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从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。


369 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:14:05.25 ID:U6k6HWM1P

暗い、しかし、暗い。
田舎の夜は暗いとか言うけど
正直全然比にならない。
暗い、真っ暗。暗いってより黒い。

( ・∀・)「いい加減外したらどうです、コーヒーも飲めないでしょう」

从 ∀从「……あ、」

そして開ける世界、瞼よ開けゴマ。
いやいや、ずっと眼は開けてたんだ。
そう、悪いのはこれ。アイマスク。外してはじめて朝を見る。

( ・∀・)「一昨日もアイマスク付けっぱなしで、起き抜けにうろうろしてて」

広がる視界、汚い壁、汚い研究室、
っていうか柱が汚い。へこんでるし。
この家大丈夫か。

( ・∀・)「柱に頭ぶつけたでしょう」

从 ゚∀从「……あぁ、コーヒーさんきゅ」

( ・∀・)「また明後日あたり、ぶつけるんでしょうね。明後日がくれば」

コーヒーの苦味が口に広がる。ブルーマウンテン。
体に残る倦怠感を吹っ飛ばして・・・はくれないが
確かに頭が冴えていく。ついでにコブが痛み出した。



371 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:16:27.25 ID:U6k6HWM1P

从 ゚∀从「今日もコーヒーが美味い。いい日だ」

( ・∀・)「コーヒーがおいしいのは僕が淹れたからでしょう」

白衣の男、少し自慢げに新聞紙を広げる。
トーストを食いながら、時折コーヒー。
行儀悪い奴だ。名前はモララー。

( ・∀・)「肘つきながら食事なんてお行儀悪いですね」

从 ゚∀从「うっさ。オレは肘つきながらじゃねぇと食えないの」

研究研究また研究。
オレの1日は昨日の結果を確認することから始まり
『次こそは』という期待を翌日に運ぶことで終わる。

単調だとは思わない。
昨日の朝食は味噌汁とごはんだったし
その前の日はトマトスパゲッティだった。
今日はジャムトーストが焼けている。

( ・∀・)「……いつまで続けるんですか」

从 ゚∀从「そいつは間違ってる。“いつ終わるか”聞くべきだったな」

( ・∀・)「そうですか」

終わるまで止める気は無い。
成功するまで続く。



372 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:19:06.30 ID:U6k6HWM1P

じゃあ成功したら終わるのかというとわからない。
何を持って成功とすれば良いかさえ
正直なところ定かではなかった。

从 ゚∀从「コーヒーおかわり」

何度か成功したことはある、といえる。
結果に満足したことはある、ともいえる。
しかし、それさえも違った。
成功はいつだってスタートラインでしかない。
オレにゴールは見えないのだ。
神は、オレにテープを切らせないつもりらしい。
だから、オレは意地でも走って走って
泣きながらゴール、観客も涙。いいねぇ。

( ・∀・)「はい、どうぞ」

モララーの淹れたコーヒーは美味い。
料理も美味い。
世話焼きが過ぎるけど頭も良いし優秀な助手だ。

从 ゚∀从「うん、出来が良い」

オレが今まで出会った奴の中じゃ、ダントツに気が利く。
何より理解があった。
だから結構好きだ。純粋に。

( ・∀・)「僕と別れるのが惜しくなりましたか」



373 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:21:28.67 ID:U6k6HWM1P

从 ゚∀从「そういうもんでもないんだぜ」

オレの眼は正面についている。
だからアイマスクで真っ暗な訳だが。
前についてるんだから前向き、惜別とは無縁
むしろ未来が恋しい。っていうかそういう気分。

( ・∀・)「正直に言っていいですか」

从 ゚∀从「なんだよ」

新聞をたたんでかしこまるモララーに
思わずオレも背筋を伸ばす。
ついには助手辞めたいとか言い出すんだろうか。
こんな研究なんて無意味です、なんて。
それは見てみたい。

ところがどっこい、モララーの口から出たのは予想とは違う言葉だった。

( ・∀・)「明日で、研究も実験も終わりですよ」

从 ゚∀从「そうなのか」

( ・∀・)「終わりますよ」


これが終わりとは思ってない。
実際そうだろう、だってまた新しく始まったのだから。
けれどモララーが言った事は嘘ではなかった。研究は終わった。
モララーの作ったジャムトーストは、あれで食べ納めだった。



376 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:24:45.22 ID:U6k6HWM1P




明るい、しかし、明るい。
そう、明るかった。
研究所じゃあアイマスクが睡眠のお供だったオレだけど
今朝は明かりが眩しかった。

从 ゚∀从「成功した……」

違うのだ。ここで安堵するのは間違い。
わかってはいても、オレの胸は大きな達成感と少しの切なさで満室です。

もう朝食を用意してくれる男はいない。
コーヒーを淹れてくれるあいつはいない。

っていうか、オレがいない。
あの世界から、オレが抜け出した。それが成功。実験の終わり。

今でもモララーは新聞を読みながら飯食ってるんだろうか。
そのテーブルの向かい側に、オレはいない。
オレがいたことを覚えているのか、
はたまた、オレ以外の誰かが代わりにいるのか
そもそもオレがいたということになっているのかもわからない。

こういうことは以前にも考えたが
答えはでない。

从 ゚∀从「……」



377 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:26:23.14 ID:U6k6HWM1P

ダメだ。
感傷に浸ってる場合じゃあないんだった。
あの世界はあれで終わり。長い付き合いになったが。
オレは無事に夢から醒めた。

从 ゚∀从「これで終わりか?んな訳ねーか」

消毒薬の臭いとフラスコのぶつかりあう音がもはや懐かしい。
今オレを囲むのは静けさと本の山だ、それもエベレスト級。遭難さえ覚悟する。
白衣と、お節介な男よさようなら。
ここがオレの新たな世界なんだ。

( <●><●>)「ハインちゃん、そこにいるのはわかってます」

お出まし。この世界の相棒。

从 ゚∀从「あぁ、探し物があって」

新しい世界に来て、いつも最初にあった人だけが最後まで一緒に居てくれた。
オレの言う事について理解してくれたり、してくれなかったり
中には殺そうとしてきたり、求愛してくる奴も居たけど
まぁ、八割方、この世界で初めて見たコイツの顔は
ここからでる直前まで拝めるんだろう。

( <●><●>)「それなら一緒に探してあげます。何を探しているのかはわかってます」

从 ゚∀从「助かるぜ」

くりくり眼の少年だ。こいつも結構利口そうだぜ。



379 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:28:26.70 ID:U6k6HWM1P

从 ゚∀从「ないな」

何を探してるのかも把握しないまま、呟いた。

从 ゚∀从「ない」

( <●><●>)「なかなか見つからないのはわかってました」

小一時間も経っただろうか、あくまでオレの体感で。
ここは時間って概念、存在すんのかなぁ。

从 ゚∀从「えっと……これは“蒼い鳥”」

適当に手に触れた本をパラパラとめくる。
ドイツ語だかフランス語だかよくわからない言語が並ぶ。
英会話さえままならないオレ、でも読めるんだなこれが。

ハインリッヒはドイツ語だからとか
ジョルジュはフランス語だからとかそういう問題でもない。

从 ゚∀从「えー、未来を信じて、あなたを忘れない、でもきのうにはかえれない」

全然知らない世界に放り込まれても
なぜかやり方を知っている。
いつだってそうだった。
化学の成績2だったオレが研究とかって出来ちゃうわけだ。

言うなればそれだけが全世界のルール、
今まで渡ってきた数多の世界の共通項だった。



381 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:30:25.54 ID:U6k6HWM1P

( <●><●>)「こっちにもないみたいです」

前の世界じゃ意味がわかりもしない“研究”を成功させる事が条件だった。
何を研究してるのかも理解できないままだったが
なんとなく成功できたのだから、そういうもの。

从 ゚∀从「終わらないな、続けなきゃならんな」

( <●><●>)「ハインちゃんが疲れてることはわかってます」

この世界じゃ、なんかを見つけなきゃならないんだろう。
それも書物なんだぜ、きっと。
これから本屋敷に通う事になるのか?

从 ゚∀从「思うよりずっとハードだ」

探し物は苦手、っていうか嫌い。っていうかウンザリ。
言うなればずっと探し物をしてる。いつでも。
もうどれくらいになんのか。何かを達成したら、次の世界へ。

( <●><●>)「今日はもう帰りましょう」

一時間って感覚はあっても
今まで累計どれだけ経ってるのかは少しもわからなかった。
膨大な時間だからとかそういう理由じゃなくって
ただ、全然わからない、数え方がわからない。



383 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:32:08.18 ID:U6k6HWM1P

( ^ω^)「おっおっひさしぶりぶり」

本屋敷を出るとき、小汚い男が声をかけてきた。小汚い台詞だった。

从 ゚∀从「は……あぁ」

またこいつだ。
世界のつくりが複雑……否。
単にめちゃくちゃなんだろう。

同じ登場人物が違う役で出てきたりする。何度もする。
この顔面金玉は5、6回見たことがある。
いずれもたいした役どころじゃない、むしろモブ。
さすがに顔は覚えてやったが。

( ^ω^)「もっと、高めて果てなく、さよおなら」

从 ゚∀从「あぁ」

またもモブ。
こいつは一生役に立たない。
でもしつこく出てくるんだろ、どうせこの先も。

( <●><●>)「ハインちゃんの知り合いだってことはわかってます」

从 ゚∀从「知り合いって程じゃあ」

( <●><●>)「わかってます」



388 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:47:23.08 ID:U6k6HWM1P

三回目だった。本屋敷に通って三回目。
通うっていっても、本屋敷を出たすぐそこにわかってますの家があって
オレも一緒に住んでた。
近所にゃ顔面金玉がうろついてた。

从 ゚∀从「この本どう思う?」

何十冊だか何百冊とも知れぬ数の本を見てきた。
まぁ文字通り見てただけだけど
それでなんか目に留まったんだ、これ。

ビビっときたというのも違うんだが
たまにこういうこともある。
『あれ?これで目的達成できちゃうんじゃね』
とはいえ、全然わかんないときのが多い。圧倒的に。

( <●><●>)「私にだってわからないことはありますよ」

从 ゚∀从「そうなのか」

ここのところ本ばかり読んでいて少しばかり視力が落ちた気がする。
目が痛い。

( <●><●>)「だけど、この本が妖しいってことはわかってます」

从 ゚∀从「そうだよな」

身をかがめて、わかってますはオレの手中の表紙を読む。



390 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:50:54.68 ID:U6k6HWM1P

( <●><●>)「この本は夢の本ですね」

从 ゚∀从「そうだな」

( <●><●>)「読みますか」

从 ゚∀从「……読むぜ」

本屋敷は本屋敷。
映画で出るような洋館にありったけ本が積まれてるだけ。
本棚はない。ついでに貸し出しカウンターもない。

( <●><●>)「ぜんぶわかってます」

从 ゚∀从「じゃあ」

わかってますは大きな目を少し細めて黙っていた。
こうみると結構かわいい顔つきだ。75点……いや79点。

从 ゚∀从「読むよ」

( <●><●>)「いってらっしゃい」

短い世界だったな、と思った。確信さえあった。クリアだ。やった。
適当に腰を下ろして適当なページを開こうとする。

表紙がやたらに重く感じられる、そこらに積まれた本とは違うらしい。
日本語だ、学術書とかそういう類でもなく
ただ、ダラダラと、夢について書かれてる。そんな本だ。



393 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:52:45.32 ID:U6k6HWM1P

夢が続くんだ。
でも、だからといって普通の夢じゃない。
おそろしさを孕んだ、狂気だ。それでいて、楽しくもある。それゆえ、か。
会うのは大抵変な奴ばかりだし、自分も変なことばかりしている。
いつもそれをおかしいとは思わず、気付いても気に留めず、不思議な感覚。
しかし、オレはわかってしまう。どうすれば良いのか、夢から醒める方法を。そし
て、それを試してしまった。世界を抜け出した。ルールを越えた。目を開くとそこは
以前見た景色、そう、夢から醒めたんだ。はじめは安堵だったかな、だんだん
来るのは懐かしさ、そして寂しさ。
でも、そういう感覚さえ浮ついて、次にはとにかく不安不安不安。
すぐに後悔する事になる。夢から醒めた?本当だろうか。
ねむれば、いや、ねむらずとも そこは夢の世界なんだ、無限に続く、終わりは無い。

           ・
           ・
           ・



394 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 12:56:57.07 ID:U6k6HWM1P

思えば長い悪夢だった。
給水ポイントなしのマラソン、ゴールなし。
でも走ってよかった。脚が勝手に動いてたようなもんだが、
やっと終わるのか。

ベッドから飛び起きて全身鏡に体を映す。
よれよれのジャージ。ぼさぼさの髪の毛、酷い顔。

再びベッドにダイブ。
洗ってないシーツから汗のにおい、まくらにヨダレの跡。
あの日のままだ、正直泣きそうだ。

時計を見る、普通に朝。
窓を見る、普通に朝。

从 ゚∀从「終わった……?」

最後の夢が終わった?
わかってますの顔がぼんやりしか思い出せない。
夢から夢へ、わけのわからない世界旅行は終了。
すべてがここで事足りる、ここがオレの世界。

全部夢、
それはもう夢の中でさえ知っていたこと。

今思い返して、とても恐ろしいことだった気がして、
だって眼が覚めないんだし、夢から醒めたら夢だし、
だから今更そう考えて、頭が痛くなった。



396 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 13:00:45.24 ID:U6k6HWM1P

まじで色々した。
エロいこともした。
人殺したりもしたし何回も殺された。
小さくなったこともあったし、空も飛んだな、
必死に盆踊り続けたり

後々考えてみると
阿呆以外の何者でもない行動をしたりするのだが
しかしその世界では当然のように扱われて
もちろん自分も当然と思って行うのだ。

そしてしばらくしてから気付く。
あ、オレ何してんだろって。
気付いても止めない、止めるとかって話でもない。

なんかそうあるべきなんだって思っちゃう。

例えば、次の夢に来たんだってすぐにわかったり
わかんないこともあったけど。
でもそれだって当然と思っちゃうわけ。

从 ゚∀从「めし……」

もうそういうのもどうでもいいや、とりあえず腹減った。
冷蔵庫に昨日の残りあるだろ、しょうが焼き。
昨日っていつだよって感じだけどな、昨日だ。



398 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 13:04:12.24 ID:U6k6HWM1P

台所、オレの眼はもちろん冷蔵庫へ。手も一緒。
炊飯ジャー確認、平気、どんぶり一杯分は残ってた。

しょうが焼きと……キャベツ。
レンジに入れる。しょうが焼きだけな。
キャベツは一足先にテーブル行き。

なんて幸せな食卓なんだ。
平和だ。素敵だ。
ただ朝がきて眼が覚めて朝食の準備をしているだけなのに圧倒的な安心感。
大冒険をしたでも不思議体験をしたでもない
夢をみてただけなのに。

家族が起きてくる音、階段を降りる足音。
ちょっと騒がしくしすぎたか、と反省する。
誰かがリビングのドアを開ける、と同時にレンジがチン。

从 ゚∀从「兄ちゃんおはよう」

レンジ開けるとしょうがの香り、これはオレのだ。
兄ちゃんはトーストでも焼いて食えば良い。
そう……

( ・∀・)「おはようございます、あれ以来ですね」

从 ゚∀从「あ、」



おわり







401 :从 ゚∀从ハインリッヒの見る夢は……のようです。:2009/01/30(金) 13:08:11.80 ID:U6k6HWM1P

以上です。おわりです。
広げた風呂敷畳めない病と闘ってんだがなかなか無理だ。
ついでに尻すぼみ病とも闘わなきゃならないなと思いました。
お題は一応三つとも消化しました。

从 ゚∀从アイマスっぽく
夢でお会いして以来ですね
( <●><●>)「私にだって分からないことはありますよ」

支援ありがとうございました。


[ 2009/01/30 21:44 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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