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( ^ω^)辻斬り桃太郎のようです


120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:27:29.67 ID:SeQ4oOhKO

むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

( ^ω^)「我は餓えておる」

ξ゚⊿゚)ξ「晩御飯なら、さっき……」

( ^ω^)「違う。 餓えておるのだ」

二人は慎ましやかに、でも幸せに暮らしていました。
しかし、おじいさんには、少しばかり問題があったのでした。






123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:29:58.33 ID:SeQ4oOhKO

ある日の事です。
おばあさんがいつも通り、川へ洗濯に行こうとした時でした。

( ^ω^)「餓えておる。 血が騒ぐのだ」

おじいさんはそう言うと、一振りの太刀と一本の脇差しを腰に差し、山へ芝刈りに出かけたのです。

ξ゚⊿゚)ξ「日が暮れるまでにはお帰り下さいね」

( ^ω^)「心得ておる」

おじいさんは雄叫びと共に藪の中へと消えていきました。

( ^ω^)「いざ、我が世の春を迎えに!!」






125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:33:15.06 ID:SeQ4oOhKO

 * * *


鬱蒼と生い茂る木の葉は、天井の様に頭上を覆う。
嫌な湿気が立ち込める森の中、道無き道を行く者がいた。
腰ほどまで背を伸ばした草をかき分け、一人の男が森の中を突き進む。

( ^ω^)「臭う……我はまだ、衰えてはおらぬ」

身の丈は、五尺五寸ばかりか。
腰が曲がっているので、正確にはわからない。
禿げ上がった頭、白く長い口髭、刻まれた皺は深く、手足は干からびた蛙の様だ。
ただ、老いた外見に似つかわしくなく、その相貌はぎらぎらと、虎をも竦み上がらせる程の威光を放つ。

( ^ω^)「芝を苅りに……我は餓えておる」

腰には一振りの、名刀“狛犬”。
抜き身のそれは、納まるべき鞘を持たない。
古い血をたっぷりと吸った、どす黒いサラシが巻かれるばかりで、それを握る老人の掌からは既に、赤い血が滴っていた。



128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:36:21.75 ID:SeQ4oOhKO

男は名を武運と言う。
この世に生を受け、早五十余年。
物心ついた頃には、既に人斬りとして名を馳せていた。
初めて握った得物は、農民を殺して奪った鎌であった。
次に握った得物は、板前を殺して奪った出刃包丁であった。

武運が三十を過ぎた頃だ。
数百、数千の命を吸い、遂に武運は最高の得物と廻り逢う。
とある山の深奥、人間嫌いの刀匠を襲い、刃を首に突きつけた。
その時、刀匠は言った。

「そんな得物で人を斬って――楽しいのかい? おまいさんは」、と。

武運は答えた。

「楽しい、か。 感情などはとうに捨てた。
 私が人を斬るのは想いに依らぬ。
 水が低きに流るる様に、季節が巡れば萌ゆる様に。
 それは、摂理」、と。



129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:38:47.14 ID:SeQ4oOhKO

それを聞いた刀匠は、一度腹の底から大いに笑った。
そして、眉根一つ動かさぬ武運を見つめ、一言二言。

「するってぇと、おまいさんは人を斬る楽しみを知らないのかい? そいつはいけねぇなぁ。
 よし、俺が教えてやらぁ、最高の得物をおまいさんに打ってやるよ」

普段の武運ならば、年寄りの命乞いなどに耳は貸さない。
その場で、皮を裂き、肉を割り、骨を絶ち、血潮を啜る。
しかしこの時、武運にはそれができなかった。
武運の身体、いや、たましいに、得体の知れない何かが、そう、“摂理”が語りかける。

「その者を斬ってはならぬ、その者は生かしておけ」、と。




131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:42:04.94 ID:SeQ4oOhKO

その時から八十八夜、刀匠は寝ず、休まず、一滴の水すら口にせずに、一心不乱に刀を打った。
そして出来上がった一振、“狛犬”

刀匠は武運に狛犬を握らせ、刃に見とれる彼にこう言った。

「さぁ、楽しみな。 俺もどの道長くない。
 さぁ、楽しみな。 俺の目が黒い内に。」

刃を正面に構え、縦に、一閃。

空を斬るような滑らかさで、刃は地面へとむかう。
しかし、武運は確かな手応えを感じた。
刀匠は痛みを感じる隙すらなく、絶命。
一方、武運は底知れぬ快楽に身を震わせ、初めて人間らしい感情を得た。
悦に入った武運に、またもや摂理が語りかける。

「もっと多くの者を斬れ。 休むことは許されぬ。
 斬れ。 見えるものも、見えるぬものも。
 そこに在るものも、ここに亡いものも」、と。

武運は手始めに、山を降りた。
麓の村を、彼の来訪が知られるよりも速く滅ぼした。
百人あまりの老若男女、その誰もが、斬られる者が有ることを、自分が斬られた事すら気付かずに果てていった。




133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:45:52.69 ID:SeQ4oOhKO

 * * *

(,,゚Д゚)(*゚ー゚)


( ^ω^)「餓えておるのだ」



草むらの奥に、人影を見つける。

⊂ニニニ( ^ω^)ニ⊃

両手を広げ、羽ばたくように地を駆ける。
右手には、狛犬。
左手には、脇差し。

その脇差しは、名を“雉”と言う。
かつて武運が師と仰いだ、人間嫌いの刀匠の下、自分の力で練り上げた刀だ。
赤く熱した鉄塊に、冷たい鎚を振り下ろす。
すると響く、固い音。
それを武運は、かつて聞いた鳥の断末魔に重ねた。
故に、この刀の名は、“雉”。




134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:47:52.20 ID:SeQ4oOhKO

二人の旅人に背後から迫り、それぞれに重なる光の筋。

(,, Д )
   (* - )

( ^ω^)「餓えは渇かぬ」

( ^ω^)「……ククッ」

藪に転がる、二つの頭。
死んだ事には気付けたのだろうか。
その顔には、和やかな談笑の表情が張り付いていた。

武運は血潮を振って払い、尚も森を突き進む。



137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:52:18.25 ID:SeQ4oOhKO

草木を、空気を、時間を。
ありとあらゆるものを切り裂きながら、武運は山に潜る。

彼が住処を発ち、既に三刻。
日は落ち、辺りは不気味な静けさに包まれている。

武運は山の頂上にいた。
あれほど繁っていた草木も、その場にだけは何故か生えない。
むしろ、その場からなんとか逃れようとしているようにすら感じる。

( ^ω^)「見つけた」

家屋の焼け跡に、一人の男がいた。
それはゆっくりと立ち上がり、武運と向き合う。

( ゚∀゚)「……よう」

腰には一振り太刀。
燃え盛る深紅の着物を纏い、手にする紅色の杯には、丸い光が映り込む。

( ^ω^)「見つけた」

( ゚∀゚)「どうだい、あれから楽しんでるかい?」

( ^ω^)「見つけた」




138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:55:18.27 ID:SeQ4oOhKO

男の問いかけに答えず、武運はだんだんと歩を速める。

⊂ニニニ( ^ω^)ニ⊃

両手に得物を構え、突喊。

狛犬を振り上げ――雉で左から右へと薙ぐ。

( ゚∀゚)「楽しそうだねぃ」

男は――かつての刀匠、長岡は、腰の刀を逆手に持ち、刀身でその一撃を受け流す。

( ^ω^)「見つけた」

一撃目の勢いのまま、身を捩りながら狛犬でニ撃目を入れる。
長岡は素早くその場から飛び退き、刀を順手に持ち帰る。

( ゚∀゚)「俺も楽しいぜッ!!」

柄を持つ右手を引いた、抱え込むような体勢から放つ、突き。

上向きの刃が、武運の喉元へと近づく。



139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 11:59:22.51 ID:SeQ4oOhKO

三寸、ニ寸、すんでのところで、武運は刀身を寝かした雉を腹から突き上げ、防ぐ。

(メ^ω^)「見つけたお」

軌道をずらされた刃が、武運の頬に一本の線を作る。

( ゚∀゚)o彡゚「楽しいぜッ!!」

長岡は弾かれた刀身を裏返し、素早く振り下ろし、また振り上げる。
武運は上からの一撃を雉で、下からの一撃を狛犬で防ぎながら距離を詰める。

そこに突き出される、長岡の刃。
銀色のそれが、武運の着物を裂き、肉を突き、そして破る。
わき腹に穴を空けられども、武運の歩みは止まらない。

( ^ω^)「見つけたんだお」

互いの息遣いすら感じる距離、武運は長岡の耳元で囁く。

( ^ω^)「三匹目……やはりあなたが持っていたのかお」



140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 12:03:00.52 ID:SeQ4oOhKO

( ゚∀゚)「そういうこった。 こいつは俺の息子だからな」

( ^ω^)「……そうかお」

武運が一瞬、のけ反った。
その瞬間を長岡は見逃さなかった。

左の膝を曲げ、正面に突き上げる。
膝頭が柔らかい部分を突き、何かが割れる嫌な音がした。

( ^ω^)「見つけたんだお」

武運は再度呟き、長岡の首筋に噛みつき、顎にありったけの力を込め、引きちぎる。

(; ∀ )「あああああああッ」

長岡の首筋から、鮮血が奔る。

(; ∀ )「……楽しいか」

長岡が、掠れた声で尋ねた。

(メ^ω^)「つまらんお。 ……だから」

武運は肉を吐き捨て、あの日の様に狛犬を構える。



141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 12:05:34.70 ID:SeQ4oOhKO

武運は肉を吐き捨て、あの日の様に狛犬を構える。

(; ∀ )「……そいつはいけねぇなぁ」

ゆっくりと振りかぶり、

(メ^ω^)「探したお」

縦に、一閃。

(メ^ω^)「あの感覚は、もう蘇らんのかお」

己のわき腹から、一振りの刀を抜き取る。
刀身に彫られた、“猿古田毘"の文字。
長岡の振るった、最後の刀。
武運は着物の袖を裂き、血を拭った。

(メ^ω^)「……晩飯までには、戻らねば」

武運は山を降りる。
わき目もふらず、ただひたすらに野を駆けた。



143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 12:08:16.78 ID:SeQ4oOhKO

 * * *



(メ^ω^)「今戻った」

ξ*゚⊿゚)ξ「あらあら、おかえりなさい」

おじいさんが家に帰ると、おばあさんは何やら嬉しそうな様子でした。

(メ^ω^)「何か、あったのか」

おじいさんが尋ねると、おばあさんは答える代わりに、土間に隠しておいたとっておきのものを見せつけます。

ξ*゚⊿゚)ξ「洗濯物をしていたら、これが川上から」

(メ^ω^)「……食えるのか?」

それは大きな大きな桃でした。
浅く色づいた桃からは、なんとも言えぬ甘い香りが漂います。

ξ*゚⊿゚)ξ「とりあえず、割ってみましょう」

(メ^ω^)



144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 12:10:14.64 ID:SeQ4oOhKO

おじいさんは一本の太刀を腰だめに構え、目を瞑ります。

(メ^ω^)「……」

(メ゚ω゚)「おッ!!」

掛け声が聞こえ、桃は一瞬で真っ二つに。

('A`)マンドクセ……マンドクセ……

中から生まれたのは、なんとも憎たらしく生気の無い顔をした赤ん坊でした。

(メ^ω^)「……」

('A`)「何見てんだよ。 あ?」

おじいさんは悟りました。
この子は、自分の代わりなのだと。
自分の役目は終わった。 あとは新たな命に任せるべきなのだと。
少なくとも、おじいさんの中の“得体の知れない何か”はそう囁いていました。



145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/12(日) 12:13:01.39 ID:SeQ4oOhKO

 * * *


(メ^ω^)「狛犬、雉、猿古田毘。 こいつらを預けるお」

('A`)「じいちゃん……」

(メ^ω^)「お前が斬るのは、人ではない。
       あれは鬼だ。 この世に人は、最早お前しかいない。
       鬼を……退治し……人の世に……春、を」

(メ ω )

(;A;)

桃太郎と名乗る男が、犬、猿、雉を従え鬼を滅ぼすのは、また別の話。



( ^ω^)辻斬り桃太郎のようです




[ 2009/04/12 18:06 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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