70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:20:57.57 ID:a/4B7v+eO
二心同体のようです
辺り一面にうっそうと広がる木々。そこを目にも止まらぬ速さで駆け抜ける影があった。
(;^ω^)「ここまでくれば………」
彼はピタと立ち止まり、おそるおそる後ろを振り返る。どうやら振り切れたようだ。
胸の中に暖かい感覚が流れ込む。成程これが安心感かと懐かしい感覚に浸っていると遠くから怨めしい声が聴こえた。
('A`)「た~た~りじゃ~」
どうやら現実はきびしいらしい。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:22:15.67 ID:a/4B7v+eO
彼がトラブルに巻き込まれた原因は、少しの好奇心であった。
地元のVIP高校に通うどこにでもいる平凡な彼は、いつも通りに授業を消化し、これまたいつもとかわりなく帰路についていた。
その途中にふと彼はあることを思いつく。
( ^ω^)「どうせ帰ってもテレビ見るだけだし、“道草”してみるかお」
そこでいつも登下校中に見かけるだけのトンネルをくぐることにしたのだ。
トンネルをくぐるとそこには樹海とそこへの入口に廃屋がひとつポツンとたっていた。
彼は臆せずに樹海へと足を運ぶ。廃屋では満足いく刺激を得られないと判断したからだ。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:24:47.97 ID:a/4B7v+eO
樹海といえども所詮は限られたスペースに木が植えられたものにしか過ぎない。直進すれば塀もしくは囲いにぶつかる。田舎といえども土地がそこまで余っているほど考えにくい。
その予想は見事に裏切られた。
(;^ω^)「広いお。これは迷ったかもワカランね」
発言の内容とは裏腹に彼は自分が満たされていることに満足していた。
道に迷うということはすなわち未知へと踏み込んだ、刺激的だということと認識したからである。
しかし彼とて闇雲に歩いていたわけではない。見たことのある景色を辿ればすぐに先ほどのトンネルに行き着いいた。
( ^ω^)「……つまらんお」
だだっ広い森を歩き疲れるまでぶらついた。考えてみればこれもまたありきたりな思いつきで実行に移したわけだ、が彼は満足していた。
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:26:49.13 ID:a/4B7v+eO
ふと視線をかんじてトンネルをみると道端に空き瓶や空きカンビー玉などのゴミが散乱していた。
来る時にはなかったような気がする。しかし、ここから去る自分には関係のないことだ、彼は自身にそう言い聞かせた。
( ^ω^)「さっさと帰るお」
('A`)
今、トンネルの中に人の顔が見えたのは気のせいだろうか?
早く家に帰らなければ
('A`)
暗闇から怨めしそうにこちらを伺っている。こちらからは首から下は視認できない。
あきらかにオカルトだ。しかし、あそこを通らなければ帰れない。
( ^ω^)「(案外、無視すればいけるかも…)」
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:28:22.34 ID:a/4B7v+eO
なにくわぬ顔で横を通ろうと試みる。なぁに、最悪かっ飛ばせばどうにかなるだろうという彼の甘い考えはすぐに破綻した。
('A`)「なぁ…あんた」
不審者の若い声は直接頭に響く。叫びそうになりながらもつい、と奴の言葉に反応してしまった。
('∀`)
真っ赤な口、若い顔つき、そしてやはりというべきか首から下がない…
それをまのあたりにした彼の最初の感想はしまった、というものだった。
まるで教科書を忘れた時のような絶望と焦燥がそこにはあった。
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:30:15.39 ID:a/4B7v+eO
樹海の方へ逃げ込んだ自分自身を恨みながらもは彼は奴とのおいかけっこをしていた。
そして話は冒頭へと戻る。
(;^ω^)「疲れたお…横になりたいお…」
事前に樹海を探索した彼はここの広さを知っている。考えも無しに走り回って既に帰り道さえわからない。
なによりトンネルで待ち伏せされてしまえば今までの苦労は水の泡だ。
ん…?トンネル………
( ^ω^)ニヤリ
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:32:12.97 ID:a/4B7v+eO
彼はひらめいた。
相手の目的は不明確にしろ、追いかけてくる以上は接触したいのだろう。ならば振り切られた後、奴はトンネルで待ち伏せするはずである、と。
彼の予想通り、生首は自分を捜しているらしい。
ターゲットを見失い、生首がと来た道を帰っていく。彼は木の陰からそれを確認し、計画を実行に移す。
とはいえ単に生首をストーキングするだけなので、単純なものであったが。
生首の後を付け、彼は無事に廃屋までやってこれた。
しかし彼にはまだ問題が残されていた。生首をどうやり過ごすか、である。
そもそも、生首の目的は一体何か。仮に奴に喰われてしまえば、自分は消化されるのか…
思考の海に身を委ねている彼は、背後の陰に気がまわらなかった。
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:35:18.37 ID:a/4B7v+eO
とんとん、と右の肩をたたかれる。
( ^ω^)「お?」
右後を見ればそこには首から上のない貧相な体があった。
人間は本当の怒りや絶望・悲しみに直面した時、泣いたり怒ったりはしない。一旦冷静になるのだ。彼もまた、例外ではなかったようだ。
( ^ω^)「…こんな時間になんだお?」
その体は彼の背中に“首”とだけ指でなぞった。
彼は後からくる恐怖と戦いながら体から自分の首を捜しているとの旨を教えてもらった。
つまり、トンネルで待ち構える生首は体を捜していたわけだ。
彼は首の無い体の手を引っ張り生首のもとへと連れていった。
最近、生首は体にやたらとつっかかっていた。それに腹を立てた体は逃走。しかし互いの助けがないとやっていけないとわかる。そして感動の再開を果たした、というのがことがの全容であった。
ちなみにたたりは無いとのこと。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:37:50.27 ID:a/4B7v+eO
( ^ω^) 「体がなければ意思表示すらできないのかお…」
なるほど、首を縦にふることも固定された前提があってのこと。加えて体がなければ発声もできない。
( ^ω^) 「愛想笑いすらオカルト、話かけたら心霊現象…雰囲気でたたってほしくないお」
彼は床につきながら今日1日の、あの衝撃的な一期一会について思いを巡らせていた。
( ^ω^) 「頭でっかちにはなりたくないおね」
自分の頭と体は仲はいいのだろうか?
彼はそんなどうでもいいことを考えた後、眠気に身を委ねた。
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/14(土) 02:38:42.72 ID:a/4B7v+eO
以上です
お題
た~た~り~じゃ~
空き缶
空き瓶
ビー玉
駆け抜ける
かっ飛ばす
批評お願いします