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戦うスーツはレモンの香りなようです


577 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 04:43:07.74 ID:W8kJSk1B0

夕暮れの薄闇の中。
主婦の乗った自転車が、さぁっと軽い音を立てて通り過ぎた。


(=゚д゚)「にゃぁあ」


茶トラの猫が飛び跳ねるように通りを渡り、路地に入り込む。

ゆったりと長い尾をくねらせ、路地裏から民家の塀へと飛び移る。
すると、


(=゚д゚)「?」

( ∴)「……」


茶トラの乗った塀は幅15cmほど。
猫に向かい合うように白い『何か』がブロック塀の行き先をふさいでいる。



578 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 04:47:18.67 ID:W8kJSk1B0


( ∴)「…ゴェエ?」


物体が発したのは、唸るような低音。異様な雰囲気がその場に立ち込めた。
それを聴いた瞬間に茶トラの長い尾は試験管ブラシのように逆立った。


(#=゚д゚)「フウゥーッ!!」

( ∴)「ゴェ…」


その尻尾を見た、のかは分からないが、その白い物体は塀を滑り降り他の路地に消えていった。

後に残された一匹は、いつまでも背中を弓なりに反らせ、白い何かの行き先をじっと見つめていた。



その夕闇がほんの少し明度を落とした頃。


(´<_` )「今日はみりんが安い」


書類カバンを片手にした男が、スーパーの自動ドアの前に立ちはだかった。
その右手には安売りチラシ。



579 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 04:51:14.40 ID:W8kJSk1B0

(´<_` )「ああ、中性洗剤が切れそうだったな……
 ハニャレモン徳用も買っとくか」


少し冷たい風が彼、流石弟者のスーツの裾と軽く緩めたネクタイをはためかせ、チラシをなぶる。


( <_,  )「タイムセールの狙いは……豚ばら肉100g88円」


くわ! と見開かれた切れ長の瞳は、戦に挑む者の輝きをしていた。

スーパーに足を踏み入れ、食肉コーナーの端にある搬入口の前に仁王立ちで陣取る。
183cmの長身の彼が居るにはこれほど不似合いな場所はないだろう。

と、その時。
頭上のスピーカーから放送開始特有の砂嵐のような音が聞こえてきた。


ピンポンパンポーン♪
『えー只今からタイムセーr(゜<_゜#)「うぉおおおおおおおおおぁあああああ!!」


10分後


アリガトーゴザイマシター
(´<_`*)「これほど有意義な10分も中々ないもんだよな……」



580 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 04:55:03.72 ID:W8kJSk1B0

小さく畳んであったエコバッグに詰められた戦利品と書類カバンを提げ、家路を急ぐ。

双子の兄と同居しているマンションの一室はスーパーから徒歩15分。
遠からず近からずといったところだ。

同じ会社に勤める兄からは軽い残業だと連絡があったが、特売のばら肉が生姜焼きに化ける頃には帰ってくるだろう。

サクサクと袋を鳴らしながら弟者は歩く。
街灯が灯り始めた町は、路地の暗さが余計に目立った。


(´<_` )「もうこんな時間か? そんなにレジ混んでたかな……って、ぅあっ?」


腕時計にやった視線を足元に戻そうとした時。

不意に右足首を地面に固定されたかのような感覚が駆け巡った。
ガクンと斜めに体制を崩し、よろけて後ろに尻餅をつく。


(´<_`;)「っ痛ー……」


何に足を引っ掛けたかと目をやる。
と、路地裏からはみ出す白い物体が目に入った。



581 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 04:59:35.49 ID:W8kJSk1B0

(´<_` )「?」


それは、まるでハンペンを地面に落としたような見た目だった。
だが、その形状は異なっている。
ペットボトルほどの太さで先が丸くなった、綱のようにぐったりとしたそれが、右足首を一周し、路地へと消えているのだ。


(´<_` )「な……んだ?」


ハンペンのようなそれは、いきなり足首に巻きつく力を強めると、彼を路地に引きずり込もうと動く。


(´<_`;)「いだだだだ!! なんだ、コレ……くっそ!」


ぎりぎりと締め付ける物体に容赦なく書類カバンの角を打ち付ける。


( ∴)「ゴェ!」


妙な音と共に怯んだように緩むところから足を引き抜くと、軽く捻ったよう。

弟者は舌打ちをし、路地裏を覗き込んだ。



582 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 05:04:01.96 ID:W8kJSk1B0

(´<_`#)「おい! 何だ今のは!」


てっきりマジックハンドのようなもので悪戯をした犯人が見つかるかと思った彼だが、その予想はことごとく外れた。


( ∴)「ゴエェェェ!!」

(´<_` )「……は、」


ハンペンを巨大化して、適当な人型に成形したとしよう。
そこに点のような両目をつけ、黒い空洞にしか見えない口らしきものを額につけた。

成人男性より少し小さいサイズの、それがそこにいた。


( ∴)「ゴェエ」


あっけに取られる彼に対し、その生き物はすばやく動いた。
再度綱のような両手を伸ばす。


(´<_`;)そ「ひっ!」


振り払おうとした腕に絡まり、グイと引き寄せる。



583 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 05:08:08.18 ID:W8kJSk1B0

(´<_`;)「う、わわっ?」


バランスを崩したところで、もう一方の腕が鞭のようにしなって耳の辺りを打ち付ける。

ぱん、と鼓膜の割れる音がして地面に叩きつけられる。


( <_  )「ぐっ!?」


痛みと衝撃に体を縮めると、その物体はまるで心配するかのように覗き込んできた。


( ∴)「ゴエ?」

( <_ #)「っ……痛ぇんだよっ!」


弟者は体の下で畳んでいた両腕をばねに足を跳ね上げ、その顔面と思しき部分に革靴をめり込ませた。


(ヽ∴)「ゴエエー!!」

(´<_` )そ「!? な、何これ気持ち悪!」


その蹴り心地はまさにハンペン。
弾力もあるため、ある意味マシュマロに近いかもしれない。



584 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 05:12:35.17 ID:W8kJSk1B0

( <_  )「うっぜぇ」


突っ込ませたままの足を力任せに引き抜き、着地の足を大きく踏み込む。


(´<_`#)「ってっ!」

( ∴))「ゴエッ」


そのまま下方向から捻りを加えた裏拳で鳩尾を打つ。

ぶに、ぐに、と食い込んだ拳を咀嚼するような動きに鳥肌が立った。
無理やり引き倒して掌を抜く。


(´<_`;)「何なんだ、本当コレ」


手をかざすと、スライムのようなやわらかいゲルが玉のようになって付着しているようだ。


( <_ ;)「げ」


慌ててビル壁に擦り付ける。

ふと本体の方を見ると、打撃で凹んだ部分をじわじわと膨らませているのが分かった。



585 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 05:16:02.95 ID:W8kJSk1B0

(( ∴))「ゴェー」

(´<_`;)「ど、どーすんだコレ……」


逃げようかどうしようかと迷っていると、内ポケットの携帯電話が震えだす。
液晶には、『着信:アホ』の表示。


(´<_` )「兄者か? もしもし」

『あ、今何処? 残業終わって帰るトコなんだけど、買い物あるかー?』


鼓膜の無事な方の耳にあてる。
能天気な声が耳元の機械から溢れた。


(´<_` )「ない。スーパー帰り。路地。なんか変なのいるぞ」

『え、まさか……DQNか?』


問いかけに対して物体を大いに眺めたが、どう見てもDQNではない。
携帯を握りなおす。



587 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 05:20:17.65 ID:W8kJSk1B0

(´<_` )「いや、ちが」

( ´_ゝ`)そ「うわー昨日の奴!」


奇声に振り向くと、路地の入り口をふさぐように携帯片手の兄者が立っていた。


(´<_` )「DQNじゃないみたいだぞ」

(;´_ゝ`)「知ってる、けど。昨日俺もコレ見たし」

(´<_`;)「ええ?」


携帯を閉じ、立ち上がりかけた白い物体を踏み潰しながら聞き返す。
昨日の夜コンビニの路地裏に引っ張り込まれたので殴って逃げたという。


(´<_` )「はあ、コレどうすんの? 潰れないんだけど」

( ´_ゝ`)「逃げればよくね?」

(´<_` )「流石家の男子としてそれはどうなんだ兄者」

( ´_ゝ`)「ダメか」

(´<_`#)「鼓膜割られたんだよ。痛え」



588 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 05:24:01.96 ID:W8kJSk1B0

耳を押さえながら物体の腹を踏み抜かんとする弟者。


ヾ( ∴)「ゴェ、ゴエ! ゴェエ!」

(;´_ゝ`)(そっちのが痛そう)


兄者が無言で自分の鳩尾をさする。
ぐりぐりと力をこめた革靴が貫通しそうである。


(;´_ゝ`)「お、弟者。流石にヤバいんじゃ……」


恐る恐る止めようとしたその瞬間、生き物が奇声を発し、手足をのた打ち回らせる。


ヾ( ∴)ノシ「ゴエエエエエエエェエェエェェェェェ!!
 ガハッ! ゴェエエエエェエ!!」

( ´_ゝ`)そ「ぎゃあ!?」



589 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 05:28:15.95 ID:W8kJSk1B0

そこら中を叩きまわる紐のような手足。
その一本が弟者の買い物袋から転がり落ちた中性洗剤の容器を叩き割る。

バシャン!

破裂。
そうとしか言い用が無い。

飛び散った洗剤の飛沫が物体の一部に当たった瞬間。
奇妙な生き物は水風船のように破裂した。


(;´_ゝ`)「ぎゃっ! ……って、これ液体?」

(´<_`;)「液体……だけみたいだな……」


ただし、液体を閉じ込めていた膜も無い。


(´<_`;)「洗剤、ハニャレモンって……」

( ´_ゝ`)「あーあー、買いなおさないとな」

(´<_` )「ああ」



591 :戦うスーツはレモンの香りなようです:2009/04/05(日) 05:32:27.95 ID:W8kJSk1B0

無事だった品物だけをかき集め、カバンを拾う弟者の横で、兄者は洗剤のボトルを見つめている。


( ´_ゝ`)「……俺洗剤携帯しようかな」

(´<_`;)「は?」

( ´_ゝ`)「コレ対策」


コレ、とさっきまで白い物体の横たわっていた地面を指差す。


(´<_` )「あー……やれば?」


結果として翌日も会社帰りにハンペンと遭遇した兄者にとって洗剤は多いに役立った。
洗剤をかけると、生き物は飛び散るように爆発してしまうのだ。


(´<_` )「俺も携帯しようかな……」

( ´_ゝ`)「しとけしとけー」


数ヵ月後、町にハンペンのようなクリーチャーが現れ住民を襲うという事件が多発するようになった。

が、その全てはどこからとも無く現れたレモンの香りのスーツ二人組みによって悉く制圧され。

都市伝説よろしく『二人組みのスーツ戦隊』などと騒がれたのは、また別の話である。

[ 2009/04/05 19:50 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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