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( ・∀・)無題


311 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 02:49:42.01 ID:leQWucW30

幼いころからのイメージがある。
それは例えば空港。

僕は発着場の見える場所に立っている。
空は絶対に晴天であることはない。いつだって曇り空。
その空の下でいくつもの飛行機が降り立ち、そして飛び去っていく。

( ^ω^)

僕の背後には男が居た。
いつだって愉快な笑い顔を湛えた、しかしがっしりとした大男だった。
男はどちらの腕も太く逞しかったが、若干左腕の方が太い気がした。

(    )つ

男は顔を伏せ、左腕をまっすぐ伸ばす。
ただ、手首より先の方は力が抜けていて、指先はだらりと地面に落ちていた。

僕は笑い顔の男が恐ろしかった。
顔が見えていようがいまいが関わりなく、彼のイメージは僕にまとわりつく。

男の力の抜けた手に、いつの間にかそれは握られている。

いや、もしかしたら最初から持っていたのかもしれない。
彼はいつだって、それを握っていたのかもしれない。
それが僕には見えなかっただけなのかもしれない。

(    )つ━┨

それは一本の金槌だった。



312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 02:51:52.67 ID:leQWucW30

⊂( ^ω^)つ━┨

ブーンと言いながら男は空港内を走る、走る、走る。

これからの旅路に思いを馳せる浮かれた人々。
長旅から帰ってきたことの安心と、些かの疲れ顔を見せる人々。
あるいは人々を見送り、人々の帰還を労う職員たち。

( ∀。)(゚∀ )( ∀ )( ∀ )( ∀。)(゚∀ )( ∀ )   ≡Ξ ⊂( ^ω^)つ━┨

その全てを、何のためらいもなく、何の括りもなく、全ての人々を。
男は金槌で殴った。頭を割った。脳みそさえも潰した。
素早い動き、そして圧倒的な暴力で蹂躙した。

人々はそれに気付かない。

('(゚∀゚∩ ζ(゚ー゚*ζ (-_-) 川д川 ( ´∀`) J( 'ー`)し

周りで次々人が死んでいるというのに、あるいは自分が死んでいるというのに、旅に出、そして帰って来る。
何事もないかのように。何事もなかったかのように。
人々は旅を続ける。旅を終える。生活を続ける。

僕に幼いころからのイメージとはそう。
圧倒的な暴力と、血の混じった狂気のイメージだ。

僕はそれにトりツかれている。

僕はこのイメージをどうしたらいいのか、分からない。



313 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 02:54:02.00 ID:leQWucW30

ある日のこと、僕はどうしようもなくお腹が空いていたので、大学の先輩だったペニサスさんのアパートを訪ね、
やたらと辛い塩鮭をどんぶり飯に乗っけただけのお昼ごはんをご相伴させてもらっていた。
こういうシンプルな昼食って、なんでこんなに空腹に染みわたるのだろうと思いながら、ぱくぱくと咀嚼していた。

( ・∀・)「ごちそーさまです」

僕はどんぶりの上に箸をかちり、置きながら言った。
割りばしの鈍い音では無く、漆塗りの箸がたてる高い音だ。
これは僕専用の箸である。頻繁にここへたかりに来ていたら、いつの間にか導入されていたのだ。

('、`*川

洗い物ぐらいはしていきなさいよ、とペニサスさんが言った。

彼女もすでに食べ終えていて、食後の煙草をふかしていた。
僕は煙草を吸わないが、ペニサスさんはわりにヘビースモーカーなので、
彼女の吸う煙草、キャスターのバニラ香だけは覚えてしまった。

僕は洗い場にとんぶりと箸を重ねて持っていった。
水は冷たかったが、我慢しながらスポンジで汚れを落としていく。
流水とともに塩鮭のかけらが排水溝へと落ちていく。
面倒だったので放っておいたが、いずれ詰まってしまうな、と思った。

( ・∀・)「終わりましたよー」

僕がそう言ったのと、ペニサスさんが煙草を吸い終えるのはほぼ同じだった。



315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 02:56:25.52 ID:leQWucW30

⊂('、`*川

ペニサスさんが手招きをしていた。隣に座れということらしい。
御苦労さま、一緒にDVD見ようよ。
僕が洗い物をしている間にセットしたらしく、ブラウン管にはカビの生えたようなざらついた映像が流されていた。

( ・∀・)「また昔の映画ですか。好きですねえ」

('、`#川

何よ、文句あるの? とペニサスさんはむくれた。

( ・∀・)「無いですよ。あ、映画見るんならコーヒーでも淹れましょうか」

僕は淹れると言いながらも、インスタントの粉を溶かしただけのコーヒーを作った。
コーヒーメイカーがないからそうせざるを得ないのだった。
それを二つ持って、ペニサスさんの隣に座った。



316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 02:58:34.62 ID:leQWucW30

('、`*川

ありがとう、とペニサスさんは受け取ったが、視線は画面を向いたままだった。

映画はとある有名な映画の前身になったという短いもので、それなりに面白かった。
時々間のびした退屈な映像が流れること以外は。けれど、古い映画だから仕方がない、と僕は思った。

使ったコーヒーカップを洗い、その後しばらく談笑にふけり、やがて日が傾いてきた。

( ・∀・)「じゃあ、そろそろ帰りますね」

('、`*川

晩御飯、一緒にどっか食べに行こうよ、とペニサスさんは言ってくれたが、夜は別の用事があったから、そうするわけにはいかなかった。
少しばかり後ろ髪を引かれながら、アパートを出ると、雪がちらちらと降っていた。
雪が降っている割には、それほど寒くはないな、と僕は思った。



317 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 03:00:43.76 ID:leQWucW30

夜の用事と言うのは、バイト先の仲間と呑み会をしようというものだった。
男三人の寂しい呑み会だが、それでも楽しみなものは楽しみだった。

待ち合わせ場所に向かう道すがら、いつもなら人通りの少ないはずの道路に、やたら人がたかっているのを目にした。

( <●><●>) ⊃━

警察官が交通整備をしている。野次馬たちを追っ払いたくてうずうずしているようにも見えた。

それは事故現場だった。
電柱に激突して大破した車が一台残されている。
そして、地面には黒ずんだブレーキ跡と、少し離れた所に、赤黒い血の跡が。

車が人を撥ね、そして操作を誤って電柱へ突っ込んだということが分かる。

血の跡はバケツで水を撒いたように広がっている。
ひょっとしたら轢かれた人は死んだのかもしれないと思った。
ほんの少しだけ、でも確実に、心のどこかからふつふつと沸き上るモノを、僕は感じていた。

( ^ω^)

僕は必死にそれを無視しなければならなかった。
圧倒的で理不尽な暴力が、つい先ほどここに存在した。
けれど今は僅かばかりの残滓が残るだけ。

(    )つ━┨

それをひどく残念に思った。



318 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 03:02:52.60 ID:leQWucW30

(,,゚Д゚) ('A`)ノ

待ち合わせ場所にはすでに二人とも来ていて、僕に気づいたドクオがこちらに手を振っていた。
こっちこっち、という声を聞きながら、僕は小走りで向かった。

(,,゚Д゚)

珍しい、遅かったなと言うギコに対して、ごめんごめんと軽く謝罪しながら、目的の居酒屋に歩き始める。
ちょっと事故があったみたいで、気を取られてた、と言ったら、ドクオが俺もそれ見たよ、と言う。

それどころか、事故それ自体を見た、と言う。

('A`)

小さい女の子が歩いてたんだよ。
真っ赤なスカートはいた女の子でさ、何が嬉しいのか、ぴょんぴょん弾むように歩いてた。
俺は平和な光景だなーなんてほのぼのしながら、何となくそれを見てたんだ。

そしたらさ、ある所で、いきなり女の子が立ち止ったんだ。
そんで空をぼんやり見上げたんだ。



319 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 03:05:01.43 ID:leQWucW30

('A`)

何かあるのかなーって俺も空を見たんだけど、薄曇りの空があるだけで、何にもなかった。
別に何の変哲もない、いつもどおりの空だったんだ。

女の子は立ち止り、俺は歩いてたから、必然的に俺は女の子を追い越す形になった。
俺は立ち止った女の子を追い越して、待ち合わせ場所まで歩き続けたんだ。
追い越したらもう興味は失せて、ギコとモララーもう来てるかなーなんて考えながら。

それから数メートル歩くと、空から雪が降ってきた。
ちらちらって、積もりそうにない弱々しい雪だ。さっきまで降ってたろ? あれだよ。
ひょっとしたら、女の子は雪が降って来るのが分かってたのかもしれないなーなんて思った時だ。

とんでもないスピードで、真っ白な車が走ってきたんだ。
何をそんなに急ぐ必要があるのかって、不思議なくらい、びゅんびゅん飛ばしてた。
すれ違う時は怖かったな。腕にかすりでもしたらそのまんま吹っ飛びそうな気すらした。

そんで、もう御想像の通り、後ろっから、ドシン! 大きな音がしたんだ。
それも二回、ほとんど間を置かずにな。



322 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 03:07:10.27 ID:leQWucW30

('A`)

もう俺、びっくりしちゃって、振りむいたんだ。
そしたら、びくびくって痙攣してる女の子と、煙を上げてる白い車。
バンパーが吹っ飛んで、そこに赤いものがどばっと付いてた。
白だから目立ったんだな。まるで女の子の赤いスカートが張り付いてるんじゃないかって、そんなおかしなことすら考えちまった。

女の子は、あおむけに倒れてて、当然だけど、スカート穿いてたよ。
けど、そこから伸びる足が片っぽ足りなかった。探す勇気はなかったな。どこかに、千切れて飛んだんだろう。

上着も全部真っ赤だった。スカートが地で赤いのか、血で赤いのか、全然わからなかった。
顔も全部赤くて、女の子って言うよりも、赤い塊の何か人間じゃない別のものみたいだった。

そこにちらちらって、白い雪が落ちたんだ。
いや、落ちるって言うよりも、身体から何か涌いたみたいに、白い点がぼつぼつって見えて。
俺、なんか怖くなって、ここまで走ってきたんだ。

( ・∀・)「ぶつかる瞬間は見てなかったのか」

ドクオが話し終えると同時に、僕は呟いた。
言葉が勝手に飛び出したみたいだった。

(,,゚Д゚)

ドクオ、災難だったな。
モララー? どうした、深刻な顔して。気分悪くなったのか?

( ・∀・)「いや、別に」



323 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 03:09:19.18 ID:leQWucW30

僕らは居酒屋に着いて、座るなり生ビールを三つ注文した。
ドクオは呑んで憂さを晴らすと息巻き、ギコは食事メニューに熱心に目を落としてた。

( ・∀・)「ドクオ、さっきの話……」

('A`)

なんだよ、しつこいなと、ドクオは顔をしかめた。
お前、今日なんか変じゃないか?

( ・∀・)「そんなことないよ。しつこくして悪かった」

そうは言っても、やっぱり僕はなんだか落ち着かない。
こんな経験は今までになかった。こんな決定的瞬間とのニアミスは初めてだった。
惜しいことをした、その暴力の瞬間を見ていれば、
僕は僕の幼いころからのイメージに対して何かしらの解を与えられたかも知れないのに。

(,,゚Д゚)

何かお前顔色悪いぞ? 辛かったら、残念だけど今日は帰った方がよくないか?

('A`)

そうだな。機会は今日だけじゃないんだから。ドクオが言う。



324 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/06(月) 03:11:28.55 ID:leQWucW30

( ・∀・)「ああ……うん」

確かに、僕は辛い。
けど、それは彼らの想像するものとは異なる。
僕は笑い顔の男の気持ちが知りたい。
知らなければ、頭からこびりついて離れないこれをどう扱っていいのかすらも分からない。
でも、ドクオがいいことを言ってくれた。

( ・∀・)「ごめん、今日は帰るよ」

気を付けて帰れよ。というようなことを、二人は言った。


その帰りの途中で、僕は金槌を一本買った。
イメージの中で笑い顔の男が持っているようなものだ。
でも、僕はこれを今すぐ使うつもりはない。

いつでも使えるように、持っておくだけだ。


そして僕はペニサスさんの家のドアチャイムを鳴らす。

('、`*川

あら、モララー君じゃん。
用事はどうしたの?

( ・∀・)「ご飯を食いっぱぐれました。何か食べさせて下さい」

終わり
[ 2009/04/06 18:45 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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