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( ^ω^)が空を飛ぶようです


464 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 17:50:37.60 ID:ecFpVzyH0

僕は生まれてこの方鳥だった。

天高く舞い上がった後、風を裂いて降下する時の爽快感を知っている。
遥か彼方にまで続く青空は僕の世界であり、世界は僕を優しく包み込んでくれる。
空を飛んでいる最中、僕は世界と溶け込み、僕自身が無限の空の一部へと成り果てるのだ。

それに比べてヒトは醜い。

重力に縛られ、地に捕らえられた足を解放する手段を彼等は知らない。
翼のない生物であるヒトは、機械と呼ばれる物や道具を用いらなければ、空を泳ぐ事は出来ない。
唯むなしく、大空に自分を投影し、妄想に浸ることで空虚な満足感を得るばかりだ。
僕は、ヒトでなくて良かったと、心の底から思う。

今、僕の瞳には、闇と光の二つが同時に映し出されている。

僕の世界には夜がもたらす漆黒が悠然と佇んでいる。
ヒトの住む地上のは、二十四時間眠りを迎えることはなく、眩くコーティングされたビル群がそびえ立っている。

自然をも無視するヒトの欲深さは、やはり僕には醜いとしか思えない。
ヒトの醜さは僕には耐えきれない、遠く、誰もいない場所へと飛び立ってしまいたい。

そして、僕は翼を広げて空へと飛び出した。

そして、僕はそのまま死を迎えた。



466 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 17:52:13.81 ID:ecFpVzyH0

( ・∀・)「悲しいか、悲しくないかは分からないけど、君はきっと泣いているんだね」

目を覚ますと、そこには恐らくヒトが立っていた。
ヒトであるという確信が持てなかったのは、そのヒトが神秘的な雰囲気を纏っていたからだとでも言うべきだろうか。
兎に角、僕が今まで見てきたヒトとは、明らかに一線を画していた。

( ^ω^)「……アナタは、一体、誰ですかお?」

( ・∀・)「僕はね、神様なんだよ、僕はそれを認めたくはないけど、皆がそういうんだから間違いないんだ」

( ^ω^)「それは、つまり、どういうことですかお?」

( ・∀・)「僕が神様であると認めてしまったら、世界は僕の思うがままだ。
      でもそれは楽しくない、思うがままの世界なのに、僕は楽しくない。
   
      でも皆には神様が必要だし、だから僕が犠牲になって皆の幸せを守ることにした、それが僕が神様である所以だ。
      自分よりも、何よりも、他者を大事にすると決めた時から、僕は神様になったんだ」

その紡がれた言葉の意味を、僕は大凡理解することが出来なかった。
でも、自称神様の言った事は真実なのだろうと、それだけは不思議と素直に受け取った。

神様は僕が知る様な醜いヒトでなかったし、綺麗だった。
一切の穢れを感じさせなかったし、立ち振る舞いは実に堂々としていて、まさしく神と呼ぶには相応しかった。

鳥である僕と、至って普通に会話できるのも、それは神であるからなんだろう。



467 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 17:54:21.97 ID:ecFpVzyH0

( ・∀・)「人の考えていることは分からない、でも精一杯努力して理解しようと試みることは出来る。
      醜いものばかりだろうけど、その裏にはきっと美しい何かも有る筈なんだよ」

( ^ω^)「神様、僕は貴方の言う事が何だか分かりませんお」


( ・∀・)「嘘だよ、君は分かっていて、それでも理解したくないと、耳を、心を塞いでいるんだ。
      世界を拒絶している君が、唯一つの存在である僕の言葉を理解するのは、ちょっぴり難しい」
 
( ^ω^)「やっぱり僕には何の事やら分かりませんお、だから僕は帰る事にしますお」

( ・∀・)「そうか、じゃあまた後で会おう」

神様は、案外あっさりと僕が帰る事を許してくれた。
もっとも、帰るという表現は恐らく間違っている。
僕は神様が放つ意味深な言葉の数々を聞き流していて、それが見透かされているようで、逃げだすことにしたのだ。

僕と神様のいる場所は天空。
雲のカーペットが敷き詰められていて、上を見れば濃い青、大きく穴をこじ開けたかのような太陽は眩しい。

カーペットの切れ間からも少しだけ光が漏れていて、そこから元の世界に行けるのだろう。
天空の空は僕の世界よりもずっとずっと綺麗だったから、羨ましいのと同時に少し怖かった。
その美しさに押し潰されてしまう気がして、僕は俯くばかりだった。

そして、僕は元の世界に帰る為、翼を広げて切れ目へと飛び出した。

そして、僕はそのまま死を迎えた。



469 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 17:56:13.99 ID:ecFpVzyH0

( ・∀・)「思い出そうよ、逃げてばかりじゃ駄目なんだ」

( ^ω^)「どうして、僕は飛べないんですお?」

神様は、死んでしまった筈の僕に、微笑みながら問いかけた。
神様は、死んでしまった筈の僕を、生き返らしていた。

( ・∀・)「翼に怪我をしてしまったこと、覚えているでしょ?
      忘れてるんじゃない、君は唯単に記憶を封印しているんだ」

( ^ω^)「本当に、僕には、分からないんですお、何も、僕自身の事でさえも」

( ・∀・)「違うんだ、君は全てを分かっているんだ、ほらもう少し、目を閉じて思い返してみて」

言われるがまま、目を閉じて、自分の思考に陥っていく。
暗く深い闇がどこまでも続いていて、そのまま飲み込まれて帰ってこれなくなるような気がした。
そんな恐怖に襲われている僕の右手を、神様はしっかりと握ってくれていて、どうにか自分を保つことが出来た。

しかし見えてくるのは、醜いヒトの姿ばかりだった。
弱者を甚振っているヒト、それを見て見ぬ振りをするヒト、その中心で絶望に溺れているヒト。

特に最後のヒトが醜かった。
何も出来ない自分を恨んでいて、周囲のヒトを恨んでいて、世界自体を恨んでいる。
全てを否定するばかりで、感情は荒みきっていて、心はどろどろのぐちゃぐちゃで汚れきっている。

そんな彼が唯一好きだったものは、空だった。



470 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 17:58:11.23 ID:ecFpVzyH0

( ・∀・)「その人は、空を見ている時だけ、自由になれる気がしていたんだろうね」

( ^ω^)「……翼のないヒトに、空を飛ぶ事は出来ませんお」

( ・∀・)「空を飛ぶ夢を見るのが、楽しかったんだと思うよ」

( ^ω^)「そんなこと、分かりませんお」

( ・∀・)「そうだね、人の考えていることは分からないと僕が言ったんだったね。
      でも、君は、君だけはその人の考えている気持ちが分かる筈だよ」

( ^ω^)「何度言えばいいんですかお、僕は神様の言っている事は分かりませんお」

僕は、またしても逃げるように翼を広げた。

神様の瞳が怖かった、神様は何でも知っているんだ、ヒトの気持ちも知っているんだ。
僕の事も知っているんだ、僕の気持ちも、僕自身が知らない僕の事でさえも知っているんだ。

そして、僕は雲の切れ目へと飛び出した。

そして、僕はそのまま死を迎えた。

そして、僕は再び目の前に現れた神様に抱きしめられた。



471 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 18:00:24.44 ID:ecFpVzyH0

( ・∀・)「君は死ねない、神様である僕が君の死を望まないから。
      僕は皆を幸せにしないといけないという義務がある、だから不幸な君を死なせない」

( ^ω^)「でも僕には幸せになる方法が分かりませんお」

( ・∀・)「翼が折れてしまったから? 君の世界が奪われてしまったから?」

( ^ω^)「どちらもですお、飛べない鳥に価値なんてない」

( ・∀・)「でも、君は鳥ではなく、人間だ」

( ^ω^)「……違う」

( ・∀・)「虐めにあって、人間を嫌いになって、現実逃避に空を眺めることにしたんだよね?」

( ^ω^)「違う、違う、違う、違う」

( ・∀・)「そして、エスカレートした虐めは君から目を奪った、空に自信を羽ばたかせる夢すら見ることが出来ない。
      だから君は病院の屋上から飛び降りたんだ、君は鳥ではなく、人間だ」

( ^ω^)「違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う
       違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う
       違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う
       違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う」



473 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 18:02:47.01 ID:ecFpVzyH0

( ・∀・)「君は鳥ではなく人間だ。
      空を夢見る以外に、幸せを見つけて欲しい」

( ^ω^)「違う、僕は鳥だ、ほら見てみろ、僕は空を飛べる」

神様の腕を振り払う。
そして、僕は雲の切れ目へと飛び出した。
そして、僕はそのまま死を迎えた。

( ・∀・)「自分の体をもう一度見てみれば分かるさ。
      君の体に備わった手足、羽のない背中、紛れもない人間のものじゃないか」

( ^ω^)「違う、僕は鳥だ、空を飛ぶんだ、僕は、それだけを生きがいにしているんだ」

そして、僕は雲の切れ目へと飛び出した。
そして、僕はそのまま死を迎えた。

( ^ω^)「ああああああああ、何でだ、嘘だ、神様なら僕を飛ばしてくれよ、大空を、僕の世界を返してくれよ」

( ・∀・)「空は君の世界じゃない、君の世界は、醜くも美しい、人間の世界だ」

( ^ω^)「嫌だ、嫌だ、何で僕は飛べない、皆は僕を嫌う、だから誰もいない所へと行かないと。
       誰にも愛されない僕は、どこか誰もいない場所へと行かないと、僕は消えないといけないんだ」

( ・∀・)「……ああ、そうか、君は……何ということだろうか」



474 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 18:04:33.24 ID:ecFpVzyH0

神様がもう一度僕の事を抱きしめる。
僕は大粒の涙を零しながら、その温もりに身を委ねる。
その温かさは、僕は今まで一度も感じたことのないもので、凄く心地良かった。

( ・∀・)「君は、僕と同じなんだ」

( ^ω^)「僕は、神様みたいに温かくありませんお」

( ・∀・)「いや、同じなんだよ、どれだけ辛い目にあっても、君は他者の事を第一に考えていたんだね。
      君が死にたいのは、自分がいると人が不幸になると、そう思っていたからなんだね。
      犠牲になるのは辛いよね、悲しいよね、でも皆が幸せならそれはきっと嬉しい筈なんだよね」
   
いつのまにか、神様も僕と同じように頬を涙で濡らしていた。
そのくしゃくしゃの表情を見て、僕の涙はより量を増し、ぼろぼろと流れ落ちていく。
泣いているのに、何故か、僕は、無性に嬉しかった。

( ・∀・)「もう一度会おう、今度は引き止めない、この場所で僕と永遠に暮らそう。
      君はきっと神様になるべき存在なんだ、そして幸せにならないといけないんだ」

( ^ω^)「神様は、犠牲なんじゃないんですかお?」

( ・∀・)「そうだ、でも神様が二人いれば分からない。
      もしかしたら、誰も不幸にならない、神様も人もみんな幸せになれるかもしれない」

( ^ω^)「やっぱり、僕は神様の言う事が良く分かりませんお」

( ・∀・)「僕も自分が良く分からないんだ、でも、君と過ごす時間はきっと永遠になる。
      そしたら、ゆっくりと分かり合っていこう、そして二人で一緒に幸せになろう」



475 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 18:06:32.95 ID:ecFpVzyH0

神様の言葉を聞き終えると、僕は体中に風を感じていた。
でも足は地に着いている、戻ってきたのだ、ここはきっと病院の屋上なのだろう。

僕の瞳に映るのは漆黒だけだ。
眩くライトアップされたビル群は見えないし、薄らと瞬く星も確認出来ない。
手探りでここまでこれただけ奇跡のようなものだった。

全ては僕の妄想だった。
鳥になり風を切って空を飛ぶこと、空から地上を眺めていたこと。
ヒトを醜いと貶していたのは、それそのまま僕自身のコンプレックスだった。

でも、ようやく僕は救われる。

神様が僕を必要としてくれた、ならば僕はそれに応えようと思う。

ねぇ神様、幸せになろうと言ってくれたけど、それは無理なのかもしれない。
だって僕は、貴方が抱きしめてくれた時、僕の為に泣いてくれた時、既に幸せになってしまったのだから。
簡単に満たされる僕は安っぽいのかもしれない、けれどもこの胸の内の温かさは本物なんだ。

神様、貴方はまだ幸せになってないのでしょう。
だから、僕は貴方を永遠の時を用いて、幸せにしてあげたいと思います。
最期の最後、生の終わりで僕を救ってくれた貴方への、恩返しになればと思います。



476 :( ^ω^)が空を飛ぶようです:2009/02/27(金) 18:08:13.55 ID:ecFpVzyH0


( ^ω^)「僕は鳥じゃなく、人間だ。
   
       でも、僕は空を飛ぶ事が出来るんだ」




そして、僕は両手を広げて空へと飛び出し、




そして、僕はそのまま空を飛び、




そして、僕は天空へと舞い上がるのだ。




[ 2009/02/27 19:51 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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