o川* ー )o 来年も、再来年も、ずっと、ずーっと……

o川* ー )o Kの誕生日にはここに来ようね…

(*´`) う、うん…Qと一緒にここに来よう……

「約束ね」
「うん、約束」

そう言って、小さな小指と小指を繋げた。
今までに見たことがないくらいの、綺麗な笑顔で、Qは笑ってた。

「と、ところで…何で僕の名前をKにしたの……?」

「ん~……秘密っ!」

「えぇ…何でさ~」


「恥ずかしい…から……」



258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 07:03:15.20 ID:hXKf4DscO

「別にいいじゃんか!」

「じゃ、じゃあ…今日から10年後に教えてあげるっ」

「うん、わかった」

「約束するよ」

「じゃあ…」

「「指切りげーんまーん……」」


あの日、Qから貰ったのは、誕生日だけじゃなくて、
それといっしょに人を好きになる気持ちと、Qの温もりを貰った。
それは僕の宝物になって、いつしか人を愛する気持ちへと変わって行く。

それに気づいた時、既にQは僕の隣に居なかったと言うのに―――――――――――――――



259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 07:06:07.55 ID:hXKf4DscO

――――――――――――――――――あれから何年の時が経ったろうか、あの時夜景を見た山は、もう既にVIPの街並みに溶け込んでしまった。

今では小さな碑石がポツン、と置かれているだけの住宅街だ。

あの3日後、Qが忽然と姿を消してから、僕は毎年、Qに貰った誕生日になると、この場所に来る。


今日でちょうど10年目、幼い時の記憶など忘れてしまった。
ただ一つ、胸の中で今も輝いているのは幼い恋心。


260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 07:09:18.90 ID:hXKf4DscO

仕事着の中で一番気に入っている、真っ黒なスーツの胸ポケットからタバコを取り出し火を点ける。

(´`)y-・~ Q……

ゆらゆらとタバコの煙が揺らめく。

タバコが短くなったところで、銀色の「M・K……Q」と筆記体で文字が刻まれた携帯灰皿にタバコを押し込む。

そして、小さく笑って、僕は歩き出す。

きっと僕の背中は、とても小さく見えるだろうな…

とかくだらないことを考えながら―――――――



262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 07:12:03.95 ID:hXKf4DscO

―――――――M・Kの名の意味を聞きに来ました、お元気でしたか?


―――――――ええ、お久しぶり…あぁ……なんて言ったらいいか……

―――――――……『私だけのナイト』それが理由よ…ふふふっ

―――――――そうだったんだ、じゃあ………

―――――――お迎えに上がりました、お姫様

―――――――あはっ、私のQは、クイーンのQね………

―――――――ははは、それは思いつかなかったよ……



――――――――――――――――――



[ 2009/05/07 22:05 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/1776-6b907f80