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('A`)ドクオと英雄と宇宙人のようです


619 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 01:36:12.47 ID:aUIeApfA0

 人種、国籍、宗教。
挙げればキリが無いほどの理由で俺たち人は戦争を勃発させて、同族を殺しあってきた。
だが、あれだけ仲が悪かったのに、
俺たちから見ると宇宙人と呼べる存在がやって来た途端に、この星各地の戦争は全て終結した。

 不意に襲撃されて、抵抗したけれど徐々にこちらの数は減少していき、遠くない未来に殺されてしまう。
全ての人間が本能でその事を理解していたが、お前一人のおかげで世界は救われて俺達人類は生き残った。
自分でも自覚できるほど生意気な俺の数少ない友人の一人、お前が作った兵器で宇宙人を殲滅したんだ。

 俺が嗚咽交じりに、途切れ途切れに告げた報告を聞いて軍部や政府のお偉いさん達が飛び跳ねて喜んでいたんだぜ。
信じられないだろ? あの我々は偉いのだ。窮地に陥っても威厳を崩すことは許されない、と心に決め込んでいるような奴らが。
比較的安全な場所でただ偉そうに指示を出すだけで、戦場に立つ俺たちに役立つ情報を何一つ伝えない、無知で寡黙な奴らがだぜ?
こっちの心境や事情なんて察してもくれない。 まぁ、仕方ないんだけどな。 天秤がお前一人と全人類だもんな。

 最後まで諦めずに打開策を探し、発見して、実用する。
たった一人で。 誰にも相談せずに。
あの時お前は母親の形見の鉛筆一本だけ持って兵器を作動させたんだ。
全てお前の頭の中の理論通りだったのか解らないがそれが見事に成功し、お前は英雄と言われるようになった。

 忌まわしき戦争が終焉した日から。
国が定めたお前の命日の三日前から。 
三年間と三日が経過したよ。

 なぁ、今度はどうすりゃ良いんだ? 教えてくれよ。
今はお前が居ないんだ。 今度こそ人類滅亡だな。 なぁ、あの時みたいに発明してくれよ。



621 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 01:38:02.65 ID:aUIeApfA0

 今回は俺が主役をやるからさ。
英雄なんて、半ば崇拝されるような存在で堅苦しいだろう?
それが二人になれば、まだ少しマシじゃないか? そっちではどうか知らないけどさ。

 英雄って一体なんなんだろうな?
そんな称号より、お前と会話できたあの頃の方が遥かに素晴らしいし、意味があったよな。

 やっぱりアレはただの一時凌ぎで、天秤は最終的にお前の方へと沈んだんだよ、ブーン。


――世界中の、この星の『英雄』なんて要らないからさ、俺の『親友』を返してくれよ。


 そういや知ってるか?
あの日が「対宇宙人戦争終結日」って祝日に加えられていて、毎年お前の記念碑に世界中が黙祷してるんだぜ。
どうだ、ブーン? やっぱり『英雄』なんて堅苦しいだけだろ?














622 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 01:39:14.87 ID:aUIeApfA0











('A`)ドクオと英雄と宇宙人のようです














623 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 01:40:27.61 ID:aUIeApfA0

 いくらなんでも仰々し過ぎるだろうとまでに装飾された、巨大な墓石に橙色の陽光が差し掛かる。
夕日と英雄の墓か、絵になるな、と墓に笑いかけて視線を全貌へと走らせた。
下部には各国のお偉いさんたち自ら彫った文字があり、なんと書いてあるかなんて、見なくても解った。

「ドクオ! そこで、何を、している!?」

 背後から聞こえた俺の名前を呼ぶ声は疲労と焦燥の色に染められていて、俺は矢に撃たれたかのように振り返った。
目に映った一人の男は俺と同じ、深緑色に黄色のボタンという軍服を身に纏い、俺は被っていない帽子を被っていた。

 銃剣を肩に掛けたベルトで吊り下げており、
背には細長い柄の先端に、円柱の形をした鉄の塊を付属させた槌を背負っていた。
彼の持つ槌は、先端の叩く部分の片側が短い刃になっており、叩くだけでなく斬り裂く事も可能らしい。
慣性をうまく使えば人間の首でも楽に刎ねれるだろう。

 余程慌てて駆けてきたのか、普段から厳しい訓練を積んでいるはずの兄者が呼吸を激しく乱している。
声色と同じように疲労と焦燥の色に染まった表情をして息を切らし、顔中に溢れた汗を軍服の袖で拭う。
彼は癖毛のせいでいつも髪が酷く乱れていたのだが、それはさらにボサボサに乱れていた。

 再びブーンの墓へと振り向いて、別れの挨拶と再訪の約束をすばやく済ませる。
永遠の英雄となった親友の墓に背を向けて、一面緑色の草原だった場所へと顔を向けた。
かつてここに存在していた草木を揺らしていた清涼な風が、血と硝煙と腐った臓物の臭いを運んできた。

('A`)「親友の命日ぐらいゆっくりさせてくれないか? 人類の大恩人、英雄様だぜ」



624 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 01:41:56.15 ID:aUIeApfA0

 前にいる兄者に告げる。
俺の心情を理解したのか、英雄との言葉で理解したのか、どう受け止めたのか。
それは定かではないが、罰が悪そうに肩を竦めて俺に対して謝罪の言葉を投げ掛けてから、警告を続けた。

(;´_ゝ`)「……すまん。 だが、もうそこまで宇宙人が来ている、急がないと死ぬぞ」

 ブーンが人類滅亡確実と言われた時に、宇宙人を殲滅できる兵器を発明した。
正式名称は長ったらしくて難しい言葉だったので、ブーンが発明した兵器は頭にBがつけて呼ばれていた。
発明者のブーンの頭文字からとったらしい。 ブーンがその名を望んでいたかは知らないが。

(;´_ゝ`)「来やがった!」

 そういえばこいつとは同僚だったんだな、と叫ぶ兄者と宇宙人の姿を視認した時ふと脳裏に浮かんだ。
兄者や俺のような三年前の戦争時に宇宙人との戦闘経験がある奴は、
四人編成の小隊の隊長だったはずなのだが、隊員の姿は見当たらない。

 自分だけ逃げて来たのか、応戦したが部下が全滅してしまったのか、小隊員は別の場所で奮闘しているのか。
何にせよ、あまり良い評価は与えられないだろうな、と心の内で呟いて隊長を拒否した俺も同じようなものかと思った。

('A`)「兄者、お前訓練では成績良かっただろ」

(;´_ゝ`)「くっ……三年前とは数も形状も違うんだ」



625 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 01:43:23.53 ID:aUIeApfA0

 だから仕方ないだろう、と口には出していないけれど、顔に書いてある。
三年前だって大した働きもしなかったじゃないか。 数の多い雑魚たちを殺すってのは俺たち最低の義務だぜ?
実戦を想定した訓練では成績トップクラスの兄者が本番で慌てふためくのは、
他の者の士気にも影響する、というかしたから遠慮してほしかったな。

 宇宙人、と勝手に俺たちが呼んでいる生物が多足を高速で動かして近付いて来る。
先ほどは灰色の点だったのに、もう全体が把握できるほどの距離にまで移動している。
キノコそっくりな形の頭部から生えた無数の触手に、石や刃物を器用に絡ませて持つその姿は、
昔に想像した火星人そっくりだ、と思うのは、三年前も今年も同じだった。

 赤と緑が染み込んだ茶色の地面を、宇宙人の集団が蹴る。 その数およそ二十だろうか。
余所の星から来たと主張をしていたから正確には異性人が正しいお、と誰かの声が脳内で再生された。
くだらない会話を交わした気がするな、と笑みが浮かんだ。

 しかし、ここで死ぬのは頂けないな。
親友同士仲良く墓石並べるってのは中々素敵かもしれないが、比較相手が英雄だと俺が可哀想だ。
俺の遺体を埋めるのは誰か、ということは置いておいて。

 仕方ないな、と考えて腰に差している鞘から刀を抜こうと―――あれ?
あぁそうだっけ。 墓参りに武器なんて物騒なもの要らないよなって事で置いてきたんだった。
俺の目の前で迫り来る宇宙人に対して、戦う覚悟を決めた兄者にそのことを伝える。

('A`)「すまん兄者。 俺の武器、部屋に置きっぱなしだわ」

(;´_ゝ`)「はぁ!? 何考えてるんだお前!」

 いや、今更そんな事いわれても。 というか宇宙人を連れてきたのはあんたじゃないか、と言いたくなる。
既に宇宙人は五十メートル先にまで接近してきている。 残り十秒もしないうちに接触するだろう。
仕方ない、内ポケットに入れたナイフでなんとかするか、できるかな、と思うと兄者が口を開いた。



628 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 01:45:08.24 ID:aUIeApfA0

( ´_ゝ`)「とりあえずコレ使え!」

 投げ渡してきたのは、肩に吊るしていた銃剣。
歩兵が持つべき最低限の武器を手渡されて、ナイフよりはマシかな、と受け取った。
弾が装填されていないと知って、この地域の弾薬も、貯えがもう限界に近いんだなと察する。

(#´_ゝ`)「おらっしゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 兄者が咆哮を上げながら、背に吊っていた槌を遠心力を利用して振り回している。
火星人体系の数匹(人?)の宇宙人が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
頭が裂けて中から緑色の液体が飛びだした。 脳漿だか脳汁だか、判別はつかない。

 気持ち悪い。 これだけはどうしても慣れそうに無い。
始めて見て、臭いを嗅いでしまった時は耐え切れずに嘔吐してしまったが、今は嘔吐感だけで治まった。

 兄者だけに頑張らせる訳にも行かないので、目の前に存在する宇宙人の頭を切り裂く事にした。
こいつらを相手にするときは確実に頭を狙えと訓練で教えられたし、実戦で試してみたところ効果も出ている。
先程の脳汁を全て出させるか、脳漿内に浮かんでいる、灰色の脳を潰さなければいけない。

(#'A`)「せーの……っと!」

 火星人体系の頭部。 キノコみたいな形の頭を剣の部分で横一文字に切り裂く。
こいつらは知能が発達しておらず、体も外見通り軟体生物に近いため、刃は簡単に通る。
背後から忍び寄ったため俺の存在に気付いておらず、存分に狙いを定めることが出来た。

 ガラスを刃物で引っ掻いた音に酷似した悲鳴を上げて、宇宙人が緑色の脳汁を撒き散らしながら地面に倒れこむ。
べしゃり、と水を含んだ雑巾が落ちたかのように地面に触れて、液が飛び散った。
少し顔に付着して、自分の表情が歪んだのを感じた。



630 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 01:59:02.00 ID:aUIeApfA0

 きぃぃ、ぴぃぃ、と断絶魔。 ぐしゃり、ぐちゃり、と粘着音。 べちゃり、ばしゃあ、と臓物と液。 
兄者の猛打によって飛び出す酷く不快な音と、宇宙人の死骸から発せられる腐った臭いが重なって響く。
俺の銃剣が宇宙人に刺さる。 斬りつけ、刺突し、蹴りの反動を利用して引き抜く。 断絶魔が上がる。

 やがて音が止んで、繰り返しが終了した。
ふぅ、と地面を見下ろすと、人間を殺し、捕食すると言った残虐な行為とは対照的な、宇宙人の目が地面に落ちていた。
もはや何も映していないその瞳が、こちらを見ているような感覚に襲われて、踏み潰す。
ぬいぐるみに付けられていそうな、黒く丸い目が、かつての平和な日々が想起された。

 身寄りが無かったが充実していた軍入隊前の事や、半ば無理やりに参加させられた宴会。
厳格な教官が語ってくれた家族への愛。 恋人がいない俺にも理解できる、優しい感情が籠もっていた。
そしてやっぱり一番は――、

('A`)「――ッ」

 過去の思い出が頭の中で深く思い出される前に思考を切り替えて、兄者を見た。

( ´_ゝ`)「終わったか……?」

 もはや原型を留めていない、宇宙人の死骸が兄者を中心とした円状に並んでいた。
管のような足が重なって、麺類の食事を連想させた。
もちろんその中心にいる兄者は脳汁を大量に浴びていて、臭いも酷い。



632 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:00:54.22 ID:aUIeApfA0

(;'A`)「とりあえず基地に戻ろうぜ」

( ´_ゝ`)「あぁ、俺もそうしたい」

 しかし、あの脳汁まみれでも顔色一つ変えない精神力はすごいな、と素直に思った。
いくら叩けば死ぬ、と言っても命が懸かった場面でこの成果を見る限り、まともにやればやっぱり強いんだな。

 後ろを振り返ってみると、幸いブーンの墓には脳汁が飛び散っていなかったので安心した。
周りに生き残っている宇宙人が居ないかを確認してから、
兄者が歩き出し、俺はあまりの臭いに顔をしかめてながら後を歩いた。














633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:02:16.43 ID:aUIeApfA0

 宇宙人に襲われる事なく無事に基地に到着したのだけれど、基地は無事じゃなかった。
基地だったものは瓦礫と塵芥になっており、俺達の仲間の赤色の血と、宇宙人達の緑色の脳汁が塗りたくれている。
そして、それらの液体を放出した、凄まじい数の死体。

('A`)「……」

( ゚_ゝ゚)「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ
       あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
       あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
       あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
       あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
       あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
       あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
       あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
       あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 兄者が手に持っていた槌を放り出して、半狂乱に叫びながら、
血に染まり地に伏せてしまっている、仲間たちの元へと駆けつけた。

 俺もそうしたかったが、衝撃的な光景を目の当たりにした所為か、足が凍りついたように動かない。
かつての仲間たちはもはや肉片とも呼べる存在になっており、
宇宙人の食べ残しと呼べるこの惨状を見て、喉も塞がれたかのように声が出せず、呼吸すら止まっていた。

 先ほど少しだけ想起された今までの思い出が、頭に蘇り悲しみが込み上げてくる。
しかし、兄者のように泣くことも出来ず、立ちつくしながら、泣き叫ぶ兄者を見ているだけだった。
ただ、いろいろな感情がない交ぜになって、俺の中を駆け巡る。



634 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:03:58.63 ID:aUIeApfA0

( ;_ゝ;)「目を、開けてくれよ! なぁ! お願いだよ!」

 いくら兄者が叫んでも、生き返るはずが無い。
彼の抱えた人物は、昨夜まで存在していた下半身が存在していなかった。

 抱えられた人物は兄者の弟だ、と血の気が失われた顔を見て思い出した。
瓜二つな顔だけれど、何故か凄く見分けがついたな、と続けて浮かぶ。

 いつも一緒に居た弟の上半身を抱えて天に向かって叫んだ。
叫びは天まで届きそうなの声量だったが、神様はその言葉に耳を貸さないだろう。
神なんて人間が作り出した都合の良い存在に過ぎない。

('A`)「……」

 自分でも驚くほど、心が冷えていた。 目に映るモノ全ての情報が、頭の中に流れ込んでくる。
そして、瓦礫の上に置かれた、周りから浮いた色彩をした、小さい卵が置いている事に気がついた。

('A`)「あぁ……やっぱり、なぁ」

 仲間たちもまさか英雄の命日である今日殺されるとは思ってなかっただろうな。
きっと世界中の人々も、意識を断たれて死ぬ瞬間までお前に祈りを捧げてたんじゃないか?
英雄様から加護ぐらいはもらえるかも、って思ってな。 とんだ皮肉だよなぁ。









635 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:05:26.81 ID:aUIeApfA0

( ^ω^)「ついに完成したお!」

 白衣を身に纏い、太った青年が大声を上げて喜んだ。深夜の冷える空気と、この真っ白な室内が声を反響させる。
俺に告げたのか、独り言なのかは分からないが、その部屋の隅には、俺がいた。
その時俺は、こいつの護衛を頼まれたが寝ていたので、飛び起きて迷惑だった。

(#'A`)「なんだよ、静かにしろよブーン」

( ^ω^)「ついに完成したんだお!」

(#'A`)「うるせえって」

 この太った青年は俺と同じような兵隊にも関わらず、
幼い頃から勉強漬けであるここの研究員並みに頭が良いと言われていたので、
多少の犠牲は出ても構わないから、宇宙人を殲滅させる兵器を発明しろとの任務に加わっていた。

 叫んだ原因の説明を受けると、俺は頭があまり良くないので詳しくはわからなかったが、
要するに人間に無害で宇宙人を殺せる気体を発見したらしい。 
それを、戦場で使用出来るように改良に改良を重ね、研究を進めて行った。

 そして完成して一年ほど前に実用化された物が、内部にその気体を充填して、
安全装置であるピンを引き抜き、さらに紐を引き抜くと信管に点火され、数秒後に爆発する。
要するに手榴弾の対宇宙人型と言った所だ。 周囲からは簡明に「B-手榴弾」と呼ばれていた。



636 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:07:18.16 ID:aUIeApfA0

 宇宙人の群れに投げ込めばその集団は徐々に生命力を失い、最終的には絶命する。
どうやらその気体は宇宙人にとって、健康や生命を害する毒であるらしく、
さらに少量だけ気体を吸って生き延びた宇宙人の、体内に潜伏して徐々に毒は回り続け、
生き残った宇宙人が群れの集団内へ戻ると、そのまま空気感染で基地ごと破壊できる。

 使い方さえ知っていれば子供でも使えるこの発明のおかげで、
人類が圧倒的に不利だった状況が逆転し始めて、世界各地での被害は目に見えて少なくなった。

 それでも十分だったはずなのに、政府の連中は満足しなかった。
免疫を持つ宇宙人が出てきたり、気体を遮断するマスクを発明した宇宙人がいたり、と
様々な理由を付けて、ブーンを休ませることなく研究を続けさせた。

 自らは兵隊に囲まれて世界で一番安全な場所に待機しているくせに、
もしかしたら己が死ぬかもしれないから、宇宙人を確実に殲滅させたかったんだろう。
毎日戦場の最前線に立って殉職していく仲間たちや、評価されずに神経を磨り減らすブーンの苦労も知らないで。

(#'A`)「いい加減文句言ってやろうぜ」

( ^ω^)「大丈夫だお。 もっと凄い発明をすれば、きっとみんな褒めてくれるお。
       だからまだまだブーンは頑張れるお。 それに、この鉛筆さえあればなんでも出来るお」



638 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:09:47.27 ID:aUIeApfA0

 いつも胸のポケットに入れている鉛筆を握り、天に掲げてなにやら呟いている。
きっと天国にいる両親に報告しているのだろう。 常に笑っているような顔からさらに崩した表情をしている。
十分すぎる結果なのに、政府は賞賛どころか罵倒に近い言葉を投げかけた。

 それがとてつもなく悔しかったんだろう。
それからと言うものの、ブーンは食事時も排泄時も頭の中で理論を展開して、
睡眠時間もほとんど削り、日々やつれて行くブーンは見ていてこっちが辛かった。

 いつものように俺は人類の明日のために心血を注ぐ天才を警護していた。
そろそろ昼なので小休止して飯でも食べよう、とブーンに提案する。

( ^ω^)「いいお、でも食堂は騒がしいからここで食べたいお」

('A`)「つまり、俺が食堂に行って昼飯をここに持って来い、と?」

( ^ω^)「よく分かってるじゃないかお」

('A`)「……仕方ないな、大人しくしてろよ」

 俺が言い終わるとほぼ同時に、けたたましく警報機が鳴り響いた。
反射的に身構えて、スピーカーに神経を集中させる。

『宇宙人が襲来した! 直ちに迎撃しろ!』

('A`)「ブーン! すまん! 昼飯はまた今度だ!!」



639 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:12:26.41 ID:aUIeApfA0

 機械を通した音声が全ての言葉を言い終わる前に、告げた。
そしてブーンの返答を待たずに、ブーンの表情を見ずに、俺は既に自室へと駆け出した。
基地内が騒然となり武装した者たちが廊下を慌しく移動していた。

 川の流れに逆らう魚のように仲間たちの間をすり抜けて俺は自室へと到着した。
あのぶよぶよとしたゴムにも似た軟体のせいで宇宙人に銃はあまり効果が無い。
なのでB-手榴弾や刀、ナイフなど効果のあるもの、水に食料、などを携帯したか確認して飛び出した。




 戦場で俺が宇宙人と戦闘していると、ぽつりと雨が俺の肌に当たった。
地面に出来た緑色の水溜りに、水紋を作る速度は次第に上昇し、
最終的には火事現場に放水されているかのような水量になり、視界が遮られて戦闘しやすくなっていた。

('A`)(こいつらの知能が低くて良かったぜ)

 豪雨のおかげで視界と聴覚が鈍くなるのは人間より宇宙人のほうが遥かだった。

 やがて辺りに宇宙人も居なくなったので、一息吐くと同時に上空を見上げると、
隆々と盛り上がっている黒い雲を背景に、異様な物が浮かんでいた。
そのまま巨大化されたかのような卵が白い煙を噴出している。 俺は、あの機械を知っていた。



641 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:13:41.59 ID:aUIeApfA0

 いつもブーンの研究室に置いてあった物で、あの卵はブーンの仕業だと言うことは明白だった。
問題は、今から何をするのかと言うだった、嫌な予感だけが胸中を支配していた。
そんな俺の心の声が聞こえたかのように、卵から機械を通した声が戦場に響く。

『今からこの乗り物で宇宙人の基地に突撃してくるお。
 運よく雨が降っているので火はすぐ消えると思うお。
 今日で宇宙人との戦争は終わるんだお。 今まで、お疲れ様だったお』

 その声は言うまでもなくブーンの声だった。
機械を通しているためやや変声されているが、間違いない。
毎日聞いている声に、特徴的な語尾。 ブーンはあの中に乗っている。

('A`)「嘘……だろ?」

 研究者のブーンがなぜここに? 疑問に答える者はおらず、俺の耳にも届かなかった声がやけに響いた。
目の前で展開されている状況が理解できないうちに、遠くで雨音にかき消されなかった爆発音が聞こえた。

(;A;)「ブーンを、返せよおおおおおおおお!!」

 雨か涙かどちらか分からない暖かい液体が俺の頬を伝う。
俺の叫び声は鳴り響いた雷でかき消され、次の日から宇宙人は現れなくなった。








642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:15:51.09 ID:aUIeApfA0

(  _ゝ )「よくも……よくも、弟を……」

 いつしか三年三日前へと飛んでいた俺の思考は、兄者の声で現実へと引き戻された。

 あの雷雨の日を思い出して、後悔ばかりしていたっけ。
ブーンの発明した、大きな卵のような機械の仕組みをちゃんと聞いていれば。
俺がブーンと同じ研究者ならば、せめてブーンの会話を理解できる知能があったならば。
 
 次第に焦点が合い始め、兄者は弟の死体を置き、俺の後ろを睨み付けていた。
槌を握り締めている手からは血が滴り落ちている。
涙を拭い、鬼の形相へと変貌した兄者を見て胸を打たれた。

 振り向いてみれば、凄まじい数の宇宙人がいた。
兄者は俺の背後で憎悪と呪詛の言葉を呟き続けて、今にも駆け出しそうだった。

('A`)「……」

 手に持っていた銃剣は無理に使っていたせいか銃身が曲がっていたので、放り投げた。
そして幸運にも地面に刺さっていた抜身の刀を引き抜き、二、三度、その場で刀を振った。

 いつの間にか、青白い輝きを放つ満月が空に張り付いていた。

 突如この星に来訪して、この星同士の戦争を全て終結させた宇宙人。
ここまでなら平和の使者なのになぁと呟いて、兄者と共に駆けた。



643 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 02:17:53.06 ID:aUIeApfA0

 手には抜刀した刀。
 目の前には赤く染まった、多種多様な形をした無数の宇宙人。
 勝てるとも思っては無いが、ここで死ぬ気は無い。



 ――目標は敵の殲滅のみ。



 目の前に三匹の火星人体系。
 慣性を利用し、刀で薙いだ。
 緑色の液体が中空に舞った。

 隣で兄者がB-手榴弾を宇宙人の群れに投げつけた。
兄者はもしかしてまだ知らないのだろうか? 相手は既にその弱点を克服している事を。
あまり実戦に出てないのなら仕方ないかな、と浮かんだ思考は瞬時に雲散する。

 相手の文明がこの三年間で飛躍的に発展している。
同じ宇宙人にそんな事出来るはずが無く、発展している文明側の人間が導きでもしない限り不可能だ。

 考えられる人物は一人。
不意に姿を消し、衣服、肉の欠片すら見つからなかった天才が三年前に居た。



648 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 03:05:18.56 ID:aUIeApfA0

 乾いた発砲音の後、左肩に激痛が走った。
銃弾が飛んできた方向へ視線を動かすと、巨大な頭部を持つ目の細い生き物が下卑た笑みを浮かべていた。
そのまま視線を走らせると、三年前には存在しなかった形体の生物と、武器が数え切れないほどあった。

 周りに居た宇宙人を遮蔽物にして、縫うように走り巨大な頭部を持つ宇宙人の頭を両断する。
幸い反応の鈍い火星人体系たちが多い事と、反対に銃の数は少ないらしく、被弾は一発のみだった。
兄者は銃の存在に気づいているだろうか? 気に掛けたが確認するほどのの余裕は無かった。

 大嫌いな緑色の液体が俺と地面にブチ撒けられた頃、兄者の咆哮が聞こえて、肉が噛み千切られる音が続いた。

 また一人仲間が死んだ。

 憤怒が体を駆け巡っているはずなのに、心は鉱物かと思うほど冷たい。
本能が叫ぶまま刀を振っていると、辺りに宇宙人達は居なくなっていた。

('A`)「ハッ……」

 これだけの数を相手にしたせいで、酷く疲労してはいたが、時期に収まるだろう。
服を裂いて血が溢れ出ている左肩を抑え、痛みで顔が歪む。
宇宙人の脳漿と混ざっても大丈夫なのだろうか、と遅れて思った。

 直後、背後から乱暴な衝撃が俺を襲い、地表へと叩きつけられる。
水溜りに投げ出されたため、液体が飛び散って異臭が俺を覆う。

 戦場だと言うのに気を抜いていたせいで、存在を認知できなかった。
狼狽しながらも瞬時に体制を整えたと同時、腹を銃で打ち抜かれて風穴が開いた。
痛みに耐え切れず、倒れこむと声が聞こえた。



649 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 03:07:10.04 ID:aUIeApfA0

「三年間も、俺を恨み続けたか」

 聞き覚えのある懐かしい声。
 聞き間違えるはず無い、声。
 あの日、卵から聞こえた声。
 
 特徴的な語尾は無いが間違いない。

('A`)「恨んでなんかいない……俺はただ、親友を連れ戻したいだけだ!」

 二本の足で立ち上がろうとしたが力が入らないためうまく立ち上がれない。
手に持った刀を支えにして立つのがやっとだった。

 胸に入っている鉛筆を見て、叫んだ。






('A`)「一緒に帰るぞ! ブーン!」








――('A`)ドクオと英雄と宇宙人のようです 了――







652 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/07(火) 03:12:29.39 ID:aUIeApfA0

以上で投下終了です

ドクオが連れ帰るようです、と言った自過去作品のリメイクでした。
オチがClairvoyance様のまんまガラクタノカミサマです。

長時間スレを占領してしまい申し訳ありませんでした。
猿さん本当に怖いです






関連作品:('A`)ドクオが連れ帰るようです(リンク先:ヴァニラアイス様)


[ 2009/04/07 20:02 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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