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('A`)は海を見ているようです


316 :('A`)は海を見ているようです:2009/04/09(木) 00:03:39.38 ID:GvZVMS8vO

 悶々とした日々を過ごす。
自分の意思すら入る余地の無い、日常のルーチン。

 行き場を無くした願望は何処にいきつくのか。
彼の場合、少々特殊なようだ。

('A`)は海を見ているようです

 「休養」すら作業の一端となった、日曜日。
彼は海辺に足を運ぶ。

 穏やかな波を立てている海に目を向ける。
心地よい風が、彼の頬を撫でている。


 何故、海に来るのか。
週一日しかない休みの内容としては、そこはかとない侘しさを感じさせる。

 彼は決して自然回帰主義などでは無い。
むしろ、レジャーといった行楽には嫌悪感すら抱くというのに…。



318 :('A`)は海を見ているようです:2009/04/09(木) 00:05:48.61 ID:GvZVMS8vO

('A`)「来てしまうんだよ。家で寝てればいいのに。若者らしく、街に出掛ければいいのに。
でも来ちゃうんだよ、海に」

 答える者のいない彼の呟きは、何故か独り言とはならず、会話となった。

 「週に一度海に来るだけで、お前のリビドーは解消されてしまうのか。
なんとまあ、安上がりな男だ…」

 夢見心地でいた彼にとって、背後から掛けられた言葉は正に「不意に」としか言えなかった。



319 :('A`)は海を見ているようです:2009/04/09(木) 00:08:42.23 ID:GvZVMS8vO

 川 ゚ -゚) 「久しぶりだな。ドクオ」

 彼の初恋の相手である「彼女」が、何故かそこにいた。

('A`)「やあ、久しぶり。元気だったかい」

 川 ゚ -゚) 「まあな。そんな事よりドクオ、お前はどうしてこんなところにいるんだ」

 彼女が尋ねてきた。

('A`)「わかんない。正直、僕が教えて欲しいよ」

 その言葉を聞き、何故か彼女は悲しそうな顔をした。



323 :('A`)は海を見ているようです:2009/04/09(木) 00:13:33.10 ID:GvZVMS8vO

 風は彼女の髪をなびかせる。
その髪の甘い香りが、切ない初恋の情景を彼の胸に去来させる。

('A`)「ねぇ、クー。僕はまだ君の事を 川 ゚ -゚) 「ドクオ」

彼女が人の言葉を遮ってまで発言するのはこれが最初で最後だろう、
と、何故か訳も無く、そう悟った。

 川 ゚ -゚) 「ドクオ。ここに来て私の事を思い出すのはもう止めてくれ。
お前がどれほど強くこの海に願おうとも、
私はもう、お前のそばに居てやれないんだ」

 風の音が喧しく、彼女の声はよく聞こえない。

 川 ゚ -゚) 「お前が立っているのは、この深く冷たい『海』等では無く、広く暖かな『大地』なのだから。
それを忘れないでいてくれ」

 そう言い終えると、彼女は音も無く海へと歩いていき、そのまま静かに、海へと姿を消した。



324 :('A`)は海を見ているようです:2009/04/09(木) 00:15:58.59 ID:GvZVMS8vO

('A`)

 彼は海を見ている。

 その行為は、意味を得ると同時に意義を失い、もう誰の意思さえ介す必要は無くなっている。

('A`)

 彼は海を見ていた。

 風はもう彼女の甘い香りを伝える事は無く、ただ悪戯に、彼の肌に優しい感触を残す。

 彼の視界に横たわる海は、いくら覗き込もうとも、もう彼女の顔を映すことは無い。

[ 2009/04/09 19:47 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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